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アドとも仲良くなりたい楓奈
しおりを挟むメドが慣れない収納魔法で、間違って上下逆に出した冒険者ギルドは
私がもう一度収納して元の土地に戻した。
これで私は怒られないかもしれない。
さすが私の嫁候補のメドだよねっ!
まぁ、それでも屋根と床には大穴が開いてるんだけどね。
私が墜落した時に屋根から貫通して開けたから。
『………………』
「フーナさまごめんなさい」
「えっ?」
メドが私にトコトコと近づいてきて呟くように謝ってきた。
「い、いいって別にっ!元々はわたしが魔法の制御ができなかったせいだしっ!メドがいなかったら、あのギルドの建物無くなってたもんっ!」
「だからありがとねっ」て言いながら
さりげなく後ろから肩を抱く。
『♪』
そして今度は自然を装って「クンカクンカ」してみる。
メドの肩を抱きながら、その首筋を。
自然を装って匂いを嗅ぐなんて行為があるかどうか
正直わからないけど、メドが傷心している今がチャンスだ。
「がうっ!」
「うわっ!?」
何て考えてたらアドが後ろから吠え立ててきた。
私は驚いてメドから離れてしまう。
『~~~~~っ!!』
何だってアドはいつも私とメドの邪魔をするのっ!
『もうっ!』
そんなアドを私は睨みつける。
これ以上邪魔されないように威圧してやるんだからっ!
じぃ~~~~~~~
「――――――」
「っ!? が、がうっ!」
お、アドが何となく動揺している…………
気がする。
「じぃ~~~~~~」
「………………が、がるるっ!」
効いてる効いてるっ! よね?
「あっ!」
そんなアドを見て、私は思い立つ。
ある一つの可能性に。
『いつも、私にちょっかい出してくるアドって実は……』
寂しいんじゃないの?
その絡んでくる殆どが、私がメドと仲良く見える時。
イチャイチャとメドと私がくっついている時。
『き、きっとそうだ……アドは私の事も――――』
わたしはアドをよく観察してみる。
『…………♪』
うん、相変わらずいいもの(胸)持ってるねっ!
それに憎まれ元気っ娘に似合う八重歯もいいねっ!
「はっ!?」
じゃなくて、アドの様子を見るんだよっ!
『………………』
アドの小さな体は、私を見ながら小刻みに震えている。
小さな手も握りしめて、如何にも悲しそうに見える。
『…………やっぱりそうだ』
私は怖くないアピールする為に、合わせていた目の片目を閉じる。
要はウインクって奴だね。
パチパチッ
ほら、もう怖くないよっ!
可愛い私のウインクで気付いてよっ!
「がるぅ?」
「おっ? いい感じ?」
「何でバチバチと瞬きばかりしてんだぁっ? 目に埃でも入ったかぁ?」
脇でそれを見ていたルーギルはフーナを見てそう思った。
「よ~し、いい子だねっ!」
「が、がるるっ!」
私はすり足でまだ威嚇しているアドに近付いていく。
もう少しで捕まえられる。
そうしたらきっと警戒心を解いて仲良くなれる。
ついでに私はアドの体を無条件で堪能できる。
「げ、ひゃひゃひゃひゃひゃ――――!」
「っ!!!!」
パチパチ ※ウインクの音
も、もう少しっ!
パチパチ
「が、がうっ!!」
グサッ
「あっ いったあぁっ!! め、目がぁ――――っ!!」
私は突如襲った両目の痛みに、目を抑え地面をゴロゴロ転がる。
な、何っ? 一体どうしたのっ!?
ウインクしながら近づいてたら目に激痛がぁっ!!
「いたぁぁぁいっ!!」 ゴロゴロゴロゴロ。
「お前は何をしてんだっ?」
地面で痛みにのたうち回る私に見かねて
声を掛けてくれるルーギル。
「な、何って、アドと仲良くしようとしたら目に激痛がっ!」
私は涙目になりながら、ルーギルを見てそう答える。
因みにアドの姿はもうなかった。
「はぁ? 仲良くって、あの変な歩き方で近づいて、瞬きをしてたやつかぁ?」
「瞬きっ? 変な歩き方っ!? し、失礼だねっ!」
私は溢れる涙を拭いながらルーギルに反論する。
何なのっ? 私が頑張ってアドと仲良くなろうとしてたのにっ!
「だってお前、如何にもおかしな動きしてたぞっ? 新たな挑発かと思ったぞっ。両腕を前に出して変な奇声を上げながらつま先立ちで近づいていくし。まぁ、足はローブが長すぎて見えなかったがそんな歩き方だったぞっ?」
「…………………」
「そんで、アドだっけか? あのボイン幼女は。それでアドはお前が目を閉じた瞬間に目潰ししてメドの後ろに隠れたぞ? あれが仲良くなる方法なのか、お前らの間では」
「…………………」
私はパンパンと装備の埃を払ってゆっくり顔を伏せ立ち上がる。
別に装備は汚れてないけど、何となく顔を上げづらかった。
だって、色々やらかしたみたいなんだもん。
ルーギルの話聞いてると。
一方で落ち込む私のその脇では
「アド。フーナさまに謝って痛がってる」
「だ、だってあの姉ちゃん俺を食べようとっ!」
「フーナさまはあれが普通だから」
「そ、そうなのかっ?」
「そう、あれが通常運転」
「ま、まじかっ!」
「~~~~~~っ」
無意識に傷口に塩を塗り込む幼女の二人がいた。
※※※
「それでフーナたちは結局何者なんだっ?」
「え、えっ! な、何者ってっ!?」
落ち込んでいた私にフイとルーギルがそう聞いてくる。
この世界に来て初めて聞かれたから思わずどもっちゃったよ……
それにしてもどうしようっ。
そんなこと急に聞かれても、何も決めてないよっ!
きっと私が他の世界から来たとか、女神の願いの事とか、エンシェントドラゴンのENDとか、メドたちがドラゴンだって事は話せないよね?
私はぐるぐると頭の中で考える。
その際に周囲を見渡すが、メドたちの姿が見当たらなかった。
こんな私のピンチなのに……
で、でも今聞かれてるのは私だっ! な、何か考えないとっ!
何か怪しまれない設定を――――
「で、何だって?」
「そ、そうだね、え、え~と、幼女かなっ?」
「それは見ればわかる。いや、それでも色々おかしいけどなっ」
「ま、魔法使いっ?」
「それもさっきわかったっ。その小ささで凄げぇ魔法使いだってなっ!」
「魔法使い幼女っ?」
「それは両方合わせただけだろうっ?」
「~~~~~~っ!!」
「じぃ~~~~」
「っ!!!」
な、なんでこんなにしつこく聞いてくるのこの男はっ!!
や、やっぱり幼女に興味があるただのロリ男じゃないのっ!!
私は沸騰する頭でルーギルを睨みつける。
メドとアドと私たちの天敵を。
「小人族」
「うんっ?」
「ワタシたちは小人族」
そう言って出てきたのは姿が見えなかったメドだった。
その脇にはアドがメドの腕を抱いて付いてきている。
「あ、小人族かぁっ! ならその容姿でその魔法も納得かもなっ!」
ルーギルはメドの返事を聞いて腕を組み頷いている。
合点がいったと言う風な感じだ。
『よ、良かったぁ~~~~』
私は心の中でホッと胸をなでおろす。
さすがはメドだねっ! よっ! 将来の私のお嫁さんっ!!
何てメドに心の中で称賛を送る。
称賛と言うか、願望だけど。
「それで」
「うん?」
「それであの建物の屋根と床壊したのってフーナさまなの?」
「えっ!?」
「中も酷く荒れてた」
「あっ」
「ああ、それはフーナで間違えないぜっ! 俺が見てたからなっ!」
私たちのやり取りを聞いていたルーギルが口を挟む。
今までいなかったのってギルドの中を確認してたって事?
「フーナさま、それで――」
「あ、あ、あ、ご、ごめんなさ~~~~~~いっ!!」
私はメドが最後まで何かを言い切る前にすぐさま土下座した。
メドの表情が分からないから余計に恐いんだよねっ!
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