剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
17 / 586
第3蝶 街に待った初めての街編

私の出番が回ってきた

しおりを挟む



「「「うおおおぉぉぉっっっ!!!!」」」


 勝鬨をあげるルーギルは冒険者たちの喝采を受けている。


 ルーギルに半殺しにされた大剣の男は、パーティーメンバーによって広場脇に寝かされていて、
メンバーは血走った目でそんなルーギルを睨みつけている。

「残り4人も俺が相手してやってもいいが、もう一人俺より怒り心頭の奴がいるッ!お前ら残り4人でそいつに勝てたら今回の事は水に流してやるし、その男の治療費も払ってやるッ!どうだァッ?」

 ルーギルが残り4人に向かってそう叫ぶ。


 もう一人とは約束通り私の事だろう。

 他の冒険者たちは「誰だ?」なんて一様に見渡している。


 私はそれを眺めながらユーアに

「ちょっと行って来るねっ」
「えっ!? ス、スミカお姉ちゃん!どうしてっ!?」

 ユーアが心配そうに叫んでいる。
 ちょっと涙目だ。

「私もあいつらに馬鹿にされたんだよ、だから仕返しにね」

 優しくユーアを撫でながらそう話す。

「ばかにされたの?」
「そう。ルーギルと同じで馬鹿にされたの。だから行ってくるね」

 まだ何か言いたげなユーアを置いて広場中央に歩いていく。

 そうアイツらは馬鹿にした。
 だから許せない。

 私の誇りユーアを馬鹿にしたアイツらは絶対に許さない。


※※


 私が前にでた事によって、周りが騒ぎ出す。


「まさか、あの子供が戦うのか?」
 子供じゃないよ。多分あなたより年上だよ。

「あの子は最初に奴らに向かっていった子だろう?」
 そうだよ、私以外皆んな動かなかったし。

「あいつ殺されるぞ!」
 あんただったらね。

「なんであんな変な格好をしているんだ。蝶か?」
 これでもランキング1位の賞品なんだけど。

「ルーギルさんが知っているんだ、只者じゃないかも」
 まあ、ルーギルは一度ボコした事あるし。

「でもあんな小さな子だぞ、無理だろう。他にも色々小さいし」
 …………お前の顔は覚えた。


 そんな冒険者たちの嘲笑を聞きながら、4人の男たちの前に立つ。

「どうすんの!やるの?やらないの? そっちは4人でも構わないって言ってんのに、それでもまだハンデが足りないの?あなたたちこそ冒険者辞めたら?私の様な子供より向いてないよ」

 私は若干固まっているランクCの男たちにそう挑発する。
 まさか、私が出てくるとは思ってもみなかったのだろう。

「ああんっ! ふざけた事抜かすなっ!てめえは最初俺たちにビビッて突っ立ってただけだろうがっ!相手してやんよぉっ!その代わり約束わすれんなよなぁ!!」

『よし』

 ふぅ危ない危ない。
 私が出て固まっているから挑発に乗ってこないかと心配した。
 乗ってこなかったら色々と面倒になるところだった。

「それじゃァ、お前たちもそれでいいんだなッ? お前たちでこの嬢ちゃんと戦って、そして勝ったら約束通り無罪放免だッ!!」

『……なるほどね』

 私はルーギルのやり方に心の中で関心する。
 最初から考えていたんだろう。

 相手が勝っても負けても逃げ道がないように。



 そして各々が得意の武器を持って中央に集まる。


「それじゃ、模擬戦を始め――――」

「おうっちょっと待ったっ!そっちのガキは武器もって無ぇじゃねえかっ!!」
「………………」

 いちいち細かいな図体の割にっ!!
 こっちはルーギルに一人取られてストレスがたまりっぱなし何だよっ!
 さっさと始めてよっ!!


「素手で充分だよお前たちなんか。一体何さまのつもりなの? 私に武器持たせてそれで勝てると思うの?最初から見てハンデだって何で分からないの?。見た目通りの単細胞なの? だからこのままで戦ってやるよ。さっさとまとめて掛かってきなよ」

 私は我慢できずに奴らを挑発する。
 乗ってくるのはさっきのやり取りでわかった。

 まぁ、武器うんぬん言われても、そもそも持てないし。

「いやっ、お前ぇが何様なんだよォ……」

 ルーギルより呟きが聞こえるが、それは無視する。


 私は奴らに向かって手の平を上に向け
 クイクイっと曲げて更に挑発する。


「「「こ、このガキがぁ――っ!!」」」 ×4


 奴らは私の挑発に余程頭に来たのだろう。
 言葉にならない奇声を上げて突っ込んできた。

 私はそれを見て舌なめずりをする。

「ふふっ」

 相手は4人。

 それぞれが私を囲んで一斉に攻撃をしてきた。


 長柄の武器、槍の男が突きを放つ。
 これは体を捻って躱す。

「ああっ!?」

 次は大剣の袈裟懸けの攻撃。
 後方にステップでして躱す。

「ちっ!」 

 今度は後方から斧の振り下ろし攻撃。
 体を横に回転して躱す。

「は、速いっ!?」 

 最後はナイフの投擲。
 首を捻ってこれも躱す。

「み、見えてるのかっ!?」 

 初撃を全て躱された男たちが驚愕の表情を浮かべる。

 そんな攻撃私にしてみれば――

『……遅いし何のひねりもない攻撃ばかりだね、どれも』


 銃弾の雨の中での戦闘が主だった私にはこんな攻撃が当たるはずがない。
 そのどれもがスローモーションに見える。

 透明壁など使わずに動体視力と身体能力
 そしてプレイヤースキルだけで充分制圧できる。

 そもそも今回は透明壁を使うつもりもない。
 私のスキルは、まだどんな影響になるかわからないからこのままで戦う。

 私は槍の男に狙いを付ける。
 懐に入ってくる私を慌てて突いてくるが反応が遅い。

 私を槍を握り返しそのまま押し込み、男の脇腹を突き刺す。

 そして、そのまま男の体を持ち上げて地面に叩きつける。

 ブンッ!
 ドゴォオッ!!

「がはぁっ!!」 まず一人。


 槍の男を地面に叩きつけた衝撃で埃が舞う。

 その中をナイフが飛んでくる。

 シュンッ
 パシッ

 これも難なく受け止め、隣にいる斧の男に投擲する。

「うおっ!!」
 ガギィンッ!

 それを咄嗟に武器でガードしていた。
 中々にいい反応だった。

 だが大型武器によりその視線は遮られる。

 私は斧の男を脇を通り過ぎて後ろの大剣の男に狙いを付ける。

 大剣の男は見えていたのか、頭上より大剣を振り下ろしてくる。
 私はこれを大剣の腹の部分に拳を打ち付けて軌道を逸らす。

 ガァンッ!

「は、はあっ!す、素手で武器をッ!?」

 驚いている男の顔面を「ガッ」とジャンプして掴み
 そのまま倒れるように――

 ドオォンッ!

 後方の地面に強く叩きつける。

「がぁっ!!」 二人目。

 シュン

 また埃の中をナイフが飛んでくる。ワンパターン過ぎ。

 今度は躱してナイフの男に一気に近づき、ガラ空きのボディーに拳を打ち付け、九の字に曲がり顔が突き出た横っ面に右フックを振りぬき地面に叩きつける。

 ゴオンッッ!!

「うぐぅっ!!」 三人目。

「…………」

 残りは斧の男一人。

 最後の男は驚愕の表情で私を見ている。

「う、うっ な、なっ……」
「…………」

 きっと信じたくないのだろう。

 仲間三人が侮っていたとは言えこんな子供に
 ものの数分で戦闘不能にさせられているのだから。

 しかも素手で圧倒されている。


「ち、ちくしょうがぁっ!!」

 半ばやけくそ気味で振り上げた斧を、私めがけて振り下ろす。
 そんな状況でもかなり鋭く重みのある攻撃だ。

 ドゴオォォ――ン!

 男の一撃が衝撃とともに地面を穿って大穴をあける。
 それ程強烈な一撃だった。

 それでも当たることは決してない。
 だってそこに私はいない。

 私の体は男の頭上にあるのだから。

「――――――」

 バサバサと空中でスカートが暴れる。

 それを無視して真下の男に狙いをつける。

 全体重と落下の重力。

 ギュルンッ

 そして回転での遠心力。

「んんんっ!」

 それを全て乗せた踵落としを男の脳天に叩きこんだ。

 ドゴォ――ンッ!

「がはぁっ!!」 四人目。

 男は顔面より地面に叩きつけられ気絶している。
 戦闘不能だ。

 トンッ

「ふぅ!――――」

 私は地面に降り立って息を吐き出す。
 体力的には疲れていないが精神的にはやはり疲労する。


「スミカお姉ちゃ~~んっ!!」

「お待たせユーアっ」

 ユーアは戦いが終わりホッとしたのか、笑顔で私を呼んでいる。
 私はそれに手を振って答える。

 さあ、お姫さまの所に凱旋しますか。

 私を待っている笑顔のユーアに向かって歩きだした。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので

sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。 早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。 なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。 ※魔法と剣の世界です。 ※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

処理中です...