剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第6蝶 冒険者ギルド騒乱編

SS蝶の少女は見た!ボクっ娘少女の悩み?

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 前前々回に続いて、今度は澄香視点のSSになります。
 何気にこの前の続きになります。

 次回からは本編に戻ります。



「ねえ、スミカお姉ちゃん、ボクもしたいんですが、いいですか?」


 脱衣所で、いつもの様にユーアの服を、頭からスポッと脱がした後、ユーアは私にそう言ってきた。


「? したいって何を?」

 すっぽんぽんになったユーアを見ながら、そう聞き返す。

「えーとね、スミカお姉ちゃんがお風呂から上がった後、お布団でしている運動なんですけど」

「えっ!?」

 お風呂から上がって、私がやっている運動!?
 それって、もしかして――――


「ボク、最近、んです」

 そう言ってユーアは、腕を頭の上に上げ、鏡に自分を映し、クルっと回ったりして、しきりに鏡に反射する体を見ている。
 それはまるで、私が一人の時にやってる事と同じように……


「ねえ、いいでしょう? スミカお姉ちゃんのやってる運動しても」

「っ!!」

 間違いないっ! これって、
 私が毎日やってる『バス〇アップエクササイズ』だよねっ!

 
『ちょっと待ってっ! やっぱりユーアも気にしているって事!? 女の子になりつつあるって事! あのノーパン疑惑のあるユーアが!?』

 ユーアの体を見てみる。

『う~ん』

 以前よりも健康的に見えるし、背もなんとなく大きくなったような?
 気がしないでもない。

 だがしかし、私のアバターの体は、ユーアのように成長するかわからない。

 私の年齢は15歳設定だけど、体はある理由で小さい設定にしてある。
 当然、現実世界では持て余していた胸(自称)も、この世界では小さくなっている。

 それでも私は夢見て、希望を捨てずに日々頑張っているのだ。
 成長するユーアに抜かされないように。


 何度か、ユーアはエクササイズの真似をしていた。


 でも私はそれを止めてきた。
 だって、年下の小さい妹に抜かされたら、姉の威厳やら、私の優位性がなくなってしまう。


 だから今回も私は――――


「ユ、ユーアにはまだ早いってっ! もうちょっとたってからにしよ?」
 
 冷静に対処し、

「え――っ! だってスミカお姉ちゃんっ!!」

「わ、わがままばかり言ってないで、風邪ひくから早くお風呂に入りなさいっ!」

 そうお母さんのように言って、うまくごまかす。

「は~いっ!」


 ふぅ、危ない危ないっ!
 今回もなんとか切り抜けたようだ。



※※


 その次の日の朝。


 今日もユーアに起こしてもらって、私は目が覚めた。
 私は朝はあんまり強くない。っというか慣れてないだけなんだけど。

「んん、おはよう、ユーア。どうしたの?」

 そう挨拶をして、ユーアをみると、自分の着ているTシャツ風のパジャマの上半身をつまんで引っ張っていた。

「う――、スミカお姉ちゃん。ボクやっぱりしたいです」

 そう言うユーアは、今度は小さい手で胸のあたりをさわさわと触っている。

『ええっ!』

 し、したいって何を? も、もしかしてブラ〇ャーなの?
 胸のあたりを触って、気になるって事はやっぱりブラジ〇ーだよねっ!
 
 『バス〇アップエクササイズ』に続いて、早すぎない!?まだ昨夜の話だよ!
 そ、それに、私だってなのにっ…………

 も、もうダメかも―――― これ以上ごまかすのは。


 ユーアもやっぱり女の子なんだ。ボクって言ってるけど。

 姉の威厳なんて、つまんないこと気にしないで、年上として、女としてユーアを導いてやろう。

 そう私は覚悟を決める。
 ユーアを立派な女性にする為に。


「ユーア、わかったよ。ニスマジのところに買いに行こう。きっと、私とユーアに合うサイズもある筈だから」

 私は優しくそうユーアに伝える。


「え、なんで、ニスマジさんのところに行くんですか? サイズって?」
「だって、ニスマジのとこならありそうじゃない? 大丈夫。私がちゃんと選んであげるからね」

「選ぶって何をですか? スミカお姉ちゃん」
「へ?」

 あれ? なんか噛み合わないな話が。

「ね、ねえ、ユーア。ユーアはブラ〇ャーが欲しいのよね? 気になるから」
「ぶらじゃあってなんですか? 食べ物ですか?」
「え? 食べ物?」

 もしかして、この世界にはないの? 
 ブラ〇ャーって。


「ユ、ユーア、え~と、あれだよ『胸を隠す装備』!」

 何言ってんだ私っ!
 それもう下着じゃないじゃんっ!

「え、そんなのいらないです。どうせだったら少し大きいパジャマが欲しいです」
「な、なんで!?」

 意味がわからない!

「だって――――」

 そう言いながら、ユーアはまたパジャマをつまんで引っ張る。

「――ちょっと、きつくなった気がするんです」
「…………………え?」

 はぁ!?
 それって、ただ単に…………

「………………ユーア、ちょっと太ったもんね」

 そう、私と会う前のユーアは、かなり痩せすぎだったけど、最近は少し肌のツヤも出てきたし、体全体もふっくらしてきた。

 それでもまだ痩せている方だと思う。
 体の線は一直線だけど。

 きっと大好きなお肉とレーションを食べていた効果だろう。
 体型が変わってきたのは。


「ちょっと、スミカお姉ちゃん! ボク気にしてたから、スミカお姉ちゃんの運動したかったんだよっ! 鍛えて、少しでもお肉を…………」

「は?」

 えっ!? 別に私はダイエットの為じゃなかったよっ!

 痩せてどうするのこれ以上っよっ!!

 そんな勘違いをしているユーアに、

「大丈夫だよユーア。それはユーアがきちんと成長してるせいだから、当たり前なんだよ」

 だから、からね。と付け加える。

「そうなの? 良かったぁっ!」

 ユーアは、そんな私の言葉に安心したようだった。

『それにしても…………』

 ユーアは自分を女の子として、自覚しているのか、いないのか、
 私はそれを、喜んでいいのか、悪いのか。


 なんとも複雑すぎる心境になる澄香でした。




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