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第5蝶 大豆少女と大豆工房◎出張所の救援編

ネコ仮装する少女たち

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「スミカお姉ちゃん、ど、どうしたのこの衣装?」
「なんか、恥ずかしいの……」

「ううん、二人とももの凄く似合ってるよ。二人とも可愛いからねっ!」


 二人に渡したのは、私がプレイしていたゲーム内の2月22日のイベント限定で手に入るいわゆる、だ。

 2月22日『猫の日』限定の。

 因みに、ユーアは灰色の『ロシアンブルー』タイプ
メルウは『三毛猫』タイプを、それぞれ着ている。

 猫耳カチューシャに、レオタード、猫の手袋、猫足の靴。
 のフル装備だ。


 更に、この衣装はネタ装備とされるだけあって、
 見た目だけじゃなく、が付いている。

「ダメだよ、二人とも。カチューシャと手袋もキチンとハメないと。全部揃った方が可愛いんだから」

 二人とも、ネコ耳カチューシャと手袋を持ってるだけで装備していない。

「え~だって、手袋したらお料理持てなくなっちゃうよ? スミカお姉ちゃん」
「そうですの、運ぶのも出来なくなっちゃうの」

「そっちは、ログマさんたちで回るから心配しないで大丈夫。だから二人には売り込みをして欲しいの」
 
 「だからお願いっ」と付け加える。

「スミカお姉ちゃんがそう言うなら」
「わかりましたの」

 二人は何やら思案顔でカチューシャと手袋をはめる。

 その効果は――


「スミカお姉ちゃん、これで大丈夫ですかにゃ? ――にゃ!?」
「手袋もしましたのニャ。――ニャニャ!?」

 そう、装備をする事によりセリフが猫になってしまう『ネコ装備』なのだ。
 因みに言語の変換はカチューシャだけでOKだ。

「にゃんで、ボクの言うことがネコににゃっているの!!」
「ニャニャニャニャ!?」

「それじゃ、二人とも時間もないから早く売り込みを開始しようか」

 混乱している二人の手を取り、有無を言わせずに引っ張っていく。


「ちょ、ちょっとスミカお姉ちゃんっ!」

 ユーアが開いている手でプニプニと、叩いてくるが肉球なので痛くない。
 寧ろ癒される。

「二人とも、私が上にから、大豆商品をしっかり宣伝してね!」

「にゃ! にゃにゃにゃっ!?」
「ニャ――――ッ!?」

 スキルの透明壁を展開して、二人を5メートル程空中にあげる。


「二人とも大丈夫――?落ちる事はないけど一応暴れないでね――っ!」


 いきなり宙に浮かんで、あわあわしている二人に声を掛ける。

「ス、スミカお姉ちゃん!ボクたちだけずるいですにゃっ!」
「そうですの!スミカお姉さんも一緒にやるのニャ!」

「えっ? 私もっ!?」

 思わぬ二人の反撃に驚いてしまう。

「そうにゃの! 一緒にしてくれにゃいとボクたちもやらないのにゃ!」
「そうニャのニャ! そうニャのニャ!」
「いいいっ!!」

 二人ともかなりご立腹のようだ。

『うぬぬ――っ!!』

 二人が今放棄したら、今までの作戦が全てダメになってしまう。
 それだけは避けたい。

 しかし…………


「はーやーく、スミカお姉ちゃんっ! 時間ないって言ってたじゃにゃいのですかっ!」

 ユーアが更に急かしてくる。
 それはそうなんだけどっ!

「スミカお姉さんも、急いで着替えるのニャ~~!」

 メルウもユーアに被せて大声を上げる。


「あ――もうっ! わかったよっ! 私も一緒にやるよっ! ここまでした責任もあるしねっ! その代わりカチューシャと手袋だけだから。!魔法の効果が弱くなっちゃうからっ!」

 もうやけくそになって二人にそう叫び返す。


 ただ流石にレオタードと靴は着れない。
 スキルが使えなくなってしまうからだ。


 私は出しっ放しにしていたレストエリアにダッシュで入る。

「な、なんでこんな事に…………」
 
 ニスマジの言っていた似たり寄ったりの店が並ぶ中で、その店特有の『インパクト』が必要って言ってたのを思い出して実行したのに、まさか自分がに参加するハメになるとは…………


 私は、速攻で装備してレストエリアを収納しユーア達の元に跳躍する。

 そんな私を二人はジロジロ見ている。

「にゃ、にゃによ。これでいいでしょ?」

 まじまじと見てくる二人の視線にそっぽを向く。


「ス、スミカお姉ちゃん、き、きれいですにゃ……」
「う、うん、全部真っ黒でかっこいいニャ……」

 二人は茫然としてそう呟く。

 私は『黒猫』の装備をして二人の前に姿を現した。


「さ、さあ、私の事はいいから、早く宣伝を開始するのにゃ」

 テレを誤魔化すようにそう告げる。

「う、うん、わかったですにゃ。スミカお姉ちゃん、ありがとうにゃ!」
「一緒にがんばるのニャ!」

 二人は私の言葉に反応して宣伝を再開する。


「マズにゃさんの作った、大豆の食べ物はおいしいのにゃ――っ!」

「試食もあるから、おいしかったら買ってなのニャ――ッ!」

「大豆は、タンパク質やビタミン、ミネにゃルも豊富で健康に最適だにゃ――美容にも効果的だから、女性にもおすすめにゃ―――っ!!」

「にゃんですか? たんぱくしつって」
「みねニャる?」

「…………あれ?」

 ユーアとメルウは二人して、私の言葉に振り返る。

 この世界にはかなり早かった知識で、宣伝をしてしまったようだ。


「オ――――イッ、スミカ嬢なんか面白れぇ事やってんなァ!! なんだそれぇ? 今度はネコかァ!!」

「おや、可愛らしいですね。流石あの二人。早速予想できない事をやってらっしゃるようで。それにしてもネコの衣装ですか?」

 ギルド長のルーギルと、副ギルド長のクレハンが私たちに声を掛ける。


「にゃっ!? み、見るにゃ――――っ!!」


 私はユーアとメルウの後ろに隠れる。
 こんな罰ゲームみたいな姿を知り合いに見られたくない。


「オウ、隠れたって無駄だぜぇ! 透明で何処に隠れても下から見えちまえぜぇ!」

「そうですよ、逆に隠れないで堂々とした方が、逆に目立ちませんよ? それにわたしは『ネコ』のスミカさんもいいと思いますし。ユーアさんも素敵ですよ」

 そんな事言われたら、逆に出ずらくなる。

「ちょっと二人とも、にゃんでここにいるにゃっ!!」

 シャーッっと威嚇するように二人に叫ぶ。


「あ、何って、ユーアが『ギュウソ』と一緒にいる冒険者に『明日のお昼に来て欲しい』って言ってたらしいんだよォ。で俺らも来たんだよォ。なァ!」

 ルーギルが後ろを振り返ると、30人以上の冒険者風の男たちが現れた。


「よう、嬢ちゃん。早速、恩を返しに来たぜ」

 眼帯をした40過ぎくらいの男が前に出てくる。

『ギュウソ?』

 ああっ! 冒険者を纏めてるって人か。
 ギルドで私たちに礼を言ってきた。


「まあ、大豆の店の宣伝なんかじゃ、恩返しには足りないがな」

 と続けた。

「お――い、ユーアちゃん! 約束通りにおじちゃんもきたよ――!」

 もう一人の冒険者は、ユーアに向かって声を上げる。

 ん!?
 
 そういえば…………


 ユーアがギルドで冒険者の男たちに、何か話をしていたのを思い出す。



※ ※ ※ ※ ※


「うんとね、ボクね、スミカお姉ちゃんとね――」
「そうです――――よ?」
「恥ずかしいから、聞かないでくださいっ――」
「明日なの」
「――うん、ありがとうおじちゃん!!お願いね!」 ←この


34話参照  

※ ※ ※ ※ ※   
 


『あ――――っっ!!』

 ユーアはこの時点で大豆工房の宣伝を開始していたんだ。

 そして、おじちゃんがギュウソに報告して多くの冒険者を連れてきた。
 それで耳に入ったルーギルは、面白そうだと思ってクレハンときた。


「それでぇ、ユーアちゃんおじちゃんは何をそればいいのかなっ!」

「おじちゃんたちは、マズにゃさんとログマさんが作った料理を食べて、感想を大きな声で言ってちょうだいですにゃ! おねがいですにゃ!」

「お――わかったよ―― ユーアちゃんっ! ギュウソさん、そういう事ですので皆んなで食べてましょう」

 おじちゃんは、ユーアに手を振りながら笑顔で答えて、ギュウソとその周りの冒険者たちに伝える。

「おう、わかった。嬢ちゃんたち、馳走になるぜっ!」

 ギュウソがそう答えて、ぞろぞろとカジカさんの所に移動する。


「ギルド長、わたしたちも行ってみますか? かなり美味しそうな匂いが鼻孔をくすぐるので」
「オウッ! そうだな! 折角嬢ちゃんたちが呼んでくれたんだァ。馳走になるかァ!!」

 クレハンとルーギルも揃って料理を貰いに向かう。


 いや、あなたたちはユーアも呼んでいないからね。


「あらぁん、ここかしらぁ、あの人が言っていた大豆のお店はぁ」
「そうねぇ、ここじゃないかしらぁ?」
「…………随分と良い匂いがするわねぇ」
「なんでも大豆は美容にもいいそうよぉ――!!」


「今度は何っ!?」

 私は声のした方に振り返る。

「っ!?」

 それは20人以上のガチムキの集団だった。

 これ絶対、あっちの世界の人ニスマジたちだよね?
 ノコアシ商店の店の前の『あの三人』と同類だよね。


 私たちはここにきて、やっとフルに動き回れるのだった。


 あ――― 忙しい忙しいっ!!


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