剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
26 / 586
第4蝶 初めての街探索編

初めての夜とお買い物

しおりを挟む



 ユーアと一緒にお風呂から上がる。

 やっぱり一日の終わりはお風呂だよね。

 引きこもっていた黒い時代も、私は毎日湯舟には浸かっていた。
 お風呂に入る事によって、体も気持ちもリセットできるからだ。


 ユーアの格好はパジャマ姿ではなく普段着ている貫頭衣の薄手のものだ。
 そして腰ひもは結んでいなく、ゆったりしている。

 私はアバターのインナー姿の、黒のキャミソールと下着だ。

 お風呂上がりのドリンクレーション(ブドウ味)をユーアに渡して寝床の用意をする。と言ってもアイテムボックスよりシュラフを出すだけなんだけど。

 とりあえず二人分用意して広げる。
 ユーアも手伝ってくれた。

「これ、お布団なんですか?すべすべしてて柔らかいです」

 女の子座りでぺたんと座ったユーアは、手触りを確かめて聞いてくる。

「ん――、布団よりは固いけどね。ただ疲れは取れるよ」

 これもゲーム内アイテム。
 使用している時間に比例して体力を回復するものだ。

「それよりも、どう? きれいになったでしょう?」

 私はツヤツヤになったユーアの肌や髪の毛を触る。

「はいびっくりしましたっ! こんなボクでもきれいになるなんてっ!」

 先ほどからユーアはちょこちょこ自分の髪を触ってみたり
 手足を眺めてたりしていた。

「あれは、せっけんなんですか?ボクが知っているせっけんとは違うみたいですが」

 この世界にもせっけんはあるらしい。
 そしてきっと高額なのがお決まりだ。

「そうだね、石鹸みたいなものだよ。でも普通の石鹸ってどんな感じなの?」

 なんとなく聞いてみる。

「普通のせっけんはちょっと臭います。体は洗えないです。お皿を洗ったり、お洋服を洗うのに使っています。ただ高いせっけんもあるのですが、ボクは見たことないです」

「ふ~ん、そうなんだ」

 臭いってのは、動物とかの油から作ったりするのかな?
 それか料理に使った後の廃油とか。

 まぁ石鹸の歴史なんて興味ないからもうこの話は終わり。


「あ、それとユーア。ちょっと明日は早く起きてもらってもいい?」
「はい、いつ頃ですか?」
「ん――、そういえばこの街のお店とかは何時から開いてるの?」
「時間はわからないですけど、辺りが明るくなってからは開いてるよ」
「そう、それじゃ明るくなる少し前に起きようかっ」
「はい、わかりましたっ!」


 この世界の住人は起きるのが早い。
 朝日や鶏の鳴き声が目ざめの合図なんだろう。恐らく。

 そんな時間。元の世界の私だったら寝る時間だよ。


「それで午後からは冒険者ギルドだから、午前中はユーアに街の案内を頼むね。ギルド終わってからは――――その時に決めようか?」

「はいわかりました!ボクがスミカお姉ちゃんを案内しますっ!」
「うん、よろしくね」

 元気に手を上げて返事するユーア。

「それじゃ、明日は早いからもう寝ようか」
「はい、スミカお姉ちゃん」

 私はレストエリアの灯りを暗くする。

『………………』

 そして目を閉じ一日を思い出す。

『今日一日で色んなことが沢山あったなぁ……』

 起きたら異世界にいたり、ユーアに会ったり、ルーギル達に襲われて返り討ちにしたり、ギルドに着いてはランクC冒険者に絡まれたり、ユーアの住む家にきてみたり。


 目を開けて隣のユーアを見てみる。

『ユーアもきっと疲れたんだね?』

 横になってからすぐに可愛い寝息が聞こえていた。

 そりゃそうだよ。まだ子供なのに魔物に襲われて死にそうになるし、森の出口で襲われるし、知らない家に招待されるし、ね。

『少しはユーアを守れたのかな? 私はユーアの為になっているのかな?』

 私はきれいになったユーアの髪を撫でながら目を閉じた。


 明日もユーアと一緒の世界が眩しいものでありますように。



◆ ◆ ◆ ◆




 ♪♪♪ ♪♪  ♪♪♪♪   ♪♪

 私はいつもの目覚ましの音楽で目覚めた。

 「ふわぁ――」と軽くひと伸びする。
 一先ずお風呂に入ってご飯を食べよう。

 お風呂場に向かう前に冷蔵庫をみる。
 先に冷凍食品をチンしておきたいからだ。

『?』 あれ?空っぽだ。

 冷凍食品が一個もなかった。
 たしかまだ10食以上はあった筈なのに……

 はぁ、だったらお風呂してから注文しよう。
 なので今朝はカップ麺で我慢するか。


 次に私は目を覚ます為に、お風呂場に向かう。

 すぐさま熱いシャワーを浴びる。

『♪』

 ふぃ――気持ちいいね。
 気持ちよくて自然と目を閉じる。


『?』

 なんかパタパタと音が近づいてくる。

『ん?』

 私は気になって目を開ける。

 そして勢いよく扉が開かれる。

『あれ?』

 私がいるここって――――


「スミカお姉ちゃん、目が覚めたらいきなり裸になってお風呂行くんだもん、びっくりしちゃった!お外はもう明るくなっちゃうよ?」

「ああ――、ま、まだ時間あるから、ユーアも一緒に入ろうかっ?」

 寝ぼけてたのを悟られないように、ユーアにそう提案する。

「う、うん、スミカお姉ちゃんが、そう言うならいいけど」

 そうして二人一緒にシャワーを浴びる。

『………………』

 ふぅ、危ない危ない。

 現実と同じメロディのタイマーにしていたから勘違いしてた。
 朝早いから、念のためにメニューのタイマーをセットしてたの忘れてた。

 なるべく早く起きて、レストエリアを収納したかったのに寝ぼけて間に合わなかった。誰かに見つかって騒がれなければいいけど。

 一応、雑木林で影になる所を選んだつもりだけどちょっと心配だった。


 私たちは着替えてから、レーションを食べて外に向かう。

 ユーアは相変わらず美味しそうに食べていた。朝からお肉だった。
 私はスティックタイプですました。


 外に出ると幸い周りには人影がなかった。
 日はもう殆ど昇っている。

 とりあえず、今のうちにレストエリアを収納する。これで安心だ。
 ユーアは出した時と同じように、また驚いていた。


「それじゃ、ユーア、色々街を案内してちょうだいね」

「はいっ!最初にどこに行きたいですか?」

「そうだね。最初はアイテムを買取できるようなお店あるかな? でもこの時間で開いてるの?まだ日が出で少ししかたってないよ?」

「大丈夫だと思います。着くころには開いていると思いますよ。それじゃこっちです!」

 ユーアは私の手を引き笑顔で歩いていく。

「あれ、そういえば、孤児院に昨日の稼ぎは寄付にいかなくていいの?」
「はい、そうなんですけど、この時間はまだ忙しいから帰りにします」


 私たちは、教会、孤児院と抜ける。
 そして各ギルドが集まるエリアの少し東に位置したエリアに着いた。

 そこには武器、防具、鍛冶屋、雑貨屋、服飾屋
 など多数の店が並んでいる。

「スミカお姉ちゃん、買取だったら、ここでできますよっ!」
「うん」

 ユーアは小走りに一つの店の前に行く。

 私はユーアの隣に並んで、お店の外観を見てみる。


 『ノコアシ商店』

 そう書いてある。

 店自体の大きさは、他の並んでいる店に比べれば小さい方だ。
 ただ、2階にも窓があるからもしかしたら2階も売り場かも。


 いやそれよりも――――


 『い、一体これっ! 何屋さんなのぉ――――っ!!』


 あまりの店のカオスっぷりに、私は心の中で盛大に突っ込んだ。




しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...