剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第2蝶 初めての戦闘編

襲ってきた男たちと街に行こう

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 ルーギルは治療から戻ってきたユーアを確認して、私たち二人を見る。
 そして、私たちを襲った説明の為に口を開く。

「嘘だ」

「はぁ!?」

 私はすかさず透明壁を視覚化して振りかぶる。

「ッ!? だ、だから話をするって言っただろうォ、なんで臨戦態勢になるんだァ!!」

 ルーギルは頭を左右にぶんぶん振り回して必死に言い訳する。
 私を透明壁を一先ず消滅させる。

 勘違いさせる言い方したコイツが悪いんじゃないの?


 それを見て少し安心したのか、

「言い方が悪かったっ! これはギルドからの依頼なんだっ!」
「はぁ!?」

 今度は襲ったのがギルドからの依頼だってっ!?


 私は再度透明壁を視覚化する。
 今度はギルドが関わっているなんて。


「いいいいっ!?」

「スミカお姉ちゃん、ルーギルさんの話をちゃんと聞こうよ?」
「あっ!」

 ニコニコとして言っているが、ユーアの笑顔がちょっとだけ怖い。

 今回も私が悪いの?

 微妙に納得できないけど、仕方なく話を聞くことにする。
 実際ユーアの言う通りだし。

 そんなルーギル本人は、

「なんでコイツはこんなに攻撃的なんだよ……」
 などと呟いている。

 それから、ルーギルは「スゥーー」と大きく息を吸い込み


「さっきも言ったが俺はコムケの冒険者でお前たちを襲ったのはギルドからの依頼で元々殺意も何もない依頼で襲う振りをしただけだ依頼の内容は新人冒険者の育成だここいらは魔物や野盗が少ないだからといってゼロではねぇそれもあってか依頼の物を手に入れたあとに油断して襲われることが多いそうだ俺たちは森の出口を張って襲う振りをする手筈になっていた今回聞いていたのは4人の男女混在の冒険者だったと聞いたいたそんな訳で俺たちは10人ほどで待機していたが現れたのはお前たちだっただから今回の事は間違いだったんだがちっちゃい冒険者の事は何度かギルドで見たことがあるそれなら予行もかねて教えてやろうと思ったんだ嘘だと思うなら一緒にギルドに行って確かめてくれっ」

「………………」
「へっ? え、え~~と」

 ものすごく一気呵成に捲し立てた。
 それも息継ぎもなしで。

 それを目の当たりにし、ユーアはキョトンとしている。
 ルーギルの必死の弁明にびっくりしたんだろうか?

 まぁ、私も正直面喰らったけど。

 それで、ルーギルの話をなんとなくまとめると、


 →ルーギル依頼を受ける→森の出口で待ち構える
 →私たちが来る→間違いに気づく→二人とも美少女だ!ラッキー♪
 →それでヒャッハーする→ボコられる
 →土下座する←今ここ。

 恐らくこんな感じだ。

「?」

 すると、なんとも言えない目で見ている二人がいる。

「なに?」

「ボクってびしょうじょなの?」
「見た目が美少女でも、中身がコレじゃなぁ、俺はもっと色気のある女が好みだ。特に胸周りがなぁ」

「え?」

『あ、あれ? もしかして―――――』

 また声に出てたの? どこから?
 うん、ユーアは充分美少女だよ!

 胸!? 現実の私が今の衣装着たら胸元パッツンパッツンだよ?
 胸元のボタンが弾け飛んじゃうよ? 本当だよ?


 本当だよ?


※※



 ルーギルからは一通り話は聞けし、一応信用しておこうと思う。


『後はギルドに行けばハッキリするだろうし――――』


 それとルーギル以外の残りの9人は拘束を解いてあり、
 何故か私たちを遠目に伺っている。

 もう怖くないよ?

 それでも全員から申し訳なさそうに謝罪された。

 でも今思い起こすとこの男たちは私たちの前に現れた時
 問答無用で襲い掛かっては来なかった。
 やはり襲ったのは演技だったんだろう。

 私たち二人の美少女を見てニヤニヤしてた男もいた気がするけど
 それも演技だったんだろう。多分だけど。


 それとユーギルを除く男たちは、冒険者じゃなく元罪人らしい。

 街での生活がしずらく、集落らしき物を作って暮らしている。
 そんな男たちにルーギルは目を掛けて仕事を与えてたらしい。
 因みに30人以上の集落で、元冒険者と元罪人の多い集落との話だった。

 ルーギルは見た目の割に、とても面倒見がいい男のようだった。



 そうして私たちは男どもを引き連れて街道を歩いていく。
 なんでも徒歩だと2時間ほどかかるみたい。

 ユーアは楽しそうに、私と手を繋いでニコニコ歩いていく。

「ふんっ♪ふふ~~~~んっ!ふんふんふんっ♪――――」

 また独特のメルディを口ずさんで。

 そんな無邪気なユーアに、男たちが集まってきては――――

「ユーアちゃん、手当してくれてありがとなっ」
「ユーアちゃん、これ食べな集落の近くで捕れた猪の干し肉だよ」
「ユーアちゃん喉乾いたろう、これ飲みな」
「ユーアちゃん、疲れたろうおぶってあげるか?」

「……………………」

 ユーアちゃん、ユーアちゃんって私には何もないのっ!?

「スミカお姉ちゃんもこれ上げる、すっぱくておいしいよっ!」
「う、うん、ユーアありがとうねっ!」

 ユーアは男たちに貰った何かの木の実を私にくれる。

 ユーアはやっぱり優しいねっ!!

 私はそんなユーアの頭を軽く撫でながら、ふと思い出す。

『あ、そういえば―――』
 
 ユーアはリカバリーポーションで男たちを治療してあげてたっけ、
 それで男たちから優しくされてるのかな?

 そうすると私って、何かしたっけ?

「あっ」

 私はポンと小さく手の平を叩く。

 感謝されるユーアと違い私は感謝される事などないと思ったからだ。

 だって、私がしたことって言えば、

『ただ単に、この男たちを吹っ飛ばしただけだったよ……』


 そんなこんなでコムケの街が遠目に見えてきた。

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