剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
69 / 586
第6蝶 冒険者ギルド騒乱編

双子姉妹襲来

しおりを挟む



 野営できる場所を見つけたボクたちは
 スミカお姉ちゃんのお家に泊まりました。

 朝になって、起きてみるとスミカお姉ちゃんがいない代わりに、Bランク冒険者の『ナゴタ』『ゴナタ』さんが、ルーギルさんと話をしていました。

 ボクは嫌な感じがして、お家に武器を取りに戻りました。

 ※今話はユーア視点のお話になります。
  澄香がこの場所には留守なので。




 スミカお姉ちゃんがいない中、何かあったらボクが戦わないと――


 ボクは急いでマジックポーチを取りに家の中に戻ります。

 その中にはスミカお姉ちゃんから貰ったボクの武器
 『ハンドボウガン』と『スタンアロー』を収納しているからです。

「ボクはまだまだ未熟だけど、何かあったら動けなくする事はできるんだ! あの人たちが、暴れたらボクがっ!」

 マジックポーチを胸に抱いて、お外に急いで駆けていきます。

『でも、なんでスミカお姉ちゃんはいないの? あの人たちはスミカお姉ちゃんの魔法で中に入れないはずなのに、どうして? もしかしてスミカお姉ちゃんに何か――――』

 ブルブルと頭を振って、そんな考えを頭から無くします。

 スミカお姉ちゃんに『何か』なんて絶対にないから。
 スミカお姉ちゃんの事はボクが一番知っているんだから。


 お外に出ると、まだルーギルさんたちがナゴタさんとゴナタさんと話をしています。危ない事にはなっていなくて安心したけど、あまりいい雰囲気ではないです。

 ボクはハンドボーガンを出して、念のために準備しておきます。
 いつでも止められるように。


「で、なんだってお前らはここにいるんだァ? それにどうやって?」

「いちいちうるさいなぁ。なんで弱いお前なんかに教えなくちゃならないんだよっ! そうだよねナゴ姉ちゃんっ!!」

 『ナゴ姉ちゃん』と呼ばれた女の人は金色の髪で、スミカお姉ちゃんと同じくらいの年齢か、ちょっとだけ年上に見えました。

 美人な人だとは思うけど、目がちょっと吊り上がってて少し怖い人です。
 服装はスミカお姉ちゃんよりは可愛くないけど、真っ青なドレスみたいなのを着ていました。


「そうね。弱いあなたになんて用はないわ。それとも実力で私たちに聞いてみる? 少しは強くなったのかしら。ゴナちゃん、試してみる?」

 「フフフッ」と口に手を当てて、お上品な感じに見えます。
 でもその口はボクには歪んでいるように見えました。


 『ゴナちゃん』と呼ばれた女の人は、ナゴ姉ちゃんと同じ顔でした。

 それでも髪はメルウちゃんと似てて、おさげをもっと上で、耳の上あたりから結っている感じです。

 服装はボクと同じように袖の短い服。
 そして赤い半ズボンを履いていました。


「うんそうだねナゴ姉ちゃんっ! それじゃルーギル行くぞっ!」

 腰のポーチから大きなハンマーの様な武器を出します。
 その人の身長よりも大きいです。

 その武器の先っぽは片方がお肉を叩くみたいな平らな形だったけど、もう片方は、杭のように先が尖がっていました。

「お前があれからどれくらい強くなったのか見てやるよっ! 少しでもワタシを満足させられたら教えてやる。それでいいよね? ナゴ姉ちゃんっ!」

「ええ、それでいいわ。それじゃ私はその間の時間つぶしとして、クレハンとでも遊ぼうかしら? あなたも前よりは変わったか試してあげるわ」

 怖い笑顔を浮かべて、腰のポーチから長さが身長よりも長い槍みたいなものを出します。でもその槍は持つところが真ん中にあって、両方が刃になっていました。


「ちッ、やっぱりコイツらは面倒くせえッ! クレハンこれ使えッ!」

 クレハンさんに何か投げて渡します。

「あ、ありがとうございます! それでは早速試してみます」

 ゴクゴクと受け取ったそれを飲み干します。

「ぐぐっ! 中々にきついですね。でも、これは――」
「ああ、最初だけキツイんだけどよォ、後は――」

 そう言った後、もの凄い速さでお互いの相手に走って行きます。

「ハッ?」
「えッ!」

「その分だけ強くなっからよォ!」
「その分だけ強くなりますからねっ!」


 そしてお互いの武器を出して驚くナゴタ、ゴナタさんに切りつけていきます。さっき飲んだのはスミカお姉ちゃんから貰った『ぶーすとあっぷ』てアイテムです。


 ガガッ!

 ルーギルさんの2本の剣。
 それとゴナタさんの大きなハンマーがぶつかります。

 ガキンッ!ガキンッ!
 
 クレハンさんの2本の短剣。
 それとナゴタさんのその変わった槍が交わります。


「はぁっ!? コイツってこんなに早かったっけ? それに力も前より強くなってるじゃんっ!」

「ええ、そうね。こっちのクレハンも、スピードもパワーも、かなり上がっているわね」

 二人の強さにびっくりして驚いたような声を上げます。


 ガンガンッ、ガガ、ガガガッ!ガキッ。

「ハハッ! そうだろォ! ちょっとズルしちまってるがこれなら認めるんじゃねえかァ! オレたちの強さをなァッ!!」

 ルーギルさんは2本の剣をもの凄い速さと力で、ゴナタさんのハンマーに叩きつけていきます。

 ゴナタさんはとっても大きなハンマーで攻撃を防いでいきます。

「ぐぐっ! 確かに中々強くなったな。でも――」 

 そう呟いたゴナタさんの体が一瞬だけ光った様に見えました。



 ガキンッ!ガキンッ!
 ガキンッ!ガキンッ!

「あら、中々に速くて威力のある攻撃だこと」

「ええ、あなたの様な強者に褒められて、わたしも光栄ですが、まだまだこれからですよっ!」

 ナゴタさんは素早く動いては、斬り付けてくるクレハンさんの攻撃をその槍みたいなものを回転させて軽々と防いでいる様にみえます。

「でもまだまだ私には届かないわよ。もう少しなんとかならないの?」
「ははっ! これでも精いっぱいなんですがね! では――」

 そう言った後、クレハンさんは後ろにジャンプして少し距離を離しました。そしてその手には、スミカお姉ちゃんから借りた刃がもの凄い速さで飛び出すナイフを持っていました。

「これならどうですかっ!」

 そのナイフの刃がナゴタさんに向かって飛んでいきます。

「おっとっ」

 でもその攻撃は当たりませんでした。
 あんな速いナイフなのに少しだけ体を横にして避けていました。

「かかりましたねっ! それは囮ですっ!」

 ナゴタさんが避けた動きを見て、もの凄い速さで斬り付けます。


「あっ」

 『これはきっと避けられない』とボクは思いました。


 でも、こういうのはスミカお姉ちゃんに言わせたら
 『フラグ』っというやつなんでしょうか。


 ナゴタさんの体が薄く光ったと思ったら姿が一瞬で消えて

「ぐわァッ!」

 先に斬り付けた筈のクレハンさんが、逆に背中を斬りつけられていたから。


「クレハンさんっ!!」

 ボクは苦しそうに蹲ってしまったクレハンさんに叫びます。


「ガハアァッッ!!」

 ドゴォ!

「ルーギルさんっ!!」


 短い悲鳴の後。今度はルーギルさんが10メートル以上も飛ばされて、家の壁に強く叩きつけられていました。

「うぐぐッ!!」

 それでもルーギルさんは、立ち上がって二つの剣を構えています。
 でももの凄く辛そうに見えました。

「わははっ! やっぱり大した事なかったぞっ! ちょっとスキルを使ったらこれだもんなぁ!!」

「そうね。こっちも少し期待したけど、まだまだだったわ。前よりはかなりマシになったけど。それでもほんの少しだけだったわ」

 そう言ってハンマーを肩に担ぎ直し
 苦しそうな表情のルーギルさんの方へ。

 もう一人はその変わった槍を振り上げて
 蹲っているクレハンさんに向けて歩き出しました。


「それじゃ、止めはさせないから、大ケガでも負ってもらおうかなっ! これで少しは大人しくなると思うんだよなっ!」

「そうね、もうちょっと痛めつけておきましょうか?」

 そう言って持っている武器をその二人に振り下ろします。


「ボクが、そんな事させないっ!!」


 ボクはその二人に向けてスタン効果のある矢を発射します。

「おっとっ!!」
「危ないわねっ!?」

 でも二人には簡単に避けられてしまいました。


「え? この小さい奴も冒険者なのか? 弱そうだなぁ」
「いるのは分かっていたけど弱そうだから無視していたけど」

 そう言いながら「クル」とボクの方に振り向きます。

「ううっ」

「ならワタシたちがその強さをテストしてやろうぜっ! ナゴ姉ちゃん」
「ええそうね。死なない程度に訓練も兼ねて相手してみましょうか」

 そしてボクに近付いてきます。
 そのきれいなお顔を歪めて。
 ボクよりずっと大きな武器を構えて。


『こ、恐いよっ! で、でもボクは、ボクにはっ!』


 ボクはスミカお姉ちゃんから貰った武器を強く握りしめました。
 少しだけ怖くなくなりました。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

「専門職に劣るからいらない」とパーティから追放された万能勇者、教育係として新人と組んだらヤベェ奴らだった。俺を追放した連中は自滅してるもよう

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「近接は戦士に劣って、魔法は魔法使いに劣って、回復は回復術師に劣る勇者とか、居ても邪魔なだけだ」  パーティを組んでBランク冒険者になったアンリ。  彼は世界でも稀有なる才能である、全てのスキルを使う事が出来るユニークスキル「オールラウンダー」の持ち主である。  彼は「オールラウンダー」を持つ者だけがなれる、全てのスキルに適性を持つ「勇者」職についていた。  あらゆるスキルを使いこなしていた彼だが、専門職に劣っているという理由でパーティを追放されてしまう。  元パーティメンバーから装備を奪われ、「アイツはパーティの金を盗んだ」と悪評を流された事により、誰も彼を受け入れてくれなかった。  孤児であるアンリは帰る場所などなく、途方にくれているとギルド職員から新人の教官になる提案をされる。 「誰も組んでくれないなら、新人を育て上げてパーティを組んだ方が良いかもな」  アンリには夢があった。かつて災害で家族を失い、自らも死ぬ寸前の所を助けてくれた冒険者に礼を言うという夢。  しかし助けてくれた冒険者が居る場所は、Sランク冒険者しか踏み入ることが許されない危険な土地。夢を叶えるためにはSランクになる必要があった。  誰もパーティを組んでくれないのなら、多少遠回りになるが、育て上げた新人とパーティを組みSランクを目指そう。  そう思い提案を受け、新人とパーティを組み心機一転を図るアンリ。だが彼の元に来た新人は。  モンスターに追いかけ回されて泣き出すタンク。  拳に攻撃魔法を乗せて戦う殴りマジシャン。  ケガに対して、気合いで治せと無茶振りをする体育会系ヒーラー。  どいつもこいつも一癖も二癖もある問題児に頭を抱えるアンリだが、彼は持ち前の万能っぷりで次々と問題を解決し、仲間たちとSランクを目指してランクを上げていった。  彼が新人教育に頭を抱える一方で、彼を追放したパーティは段々とパーティ崩壊の道を辿ることになる。彼らは気付いていなかった、アンリが近接、遠距離、補助、“それ以外”の全てを1人でこなしてくれていた事に。 ※ 人間、エルフ、獣人等の複数ヒロインのハーレム物です。 ※ 小説家になろうさんでも投稿しております。面白いと感じたらそちらもブクマや評価をしていただけると励みになります。 ※ イラストはどろねみ先生に描いて頂きました。

処理中です...