剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

べるの

文字の大きさ
上 下
8 / 586
第2蝶 初めての戦闘編

少女と幼女 野盗に襲われる

しおりを挟む



『……うっかりじゃ許されないよ? ユーアとの話に夢中で警戒を少し解いてた。 私、なにやってんだろう……』


 本当に迂闊だった。
 守ると決めたそばから油断した。

 私たちを囲んでいる人数は10人。
 その数を索敵モードで確認する。


 それにしても、

『子供二人襲うにしたって、この人数は普通じゃないね』

 どこか疑問に思いながらも、ユーアを守るように前に出る。

「ス、スミカお姉ちゃん……」

 背中に隠したユーアは、震えた声で私の衣装をぎゅっと握る。

『怖いよね? やっぱり…………』
 
 私だってユーアとは違うけど、男たちの登場に些か混乱している。
 子供のユーアなら尚更恐怖を感じている事だろう。

 いや、子供とか大人とかは関係ない。

 いきなり、武装した男たちに囲まれたのでは、それが当たり前の反応だろう。


「――おいおいおいっ! ガキんちょ二人じゃねーかよぉッ! 誰だパーティーで入ってたのを見たのはよぉッ!」

 男たちの後ろから、ひと際ガタイの大きいボサボサの短髪を、獣の皮か何かでオールバックにしている男、多分リーダー格だろう男が前に出てきた。


「す、すいません親分っ! た、確かに冒険者らしき奴らが森に入ってたんですっ! も、もしかしたら奴らまだ森を探索中だと思いますっ!」


 男たちのそんなやり取りから、こいつらは装備や所持金などを奪うために、森から出てくる冒険者を狩っているのだろうと推測する。


「なら、後ろの小っせぇガキんちょは腰の布袋を奪えやッ! 少しは金になんだろ。 前のおかしな格好のガキは身ぐるみ剥いでおけッ! 多少は高く売れそうだかんなぁッ! 後は殺して魔物のエサにでもしろやぁッ!」

 そう言い残し男たちの後ろに下がっていった。


 私はチラと後ろのユーアを振り返って、様子をみてみる。

『っ!』

 顔が真っ青だ。
 私の服の裾をギュッと握ってガチガチと歯を鳴らしている。

「う、う、う…………」

 小さな体の全身が、恐怖でカタカタと震えてるとわかる。
 それが衣装を通して、私にまで伝わってくる。
 もう片方の手は、腰の布袋をギュッと力強く隠すように抑えている。

 きっと奪われたくないんだろう。
 せっかく危険を冒してまで、採取してきた大切な物を。

『――――ユーア』

 ずっと私の前で笑顔だったこの少女が、ここまで怯えている。
 さっきまで私に見せてくれた、無邪気な笑顔の面影もない。

『絶対に、コイツらは――――』

 許さない。


 私は奴らの動きに注意を払いながら大きく深呼吸する。
「スゥ――、ハァ――」多分大丈夫。

 ここに来るまでに、殆ど自分の状態は分かった。
 森でオオカミの魔物数匹を圧倒し、殲滅した事から把握した。

 私の強さはこの世界でも問題ない。
 だからこんな男どもに私が負けるはずが無い。


「――――ユーア、私の背中におぶさって、しっかり掴まっててくれる? 振り落とされないようにギュッと掴まっててね」

 怯えたままのユーアに笑顔で話しかける。
 そしてユーアがおぶさりやすいように腰を少し屈める。

「は、はいっ! スミカお姉ちゃんっ!」

 戸惑いながらこんな状況でも言うことを聞いて背中におぶさる。

 うん、ユーアはやっぱりいい子だねっ!

『ん?』

 でもものすごく軽い……。
 キチンと食事できてないんだろうか? 体も小さいし。

 って、それは後回しだ。

「それと、私がいいって言うまで目を閉じててくれるかな?」
「は、はい、わかりましたっ!」

 ユーアが背中に強く抱きついたのを確認して、前傾姿勢になる。
 後ろ脚には「グググッ」と力を入れる。

『速攻でっ――――』 

 そして溜めた力を一気に開放して男どもに疾走する。
 ローギアから一気にトップギアに。0~100に。

『――――潰してやる。ユーアの為にっ!』

 シュ―   ン


「「なぁっ!!」」

 奴らは私の動きに驚くだけで、咄嗟に動けるものがいなかった。

 私はアイテムボックス内からあるものを中空に出現させた。


 その瞬間――――


「「うわっ!な、なんだっ! め、目が痛えぇっっ!?」」

 私を中心に膨大な光が溢れ出し、男どもの目を不能にする。


 『閃光手榴弾』

 これも私のゲーム内のアイテムの一つ。

 ただ眩いだけの強力な光を放つだけで音響効果はない。
 それでも一時的に視界を奪うことが出来る。

 奴らは私の動きに驚き、私を注視していた為、中空に投げた閃光弾の光をまともに浴びる事となった。

「よしっ!」

 そのまま私は奴らの目前まで迫り、スキルを発動する。


 【透明壁LV.1】

 1.『自身の半径2メートルの障壁を張れる』
 2.『自身の半径2メートル範囲にて操作可能』


 手を伸ばし、前面2メートルに透明壁スキルを展開する。

 そのまま私は一足飛びで、奴らの間合いに深く入る。
 もちろん背中のユーアを振り落とさないようにだ。

 そして体を捻り透明壁スキルを振り抜く。


「ぶっ飛べぇっ!!」

 ブフォンッ

「がはぁっ!!」

 その手応えで奴らの一人を吹っ飛ばす。
 最初の男は10メートル程吹っ飛んでいった。

「よしっ!」 一人目っ!

 未だ動けない男たちを確認し、更にスキルを振り回す。
 まるでハンマー投げのように。

 それを男たちの中心で独楽コマの様に。

「んんんんっっ!!」

 ブフォンッ!

 そんな凶悪な風切り音をした私の攻撃は――――

 ドッ、ガガガガガッッ!!!!

 近くの男たちを巻き込み横薙ぎに吹っ飛んでいく。
 まるで大型のジープに跳ねられたように。

「これで5人っ!」

 残りの奴らは未だに閃光手榴弾により行動不能な状態だ。
 まだまだ私のターン。

 私は更に追撃をする為、男たちを視界に映しスキルを振り回していく。

「「ごあっ!!」」
「「あがっぁっ!!」」
「「ぐはぁっ!!」」


「――6、7、8、9、あと1人っ!!」 

 私は呟くように打っ飛ばした男を数えていく。
 これでユーアを怖がらせた奴らは最後の一人を残すだけだ。

 ブフォンッ
 スカッ

「えっ!?」

 だがラスト一人への攻撃だけは、後ろに飛び跳ねて躱されていた。


『ああ、そういえばがコイツが残ってたっけ……』

 そこには不敵な笑みを浮かべる、リーダー格の男だけが残っていた。


「……お前、魔法を使うのかァ? だったら高く売れるぜぇッ!」

 そんな下卑た笑みを浮かべる男がそこにいた。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...