剣も魔法も使えない【黒蝶少女】は、異世界に来ても無双する?

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第1蝶 プロローグ〇ボクっ娘少女との出会い編

寝落ちから覚めたらそこは…

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基本は『ほのぼの』とお話が『スローペース』で進んでいきます。

主人公の澄香は剣も魔法も使えませんが、引きこもり時代のチート装備(衣装)の透明壁のスキルが使えます(ゲーム内アバターも)
西洋ファンタジーにSFゲームの武器を持ち込んだイメージです。
主人公の澄香は妹が大好きです。

※全体的にのんびりと進んで行きます。
※少女・幼女の成分が増えていきます。
※ちょっとだけ残酷な表現があります。

――――――――



――――いつも助けてくれてありがとう。澄香お姉ちゃん――――


「待っててねっ! 清美っ! 今行くからっ!!」


 私は、敵を撃ち抜き、切り裂き、爆殺し、撲殺、絞殺していく。

 妹の清美を囲む敵を、あらゆる手段を用いて消していく。
 私の攻撃で致命傷を受けた敵全てが、淡い光となって消滅していく。


「清美っ! お姉ちゃんが来たからもう安心だよっ! 出てきても大丈夫っ!」

「へっ?」

 私は【レストエリア】に隠れている妹に、そう声を張り上げる。
 一応、周囲を索敵するが、もう辺りに敵はいない。


「ううっ~」

 そんな清美はひょこっと顔だけ出して、恐々と様子を伺っている。

「あっ!!」

 そして、私の姿を見つけて、トテテと小走りに駆け寄ってくる。

 タタタッ
 ガバッ!

「こ、怖かったよぉ~~! 澄香お姉ちゃんっ!!」
「うん。ごめんね。遅くなっちゃって」

 半泣きになりながら胸に抱き着いてくる。
 私は「よしよし」と言って、いつものように頭を撫でる。


「でも清美、いつも言ってるでしょう? レストエリアから出る時は狙われやすいんだから、まずは索敵をして、閃光手榴弾とかグレネードで――――――」

「うんっ! いつも助けてくれてありがとう、澄香お姉ちゃん!!」

 最後まで言い終わる前に、更に強く抱き着いてくる。

「あ~」

 そんな妹の清美に、まだ色々と言い足りなかったのだが、


「いいんだよ。だって妹を守るのはお姉ちゃんの仕事でしょう? だからそんなに気にしないでいいよ」

「え―っ! だったらボクのお仕事は?」

「うん、それはね?――――」

 ギュッと小さな体を抱き返しながら、


「妹は、お姉ちゃんに甘える事が仕事なんだよ」

 そう耳元で優しくつぶやく。


 そんな妹の清美は、元々の性格なのか、はたまた単純に不器用なのか? なかなかスキルが上がらずに、いつも私に助けられてしまう。

 いや、一番の理由は子供だったからだろう。
 姉の私よりも一回り以上、歳が離れているのだから。

 そんな私は、この可愛い妹を守るために、がむしゃらに強くなって、ソロ最強のプレイヤーまで登り詰めたのだから。



※※※



「ううん………………」

 懐かしい夢を見ていた。
 清美が世界からいなくなってから、もう5年以上経っている。

 あの頃を思い出す度に、強く胸が締め付けられ、途方もない程の喪失感と、著しい虚無感が私を襲っていた。

 けれど――――


『……なんだろう?』

 久し振りに見た、悲しい筈だった清美の夢は、何故か私の心を暖かく、そして優しく包み込んでいた。


 ――――いつも助けてくれてありがとう。澄香お姉ちゃんっ!――――


「う、うん…………」

 そんな記憶に思い馳せながら、次第に私の意識は現実に戻っていった。
 そして、いつもの様に、いつもの時間に、いつもの景色で目を覚ます筈だった。

 なのに…… なんでこうなったっ!?


「っ!?」

 圧迫感を感じ、ハッと目を見開く。


「い、いやいや、嘘でしょうっ!」

 なんで起きたら目の前に『顔』があるのっ!?


 そう、目を開けてみたら、目の前に顔っていうか、私の上に被さるように、決して触れない位置で人が乗っていたのだ。

 ちょうど私と重なって、寝ているように――――


「し、しかも…………」

 浮いているっ!?

「こ、これって一体どういう状況っ!? た、確か私は……」

 いつものように、陽が昇り切るまでログインしてたはず。
 リアルよりも、一日の滞在時間が逆転してしまった、あの世界に。

 大事な者と、大事な時間をたくさん過ごした。
 そして手に入れた以上に、失ったものもたくさんあった。

 悲嘆も虚無感も絶望も、相反する歓喜も愉悦も希望も、全てを経験した、あの世界にいたはず。


 なのに、ここって?

「………………ん」

 首を捻って周りを見てみる。
 明らかに部屋の風景ではない。


「これって、もしかして違う世界なの?」

 肌に感じる温度や風や景色が、何となくここは違うと感じる。
 なんの証拠も確証もない、けれど――――


「…………うん、でも」

 ただ、この世界は綺麗だなって思った。


 見たことのない木々や、鮮やかな花や蝶。
 嗅いだことのない穏やかな空気に、暖かく頬を撫でる風。
 そして森の隙間から覗く真っ青な空。


 息を吸い込み、小さく深呼吸する。


「ふぅ………… ここきっと、違う世界なんだ……」

 誰に言うでもなく一人呟く。

 きっとそうだ。
 そうに違いない。それでも――――


 私はと思った。


 そんな私はきっと、切っ掛けが欲しかったんだと思う。
 自分の世界から抜け出し、未来へと進むための。

 清美がいなくなって、もう5年以上。

 ひたすらに強くなろうと、清美のいないあの部屋で、清美のいないゲームの世界で、清美を守る為に、ただただ強くなった…………

 そこに、清美はいないとわかっていても、もう戻ってこないと知っていても、私は抜け出せずにいたんだ。

 でも今は…………


「…………うん」

 ホッとしている私がここにいる。

 そう、これでいいんだ。
 、私自身で変えないといけないんだ。


「それじゃ、そろそろこの状況も変えないとね?」

 目の前の浮遊している、謎の少年? 少女? を見てそう呟いた。

 
 そしてこの人物との邂逅こそが、この世界に於いての、私の生きる糧となり、私が生きる意味となった。

 そう。私が私に戻れる、運命の出会いが、この世界にはあった。

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