7 / 9
07 正解
しおりを挟む イオリが思った以上に機織りという仕事に造詣があると知ったグラバーは熱心に工場見学をさせてくれた。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
初期の機織り機が見たい。
イオリの願いを叶える為に機織り達の小屋を出て、敷地の奥に向かう事になった。
案内された広場では年老いたエルフの男女が若い職人に手解きをしているところだった。
「カロス、ダイダ、お邪魔しますよ。」
気兼ねなく入っていくグラバーに2人の老エルフは何事かと顔を上げた。
「こちらのイオリ様は、ハニエル様とフェンバイン様もお認めになられた、大切なお客様です。
是非、イオリ様に初期の織り機を見せて頂きたいのです。」
2人は人族のイオリの周りにエルフのナギと獣人のラックとコーラルが纏わりついているのを見て、微笑んだ。
「イオリ様、こちらは長年、職人を勤め上げられた御2人です。
今は、若い職人を育てる事に尽力してくださっているんですよ。」
突然やってきた人族の若者にも2人は挨拶をすると手招きしてくれた。
「皆が騒いでた人族だね。
若い人。
機織りに興味があるのかい?」
グラバーを引き連れて近くの小屋に入っていったダイダを見送るとカロスは嬉しそうにイオリに椅子をすすめた。
「子供の頃、祖母が使っていました。」
「おや、それじゃ祖師様と故郷が同じなのかい?」
「祖師様?」
カロスは楽しそうに頷いた。
「機織り機をルーシュピケにもたらした、かつての恩人の事さ。」
「もしかして、その方は十蔵という名ではないですか?」
「ふむ・・・。
確かに、そんな名の響きだった気がするが・・・よく考えれば、ずっと祖師様としか呼んだ事がなかったな。
そうだ、獣人のとこに医者がいるんだが、その夫が詳しいぞ。」
「キキ医師の旦那さんのグリーズさん?」
確かに、歴史学者とキキ医師が言っていたのをイオリは思い出した。
「そう、その男だ。
学者というらしい。
もし、直接の話を聞きたければハニエルの爺様だな。
あの人はワシらよりも500年は年寄りだからね。
歴史の生き字引だよ。」
国の成り立ちから知っているハニエル老が十蔵を直接知っている可能性があると聞いて、イオリは胸を高鳴らせた。
「お前さんも祖師様の事を知っていなさるのか?」
カロスの問いかけにイオリは、どう答えればいいのか迷った。
「俺、アースガイルから来たんですよ。
十蔵さんはアースガイルを建国した初代アースガイル王であるマテオ様の親友なんです。
それで、折に触れて聞く名前なんですよ。」
「ほう、なんと なんとな。
それは初めて聞いたな。
学者の男が喜びそうな話だ。」
「カカカっ」と笑うカロスの後ろからダイダが戻ってきた。
「人の子。
これが、初期の織り機だよ。
祖師様が己の手で作られた希少な物だから、大切に扱っておくれ。」
ダイダが差し出すソレは、イオリが知っている機織り機よりも小さく抱えられる程しかない。
しかし、それ以上に重く感じるのは時を重ねてきた先人の置き土産だったからかもしれない。
3
お気に入りに追加
558
あなたにおすすめの小説

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。


若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました
瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる