剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第2蝶 初めての戦闘編

ユーアのお願い

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 私たちを襲ってきた男達は、今のところ再度襲ってくる気配はない。


 あちこちに倒れている男達は、腕や足が変な方向に曲がっていたり、鼻が潰れて顔中血まみれだったり、耳から血が流れてたりする者など死屍累々の様相だ。

 それに全員気を失っている。

 その中でも一際酷いのは、リーダー格の最後の男だ。
 全身の打撲に加えて、至るところに足跡まで付いている。

 打撲やケガは分かるけどなんで足跡付いてんの?

「スミカお姉ちゃん…… 足跡は――――」
「えっ?」

 ユーアがなんか呆れた目で私を見ている。

 あれ、声に出てた?

 分かってるよ、私が腹いせにやったんだよね。


「スミカお姉ちゃん、ボ、ボク、この人たち手当していい?」

「…………えっ! だってこいつらユーアの身ぐるみ剥いで、魔物のエサにするつもりだったんだよ? 私なんか売られそうになったし」

「だってこの人たちこのままじゃ、魔物に食べられちゃうよ……」

 ユーアは心配そうに倒れている男たちを見渡す。

「ユーアはそれでいいの? コイツらは私たちを襲ってきたんだよ。本当だったら、私たちが魔物のエサになっててもおかしくなかった。だからこのままでいいんじゃないの? そこから助かるか、エサになるかは本人次第だと思うし、自業自得だとも思うし」

「じごうじとく? よくわからないけどお願いしますっ!」

「ううん、だってこんな奴らを助ける義理なんてないよ。ほっといて街に向かいましょ。まだ遠いんでしょう?」

「お、お願いしますっ! スミカお姉ちゃんっ!!」
「………………」

 なんかムキになってる?
 っていうか、根は意外と頑固な子なのかな?

 これじゃお互いの主張同士がぶつかって話し合いにならない。

 正直あまり気が進まない。


 襲ってきた人たちを助けて、また襲ってきたらもう情けはかけられない。

 次は確実に五体満足って訳にはいかないだろう。
 そうなったら絶対に手加減は出来ない。

 それだったら最初から助けなければと思ってしまう。

 だけど――――

「……わかったよユーア。ただし、コイツらをきちんと縛って動けなくしてからだからね? また襲ってきても嫌だし」 

 私は優しくユーアの頭を撫でながら、ユーアの意見に賛同した。
 こういった所もユーアの性格なのだろう。
 それを私の考えだけで無下には出来ない。

 なら私は何か起きた時にユーアを守るだけだ。

 それだけの力を持っているんだから。
 私にはそれが出来る。


「ありがとう! スミカお姉ちゃんっ!」 大好きっ! 
「こんな事で"大好き"なんて言われたら、ユーアの事これから甘やかしちゃうよ?」
「えっ!? ボク、そんな事言ってないよ?」
「へっ!?」
「えっ!?」

 あれっ?

 どうやら私の幻聴だったらしい。
 セリフがカギ括弧の外だったし。





 ユーアの手持ちのロープで足りないものは、木の蔦なので両手両足を拘束していく。

 次に、折れている箇所に添木したり止血したりして、一通り処置を完了させる。

 ユーアはさすが冒険者らしく、素人の私が見ても非常に手際よく処置をしていった。


 で、私は何してたってっ?
 もちろん私も手伝ったよ?

 ロープ切ったり、蔦探したり、ユーアの汗を拭いてあげたり。
 暑そうだから大きな葉っぱで仰いであげたり。
 それと男たちをスキルで木陰まで運んだりして。

 そんな男たちは無抵抗で治療されていった。
 と、いうか目を覚まさなかった。
 結構深刻なダメージだったんだろう。

 今更誰がやったの? なんて言わないよ。
 またユーアに白い目で見られちゃうし。

 でも治療して拘束を解いても動けない男たちは、
 このまま助からないんじゃ…………

 それじゃ、ユーアの行動も想いも無駄になってしまう――


『あ、そういえばっ!――』


 私は、ポンっと手を叩く。
 そして早速アイテムボックスの中を確認してみる。


「おっ! やっぱり、あったっ!」

――――

 リカバリーポーション【S】
 対象のダメージの回復。効果(小)

――――

 私はそれを、アイテムボックスから出して真っ先にリーダー格の男を見付けて使用する。この世界での効果がわからないので、一番ムカついたコイツで実験してやろうと思って。

 途端、ガバっとリーダー格の男は目を覚ました。

「はっ!」

「えっ?」
「うわっ!?」

 すぐさま復活した様子に驚く私とユーア。

『えっ!? か、回復早すぎないっ? この世界の人間には効果が高過ぎ?』

 素早く身構え臨戦態勢をとり、ユーアには即座に透明壁を張る。
 また襲われないとも限らないからだ。

 だけど……

「だ、騙してすまなかったっ! どうか許してくれ嬢ちゃんたちぃ!」

「はぁ?」
「へっ!?」

 その男は地面に頭を付けて唐突に謝罪してきた。

 更に続けて――

「実は、オ、オレはコムケ街のDランク冒険者の『ルーギル』という者だッ! どうかオレの話を聞いてくれッ!!」

「はぁっ!?」
「ええっ!?」

 どうゆう事なのっ!?

 私とユーアはお互いの顔を見合わせ驚きの声を上げた。
 野盗が冒険者って?
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