67 / 586
第6蝶 冒険者ギルド騒乱編
ティータイムでの駆け引き戦
しおりを挟む「みんな、凄かったね。いくらアイテムがあったからって、あそこまで圧倒出来るとは私も思わなかったよ。ユーアもルーギルもクレハンも、即席パーティーだったのに本当に驚いたよっ!」
未だ喜んでいる三人に素直な気持ちを伝える。
「オ、オウッ! ありがとなスミカ嬢ッ! お前にべた褒めされるとなんか調子狂うけどなッ!」
頭の後ろをガシガシと掻きながら返すルーギル。
「何言ってるの? 私は心からそう思って言ってるんだよ。三人とも本当に見事な戦いだったよっ!」
若干照れているルーギルを含めて、再度皆に賛辞の言葉を贈る。
「まあ、そのあれだァ、お前が俺たちを絶対に守るって言ってくれただろう? それで、後先考えずに突っ込んで戦えたんだよッ」
「そうですね、アイテムの効果も、もちろん大きかったのですが、それよりもパーティーでのスミカさんの存在そのものが、わたしたちが力を存分に奮える事が出来た、その結果だとわたしは思います」
「うんっ! スミカお姉ちゃんがいると安心するよねっ! なんか何でもできそうだもんっ!」
「ふふっ、ありがとね。みんな」
三人の、私へ向けられた賛辞に素直に嬉しく思った。
こういうのもパーティープレイの醍醐味だろう。
ソロでは絶対に味わえない事だ。
「はいそれじゃ、みんなの戦いを労って、今夜は私がご飯をごちそうするから楽しみにしててね」
笑顔のままの三人にそう告げる。
その言葉に、いち早く反応したのはもちろん――――
「スミカお姉ちゃんっ! 約束のお肉ですよねっ! お肉パーティーですよねっ! やったぁぁぁっっっ――――!!」
お肉大好きボクっ娘少女のユーアだ。
「オウッ! 悪い、嬢ちゃん。馳走っになるぜッ! てか、お前料理とか出来んのかァ?」
疑惑の眼差しで私を見るルーギル。
「はぁ? 何言ってんの。味付けはユーアにやってもらうよ。ね? ユーア」
「うんっ! スミカお姉ちゃんボクに任せてっ!」
両手を挙げて元気に返答する。
そんな私とユーアのやり取りに、
「それって、ご馳走するって言うのかァ?」
なんて、野暮なことを言い出す。
『はぁ~』
いちいち細かいな、もう。
「なるに決まってるじゃない。私が材料を出すんだよ?」
そんなKYなルーギルに抗議する。
「んんっ、なんかァ合ってるような、違ってるようなァ?…………」
『むかっ!』
私の返答に首を捻って、考え込むルーギル。
その態度にちょっとだけムカつく。
「とりあえず、喉が渇いたでしょう? これ飲んでから動こうよ」
「ん?」
三人に手渡しでドリンクレーションを渡していく。
『いちいちうるさいから、これで黙らせてやる。くふふっ』
なんて、心の中で企んでみる。
「ありがとう、スミカお姉ちゃんっ!」
「ありがとうございます。毎回こんな高価なものを」
「ジ~~~~」
ユーアとクレハンは素直に喜んで受け取っていたが、肝心のルーギルだけは顎に手を当て、用心深く眺めている。
そしてあろうことか――
「ユーア、俺のと交換しようぜッ!」
「? いいですよっ!」
なぜかユーアと交換する。
そんな二人のやり取りを見て私は焦る。
「ちょ、ちょっとルーギルっ! なんでわざわざ交換するの? 意地汚いよ小さい子供の物を欲しがるなんてサイテーだよっ!」
そんなルーギルの行動に文句を言うが、
「ははッ! お前がいつも俺だけに不味いの渡すから念のためだッ!」
半ば無理やり交換して、ユーアとクレハンを繁々と見ている。
「今回のはちょっと酸っぱくて美味しいねっ!」
「わたしのは、爽やかな風味で、これも美味しいですっ!」
「…………?」
ユーアとクレハンは笑顔でそれぞれに感想を言っていた。
そんな二人を見てルーギルは「あれ?」て顔をしながら、安心したようにゴクゴクと喉を鳴らし飲み込んでいく。
「よしっ!」
かかったねっ!
「マ、マズイィッ~! って言うか、生臭えぇッ! なんだこれはッ!」
ペッペッっとすぐさま吐き出し、顔をしかめる。
「ちょっとっ! 汚いしもったいないよルーギルっ! 一応ユーアの前なんだから気を付けてよねっ! 教育にも悪いし。真似したらどうするのっ!」
そんなルーギルに抗議する。
「ってか、おま、俺の考え読んでやがったなァッ!」
「ねえ、スミカお姉ちゃん。ボクは真似しないよ? 本当だよっ!」
「えっ?」
ルーギルとのやり取りを聞いていたユーアが近寄ってそう訴える。
その目はちょっとだけ潤んでいた。
そんなユーアの頭を撫でながら、
「よしよし、そうだよね。ユーアは、あんな大人になんてならないものね」
「うん、ボクは残さずなんでも、食べるもんっ!」
「そうだよね~」なんてユーアとじゃれつく。
確かにユーアは良い子だから、吐き出す真似なんてしないし。
「お、お前らなァ…… で、結局これは何なんだァ?」
「え? イカ墨味だよ」
「はぁっ? イカ墨って…… あのイカの吐く奴かァッ!?」
「うん、多分それで大丈夫。と言うかイカを知ってるんだね?」
ここら辺りは、海なんて見えないから知らないもんだと思ってた。
「俺の場合は冒険者時代に港町にも行ってるからよォ。そん時にだな」
「そうですね、わたしも数少ないですが、行ったことあります。そもそもそんなに遠くないですしね」
クレハンも会話に加わる。
「スミカお姉ちゃん。お魚とか街の市場にも売っていましたよ? 屋台にもあったし」
「え、そうだっけ? んん――――」
ユーアにそう言われて少し屋台の風景を思い出す。
「あ――っ! 確かにあったねっ!」
手をポンと叩いて思い出す。
屋台の並びに、串に刺した焼き魚とか、貝の壺焼きがあったのを思い出した。
因みに魚介類は私のアイテムボックスには入っていない。
「ねえ。ユーアはお魚とかも好きなの?」
ユーアが欲しいならば購入したいと思って、そう聞いてみる。
「え、もちろん、お魚『も』好きだ…… よっ?」
『――――――ん?』
そう返事をするユーアに、私はデジャブを覚えた。
『ああ~、これって……』
初めてユーアと買い物に行った時にもあったことだ。
あの時は、私がユーアに『一番好きな食べ物は?』て聞いたんだっけ。
そしたらあの時のユーアは、
『え、そ、そうですね、果物が好きです…… よ?』
お肉が一番なのを恥ずかしくて隠していたんだっけ。
何気に女の子してたんだよね。
そんな事を思い出しながら、またいたずら心が芽生えてしまう。
「へえ~ ユーアはお魚『も』好きなんだね。 でも一番好きなのは、な・あ・に~~っ! お姉ちゃんに教えてっ?」
ユーアにまた聞いてみる。
あの時の暴露した時のユーアが可愛かったからねっ!
「ボクはもちろん、お魚『も』好きだけど――――」
「うん、うん」
よしよし、引っ掛かった。引っ掛かったっ!
その続きを言ってごらん?
「一番好きなのは、ヒ…… あっ! むぐぅ~!」
そこまで言い掛けて、慌てて口を押える。
「え?」
ひ?
『ひ』って何?
「スミカお姉ちゃんっ! またボクに言わせようとしたでしょうっ!」
なんて腰に手を当てて頬を膨らませている。
どうやらいたずらがバレてしまったようだ。
「う、うん、ごめんね。ちょっとからかってみただけだから」
ちょっと動揺を抑えながら、ぷんぷんモードのユーアに謝る。
「もぉ~っ! スミカお姉ちゃん。ボクは何でも好きなんだからねっ!」
「………………」
遂には「ぷいっ」てそっぽを向いてしまう。
「オ――イッ! 明るいうちにそろそろ野営できるとこ探そうぜッ!」
ルーギルとクレハンは街の外に向けて歩いていく。
「うん、わかった。私たちも行くよ」
そう返しながら、私は非常に思い悩んでいた。
『う~ん……』
ユーアが最後に言い掛けてた『ひ』て一体何?
なにかのお肉の名前なの?
それとも部位の名前だったの?
『その事を聞いてみたいけど、聞いたらまたヘソを曲げられそう……』
そんな予想を反したユーアの返答に、
一人モヤモヤしながら小さい後ろ姿を眺める私。
『あ、そういえば、巨大オークの腕輪回収するのも忘れてたよ』
爆破で多分埋まっているだろう腕輪を思い出しながら、後を付いて行く。
残るはトロール討伐だけだ。
0
お気に入りに追加
267
あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

前世の記憶さん。こんにちは。
満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。
周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。
主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。
恋愛は当分先に入れる予定です。
主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです!
小説になろう様にも掲載しています。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中
四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

公国の後継者として有望視されていたが無能者と烙印を押され、追放されたが、とんでもない隠れスキルで成り上がっていく。公国に戻る?いやだね!
秋田ノ介
ファンタジー
主人公のロスティは公国家の次男として生まれ、品行方正、学問や剣術が優秀で、非の打ち所がなく、後継者となることを有望視されていた。
『スキル無し』……それによりロスティは無能者としての烙印を押され、後継者どころか公国から追放されることとなった。ロスティはなんとかなけなしの金でスキルを買うのだが、ゴミスキルと呼ばれるものだった。何の役にも立たないスキルだったが、ロスティのとんでもない隠れスキルでゴミスキルが成長し、レアスキル級に大化けしてしまう。
ロスティは次々とスキルを替えては成長させ、より凄いスキルを手にしていき、徐々に成り上がっていく。一方、ロスティを追放した公国は衰退を始めた。成り上がったロスティを呼び戻そうとするが……絶対にお断りだ!!!!
小説家になろうにも掲載しています。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる