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122 ナツミとネロ その1
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私、ザック、マリン、ノアの四人で海を満喫した日から数日経った。
雨季は完全に消え去り暑い夏がやって来た。カラッと晴れた日が続く。夕方にスコールもたまにはあるけれどもそれすらも気持ちがいい。
裏町に出掛けた日から毎日、夕方前にザックが店を連れ出して海に連れていってくれる様になった。ザックはダンさんとジルさんに交渉をして、貝や魚を少し捕ってきてくれるなら海に行って来てもいいという条件を出してくれた。
「一生懸命捕ってきます!」
「ナツミの一生懸命は凄すぎてかなわん。魚貝類は少しでいいからな」
私の前のめりの宣言にダンさんは苦笑いだった。
そんな私とザックの姿に感化される人が現れる。
「私も行く!」
「あたしも行く!」
声を上げたのはマリンとミラだった。二人が言い出すのは想定内だったのかジルさんは笑いながら返事をして、ノアとシンをお付きにして許してくれた。
「いいわよ。本格的にオベントウ売りに行く前の話題になって。海で泳ぐのも解禁にしましょう。あんた達三人があの水着姿になって海ではしゃいでいる姿を見て、夜の集客が見込める様な気がするし」
単純なジルさんの想定だったが、本当にその通りになった。
海でヘルシーな素肌を晒すミラと透き通った肌のマリン。男性だけではなく町の女性からも注目を集める。
しかし、一番色々な意味で注目を集めているのは私だった。自分でも注目されている事がよく分かった。
だって、得体の知れない黒髪の女は泳ぐし潜るし、更には一人で魚貝類を捕獲する。
「女が海に入るなんて。しかも上等な踊り子がいつも側にいるってどういう事だ? 潜って魚を捕っているだと? 信じられない」
と、コソコソ覗きに来る輩も増えた。
もちろん覗きはザックやノア、シンが撃退してくれる。
そんな中私は魚捕獲に躍起になっていた。ザックから銛の付き方を教わったのだ。
これが楽しくて楽しくて。毎日銛を片手にザックに連れら海に行く。
女性が海に入るだけでも驚きの『ファルの町』なのに更に銛を持って海までスキップする女。皆興味津々。町で注目されるけれどもザックが私をいつも抱き寄せてこう言ってくれる。
「気にするな。ナツミは格好いいぜ」
だから私は満面の笑みで過ごす事が出来た。
それにこの間なんてタコを捕ってしまった。エヘ。
「オークトって、ナツミは本当に漁師になるつもりか?」
銛に刺さったタコを見ながらザックが呆れて笑う。
「食べられるかなぁ。揚げてもいいし、たこ焼きとかいいなぁ。あーでも機械がないかぁ」
私が銛で突いたままのタコを眺めながら日本でかつて食べた食事を思い出す。たこ焼き器はないけれども、お好み焼き風ならありなのではないのかな。
「揚げるってオークトを? ナツミって喰うことばかり考えてるんだな。女が一人で銛を持って魚を捕る事自体普通じゃないけれども。もっとさぁ何か……こう、あるだろ? こんなグニャグニャした生物を捕まえてるんだからさぁ」
食べる方法について色々考えている私の顔を見てシンが呆れていた。
毎日三十分程だけれども夕方前の海を泳ぐ事が出来る。別荘で水泳教室をした皆と一緒に再び水で戯れる事が出来る日々。こんな嬉しい事はない。
おかげで私の肌から消えかけていた日焼けの痕が再び復活する様になった。それを見たザックが毎晩「肌の手入れが必要だな」等と称して肌の手入れをしてくれる。香油の様な液体を使ってマッサージをしてくれるが、一体誰の入れ知恵だろう。大体手入れだけで終わった試しはない。
充実して楽しい日々が続く中、とうとう『ジルの店』のシェフ強面ダンさんの『おにぎり』が完成した。
お昼過ぎに私、マリン、ミラ、ジルさんの女性陣が厨房内で、目の前に並べられたおにぎりを真剣に見つめ各々一つ手に取る。
それを緊張した面持ちで見つめるシェフのダンさん。協力をした他の料理人、ニコも固唾を呑んで見守る。
私は黒っぽい葉っぱを巻いたダンさんの手でにぎられた大きめのおにぎりを頬張る。
何という事でしょう。ふんわり柔らかご飯。口の中でほろほろ解ける。
「うう……凄く美味しぃ。最初にダンさんが作った岩おにぎりが嘘みたい。それにニコのアイデアが効いているね。バナーポテの葉を塩漬けして、おにぎりを包むなんてさ。しかも殺菌効果があるから衛生的だし。それに何よりおにぎりに巻いた事でお米が手につかない。葉っぱがほんのり塩味で海苔代わりになって最高だね」
そして、具に味を調整したハーブ肉団子が顔を出す。これも柔らかい。焼いたのではなく炊く事にしたらしい。辛すぎず甘すぎずしょっぱすぎず。ボリュームタップリ。女性ならこの一個でお腹が膨れる。
私は満面の笑みで微笑む。
その顔を見たダンさんと料理人、そしてニコが嬉しそうに笑った。
オベントウを販売する話が初めて出た時にニコが話してくれた、バナーポテの葉っぱが海苔代わりになるとは。
バナーポテの葉っぱを蒸すと、殺菌効果があるので昔から薬を包むことに使用したり、怪我を治療するにも使われる。もちろん食べても問題はない。味はしないけれども。
その中でも掌の大きさの葉っぱを蒸して塩漬けにする。例えるならば黒っぽい大葉をしんなりさせた様になった。おにぎりを包むと、海苔代わりになる。
おにぎり全てを覆うのではなく、着物の様になるので三角の頂点は白いお米が見えている。塩味以外の味もない葉っぱなので特におにぎりの邪魔はしない。
「のり? のりって何かな。よく分からないけれども、バナーポテの葉っぱの考えを褒められて嬉しいや。えへへ」
バナーポテの葉っぱを塩漬けにして活用する事を提案したニコが、照れて鼻の頭を掻いた。
「ニコの柔軟な発想は素晴らしいね」
誰もが「バナーポテの葉っぱなんて」と言う中、見事におにぎりへの展開に成功させた。私は小さく拍手をした。
「違うよ。全部ナツミのおかげだよ。それにね凄い発見があったんだ」
ニコがエプロンの裾を摘まみながらモジモジする。
「凄い発見って?」
おにぎりを平らげながら私はニコに尋ねた。
「うん。計算を教えてもらった事がきっかけかな。勉強って楽しいんだね。それからだよバナーポテの葉っぱの活用について考える事にしたのは。そうしたら僕、自分が魔法を使える事に気がついたんだよ。まだ小さな魔法しか使えないけれども」
「えっ!? それは凄い」
私は驚いて目を丸めた。
「本当だ驚きだったな。慌ててネロとウツに相談したのさ。このまま伸ばしていけば軍の学校に入学できるだろうと言っていた」
モジモジするニコの隣でダンさんが両腕を組んで笑っていた。
「考える事や勉強する事がきっかけだったんだよ。これもナツミのおかげだね。ありがとう。僕頑張ってこれからも自分が出来る事を少しずつ増やして努力するよ」
ニコがキラキラと輝く様な笑顔で応えてくれた。
「そんなお礼を言わなくても。ニコが頑張ったからだよ」
私も嬉しくて笑った。
将来、ウツさんやネロさん(どちらも変態だけど)のあとを追いかけて、医療魔法を使う道に進むのかなぁ。とにかく、どんな大人になるのか楽しみだ。頼むから変態にだけはならないで欲しいと切に願う。
そして傍らでマリンもミラも美味しいと声を上げた。
「ねぇこのおにぎりは種類によって薄焼き卵を巻くものもあるのね。三角頭の部分だけが見えていると『ひよこ』にも見えないし中身が見えていいわね。へぇ~巻き方を変えるとこんなに印象が変わるのね。頂点が赤いご飯だから、これはトマト味のやつね。あっ、大きなチキンが具に入ってるわ。美味しい~」
「そうよね。私のはパエリアっぽいけど具がやっぱり真ん中にゴロッと入っているわ。これは揚げた白身魚ね! へぇ~変わってるけれども美味しいわ」
マリンもミラもモグモグとハムスターみたいに頬張る。食べながら話すのは品がないかもしれないけれどそれぐらい美味しい事を伝えたかった様だ。
ダンさんの隣の料理人も嬉しそうに笑った。
「そうなんだよな。あれ程『ひよこ』に見えたのにさ、薄焼き卵の巻き方を変えればいいって事に気がついたのもニコなんだぜ。あとはさ、具を大きく真ん中に入れるか小さくして混ぜるか悩んだけど。やっぱゴロッとした具が入っている方が感動だろ?」
鼻の下を擦る様に笑い胸を張った料理人だった。
「そうね細かいところまで気が配られていていいわね。皆素晴らしいわ。頑張ってくれてありがとう」
ジルさんもおにぎりを頬張りながら満足そうに笑った。
「ジルに褒められるとは……『まぁまぁ及第点ね』とか言うと思ったのに」
嬉しいくせにひねくれた様に笑うのはダンさんだった。
「私だって褒めるわよ。さて、あとは一日に何個売るかってところね。ネロの設計でザック達が作った荷車にはどのぐらい乗るのかしら。その数を検討して報告してくれるかしら。あと原価についても知りたいわ。あんまりかかっていないのは理解しているけれどもね。お米にバナーポテの葉っぱでしょ。この中に入っているのも白身魚はナツミが捕獲してきたやつよね」
ジルさんがダンさんの肩を軽く叩いて椅子から立ち上がった。
私の捕獲した魚が使われているなんて嬉しい。協力する事が出来た気がする。
「ナツミが捕ってきた魚ってよく分かったな。もろもろ後で計算して報告するさ」
ダンさんが軽く笑って片手を上げた。
立ち上がったジルさんは残っているおにぎりの列を見つめる。
「まだ試食の数はあるわね。庭で剣や体術の練習をしているザックとノアには後で食べてもらうとして」
ジルさんが考え込んでいた。
そうなのだ。
海に連れ出してくれた翌日から、ザックとノアは剣術と体術の練習をお昼にする様になった。みっちりじっくり一時間。二人共休憩を入れずにずっと練習をしている。それだけ奴隷商人とぶつかる可能性が近くなったと感じているのかもしれない。
とても近くから観察できないほど二人の練習は激しかった。なんせお互い真剣で本物の剣を使うものだから怪我もあるし怖い。ザック付きのシンも付き合うのだが、休憩なしなので三十分位でへばっていた。シンの出来が悪いのではない。
それだけ短い時間でハードに練習していると言う事だ。ジルさんも驚きの声を上げたぐらいだった。
「へぇ。流石にこれは……剣術も体術もどの軍人にも負けないわね。ノアとザックどちらが上なのかしらね」
淡々とこなしているがノアとザックの二人のレベルがとても高いから結着がなかなかつかない。毎日同じ事の繰り返し。この積み重ねがいざという時に重要になるのだとジルさんは付け加えていた。
なので、集中しているザック達をおにぎりの試食だけで邪魔するわけにはいかない。
ジルさんは何かを思いついたのかポンと手を叩いた。
「そうだわ。これは完成形だから『ジルの店』以外の誰かに試食してもらいましょう。ねぇナツミ、外に出て適当な誰かに試しに食べてもらって感想を聞いてきてよ」
と、ジルさんが意外な事を言い出した。
「え。私が?! それに食べてもらうって誰に?」
突然話を振られたので私は目を丸める。そして間髪入れずにジルさんに尋ね返す。
外に出て適当な誰かって……言われても。突然で困る。
「誰でもいいわよ。感想を聞ければいいんだから」
「そんな適当な」
「適当じゃないわよ。軍人にこのおにぎりをオベントウとして売るんでしょ。知らない誰かに今後売っていくってのに、試食の感想ぐらい聞けなくてどうするの?」
「それはそうですけれども」
ジルさんってば無茶苦茶な事を言ってくる。しかし要点を得ているので言い返せない。
「それにナツミってこの界隈じゃ最近有名人でしょ? 皆ホイホイくるわよ」
「ホイホイ……」
そんな事はない。大体ホイホイされているのは海でマリンやミラを見たくて集まる男性の様な気がする。私は銛を持ってザックと手をつないで歩くから変な目で見られているだけなのに。
「え。それってナツミが一人で試食の声をかけに外に出るって事ですか?」
驚いてマリンが声を上げる。
「そうよ。だってこれからマリンとミラは夜の踊りの打ち合わせをするでしょ? それにニコは洗濯係だし。暇なのはナツミよね」
うっ。ぐっさり刺さるジルさんの一言。
暇ってわけではないですよ。流石ジルさんだった。今日の作業担当把握も完璧だ。
「それに、オベントウの売り方ってよく分かってないのよねぇ」
ジルさんが人指し指を自分の口の前に立てて首を傾げた。
「えぇ~そんなの裏町にある露店と同じじゃないんですか?」
ミラが不思議そうに声を上げる。
「だって露店は固定された店じゃない。あらかじめ作った食事を持っていくと、何か足りない事もあるかもしれないでしょ」
ミラの疑問にもジルさんはひらりとかわす。
「だからオベントウを提案したナツミに何か不備はないか確認して欲しいと思ってね」
ジルさんは軽くウインクをする。
これは何が何でもジルさんは私を行かせるつもりだ。
仕方ないなぁ、オベントウの話をしたのは私だし。どんな事があるか試してみるべきだという意見も理解できる。
「分かりました。行って来ます」
私はジルさんの顔を見て強く頷いた。
ジルさんはそんな私に満足したのか手を一つ叩いた。
「それなら早速行って来て頂戴。外に出るって行っても『ファルの宿屋通り』この塀の中だけよ。間違えても裏町に降りたりしないでね。それならば護衛はザックである必要はないわね。護衛と言うより保護者的な? 今の時間暇をしているのは確か──」
保護者って……私が苦笑いをした時、ジルさんはピーンと思いついた様だった。しかしその顔が意地悪で面白そうな顔をしたので私は嫌な予感がした。
「試食してもらうのはいいのだけれども」
私はお昼過ぎの炎天下の中、首から吊した銀のトレイを抱えながら呟く。
銀のトレイにはガラスの蓋を被せておにぎりに埃が被らない様にする。トレイの左右の持ち手には長めの紐をつけてさながら駅弁を手売りで売る姿の様になっていた。
この炎天下だ。バナーポテの葉っぱに包んでいるとはいえ出来るだけ早く食べてもらわないと。
いつもの様にウエイトレス姿である水着を着て短パン姿で『ジルの店』を出る。おにぎりを『ジルの店』以外の人に食べてもらう為に。
まずは、誰に食べてもらおうか──
そう考えた時だった。私の本日の護衛──ではなく保護者の彼が隣で声を上げた。
「はぁ~久しぶりに日差しを浴びる気がします。ああ、何と言うのでしょう。こう人間も日差しを浴びる事が大切なんですねぇ」
青白い肌を晒した銀縁眼鏡のブリッジを押し上げる彼。今日は珍しく眼鏡を綺麗に洗っている。油膜は見えなかった。変態そうな……ではなかった、優しそうな瞳が弧を描いている。
彼は日差しを浴びているのが数日ぶりらしく灰になりそうな勢いだが、とても爽やかな笑顔だった。
そんな笑顔だけは爽やかな彼と二人きり。『ジルの店』を出る時、二人きりだと知ったマリンとミラが心配そうに送り出してくれた。
ジルさんどうして彼なのですか……
「さぁさぁナツミさん早速行きましょう。ナツミさんと一緒にしかも二人きりとは嬉しいですねぇ。僕、頑張っちゃいますよ」
どうして今日の私の護衛……もとい保護者は、一流の変態ネロさんなのですか!
ネロさんはノアのお兄さんであり、魔法部隊の精鋭だ。医療魔法に長けており、観察力も鋭い。
今は『ジルの店』に常駐してザックやノアに力を貸している。自分のお兄さんであるアルさんと奴隷商人を捕まえる為に力を貸してくれているが。
実態はやたら情事を覗きまくる変態だった。もう既に二回もザックとのその、アレを私は覗かれている。
しかし、何だかんだでノアやザックからの信頼は絶大だった。私の治癒魔法に気づいてくれたのもネロさんだったけれど。
だけれどネロさんは変態ないのに~何故二人っきりにするのですかジルさんの馬鹿~!
「さて。手始めに試食は門番の方にしてもらうのはどうでしょう?! 男性でしかも元軍人ですからとても参考になる意見を聞くことが出来そうですね」
そう言ってネロさんは生成りのチュニックを翻して私の腕をグイグイ引っ張った。
「わわっ。もう! ネロさん急に引っ張らないでくださいよっ~」
細腕ながら意外と力強いネロさん──覗きの天才であり一流の変態である彼に、私は引きずられながら門番さん達の元に急いだ。
雨季は完全に消え去り暑い夏がやって来た。カラッと晴れた日が続く。夕方にスコールもたまにはあるけれどもそれすらも気持ちがいい。
裏町に出掛けた日から毎日、夕方前にザックが店を連れ出して海に連れていってくれる様になった。ザックはダンさんとジルさんに交渉をして、貝や魚を少し捕ってきてくれるなら海に行って来てもいいという条件を出してくれた。
「一生懸命捕ってきます!」
「ナツミの一生懸命は凄すぎてかなわん。魚貝類は少しでいいからな」
私の前のめりの宣言にダンさんは苦笑いだった。
そんな私とザックの姿に感化される人が現れる。
「私も行く!」
「あたしも行く!」
声を上げたのはマリンとミラだった。二人が言い出すのは想定内だったのかジルさんは笑いながら返事をして、ノアとシンをお付きにして許してくれた。
「いいわよ。本格的にオベントウ売りに行く前の話題になって。海で泳ぐのも解禁にしましょう。あんた達三人があの水着姿になって海ではしゃいでいる姿を見て、夜の集客が見込める様な気がするし」
単純なジルさんの想定だったが、本当にその通りになった。
海でヘルシーな素肌を晒すミラと透き通った肌のマリン。男性だけではなく町の女性からも注目を集める。
しかし、一番色々な意味で注目を集めているのは私だった。自分でも注目されている事がよく分かった。
だって、得体の知れない黒髪の女は泳ぐし潜るし、更には一人で魚貝類を捕獲する。
「女が海に入るなんて。しかも上等な踊り子がいつも側にいるってどういう事だ? 潜って魚を捕っているだと? 信じられない」
と、コソコソ覗きに来る輩も増えた。
もちろん覗きはザックやノア、シンが撃退してくれる。
そんな中私は魚捕獲に躍起になっていた。ザックから銛の付き方を教わったのだ。
これが楽しくて楽しくて。毎日銛を片手にザックに連れら海に行く。
女性が海に入るだけでも驚きの『ファルの町』なのに更に銛を持って海までスキップする女。皆興味津々。町で注目されるけれどもザックが私をいつも抱き寄せてこう言ってくれる。
「気にするな。ナツミは格好いいぜ」
だから私は満面の笑みで過ごす事が出来た。
それにこの間なんてタコを捕ってしまった。エヘ。
「オークトって、ナツミは本当に漁師になるつもりか?」
銛に刺さったタコを見ながらザックが呆れて笑う。
「食べられるかなぁ。揚げてもいいし、たこ焼きとかいいなぁ。あーでも機械がないかぁ」
私が銛で突いたままのタコを眺めながら日本でかつて食べた食事を思い出す。たこ焼き器はないけれども、お好み焼き風ならありなのではないのかな。
「揚げるってオークトを? ナツミって喰うことばかり考えてるんだな。女が一人で銛を持って魚を捕る事自体普通じゃないけれども。もっとさぁ何か……こう、あるだろ? こんなグニャグニャした生物を捕まえてるんだからさぁ」
食べる方法について色々考えている私の顔を見てシンが呆れていた。
毎日三十分程だけれども夕方前の海を泳ぐ事が出来る。別荘で水泳教室をした皆と一緒に再び水で戯れる事が出来る日々。こんな嬉しい事はない。
おかげで私の肌から消えかけていた日焼けの痕が再び復活する様になった。それを見たザックが毎晩「肌の手入れが必要だな」等と称して肌の手入れをしてくれる。香油の様な液体を使ってマッサージをしてくれるが、一体誰の入れ知恵だろう。大体手入れだけで終わった試しはない。
充実して楽しい日々が続く中、とうとう『ジルの店』のシェフ強面ダンさんの『おにぎり』が完成した。
お昼過ぎに私、マリン、ミラ、ジルさんの女性陣が厨房内で、目の前に並べられたおにぎりを真剣に見つめ各々一つ手に取る。
それを緊張した面持ちで見つめるシェフのダンさん。協力をした他の料理人、ニコも固唾を呑んで見守る。
私は黒っぽい葉っぱを巻いたダンさんの手でにぎられた大きめのおにぎりを頬張る。
何という事でしょう。ふんわり柔らかご飯。口の中でほろほろ解ける。
「うう……凄く美味しぃ。最初にダンさんが作った岩おにぎりが嘘みたい。それにニコのアイデアが効いているね。バナーポテの葉を塩漬けして、おにぎりを包むなんてさ。しかも殺菌効果があるから衛生的だし。それに何よりおにぎりに巻いた事でお米が手につかない。葉っぱがほんのり塩味で海苔代わりになって最高だね」
そして、具に味を調整したハーブ肉団子が顔を出す。これも柔らかい。焼いたのではなく炊く事にしたらしい。辛すぎず甘すぎずしょっぱすぎず。ボリュームタップリ。女性ならこの一個でお腹が膨れる。
私は満面の笑みで微笑む。
その顔を見たダンさんと料理人、そしてニコが嬉しそうに笑った。
オベントウを販売する話が初めて出た時にニコが話してくれた、バナーポテの葉っぱが海苔代わりになるとは。
バナーポテの葉っぱを蒸すと、殺菌効果があるので昔から薬を包むことに使用したり、怪我を治療するにも使われる。もちろん食べても問題はない。味はしないけれども。
その中でも掌の大きさの葉っぱを蒸して塩漬けにする。例えるならば黒っぽい大葉をしんなりさせた様になった。おにぎりを包むと、海苔代わりになる。
おにぎり全てを覆うのではなく、着物の様になるので三角の頂点は白いお米が見えている。塩味以外の味もない葉っぱなので特におにぎりの邪魔はしない。
「のり? のりって何かな。よく分からないけれども、バナーポテの葉っぱの考えを褒められて嬉しいや。えへへ」
バナーポテの葉っぱを塩漬けにして活用する事を提案したニコが、照れて鼻の頭を掻いた。
「ニコの柔軟な発想は素晴らしいね」
誰もが「バナーポテの葉っぱなんて」と言う中、見事におにぎりへの展開に成功させた。私は小さく拍手をした。
「違うよ。全部ナツミのおかげだよ。それにね凄い発見があったんだ」
ニコがエプロンの裾を摘まみながらモジモジする。
「凄い発見って?」
おにぎりを平らげながら私はニコに尋ねた。
「うん。計算を教えてもらった事がきっかけかな。勉強って楽しいんだね。それからだよバナーポテの葉っぱの活用について考える事にしたのは。そうしたら僕、自分が魔法を使える事に気がついたんだよ。まだ小さな魔法しか使えないけれども」
「えっ!? それは凄い」
私は驚いて目を丸めた。
「本当だ驚きだったな。慌ててネロとウツに相談したのさ。このまま伸ばしていけば軍の学校に入学できるだろうと言っていた」
モジモジするニコの隣でダンさんが両腕を組んで笑っていた。
「考える事や勉強する事がきっかけだったんだよ。これもナツミのおかげだね。ありがとう。僕頑張ってこれからも自分が出来る事を少しずつ増やして努力するよ」
ニコがキラキラと輝く様な笑顔で応えてくれた。
「そんなお礼を言わなくても。ニコが頑張ったからだよ」
私も嬉しくて笑った。
将来、ウツさんやネロさん(どちらも変態だけど)のあとを追いかけて、医療魔法を使う道に進むのかなぁ。とにかく、どんな大人になるのか楽しみだ。頼むから変態にだけはならないで欲しいと切に願う。
そして傍らでマリンもミラも美味しいと声を上げた。
「ねぇこのおにぎりは種類によって薄焼き卵を巻くものもあるのね。三角頭の部分だけが見えていると『ひよこ』にも見えないし中身が見えていいわね。へぇ~巻き方を変えるとこんなに印象が変わるのね。頂点が赤いご飯だから、これはトマト味のやつね。あっ、大きなチキンが具に入ってるわ。美味しい~」
「そうよね。私のはパエリアっぽいけど具がやっぱり真ん中にゴロッと入っているわ。これは揚げた白身魚ね! へぇ~変わってるけれども美味しいわ」
マリンもミラもモグモグとハムスターみたいに頬張る。食べながら話すのは品がないかもしれないけれどそれぐらい美味しい事を伝えたかった様だ。
ダンさんの隣の料理人も嬉しそうに笑った。
「そうなんだよな。あれ程『ひよこ』に見えたのにさ、薄焼き卵の巻き方を変えればいいって事に気がついたのもニコなんだぜ。あとはさ、具を大きく真ん中に入れるか小さくして混ぜるか悩んだけど。やっぱゴロッとした具が入っている方が感動だろ?」
鼻の下を擦る様に笑い胸を張った料理人だった。
「そうね細かいところまで気が配られていていいわね。皆素晴らしいわ。頑張ってくれてありがとう」
ジルさんもおにぎりを頬張りながら満足そうに笑った。
「ジルに褒められるとは……『まぁまぁ及第点ね』とか言うと思ったのに」
嬉しいくせにひねくれた様に笑うのはダンさんだった。
「私だって褒めるわよ。さて、あとは一日に何個売るかってところね。ネロの設計でザック達が作った荷車にはどのぐらい乗るのかしら。その数を検討して報告してくれるかしら。あと原価についても知りたいわ。あんまりかかっていないのは理解しているけれどもね。お米にバナーポテの葉っぱでしょ。この中に入っているのも白身魚はナツミが捕獲してきたやつよね」
ジルさんがダンさんの肩を軽く叩いて椅子から立ち上がった。
私の捕獲した魚が使われているなんて嬉しい。協力する事が出来た気がする。
「ナツミが捕ってきた魚ってよく分かったな。もろもろ後で計算して報告するさ」
ダンさんが軽く笑って片手を上げた。
立ち上がったジルさんは残っているおにぎりの列を見つめる。
「まだ試食の数はあるわね。庭で剣や体術の練習をしているザックとノアには後で食べてもらうとして」
ジルさんが考え込んでいた。
そうなのだ。
海に連れ出してくれた翌日から、ザックとノアは剣術と体術の練習をお昼にする様になった。みっちりじっくり一時間。二人共休憩を入れずにずっと練習をしている。それだけ奴隷商人とぶつかる可能性が近くなったと感じているのかもしれない。
とても近くから観察できないほど二人の練習は激しかった。なんせお互い真剣で本物の剣を使うものだから怪我もあるし怖い。ザック付きのシンも付き合うのだが、休憩なしなので三十分位でへばっていた。シンの出来が悪いのではない。
それだけ短い時間でハードに練習していると言う事だ。ジルさんも驚きの声を上げたぐらいだった。
「へぇ。流石にこれは……剣術も体術もどの軍人にも負けないわね。ノアとザックどちらが上なのかしらね」
淡々とこなしているがノアとザックの二人のレベルがとても高いから結着がなかなかつかない。毎日同じ事の繰り返し。この積み重ねがいざという時に重要になるのだとジルさんは付け加えていた。
なので、集中しているザック達をおにぎりの試食だけで邪魔するわけにはいかない。
ジルさんは何かを思いついたのかポンと手を叩いた。
「そうだわ。これは完成形だから『ジルの店』以外の誰かに試食してもらいましょう。ねぇナツミ、外に出て適当な誰かに試しに食べてもらって感想を聞いてきてよ」
と、ジルさんが意外な事を言い出した。
「え。私が?! それに食べてもらうって誰に?」
突然話を振られたので私は目を丸める。そして間髪入れずにジルさんに尋ね返す。
外に出て適当な誰かって……言われても。突然で困る。
「誰でもいいわよ。感想を聞ければいいんだから」
「そんな適当な」
「適当じゃないわよ。軍人にこのおにぎりをオベントウとして売るんでしょ。知らない誰かに今後売っていくってのに、試食の感想ぐらい聞けなくてどうするの?」
「それはそうですけれども」
ジルさんってば無茶苦茶な事を言ってくる。しかし要点を得ているので言い返せない。
「それにナツミってこの界隈じゃ最近有名人でしょ? 皆ホイホイくるわよ」
「ホイホイ……」
そんな事はない。大体ホイホイされているのは海でマリンやミラを見たくて集まる男性の様な気がする。私は銛を持ってザックと手をつないで歩くから変な目で見られているだけなのに。
「え。それってナツミが一人で試食の声をかけに外に出るって事ですか?」
驚いてマリンが声を上げる。
「そうよ。だってこれからマリンとミラは夜の踊りの打ち合わせをするでしょ? それにニコは洗濯係だし。暇なのはナツミよね」
うっ。ぐっさり刺さるジルさんの一言。
暇ってわけではないですよ。流石ジルさんだった。今日の作業担当把握も完璧だ。
「それに、オベントウの売り方ってよく分かってないのよねぇ」
ジルさんが人指し指を自分の口の前に立てて首を傾げた。
「えぇ~そんなの裏町にある露店と同じじゃないんですか?」
ミラが不思議そうに声を上げる。
「だって露店は固定された店じゃない。あらかじめ作った食事を持っていくと、何か足りない事もあるかもしれないでしょ」
ミラの疑問にもジルさんはひらりとかわす。
「だからオベントウを提案したナツミに何か不備はないか確認して欲しいと思ってね」
ジルさんは軽くウインクをする。
これは何が何でもジルさんは私を行かせるつもりだ。
仕方ないなぁ、オベントウの話をしたのは私だし。どんな事があるか試してみるべきだという意見も理解できる。
「分かりました。行って来ます」
私はジルさんの顔を見て強く頷いた。
ジルさんはそんな私に満足したのか手を一つ叩いた。
「それなら早速行って来て頂戴。外に出るって行っても『ファルの宿屋通り』この塀の中だけよ。間違えても裏町に降りたりしないでね。それならば護衛はザックである必要はないわね。護衛と言うより保護者的な? 今の時間暇をしているのは確か──」
保護者って……私が苦笑いをした時、ジルさんはピーンと思いついた様だった。しかしその顔が意地悪で面白そうな顔をしたので私は嫌な予感がした。
「試食してもらうのはいいのだけれども」
私はお昼過ぎの炎天下の中、首から吊した銀のトレイを抱えながら呟く。
銀のトレイにはガラスの蓋を被せておにぎりに埃が被らない様にする。トレイの左右の持ち手には長めの紐をつけてさながら駅弁を手売りで売る姿の様になっていた。
この炎天下だ。バナーポテの葉っぱに包んでいるとはいえ出来るだけ早く食べてもらわないと。
いつもの様にウエイトレス姿である水着を着て短パン姿で『ジルの店』を出る。おにぎりを『ジルの店』以外の人に食べてもらう為に。
まずは、誰に食べてもらおうか──
そう考えた時だった。私の本日の護衛──ではなく保護者の彼が隣で声を上げた。
「はぁ~久しぶりに日差しを浴びる気がします。ああ、何と言うのでしょう。こう人間も日差しを浴びる事が大切なんですねぇ」
青白い肌を晒した銀縁眼鏡のブリッジを押し上げる彼。今日は珍しく眼鏡を綺麗に洗っている。油膜は見えなかった。変態そうな……ではなかった、優しそうな瞳が弧を描いている。
彼は日差しを浴びているのが数日ぶりらしく灰になりそうな勢いだが、とても爽やかな笑顔だった。
そんな笑顔だけは爽やかな彼と二人きり。『ジルの店』を出る時、二人きりだと知ったマリンとミラが心配そうに送り出してくれた。
ジルさんどうして彼なのですか……
「さぁさぁナツミさん早速行きましょう。ナツミさんと一緒にしかも二人きりとは嬉しいですねぇ。僕、頑張っちゃいますよ」
どうして今日の私の護衛……もとい保護者は、一流の変態ネロさんなのですか!
ネロさんはノアのお兄さんであり、魔法部隊の精鋭だ。医療魔法に長けており、観察力も鋭い。
今は『ジルの店』に常駐してザックやノアに力を貸している。自分のお兄さんであるアルさんと奴隷商人を捕まえる為に力を貸してくれているが。
実態はやたら情事を覗きまくる変態だった。もう既に二回もザックとのその、アレを私は覗かれている。
しかし、何だかんだでノアやザックからの信頼は絶大だった。私の治癒魔法に気づいてくれたのもネロさんだったけれど。
だけれどネロさんは変態ないのに~何故二人っきりにするのですかジルさんの馬鹿~!
「さて。手始めに試食は門番の方にしてもらうのはどうでしょう?! 男性でしかも元軍人ですからとても参考になる意見を聞くことが出来そうですね」
そう言ってネロさんは生成りのチュニックを翻して私の腕をグイグイ引っ張った。
「わわっ。もう! ネロさん急に引っ張らないでくださいよっ~」
細腕ながら意外と力強いネロさん──覗きの天才であり一流の変態である彼に、私は引きずられながら門番さん達の元に急いだ。
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