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第4蝶 初めての街探索編
大豆売り幼女を応援する事に決めました
しおりを挟む「ユーアとメルウちゃん、スミカお姉ちゃんに任せなさい」
私はヒシと座り込んで抱き合う二人にそう告げた。
「スミカお姉ちゃんっ!!」
「スミカお姉さん…………」
ユーアは期待の眼差しで、メルウは不安そうな眼で私を見上げてくる。
「っと言っても、私ひとりじゃ無理だから、二人にも手伝ってもらうよ」
「はいっ!」
「スミカお姉さん……」
「それなんだけど、今だとタイミングが悪いのと、準備があるから、今日からじゃなくて明日の午前中から始めよう。それでいい?」
「はい、わかりました!」
「……でも、どうするの?」
「それは、明日になってからのお楽しみって事で。別に二人に無茶な事させる訳じゃないから、心配しないでいいよ」
内心で、ニヤリっと笑みを浮かべる。
「それと、メルウは今日帰ったら、お父さんにこれを使って」
アイテムボックスから、『リカバリーポーション【S】』を出してメルウに渡す。
「スミカお姉さん、これって……」
「ケガを治す薬なんだけど、メルウのお父さんに、どれくらい効果あるかわからないから、一応、普通のお薬? も買っていって」
この世界の住人には試して問題はなかった。
けど、メルウのお父さんの状態がわからないから念のためにね。
「なんで、お姉さんたちは、今日会ったばかりなのに、そこまでしてくれるの?」
メルウは、リカバリーポーションの瓶を両手で握りしめながら、私の目を見てそう聞いてきた。
「簡単なことだよ」
「簡単なことなのっ?」
メルウは小首を傾げる。
「そう、もの凄く簡単な理由だよ」
私は、ユーアのほわほわした頭を撫でながら、
「ユーアがメルウを助けたいと私にお願いしてきた。それを私が助けたいと思った。ね、全然簡単なことでしょう?」
そう、私はユーアを守ると決めている。
ユーアの想いも守ると決めている。
「それに――――」
「そ、それに、なんですの?」
「私が食べたいからだよっ! これから定期的に購入したいのに、無くなったら困るからっ! 閉店されたら余計困るからっ!」
胸の前で拳を握り、心からそう告げた。
「……ふ、ふふふっ」
「スミカお姉ちゃん……」
えっ私、間違ったこと言ってないよね?
無くなったら困るのは本当だし。
それを聞いた、メルウは目尻に残る涙を拭いながら、
「スミカお姉さん、ユーアお姉さん、よろしくお願いしますの」
メルウは深々と頭を下げてそう言った。
「ユーアと一緒に、明日ここにくるから、お店の開店準備は、それまでに済ませておいて。それじゃ」
「メルウちゃん、また明日ねっ!」
「はい、わかったの。明日待っているの」
―――――――――――――――――――
メルウと別れて、隣に歩いているユーアを見ながら考える。
……ユーアとメルウには、安心させる為にああ言ったけど、
正直、後一押し、何かが物足りない。
メルウはもちろん、ユーアも手伝ってくれる。
でも、それだけじゃインパクトがまだ足りない……
そう何か『インパクト』が――――
あ、そうだっ!!
ポンっと私は手を叩く。
「スミカお姉ちゃん、どうしたの?」
そんな私を不思議に思ったのか、ユーアが覗き込んで私を見てきた。
「んん、何でもないよ。ユーア、明日は頑張ろうねっ!」
「はい、スミカお姉ちゃん!ボクも、メルウちゃんの為に頑張ります!」
そして「ボクもお店手伝った事もあるんだよ!」
っとグット握りこぶしを作って、そんな自信ある返事が返ってきた。
そんなユーアが微笑ましくて、わしゃわしゃと頭を撫でてしまう。
「ちょっと、スミカお姉ちゃんクシャクシャになっちゃうよぉっ!」
「あ、ごめんごめん。何かドヤ顔のユーアが可愛かったから、ついね」
アイテムボックスより、ブラシを出してユーアの髪を梳きながら謝る。
「そういえば、メルウのお店に行ってて、私たちお昼食べてないね。あ、でもギルドに行かなくちゃならないのか」
メルウの件で色々考えてたら忘れてた。
「ユーア、ごめん、ギルドに顔出そう。混んでなければいいんだけど」
「そうですね、わかりました」
私とユーアは冒険者ギルドに向かうことにした。
※※※※
「ちょっと、遅かったかな?」
冒険者ギルドに着いた私は、どの受付も列ができているのを見てそう言う。
「そうみたいですね、でも少し待てば大丈夫だよ?」
「ん――でもユーアもお腹空いたでしょう? 先に食べちゃおうよ。あそこのテーブルも空いてるみたいだし」
ユーアの手を引いて、奥のテーブルに座る。
ユーアも座るのを確認して、アイテムボックスから屋台で買った、串焼きや、野菜スープなどを広げていく。それらはまだ、湯気が出ていて温かいままだ。それと冷たい果実水もだしておく。
どういう原理かは知らないけれど、これはこれで非常に便利だ。
この世界のマジックバックや、ユーアの持っているポーチはどうかわからないけど、私のアイテムボックスは収納すると時間経過が止まる。
「ユーア、おしぼりもあるから、先に手を拭いてから食べてね」
「はい、ありがとうスミカお姉ちゃん」
ユーアは丁寧に指の先から間まで拭って、串焼きを頬張る。
「おいしいねっ!」
「そうだね、おいしいね」
うん、確かにユーアの言う通りに美味しい。
何の肉かわからないけど、歯ごたえがあるのに、一口噛み切るとホロっとほどけて中から肉汁が溢れてくる。脂っこさで舌を飽きさせないためか、大葉が巻かれているのもある。異世界肉おいしい。
「ユーア、お肉もいいけどスープもあるんだからね」
串焼きの感想を考えてたら、ユーアが串焼きを両手に持って食べていた。
「この、野菜のスープも暖かくておいしいです」
「串焼きも、スープも、パンもたくさんあるから言ってね」
ニコニコしながら、ちょこちょこと小さい口で頬張るユーアを眺めて言った。
うんっ!?
気が付くと、私たちが座っているテーブルの周りに人だかりができていた。
私は一応身構えながら、一番前にいる40過ぎ位の眼帯の冒険者に声を掛ける。
「何? なにか用?」
「突然すまんな。俺はランクDの『ギョウソ』っていうんだ。一応、ここの冒険者たちを纏めている」
声を掛けた冒険者は、そう名乗った後、
「いや、昨日の事を聞いてな。顔が見たかったのと、礼を言いたくてな」
「昨日?」
ん? 何かあったっけ?
私は思い出そうと、自然に首を傾げる。
「おいおい、あんなことがあったのに忘れてんのか?」
それを見て、ギョウソが呆れたように私の顔を見る。
「うん?」
「俺たちの為に、よそのランクC冒険者をノシてくれたそうじゃないか」
「ああっ!」
ポンっと手を叩き思い出す。
「マジで、忘れてたんだな……ある意味大物だな」
「ああ、あれはね、ここの冒険者の事もそうだけど、ユーアを馬鹿にしたのが一番の理由だから」
「わかっている。それでも、そのユーアもここの冒険者だ。感謝するのは当たり前だろう」
「それと――――」
ギョウソは後ろを振り返って、
「――昨日は依頼で立ち会えなかった、他の冒険者も礼を言いたいらしくて連れてきた」
そう言うと、ギョウソの脇にぞろぞろと、冒険者たちが出てくる。
「昨日いた奴に話は聞いた。凄かったらしいな、素手で圧倒したんだろう!」
「そうなんだよ、この細腕で、掴んだ槍ごと持ち上げて叩きつけたんだよ!」
「いや、俺は、上段から振り下ろされた大剣を、殴って軌道を変えたってきいたぜ?」
「いやいや、飛んできたナイフを掴んで投げ返したらしいよ?」
「おいおい、お前ら落ち着けって、嬢ちゃんも、ユーアもびっくりしてんだろう!」
騒ぎ出す冒険者たちを、ギョウソは諫めてくれる。
「あ、ユーアちゃん、ゴメンね、怖かったよね?」
「おい、お前の顔見たら、余計ユーアちゃんが怖がるだろうっ!」
「ユーアちゃん、おじちゃんの家に来るかい? お肉あげるよ」
「スミカさんとはどうして知り合ったの?」
と、今度はユーアに矛先が向いてしまった。
おい、何か一人危ない奴いただろうっ!
肉で釣ろうとしたやつっ!
そんなユーアは、大人たちに囲まれてテンパってるかと思いきや、
「うんとね、ボクね、スミカお姉ちゃんとね――」
「そうです――――よ?」
「恥ずかしいから、聞かないでくださいっ――」
「明日なの」
「――――うん、ありがとう!おじちゃんっ! お願いねっ!」
ニコニコと串焼きから手を離して話し込んでいた。
誰だっ! 今度はなんかユーアに変な事聞いた奴いるだろっ!
おじちゃんかっ! おじちゃんが危ない奴かっ!!
「おいっ! お前らいい加減にしろっ! 礼を言いに来たんだろうがぁっ!」
ギョウソが若干キレながら、そう叫んでいた。
「すまんな、スミカの嬢ちゃんとユーア。皆んな悪い奴ではないんだが、悪ふざけが過ぎる時があってな」
ポリポリと頭を掻きながら謝ってくる。
「別にいいよ。ユーアも怖がってないから」
ユーアを撫でながらそう答える。
「そうか、なら良かった。それじゃ、俺たちは行くからよ。今回の事は本当にありがとな。なんか協力して欲しいことがあったら俺に言いな。できる範囲でだが手を貸すぜ」
そう言って、ぞろぞろと冒険者たちを引き連れて出ていく。
「うん、ありがと。その時はよろしくね」
「おじちゃんたち、また明日ねっ!」
ふう、やっと食事の続きができるよ。
しかし、ここの冒険者は結束力が強いのか、ギルド長のルーギルたちの影響か、本当に仲間意識が高いと思う。
「それじゃ、ユーア少し冷めちゃったけど食べようか」
「はい、スミカお姉ちゃん!」
『――――――たんだがよォ』
ん!? 何か聞こえる?
「ユーア、何か言った?」
「んんんっ!」
私はユーアにそう聞いてみるが、
串焼きを頬張ってるから、何も話せない筈。
うん、だったら空耳だね。
「――午後から、待ってたんだがよォ! なんでこんなとこで飯食ってんだァ!!」
お怒りの様子のギルド長が、テーブルを叩いて現れた。
私の空耳ではなかったらしい。
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