剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第5蝶 大豆少女と大豆工房◎出張所の救援編

さらに増える頼もしい味方たち

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「あらぁ、随分と賑わってるじゃないのぉ――っ!」


 人混みの中から、見知った全身黒の革タイツのムキムキ男が声を掛けきた。

「ニスマジ、あなたも結構な人数集めてくれたんだにゃ!」

 まぁ、ガチムキのオネェ軍団だけど。

「じぃ~~」
「にゃっ!?」

 ギュッ

 ニスマジの視線から隠す様に、とっさに二人を抱き寄せる。
 いつの間にか無表情で、こちらをガン見していたからだ。


「…………にゃ、にゃによっ!」
「…………いいわぁっ!!」
「っ!?」
「いいじゃないのぉ~、その衣装っ! 最っ高だわぁっ! 三人とも凄く素敵じゃないのぉー! よく触、じゃなくて、見たいからわたしもそっち手伝っていいでしょっ――――!!」


『っ!?』
「きゃっ!」

 う、うわっ――っ!!

 私たち三人を見る目が血走って涎まで出てるよこの人。
 完全にロックオンされてるよね、私たちっ!

 ユーアは平気そうだけど、メルウは短い悲鳴の後、腕の中で「ブルブル」震えている。
 そういう私も鳥肌がたっていた。

 こ、怖すぎる。


「ニ、ニスマジは、悪いんにゃけど、カジカさんと、接客と販売の方を、手伝ってくれるかにゃ!」

 そう。
 冒険者たちと、ニスマジが連れてきた人らの影響で、カジカさんも手が回らなくなっている。そちらにも人手が必要だ。
 決して気持ち悪いとか、近くにいて欲しくないとか、そんな理由などない。


「んーもう、わかったわよぉ~、。それじゃ、わたしは接客の方をみてくるわ。後でまたくるからねぇ~」

「う、うん、よろしくねっ!」

 よし、これで変○は去った。

 そうは言ってもニスマジも立派な戦力になっている。
 そして意外と中身は常識人だったりする。
 だから無下にもできない。


「ふぅ、ニスマジは見た目あれだけど、任せても大丈夫かな? それよりも助っ人たちはうまくやってるかな?」

 私は一息吐き出して、状況把握する為、周りの様子を見てみる。 


※※


「お、なんだ、この味噌って奴で焼いた肉、焼き具合もそうだか味噌の味と焦げも相まって、香ばしくてうまいじゃねえか!?」

「この、味噌肉野菜炒めも野菜の甘味と合わさってうまいっ!」

 味噌料理に舌鼓を打ち、感嘆の声を上げる冒険者の二人。

 そこに、

「お前たちは、味噌が腐ってると思って口にしなかったらしいが、それは大きな間違いなんだぞ」

 冒険者二人の感想を聞いて、口を挟む肉担当のログマさん。

「そうよ、わたしたちもルーギルやニスマジ達と冒険者時代に何度も口にしているのよ。体に悪いわけないでしょ?」

 近くにいたカジカさんもフォローを入れる。

「ええっ! ログマさんとカジカさんは、昔ルーギルギルド長と組んでいたんですか!?」

 それを聞いた冒険者の男は、上ずった声で反応する。

「まあな、昔の話だがルーギルも俺たちも大豆の食品は気に入っている。だから安心して食べろ」
「そうよ、あなた達もルーギルのいう事なら信じられるでしょう?」

「は、はいっ! ギルド長も食べた事があるなら大丈夫ですねっ!」

 どうやら、トロノ精肉店の二人は問題なさそうだ。




 こちらは味噌汁担当の店主のマズナさん。
 そして近くにいたニスマジ班。


「あら、このお豆腐も、サッパリして美味しいわぁ! それと、このタレもいいわねぇ!」
「味噌のスープも、優しい味でおいしいかもぉ!」

 ガチムキオネェ軍団が、マズナさんに向かって感嘆の声を上げる。

「おうっ! 俺の作った豆腐も味噌も、褒めてくれてありがとよあんた達っ! あと、豆腐にかかってるタレは醤油ってんだっ! それも大豆からできてるんだぜっ!」

 二人の会話を聞いていたマズナさんは、すぐさま注釈を入れる。

 続いてニスマジも、

「そうよぉー、あんたたち。なんか勘違いして食べてなかったみたいだけど、わたしも好きなのよ大豆を使った食べ物は。美容にも健康にもいいしねぇ」

 畳み込むように、追加アピールする。

「ええっ! 美容にも健康にもいいなんてぇしかも美味しいしぃっ!」
「ねぇっ! みんな聞いたぁ――! ニスマジさんのお墨付きよぉ!」
「ソウナノ! あのニスマジさんが言うなら、アンシンダネッ!」

 そして、ユーアが声を掛けて集まった、おじちゃん達冒険者30人。
 更にニスマジが連れてきたガチムキのオネェ軍団20人が加わって、どの大豆料理にも舌鼓を打ち、その味を絶賛していく。

 なんか微妙に説明口調で演技っぽい人もいた気もするが、ニスマジに頼まれたのだろう。

 だがそんな大根役者の演技でも、人は多く集まってきている。


「おい、なんだあれ! ネコの格好の少女たちが宙に浮いてるぞっ!?」
「はぁ? 何言ってんだ、おま――へ? 本当だっ!?」
「…………か、可愛い…………ハァハァ」
「大豆だって? 面白そうだからちょっと行ってみようぜっ!」

 こちらは街の男性陣。

「見てっ! あの子供たち空中を歩いてるわよっ!?」
「はぁ? 何言ってんの、あな――は? 本当だっ!?」
「…………か、飼いたい…………ハァハァ」
「大豆? 何かしら面白そうだから行ってみようよ」

 こちらは街の奥さま方。

「うん」
 私たち三人の空中宣伝も、かなり目立っていい感じになっている。

 まあ、キャストもいいからねっ。
 なんか嫌な視線も感じたけど。


「おーい! この味噌を買いたいんだか誰かいないのか―っ!」
「私は、豆腐と醤油が欲しいんだけど、どこで払えばいいの?」
「俺は、一通り買うぞ――っ!」

 そしてその影響で購入者も一気に増えてくる。

 これじゃ販売する人数も足りなくなる。
 下にいる応援の人たちは、絶えず何かの対応に追われている。

 色々な結果が重なって、みんなもいきなり忙しくなる。


「お――い、スミカさんっ! もう持ってきてたうちの商品が足らなくなりそうなんだっ! 俺が取りに行ってもいいかっ?」

 人ごみに揉みくちゃにされながら、マズナさんから声が上がる。

「スミカ、こっちも肉とか野菜が諸々足りなくなっている。どうする?」

 間髪入れずログマさんからも。


「う――、ログマさん、材料は私が持っているから直ぐに行くにゃ! マズにゃさんの方は、私とメルウが取りに行ってマジックバッグに入れてくるにゃ! あ――それとも……」

 それでも微妙に回らないと思う。この人数だと。


「オ――イッ! スミカ嬢ォ! なんか人手が足りなさそうじゃねえかァ!!」
「そうですね。流石にこの人数だと回らなそうですね」

 味噌肉の串焼きを両手にそれにガブついているルーギルと、味噌のスープを片手に飲んでいるクレハンの二人が、悩む私に声を掛けてくる。

「ま、まあちょっとだけヤバいにゃ。にゃ」

 見栄を張って、ちょっとだけをアピールする。
 あまり弱みを見せたくないからね。

「カァッ! これがちょっとだけかァ? クレハン、ギョウソに言って冒険者の奴らに料理が出来る奴と、勘定をできる奴は手伝ってやれって伝えてくれやァ! それと、ニスマジのも来ていたろォ、そいつにも伝えてくれェ!」

「はい、承りましたギルド長。では」

 ルーギルの注文に、クレハンは人混みの中に入っていく。
 どうやら二人には見透かされていたようだ。


「…………ルーギル、いいの?」

 下にいるルーギルに、ネコ耳カチューシャを外してそう問いかける。
 何でそこまで?

「クレハンも昨日言ってたろォ! 俺たちは嬢ちゃんたちを気に入ってるんだァ! だから気にするなァ!」

「前にも言ったけど、私たちに期待されても迷惑なんだけど」

「それも昨日言ったろォ? 勝手に期待してんだァ、それこそ気にするなァ!」

「…………うん、わかった。今回は甘えるよ。お願いするルーギル」

 正直今は状況なのだ。
 まあネコは自分たちだけど。


「ボクからもお願いするにゃ! ルーギルさん!」
「オウッ! 承ったぜぇ! 嬢ちゃんたち任せろォ! さあ、面白くなるぜぇ!!」

 そう言って、ルーギルも人混みの中に消えて行った。

「ふう、それじゃ、そっちはルーギル達に任せて、私たちは出来る事をしようか?」
「はいっ! スミカお姉ちゃんっ!」
「はいにゃのっ!」
「ユーアは一人で上にいるのは嫌でしょう? 一度下に降りて皆を手伝う?」

 独りだけ、取り残されるであろうユーアを気遣いそう提案する。

 こんな空中でネコ装備。しかも一人。
 私だったら悶絶ものだ。恥ずかしくて。


「スミカお姉ちゃんボクは一人でも大丈夫にゃのっ! 任せて欲しいにゃ!」

 決意のみなぎった表情で、そう返事を返す。
 どうやらユーアの意志は固いようだ。

「そう? だったらお願いにゃユーア。メルウと私は大豆商品の在庫持ってきたら、すぐに合流するからにゃ」

 ネコの手袋をはめながら、ユーアの猫耳カチューシャを付けた頭をなでる。

「はいっ! 任せて欲しいにゃ!!」
「うん、それじゃすぐに戻ってくるから、よろしくにゃ」

「うニャッ!!」

 タンッ

 メルウを抱き上げて、透明壁を展開しながら下に降りる。


「はい、ログマさん。お肉と野菜をここに置いておくにゃ。これで全部にゃ」

 まずはログマさんに材料を渡す。

「ああ、すまない。お前たちは昨日大量の買った肉はこれで使い切ったのか?」
「そうにゃんです」

 ユーアが選んで、ログマさんから買った肉はこれで最後だ。

「そうか、なら明日以降に取りにくるといい。を仕入れておく」

「ログマさんお願いするのにゃ。それじゃ私は他に行くところがあるから行きますにゃ」
「ああ、大豆商品の在庫を取りに行くのだろう。気を付けて行ってこい」
「はいにゃ」

「ニャニャニャッ!」

 ログマさんと別れて、メルウを抱えなおす。
 そして透明壁を足場にして屋根の上にでる。



「ねえ、メルウ。倉庫は何処にあるにゃ? 案にゃいしてくれる。遠いの?」

 首に抱き着いて、プルプルしているメルウに声を掛ける。

「は、はいニャの! あっちですニャ! ここから歩いて10分くらいですニャの!」
「わかったにゃ。それじゃ、ちょっと急ぐにゃ」
「ニャっ!」

 メルウをしっかりと抱きかかえながら、大豆工房◎の倉庫を目指して屋根の上を疾走していった。

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