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024 7月30日 もっと知りたい
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「はぁ~」
私は自宅のお風呂の湯船にゆっくりとつかり首を浴槽の縁に預けた。
(今日も、色々と七緖くんとお話したなぁ)
短い時間だけれど毎日七緖くんと話をすると、自分と怜央と萌々香ちゃんとの事を見直すきっかけになる。
大抵、お風呂や寝る前のふとした瞬間に七緖くんとの会話を思い出しては、自分の考えをまとめていく。
「幼なじみって距離が近いだけなのよね……」
チャプンと湯船の上のお湯を掬う。入浴剤を入れたお風呂は乳白色だった。
(怜央や萌々香ちゃんが変わってしまった様に、私の事も昔のままじゃないのに)
「そうよ。私だって変わったんだから!」
私は掬ったお湯を少し高い位置から落としてみる。
(……変わった、かな?)
ずるずると湯船に口元まで沈む。
子供の頃から目立つ怜央の隣にいたせいもあるのか、何となく存在感が薄い私だ。怜央が派手すぎると思う。他の幼なじみは怜央を見て、それから行動を決めていた様にも思う。
そして萌々香ちゃんはと言うと。少し年が離れているけれども皆から『可愛い』と言われ続けたせいなのか、おませな女の子だったし。
そういえば、思い通りにならないとよく泣いていたかな。いつもなだめるのは私と怜央だった様な気もする。だから、怜央や萌々香ちゃんからすると、意志が弱いと言うか一歩後ろを歩いていると思われている、のかな?
「ぶくぶく……」
口元から空気を出して泡を立てる。
(つまりは、舐められていると。そして私自身そう振る舞う様に出来ている──逆らえないのは積み重ねのせいなのかな)
そんな私も陸上を始めてからは自分で驚くほど意地っ張りな上に負けず嫌いだという事を知った。だっていつも二位なのが心底悔しくて悔しくて。そんな気持ちを表情に出すのも悔しいほどなのに。でも──
そこで私はお湯の中に頭まですっぽりと潜った。
(畜生! っていう気持ちを表に出すのも悔しいと感じる程、意地っ張りなのに。『無表情・無冠の女王』なんてあだ名をつけられるから余計周りの皆は誤解するのよ)
瞳をぎゅっと閉じてお湯の中で息を止める。真っ暗な空間で呟く言葉にもう一人のモヤモヤした黒い私が呟いた。
『皆、本当の私を知らないから好き勝手な事を言うのよ。本当はこういう私がいるって言う事も認めさせるべきだったのよ。その為にはどうしたらよかったのかしらね?』
黒くてモヤモヤしたもう一人の私が、珍しく穏やかで爽やかな顔をして笑っているのが浮かんだ。
(そうね、あなたの言う事は一理あるわね)
七緖くんとのやりとりを振り返る一日がこうして過ぎていく。そうすると、心の中の黒くてモヤモヤしたもう一人の私と向かい合う事がそんなに怖くないと思う様になっていた。
「ぷはぁ!」
瞑想の様な事を終え湯船から顔を出して大量の空気にありつく。湯船から立ち上がり鏡に映った自分の顔を見つめる。時々、七緖くんの瞳の中に映った自分の顔を見るけれども、凄く難しそうな顔をしている事がある。そのたびに変な顔って思う。
勝手に話して、勝手に悩んで、答えに詰まる馬鹿な私を──七緖くんはじっと見つめている。
(それにしても、七緖くんって何であんなに私の話を聞いてくれるのかな。変な生き物だと思っているのかしら。それに、何であんなに考え方の引き出しがあるのだろう。と言うか、私の世界が狭すぎるのかな?)
「……もっと、七緖くんの話も聞いてみたい」
(そして、七緖くんの事をもっと知りたい)
私はそんな事を思う様になっていた。
私は自宅のお風呂の湯船にゆっくりとつかり首を浴槽の縁に預けた。
(今日も、色々と七緖くんとお話したなぁ)
短い時間だけれど毎日七緖くんと話をすると、自分と怜央と萌々香ちゃんとの事を見直すきっかけになる。
大抵、お風呂や寝る前のふとした瞬間に七緖くんとの会話を思い出しては、自分の考えをまとめていく。
「幼なじみって距離が近いだけなのよね……」
チャプンと湯船の上のお湯を掬う。入浴剤を入れたお風呂は乳白色だった。
(怜央や萌々香ちゃんが変わってしまった様に、私の事も昔のままじゃないのに)
「そうよ。私だって変わったんだから!」
私は掬ったお湯を少し高い位置から落としてみる。
(……変わった、かな?)
ずるずると湯船に口元まで沈む。
子供の頃から目立つ怜央の隣にいたせいもあるのか、何となく存在感が薄い私だ。怜央が派手すぎると思う。他の幼なじみは怜央を見て、それから行動を決めていた様にも思う。
そして萌々香ちゃんはと言うと。少し年が離れているけれども皆から『可愛い』と言われ続けたせいなのか、おませな女の子だったし。
そういえば、思い通りにならないとよく泣いていたかな。いつもなだめるのは私と怜央だった様な気もする。だから、怜央や萌々香ちゃんからすると、意志が弱いと言うか一歩後ろを歩いていると思われている、のかな?
「ぶくぶく……」
口元から空気を出して泡を立てる。
(つまりは、舐められていると。そして私自身そう振る舞う様に出来ている──逆らえないのは積み重ねのせいなのかな)
そんな私も陸上を始めてからは自分で驚くほど意地っ張りな上に負けず嫌いだという事を知った。だっていつも二位なのが心底悔しくて悔しくて。そんな気持ちを表情に出すのも悔しいほどなのに。でも──
そこで私はお湯の中に頭まですっぽりと潜った。
(畜生! っていう気持ちを表に出すのも悔しいと感じる程、意地っ張りなのに。『無表情・無冠の女王』なんてあだ名をつけられるから余計周りの皆は誤解するのよ)
瞳をぎゅっと閉じてお湯の中で息を止める。真っ暗な空間で呟く言葉にもう一人のモヤモヤした黒い私が呟いた。
『皆、本当の私を知らないから好き勝手な事を言うのよ。本当はこういう私がいるって言う事も認めさせるべきだったのよ。その為にはどうしたらよかったのかしらね?』
黒くてモヤモヤしたもう一人の私が、珍しく穏やかで爽やかな顔をして笑っているのが浮かんだ。
(そうね、あなたの言う事は一理あるわね)
七緖くんとのやりとりを振り返る一日がこうして過ぎていく。そうすると、心の中の黒くてモヤモヤしたもう一人の私と向かい合う事がそんなに怖くないと思う様になっていた。
「ぷはぁ!」
瞑想の様な事を終え湯船から顔を出して大量の空気にありつく。湯船から立ち上がり鏡に映った自分の顔を見つめる。時々、七緖くんの瞳の中に映った自分の顔を見るけれども、凄く難しそうな顔をしている事がある。そのたびに変な顔って思う。
勝手に話して、勝手に悩んで、答えに詰まる馬鹿な私を──七緖くんはじっと見つめている。
(それにしても、七緖くんって何であんなに私の話を聞いてくれるのかな。変な生き物だと思っているのかしら。それに、何であんなに考え方の引き出しがあるのだろう。と言うか、私の世界が狭すぎるのかな?)
「……もっと、七緖くんの話も聞いてみたい」
(そして、七緖くんの事をもっと知りたい)
私はそんな事を思う様になっていた。
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