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第6蝶 冒険者ギルド騒乱編

蝶の少女の誓いと挫折と懺悔?

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 戦闘前に決めたマイルール。

 『


 を念頭に置いて、巨大オークの透明壁のスキルを解除する。

 ユーアに透明壁のスキルは2個使っている。
 なので今の私の手持ちは『  』機。

 この残った『  』機と、私自身の培ってきたプレイヤースキルで、全員を完璧に守り切ってこの巨大オークを全員が無傷で封殺してやる。


「よし、解除したよっ! みんな警戒してっ!!」

 私はすぐさま、3機を円の形にして展開する。
 まずは防御して力量を図ろう。


 『ブグォォォォォォッッッッッ!!!!』


 巨大オークは、やっと解放された喜びなのか、それとも怒りなのか、空気がビリビリと震えるような雄叫びを私たちに浴びせる。

 まあ、絶対に後者だろうけど。


 その瞬間。私の後方より――

「う、う、なんだこれはァァッ!!!!」
「うぐぐぐっ!!」
「ク、クレハンさんっ!!」

 苦しみと痛み、そして悲鳴を上げる声に、私は即座に反応して振り返る。


 私は一番近くの苦しそうに呻いているルーギルを見る。そして口を押えているユーア。更に持ち場にうずくまって、肩を抑えているクレハンを見つける。

「ちょ、ちょっとどうしたの、みんなっ! なにかに攻撃されたのっ!?」

 そんな三人の様子に、私は慌てて声を掛ける。


 私には何も影響なかったけど見えない何かの攻撃があった!?
 あの叫び声に何かの攻撃が含まれていたっ!?

 私はみんなを透明壁で覆ってその様子を見る。

 その際にアイテムボックスより『リカバリーポーションL』を取り出しておく。
 死なない限り何があっても大丈夫なように。


「じょ、嬢ちゃんッ!」
「ど、どうしたのっ! ルーギルっ!」

「スミカお姉ちゃんっ!」
「ユーアっ!」

 は、よく見たら空中の透明壁で大丈夫そう。

「ス、スミカさんっ!」
「ク、クレハンっ!」

「ふ、二人とも一体どうしたのっ!?」

 体を抱いて苦しんでいるルーギル。そして肩を抑えて蹲っているクレハンに、悲鳴にも似た声でそう問いかける。

 絶対に守るって決めていたのに。

 なんだって開始早々こんな事に――――


「じょ、嬢ちゃんに貰った薬が、か、体がァ、チカラがァ、抑えきれねえッ!」
「へっ!?」
「ス、スミカさんに借りた武器を使ったら、か、肩が外れましたぁ!」
「はぁっ!?」


 えええええっ――――!!


『そ、それって…………』

 ルーギルは「ブーストアップα」が予想以上に効きすぎた?
 クレハンは「スペツナズ・ナイフ∞」の射出のリフト反動で肩が外れた?


 『誰一人かすり傷さえ追わずに戦いを終わらせる』


 その光景は私が決めたそんな『マイルール』が、
 敵と戦ってもいないのに一瞬で破られた瞬間だった。


 これって私が悪いのぉ!?


「………………終わった」

 そう言って私は力なく地面に膝をつく。


『ブグォォォォォォッッッッッ!!!!』

 ガンッガンガンガンッ!


 何やら自由になった巨大オークが、私たちを覆っている透明壁を攻撃しているが、そんなものは気にならない。

 この世界で、ある意味初陣に近いパーティープレイは、私がフラグを立てたせいで、最悪の始まりとなってしまった。

 私は守る事が出来なかったのだ。

『うううっ…………』

 二人のメンバーを。


 そんな下を向き、落ち込む私に…………


 『スミカお姉ちゃんっ! 立ってっ! 立ち上がって戦ってっ! ボクがまだいるからっ! ルーギルさんたちの為にも戦おうよっ!』

「えっ?」

 肩を落として地面ににうずくまって『の』の字を書いている私に、空中から私を奮い立たせようとするユーアの力強い声援が聞こえる。


 だけどユーア、私は――――


「だってユーア。私は誓ったんだよっ! メンバー全員が無傷で戦闘を終わらせられるように私が守るってっ! そ、それなのに、どうしたらっ! 二人はもう帰って…… ごめん二人ともっ!」

 縋るようにユーアを見上げて、私の想いを伝えそして懺悔する。

 (ってオイィッ!俺らまだ――――)
 (ええっ!わたしまだ戦え――――)

『スミカお姉ちゃん。この世に絶対はないんだよっ! それよりも今はっ』

 そう言ってユーアは立ち上がる。
 そしてその小さい拳を握り一歩片足を前に出す。

『二人の仇を討つのが、今のボクたちの使命なんだよっ!』

「えっ? ユーア?」

 そう力強く言い切った。
 その姿の後ろには、眩しいほどの光が射していた。

 そう。
 その姿まるで――――

「わ、わかったよ使ユーアさまっ! 私はまだ戦えるっ! そして二人の為にっ!」

 私は地面に書いていたたくさんの『の』の字を消す。

 そして立ち上がり未だに透明壁を殴っている巨大オークを睨みつける。
 その憎い仇を倒すために。

「そこで待ってろっ! 巨大オークっ! 今私がお前を滅殺してやるっ! それを二人の手向けにするんだっ! それでこの戦いはお終いだっ!!」

 そう。
 私の手で全てを終わらせるんだ。


「ってオイッ! さっきから何をブツブツ言ってんだァ? 嬢ちゃんよォ」
「スミカさん、どうしたんですか? 突然しゃがみ込んで地面に何か書いてましたが」
「ねえ、スミカお姉ちゃん。あのオークもの凄く怒ってるみたいだよ?」

「…………ああ。ごめんね。ちょっと落ち込んでいたんだ」

 私は衣服に付いた汚れを払って立ち上がり三人を見る。

 因みに汚れは付いていない。
 装備のお陰でいつでも新品同様だ。

 さっきのあれは、現実逃避した私が見た幻覚だろう。


「ま、まあ、それはいいんだがよォ。俺たちが死んだみたいに言ってなかったかァ?」
「そ、そうですよね、なんかそう聞こえましたよ」
「ボクなんか、天使になってたよぉ」

「………………」

 なんか三人の視線が痛い。

 私はそんな三人の視線から逃げるように、

「そ、そんな事はいいから、早くアイツを倒しちゃおうッ!………… あれ? ルーギルはもう大丈夫なの? それとクレハンも?」

 早口で捲し立てて二人の様子を確認する。

「ああ。 なんか少したったら落ち着いたぜッ。それにしてもスゲエなァ! この薬はよォ!」

「ええ。わたしはスミカさんから貰った回復薬を飲みましたから。次からナイフを射出する時は、もう少しきちんと構える事にしますよ」

「そ、そう。それなら良かった」

 よしっ! これなら二人とも大丈夫だ。


『ブグォォォォォォッッッッッ!!!!!!』

 ガンッガンガンガンッ!


 そんな私たちの近くでは、巨大オークが透明壁を叩き、その存在をアピールしてくる。
 まぁ、こんな寸劇を目の前で見せられたら、誰だって我慢できないもんね。


「それじゃ、今度こそ奴と戦うから気合入れてねっ! 解除するよっ!」

「オウッ!」
「はい」
「うんっ!」

「なんだけど、その前に――――」

 私は透明壁をしつこく殴打する巨大オークを睨む。


「そこにいると邪魔だからぶっ飛ばすっ! あといい加減しつこいっ!」

 そう言い放ち、スキルのレベルの上がった透明壁をオークに叩きつける。

「ふんっ!」

 ドッゴォ――――ンッッ!!!!

『グゴァッ!!』

 一撃をまともに喰らった巨大オークは、短い悲鳴を上げて真横に飛んでいく。 


 ドガンッ ドガンッ!
 
 と廃屋であった、家1軒分の壁をぶち抜き。


 ゴガンッゴガンッ!

 更に2軒目もぶち抜き。


 ドゴォォ――――ンッ!!


『ブグォ――――ッ!?』


 真横に吹き飛んだその巨体は、3軒目の壁の激突でその動きを止めていた。


 それを間近で見ていた三人は、

「なあッ!!」
「はぁっ?」
「えええ――――っ!!」

 その光景を目の当たりにし、驚愕の表情で、オークの飛んでいった方向を目で追い駆ける。


「よしっ!」

 私はその威力に、小さくガッツポーズをする。

 予想してたように私のスキルは大幅にパワーアップしたようだ。
 なんせ今回はレベルアップにかなり苦労したからねっ!

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