剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第6蝶 冒険者ギルド騒乱編

ティータイムでの駆け引き戦

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「みんな、凄かったね。いくらアイテムがあったからって、あそこまで圧倒出来るとは私も思わなかったよ。ユーアもルーギルもクレハンも、即席パーティーだったのに本当に驚いたよっ!」

 未だ喜んでいる三人に素直な気持ちを伝える。


「オ、オウッ! ありがとなスミカ嬢ッ! お前にべた褒めされるとなんか調子狂うけどなッ!」

 頭の後ろをガシガシと掻きながら返すルーギル。

「何言ってるの? 私は心からそう思って言ってるんだよ。三人とも本当に見事な戦いだったよっ!」

 若干照れているルーギルを含めて、再度皆に賛辞の言葉を贈る。


「まあ、そのあれだァ、お前が俺たちを絶対に守るって言ってくれただろう? それで、後先考えずに突っ込んで戦えたんだよッ」

「そうですね、アイテムの効果も、もちろん大きかったのですが、それよりもパーティーでのスミカさんの存在そのものが、わたしたちが力を存分に奮える事が出来た、その結果だとわたしは思います」

「うんっ! スミカお姉ちゃんがいると安心するよねっ! なんか何でもできそうだもんっ!」

「ふふっ、ありがとね。みんな」

 三人の、私へ向けられた賛辞に素直に嬉しく思った。 
 こういうのもパーティープレイの醍醐味だろう。
 ソロでは絶対に味わえない事だ。


「はいそれじゃ、みんなの戦いを労って、今夜は私がご飯をごちそうするから楽しみにしててね」

 笑顔のままの三人にそう告げる。

 その言葉に、いち早く反応したのはもちろん――――

「スミカお姉ちゃんっ! 約束のお肉ですよねっ! お肉パーティーですよねっ! やったぁぁぁっっっ――――!!」

 お肉大好きボクっ娘少女のユーアだ。


「オウッ! 悪い、嬢ちゃん。馳走っになるぜッ! てか、お前料理とか出来んのかァ?」

 疑惑の眼差しで私を見るルーギル。


「はぁ? 何言ってんの。味付けはユーアにやってもらうよ。ね? ユーア」
「うんっ! スミカお姉ちゃんボクに任せてっ!」

 両手を挙げて元気に返答する。
 そんな私とユーアのやり取りに、

「それって、ご馳走するって言うのかァ?」

 なんて、野暮なことを言い出す。

『はぁ~』
 いちいち細かいな、もう。


「なるに決まってるじゃない。私が材料を出すんだよ?」

 そんなKYなルーギルに抗議する。

「んんっ、なんかァ合ってるような、違ってるようなァ?…………」
『むかっ!』

 私の返答に首を捻って、考え込むルーギル。
 その態度にちょっとだけムカつく。 


「とりあえず、喉が渇いたでしょう? これ飲んでから動こうよ」
「ん?」

 三人に手渡しでドリンクレーションを渡していく。


『いちいちうるさいから、これで黙らせてやる。くふふっ』
 なんて、心の中で企んでみる。


「ありがとう、スミカお姉ちゃんっ!」
「ありがとうございます。毎回こんな高価なものを」

「ジ~~~~」

 ユーアとクレハンは素直に喜んで受け取っていたが、肝心のルーギルだけは顎に手を当て、用心深く眺めている。


 そしてあろうことか――


「ユーア、俺のと交換しようぜッ!」
「? いいですよっ!」

 なぜかユーアと交換する。

 そんな二人のやり取りを見て私は焦る。


「ちょ、ちょっとルーギルっ! なんでわざわざ交換するの? 意地汚いよ小さい子供の物を欲しがるなんてサイテーだよっ!」

 そんなルーギルの行動に文句を言うが、

「ははッ! お前がいつも俺だけに不味いの渡すから念のためだッ!」

 半ば無理やり交換して、ユーアとクレハンを繁々と見ている。


「今回のはちょっと酸っぱくて美味しいねっ!」
「わたしのは、爽やかな風味で、これも美味しいですっ!」
「…………?」

 ユーアとクレハンは笑顔でそれぞれに感想を言っていた。

 そんな二人を見てルーギルは「あれ?」て顔をしながら、安心したようにゴクゴクと喉を鳴らし飲み込んでいく。


「よしっ!」
 かかったねっ!


「マ、マズイィッ~! って言うか、生臭えぇッ! なんだこれはッ!」

 ペッペッっとすぐさま吐き出し、顔をしかめる。


「ちょっとっ! 汚いしもったいないよルーギルっ! 一応ユーアの前なんだから気を付けてよねっ! 教育にも悪いし。真似したらどうするのっ!」

 そんなルーギルに抗議する。

「ってか、おま、俺の考え読んでやがったなァッ!」
「ねえ、スミカお姉ちゃん。ボクは真似しないよ? 本当だよっ!」
「えっ?」

 ルーギルとのやり取りを聞いていたユーアが近寄ってそう訴える。
 その目はちょっとだけ潤んでいた。


 そんなユーアの頭を撫でながら、

「よしよし、そうだよね。ユーアは、あんな大人になんてならないものね」
「うん、ボクは残さずなんでも、食べるもんっ!」

 「そうだよね~」なんてユーアとじゃれつく。
 確かにユーアは良い子だから、吐き出す真似なんてしないし。


「お、お前らなァ…… で、結局これは何なんだァ?」
「え? イカ墨味だよ」
「はぁっ? イカ墨って…… あのイカの吐く奴かァッ!?」
「うん、多分それで大丈夫。と言うかイカを知ってるんだね?」

 ここら辺りは、海なんて見えないから知らないもんだと思ってた。


「俺の場合は冒険者時代に港町にも行ってるからよォ。そん時にだな」
「そうですね、わたしも数少ないですが、行ったことあります。そもそもそんなに遠くないですしね」

 クレハンも会話に加わる。

「スミカお姉ちゃん。お魚とか街の市場にも売っていましたよ? 屋台にもあったし」
「え、そうだっけ? んん――――」

 ユーアにそう言われて少し屋台の風景を思い出す。

「あ――っ! 確かにあったねっ!」

 手をポンと叩いて思い出す。


 屋台の並びに、串に刺した焼き魚とか、貝の壺焼きがあったのを思い出した。
 因みに魚介類は私のアイテムボックスには入っていない。


「ねえ。ユーアはお魚とかも好きなの?」

 ユーアが欲しいならば購入したいと思って、そう聞いてみる。

「え、もちろん、お魚『も』好きだ…… よっ?」
『――――――ん?』

 そう返事をするユーアに、私はデジャブを覚えた。


『ああ~、これって……』

 初めてユーアと買い物に行った時にもあったことだ。
 あの時は、私がユーアに『一番好きな食べ物は?』て聞いたんだっけ。

 そしたらあの時のユーアは、

 『え、そ、そうですね、果物が好きです…… よ?』

 お肉が一番なのを恥ずかしくて隠していたんだっけ。
 何気に女の子してたんだよね。


 そんな事を思い出しながら、またいたずら心が芽生えてしまう。


「へえ~ ユーアはお魚『も』好きなんだね。 でも一番好きなのは、な・あ・に~~っ! お姉ちゃんに教えてっ?」

 ユーアにまた聞いてみる。
 あの時の暴露した時のユーアが可愛かったからねっ!


「ボクはもちろん、お魚『も』好きだけど――――」
「うん、うん」

 よしよし、引っ掛かった。引っ掛かったっ!
 その続きを言ってごらん?


「一番好きなのは、ヒ…… あっ! むぐぅ~!」

 そこまで言い掛けて、慌てて口を押える。

「え?」

 ひ?
 『ひ』って何?


「スミカお姉ちゃんっ! またボクに言わせようとしたでしょうっ!」

 なんて腰に手を当てて頬を膨らませている。
 どうやらいたずらがバレてしまったようだ。

「う、うん、ごめんね。ちょっとからかってみただけだから」

 ちょっと動揺を抑えながら、ぷんぷんモードのユーアに謝る。

「もぉ~っ! スミカお姉ちゃん。ボクは何でも好きなんだからねっ!」
「………………」

 遂には「ぷいっ」てそっぽを向いてしまう。



「オ――イッ! 明るいうちにそろそろ野営できるとこ探そうぜッ!」

 ルーギルとクレハンは街の外に向けて歩いていく。

「うん、わかった。私たちも行くよ」

 そう返しながら、私は非常に思い悩んでいた。


『う~ん……』
 ユーアが最後に言い掛けてた『ひ』て一体何?

 なにかのお肉の名前なの?
 それとも部位の名前だったの?


『その事を聞いてみたいけど、聞いたらまたヘソを曲げられそう……』

 そんな予想を反したユーアの返答に、
 一人モヤモヤしながら小さい後ろ姿を眺める私。


『あ、そういえば、巨大オークの腕輪回収するのも忘れてたよ』

 爆破で多分埋まっているだろう腕輪を思い出しながら、後を付いて行く。


 残るはトロール討伐だけだ。


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