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080 9月12日 七緖くんの部屋にて 3/3
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「ど、どういう事?」
私の問いかけに七緖くんはバンスクリップで留めた髪の毛をぐちゃぐちゃに両手でかき混ぜ天を仰いだ。
「手を繋ぐやんか。ほうしたら次はキスをしたなるやろ?」
「えっ何でキス?」
手を繋いだら繋いで満足する──のではないのだろうか。
何故すぐキスがしたくなるの?
私はわけが分からず七緖くんに聞き返す。七緖くんは私の「何故」という問いかけに益々イライラして弾ける様に続けた。
「僕はその先まで想像してしまうんや。手を繋いだら唇が触れあうだけのキス。次は濃厚なキス。キスしながら抱きしめる。抱きしめたら次は巽さんに触りたい。服の上やのうてもちろん素肌に。ほれから擦りつけて、中に入りたいんや!」
「な、中って……え?」
(それってその、エッチって事よね?)
私は七緖くんの想像の凄さに驚いてしまう。
「ほやのに巽さんはそんな先までは考えてへんやろー!」
「う、ん……」
「手を繋いだら満足やろうし。キスはチュって唇が合わさったらええやろし。でも、僕は、僕は……」
そこまで溜めに溜めた七緖くんは私の肩をぎゅっと掴んで叫んだ。
「全部先まで想像してまうんやから。アカンやろ!」
七緖くんの琥珀色の瞳がギラギラと光っていた。
「……」
七緖くんの正直な言葉を聞いて私は呆然としてしまった。
そして七緖くんは全てを吐き出す様に言い切った後──開いた口を閉じてゴクンと唾を飲み込んだ。
それから数秒間固まり、だらだらと冷や汗を流しながら私の顔を困った様に見つめた。
「……と、いう事を考えとるから、僕は」
「うん。分かった」
「わ、分かってくれたらええよ。ほやから、その……二人きりはちょっと、いやかなり危ないから今も」
視線を彷徨わせて私の肩から手を離す。
私は二の句が継げずにポカンと七緖くんを見つめるしかなかった。
七緖くんはそんな私の顔を見て、自分の顔を両手で覆う。それからくぐもった声で呟いた。
「ああ~僕の阿呆……何でこんな事を言うてしもうたんやろ。しかも泣かせてまで……ほれやのに、ちょっと嬉しいとか思うてるのもアカンし! もう、もう、もう~」
最後はずっと「モウモウ」を連呼して、牛みたいになっていた。
とにかく困り果てたという様な声を上げていた。
(七緖くんも悩んでいた。それは『嫌い』とかそういう単純な事じゃなくて。好きだからこそ悩んでくれた。そういえば男の子って二回目以降そればっかりってなるからヤダって友達も言っていたっけ)
そうならない様に七緖くんがストッパーをかけていたのかと思うと、七緖くんの気持ちが嬉しくて、自分の悩んでいた事がちっぽけに思えて恥ずかしくなった。
「……ごめんね。七緖くん。そんな事言わせて」
私は正座をしたまま小さくお辞儀をして謝った。
「いや、これは僕の本心やからそんなんは気にせんでええよ。ほれより幻滅したやろ? エッチな事ばかり考える僕で。あははは~」
七緖くんは引きつりながら乾いた笑いを上げる。
「何で?」
「え?」
(幻滅なんてそんなのない。それよりとても嬉しい)
「だって私も一緒だもん」
「一緒って言われても」
「私だって七緖くんと二回目がしたいし」
そう言って七緖くんを見つめる。だけど七緖くんは再びあたふたし始める。
「この状況で巽さんはほんな事言う?! 今説明したばっかりやのに。僕は何処でも想像するんやで?」
七緖くんは私の言葉に再び混乱し始めていた。
「私だって同じだよ?」
「同じやない! そのうち青姦とか言い出したらどないするつもり?」
まさかの言葉が飛び出てきて私は驚く。
(でも……七緖くんも同じだ)
「外はちょっと困るけど」
「ちょっとって……外でもオッケーみたいな言い方したら僕は誤解するよ? もっと困ってくれな僕が困るやん!」
混乱している七緖くんの台詞に吹き出しそうになる。
「今はお家の中だよ? 私も手を繋ぎたい」
私は七緖くんの前で両手を出す。
正座して向かい合った七緖くんはその手を見てゴクンと唾を飲み込んだ。
七緖くんは繋いだその次を──想像しているに違いない。
(今の私も七緖くんと同じだ。先を想像して、期待をしてしまう)
七緖くんはテーブルに置いてあるアイスコーヒーを手にすると一気に飲み干し口を手の甲で拭った。それから私をじっと見つめて低い声で呟いた。
「止められんよ?」
「うん。良いよ? 私は大丈夫」
「もーホンマに……僕の葛藤も知らんと。この子は」
そう言って七緖くんは私の手をぎゅっと握りしめた。
私の問いかけに七緖くんはバンスクリップで留めた髪の毛をぐちゃぐちゃに両手でかき混ぜ天を仰いだ。
「手を繋ぐやんか。ほうしたら次はキスをしたなるやろ?」
「えっ何でキス?」
手を繋いだら繋いで満足する──のではないのだろうか。
何故すぐキスがしたくなるの?
私はわけが分からず七緖くんに聞き返す。七緖くんは私の「何故」という問いかけに益々イライラして弾ける様に続けた。
「僕はその先まで想像してしまうんや。手を繋いだら唇が触れあうだけのキス。次は濃厚なキス。キスしながら抱きしめる。抱きしめたら次は巽さんに触りたい。服の上やのうてもちろん素肌に。ほれから擦りつけて、中に入りたいんや!」
「な、中って……え?」
(それってその、エッチって事よね?)
私は七緖くんの想像の凄さに驚いてしまう。
「ほやのに巽さんはそんな先までは考えてへんやろー!」
「う、ん……」
「手を繋いだら満足やろうし。キスはチュって唇が合わさったらええやろし。でも、僕は、僕は……」
そこまで溜めに溜めた七緖くんは私の肩をぎゅっと掴んで叫んだ。
「全部先まで想像してまうんやから。アカンやろ!」
七緖くんの琥珀色の瞳がギラギラと光っていた。
「……」
七緖くんの正直な言葉を聞いて私は呆然としてしまった。
そして七緖くんは全てを吐き出す様に言い切った後──開いた口を閉じてゴクンと唾を飲み込んだ。
それから数秒間固まり、だらだらと冷や汗を流しながら私の顔を困った様に見つめた。
「……と、いう事を考えとるから、僕は」
「うん。分かった」
「わ、分かってくれたらええよ。ほやから、その……二人きりはちょっと、いやかなり危ないから今も」
視線を彷徨わせて私の肩から手を離す。
私は二の句が継げずにポカンと七緖くんを見つめるしかなかった。
七緖くんはそんな私の顔を見て、自分の顔を両手で覆う。それからくぐもった声で呟いた。
「ああ~僕の阿呆……何でこんな事を言うてしもうたんやろ。しかも泣かせてまで……ほれやのに、ちょっと嬉しいとか思うてるのもアカンし! もう、もう、もう~」
最後はずっと「モウモウ」を連呼して、牛みたいになっていた。
とにかく困り果てたという様な声を上げていた。
(七緖くんも悩んでいた。それは『嫌い』とかそういう単純な事じゃなくて。好きだからこそ悩んでくれた。そういえば男の子って二回目以降そればっかりってなるからヤダって友達も言っていたっけ)
そうならない様に七緖くんがストッパーをかけていたのかと思うと、七緖くんの気持ちが嬉しくて、自分の悩んでいた事がちっぽけに思えて恥ずかしくなった。
「……ごめんね。七緖くん。そんな事言わせて」
私は正座をしたまま小さくお辞儀をして謝った。
「いや、これは僕の本心やからそんなんは気にせんでええよ。ほれより幻滅したやろ? エッチな事ばかり考える僕で。あははは~」
七緖くんは引きつりながら乾いた笑いを上げる。
「何で?」
「え?」
(幻滅なんてそんなのない。それよりとても嬉しい)
「だって私も一緒だもん」
「一緒って言われても」
「私だって七緖くんと二回目がしたいし」
そう言って七緖くんを見つめる。だけど七緖くんは再びあたふたし始める。
「この状況で巽さんはほんな事言う?! 今説明したばっかりやのに。僕は何処でも想像するんやで?」
七緖くんは私の言葉に再び混乱し始めていた。
「私だって同じだよ?」
「同じやない! そのうち青姦とか言い出したらどないするつもり?」
まさかの言葉が飛び出てきて私は驚く。
(でも……七緖くんも同じだ)
「外はちょっと困るけど」
「ちょっとって……外でもオッケーみたいな言い方したら僕は誤解するよ? もっと困ってくれな僕が困るやん!」
混乱している七緖くんの台詞に吹き出しそうになる。
「今はお家の中だよ? 私も手を繋ぎたい」
私は七緖くんの前で両手を出す。
正座して向かい合った七緖くんはその手を見てゴクンと唾を飲み込んだ。
七緖くんは繋いだその次を──想像しているに違いない。
(今の私も七緖くんと同じだ。先を想像して、期待をしてしまう)
七緖くんはテーブルに置いてあるアイスコーヒーを手にすると一気に飲み干し口を手の甲で拭った。それから私をじっと見つめて低い声で呟いた。
「止められんよ?」
「うん。良いよ? 私は大丈夫」
「もーホンマに……僕の葛藤も知らんと。この子は」
そう言って七緖くんは私の手をぎゅっと握りしめた。
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