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096 長い夜 その4
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「はぁ、はぁ、はぁ……」
最後は息を詰めていたので、肩で息をしながら心臓を鎮める。顔や髪の毛にザックの解き放った精が飛び散っていた。起き上がると、とろりと垂れて横座りした太股に一塊が落ちた。口に咥えないで先端だけを突いたせいで、顔に向かって飛び散ってしまった。
ザックも私の足元から溜め息をつきながら起き上がる。解き放って少しくったりしているザック自身も視界に入ったが、まだまだ大きなままだった。
ザックは私の体液でベタベタになった口元を拭いながら私に向き直る。
「はぁ、最後のナツミのが顔にかかっ、た──」
ザックは、ザック自身の精でベタベタになった私の顔を見て、驚いて目を見開き言葉を失っていた。
「飛び散っちゃった。えへへ」
私は、滴り落ちてくる白濁の液を掌で受け、口元に流れてくる分も舌を出して舐め取る。
体から放出された快感も手伝って、熱に浮かされている感じがする。
「と、飛び散っちゃった。じゃぁ、ないだろう」
熱に浮かされた様に薄く笑う私を見たザックは少し頬を赤らめる。
ザックは私の乱れた髪の毛をかき上げる。それから辺りを見回し、瞼の腫れをとるために使っていたタオルを見つけて手に取った。
近くの小さな桶に汲んでいた水に浸して固く絞り、私の顔にそっと当てて拭い取る。
「ぷっ。ふふふ……ザックのがブワッってなって」
「わ、分かった。分かったから、みなまで言うな。もー、ほら。垂れる。垂れるから」
私が大胆に話すせいか、ザックは照れてしまっている様だ。
珍しいね。照れるザックがとても可愛い。
ザックはタオルの面を変えて、私の至るところに飛び散った精を拭い取る。
二人の大惨事を最小限だけ片付けると、ザックがガラスコップにピッチャーから水を注いで手渡してくれた。
随分前に持ってきた水だから、温くなってしまった。それでも、水が喉を通ると気持ちがいい。二人それぞれのコップの水を飲み干すと、溜め息をついて笑い合った。
「久しぶりだから凄く出たな……しかも、先端を触れられただけでイクとか。あー、何だかスッゲぇ恥ずかしい」
ザックが照れながら私の脇の下に手を入れる。それから、ベッドの上で胡坐をかいている自分の足を跨がせ私を座らせる。
「そんな事ないよ。私なんてもう三回もイッちゃったし」
跨ぐとザックの熱い分身が私の股の間で顔を出している。
少しくったりしているが私を抱き上げた時、腹筋に連動しピクリと動いていた。私は足をザックの腰の後ろでしっかり組んだ。
ザックの膝の上に座ると同じぐらいの顔の高さになった。笑うとザックが私の髪の毛を大きな右手でかき上げて何度も撫でてくれる。
それ、凄く気持ちがいい。私は目を細めてうっとりとザックを見つめる。
「こら、目尻を赤くして微笑むな……」
「さっきので涙が出てきちゃった。落ち着いていたのに、目尻が赤くなったね」
私がおでこをつけてザックの首に手を回すと、ザックが照れながらも私の低い鼻先に小さなキスを落とした。
それから、あきらめた様に溜め息をついた。
「そんなに俺を誘ってくれるな。俺は、ナツミに溺れるしか出来なくなるだろ」
「だって、ザックとするの気持ちがよくて。言った事がない言葉を言ってみたり」
「へぇ、そうなのか。どんな言葉?」
ザックがクスクス笑いながら私の頬にキスをした。
「えっとねぇ『イイ』とか『キスがイイ』とか『イッちゃう』とか、あ……」
そこまで言って突然羞恥心が遅う。首から頭にかけてキューッと音を立て顔が赤くなるのが分かった。
その様子を間近で見ていたザックが目を丸くする。
「何でそこで照れるんだよ……もっと凄い事してるのに」
「な、何だか言葉を改めて言うと、凄く恥ずかしい!」
「いいじゃないか。それを言うのは俺が初めてなんだろ?」
「う、うん」
思い起こせば──秋とのセックスは一方的なものだった。口や手で愛撫されれば軽く達する事はあっても、こんなに深く何度も達する事なんてなかった。ましてや膣内なんて。
実のところ秋にしか体を開いた事がないので、セックスってこんなものなのだろうと思っていたけれど、違ったのだね。
「ザックとのエッチはね」
「ん?」
「初めての事ばかりで驚かされるよ。そもそも、エッチがこんなに気持ちがいいなんて知らなかった」
「初めての事ばかり?」
ザックが意外そうに声を上げる。
「うん。えっと。こんなに何度も達したり、そもそもキスがこんなに気持ちいいとか知らなかったし」
そうだザックのキスは本当に蕩けてしまう。キスだけで頭の芯が痺れて麻痺する様な感じになる。もっと、もっと、触れて欲しくなる。
「……」
ザックは何か言いたそうに一度口を開いたが、息を飲んでから口を閉じる。
「ザックに口とか手でするのも凄く好き。ザックだからだと思うけど、気持ちよさそうにしてくれるのを見ると『ああ、私でもザックを気持ちよく出来るんだな』って……幸せに思う」
そう言ってザックの唇に吸い寄せられる様に軽くキスをした。
ザックが私にしてくれる様に、一度唇を舐めて口を開いてもらう。その間からスルリと私の舌を滑り込ませる。そしてザックの待ち構えていた舌と絡める。それなのに、すぐにザックに主導権を取られてしまう。悔しくて私はすぐにキスを止める。
離れてしまった私を、ザックが眉を下げて軽く笑う。
「そこで止めるなよ……」
ザックは掠れた声でもう一度キスを強請る。
「だって……ザックがすぐに自分のキスにしちゃうから」
私は不満を口にして俯く。そしてザックを下から見上げてみる。
その私の顔を見てザックが頬を染めた。口を震わせながら呟く。
「そんな事言われても、ナツミのキスだってさ……焦らされて焦らされて、俺の中で何かが切れそうになる」
「切れる?」
「そうさ。なけなしの優しさとか、理性とか。そういうのが切れてしまいそうになる。いつかの、媚薬を飲んだ時ですら、快楽に溺れたって乱暴な事は一切した事がないのに……」
ポツポツと呟くザックだが、そこまで言うと我慢出来ないとばかりに顔を傾けて吸いつく様なキスをしてくる。
「んん。ザック、ザック……好き」
私はキスの間で囁く。
「俺も……」
ザックにゆっくりと体を倒され再びベッドに沈み込む。
ザックは腰の後ろにしっかり回した私の足を解く。
そして、私の膝の部分をそれぞれの両手で握りしめ大きく曲げる。
私の胸の辺りまで足を曲げて押さえつけると、再び大きく反り返り涙を流す様に先端を濡らしているザックの分身を股の間に擦りつける。
「んっ」
私は瞳を細めて擦られる花芯の刺激に耐える。シーツを握りしめてこれから来るであろう衝撃に耐えようとした。
そんな私の様子を優しく笑って、ザックがゆっくりと腰を落としてきた。
「俺も……っっ。ナツミに触れるとっ。俺も初めての事ばかりで驚くんだっ。っっ」
そこまで言うと、大きく反り返った熱い杭をゆっくり、ゆっくりと私の中に潜り込ませてくる。
え? 初めての事ばかりって。ザックは驚く程経験が豊富なのに?
そう尋ねようとしたが出来なかった。
ザックの熱い杭を一気に沈められる時とは違う快楽が私を襲う。
背中をゾクゾクと這い上がる快感に喉を反らせて目を見開く。
ゆっくりと滑りのある道を進んでくるザックに私は体を震わせる。
ザックの長くて太いものはゆっくりと進んで奥まで到達する。
「あっ!」
その瞬間思わず体が震えた。毛穴という毛穴が一瞬開き、汗が噴き出して私の体を冷やそうとする。
奥に入れただけなのに私は軽くイッてしまった。
「っ、うっ。んんっ」
私の達した振動がザックにも伝わったのか、目の前の整った顔が歪んだ。
「ハハ……いきなり、だな」
そう言ってキスを一つ唇に落とし、金髪をかき上げる。
「私も驚いた……はぁ」
私は突然絶頂を迎えた事に驚いた。甘い溜め息をつき余韻に酔いしれた。
私のボンヤリする顔を見て、ザックは瞳をスッと細めた。
ザックは私の曲がった膝を強く握りしめる。そして、上半身を起こして私の足を曲げたまま更に体重をかける。体が柔らかくてよかった。しかし、こんなにのしかかられると流石に動く事が出来ない。
少し緩めてもらおうとザックを見上げると、視線の合ったザックが静かに呟いた。
「ナツミ、すまない」
「え? あっ」
何故か謝るザックがゆっくりと腰を後ろに引く、もう少しで抜けそうになるところまで腰を引くが、再びゆっくりと私の中に入り込む。奥まで突き体を沈み込ませて私のおでこに自分のそれをつける。
「ああっ!」
再び奥を突かれる。
しかし、今度は震える快楽だけで達するまでには至らないが、こんなのを繰り返されたら堪らない。快楽にひたひたと浸かりっぱなしになりそうだ。
「今日はナツミが止めてと言っても、聞いてやれそうにない」
「あっ、ああああっ」
そう言ってゆっくりとリズムよく抽送をはじめた。
私とザックの肌がぶつかり、そして水音が聞こえる。
とても淫らな音だ。その間私は嬌声を上げるしか出来なくなる。
「あっ、あん。んんっ」
だらしなく喘ぎ声を上げる事しか出来ない程、気持ちがいい。
我慢するとかしないとかそんなのどうでもいい。
腰をゆっくりと動かしながらザックが私の舌と自分の舌を絡める。その時ザックは腰を横八の字に動かす。まるで、私に自分の形を覚えさせようとしている様だ。
隙間なく埋まっているはずなのに、改めてザックがどんな張をしているのか感じとろうと内壁が蠢いている様だ。
「あっ、んんっ。それぇ。気持ちよくなるの早くなるからっ」
「俺もこれ気持ち良いから好き」
ザックの汗がパタパタと落ちてくる。しかし私は膝を押さえつけられたままで、体をねじる事も出来ない。痛くはないが背中を駆け上がる、お腹の奥に蓄積される切なさに似た気持ちよさから一切逃れる事が出来ない。
私はザックに強請ってしまう。
「イイよぅ。気持ちイイっ。もっと、してっ。ああっ」
そう強請ってザックの首に手を回し抱きつく。
するとザックが腰を少し引いて浅い場所を突き上げ始める。何故か少し角度をつけて擦りつけてくる。
すると、恐ろしい程広がる様な感覚が突き抜ける。
「?!?!」
目を見開いて、言葉が継げなくなって息を詰める。
ザックを見上げると口の端を上げて笑った。
「ココだろ……分かるぜ。怖いぐらい気持ちがいいんだろ?」
私は首を小さく縦に振ってザックに気持ちを伝える。
何とか息を吐き出すが、上手く息が継げないぐらい気持ちがいい。
「あっ、あっ。あああ! そこ、そこ。イッちゃう、イッちゃう。イクっ!」
イクとばかり口走り、駆け上がってくる快楽があっという間に体の中で弾ける。
全身が震えると、高い声を上げて喉を反らせて達してしまう。
そのタイミングでザックは、私の膝から手を離してくれた。達した瞬間に離された両足をすぐに伸ばす事が出来ない。それからザックは今度私の腰を両手でつかんだ。
何とか息を吐き出した頃には、自分の額から玉の様な汗が噴き出していたのを感じた。しかし、ザックは私の腰をつかんだまま新たに律動をはじめる。すぐに繋がった部分から鈍い水音が聞こえる。
「んんんっ!」
達して震える膣内をずっと撫でられるのは、気持ちがいいを通り越し訳が分からなくなる。快楽が弾けて仰け反った後は、感覚が研ぎ澄まされて必要以上に敏感になっている。
そんな場所を更に刺激されると、気持ちいいという感覚が続いて恐ろしくなる。
「あっ、あああっ! イッてるからぁ、あっ。イッてるってばっ、ザック、ザック!」
確か温泉でも似た様な事があった。
その後意識がなくなる大惨事になったのに、今日はゆっくりと体がほぐれているのもあって、もっと鋭利な感覚に私は気が狂いそうになった。
「あっ、あああっ、……!!!」
声が出なくなりそうになった時、ようやくザックの動きが止まる。
ようやく止まった律動に私は詰めていた息を大きく吸った。
心臓が早鐘を打つ。短く息をするのを繰り返して、再び大きく息を吸って落ち着いた。
「っ、はぁ、はぁ……イキそうだった」
ザックも荒い息を繰り返した。ザックが達しそうだったから止めてくれた様だ。
気がつくとボタボタとザックの汗が雨の様に私の体に滴り落ちていた。
両手を私の顔の横、ベッドの上につき喉を軽く反らせて首を振って笑った。
「気持ちが良すぎて泣けたか?」
私は気がつくと涙をぼろぼろと溢していた。同時に鼻水を啜り、ようやくの事を声を上げる。
「はぁ。おかしくなるかと、思った」
「おかしくなればいいさ、今日は一度出したから中でも長いぞ」
ザックは笑いながら私の両足を抱え直して、私に自分の腰の後ろに巻きつける様に促す。
「もう……」
長いとか早いとか、気持ちよくしてくれるザックなら……そういうのどうでもいいのに。
私は涙を拭いながら両足をザックの背中の後ろに巻きつける。
そして、ザックは私の背中に両腕を回して横にごろんと転がる。
今度は私の背中を優しく下から上に撫でる。掌全体ではなく指の腹だけを使って、優しく柔らかく撫でる。
触れるか触れないかの様な羽の様な触り方に皮膚が粟立つ。その間休む事なく腰をユルユルと動かすザック。
「んっ、ああっ。気持ち、いい……」
「背中の肌も吸いつくなぁ」
「汗かいたからね。んん……」
「そうだなぁ。俺もスッゲぇ汗。シーツが冷たくて気持ちいいなぁ。あ。またココも尖ってる」
「ああっ!」
「! こら、中を締め付けるなよ」
「だって、そこを触られると奥がキュンってなる」
「気持ちいい?」
「うん。あっ、んん」
「可愛いなぁ」
今度は片手で背中を抱きしめながら、もう片方の手で胸の尖りを再び指で弾く。
ゆっくりと快感が溜まっていく。抽送に合わせて胸を弄られると膣内でザックの熱い杭を離すまいと蠢くのが分かる。
気持ちいい。気持ちいい。それ以外、世界に何もない。
「ザックッ、それ以上されるとまたイッちゃうから」
「ああ、いいぜ」
「あっ、ああん」
ザックが改めて私の背中をベッドに押しつけ、今度は体を起こして両手で胸の尖りを弄りながら腰を前後に動かす。今度は奥の方を擦る様にゆっくりと動く。
「んっ、もっとぉ。もっと触れて、もっと動いて」
私は胸を突き出しなが、腰を揺らしながらザックに強請る。
「ああっ、でもな、このぐらいが気持ちいいぜ? この部分がなザラッとしていて」
そう言いながら、ザックが腰の角度を少し変えて私のお腹の辺りをスッと片手で押さえた。突然だった、中の角度をもって突いた再奥の部分。おそらくザックのものでしか、届かない場所を突かれて、ジュワっと蜜が湧き出るのを感じる。
「ああっ、やだぁ。何それ? あっ、あああ!」
頭がジンと痺れる。体がうねり、足の指先が白くなるまで力が入る。
「ココなっ、俺もすぐにもっていかれるぐらい、気持ちよくてなっ、それに!」
「えっ? 何? 駄目っ、ああっ。おかしくなるっっ」
私はシーツを握りしめながら藻掻く。
「くっ、落ち着けほら、力を抜け」
「そ、そんなの無理。ああっ」
ザックは私に力を抜く様に促す。どうやってやれって言うのよ、力を抜くなんて。せめて胸を弄るのを止めてくれたら……
半ばパニックになる私に、ザックが熱い息を吹きかける様に耳元で呟いた。
「ナツミの中で、ココを突くとな、っ。俺のを根元から締め上げてもっと奥に来る様に促すんだ。ほら、奥に行くからさっ。ほら、力を少し抜け? なっ」
「ヒッ、ああっ」
そう言って腰の動きが速くなるザック。
ザックも低い声も快楽で跳ねる。私の中で気持ちがよくて耐えているのだろう。
私は悲鳴の様な声しか、上げられなくなってきた。
力を抜く、力を抜くって……
グルグル考えると少しずつ抜けてきた。が、今度は恐ろしいほどの快楽を迎え入れる事になり訳が分からなくなってきた。
「ああっ、無理っ。おかしくなるし、きちゃうからっ! 怖い、怖いよっ!」
「大丈夫だ最高に可愛い。ああっ、この部分が気持ちよくて俺はいつも溺れるんだ。こんなのはナツミだけなんだ、ああっ!」
瞬間スッと力が全て抜けた私は、体全体がフワッと宙に浮いた様な錯覚に陥る。そして──
「ヒッ、ィっっ。あああ……」
目の前のザックが涙で見えなくなり自分の声も聞こえない。
耳元でザーッザーッと血が流れる音がする。心臓だけが早鐘を打っていたのを聞いた。
ザック、ザック。好きなの、もうザックなしでは私は──
体と心が満たされるとこんなにも切なくて、気持ちよくて。
ようやく、息が継げる様になると視界が広がった。
失神ではないが、聴覚や視界が恐ろしく狭くなっていた事に気がつく。
お腹の奥に注ぎ込まれたザックの精と、私の蜜でシーツが色を変えるほど濡れていた。
ザックがギュッと私の体を抱きしめてくれた。
ザックは荒い息づかいの後で一つ溜め息をつく。私の顔に張り付いた髪の毛をかき上げて、溜まった涙を吸い上げてキスをしてくれた。
「こんなに気持ちがいいのは、ナツミだけだ。搾り取られるって言うの? 多分……いや、止めとこ」
白い歯を見せて笑った。
ザックも金髪がおでこに張り付くほど汗だくになっている。
私はザックの金髪をかき上げて同じように彼の頬にキスをした。
「もう……『多分』の続きは? それに、搾り取るなんて……バカ」
言いかけた言葉が何か分からないけれども、そんな事はもうどうでもいい。
それからザックは私の頬を撫で鼻先にキスを落とした。それからキスを繰り返して深く唇を奪う。
「んっ、うん。ザック、はぁ」
キスの途中で私はザックの名前を呼んだ。
「黙れよ……まだナツミの中にいたい」
ザックのキスの間の艶っぽい呟きに私は黙る事しか出来なかった。
ザックはキスを繰り返しながら、言わなかった言葉の続きを思う。
多分──シュウという男がナツミの姉と関係を持っていたのに、ナツミの体を求めたのは、ナツミの方が具合が良すぎたからだろう。
酷く下品な話だがナツミとのセックスは良すぎて溺れる。
それは余計底なし沼の様にはまって抜け出せなくなる。
ナツミが男を誘惑する女ではなくてよかった。
そんな女だとしたら。
複数関係を持ってより快楽を求める女になったりしていたら。
俺は他の男を殺す事になっていたかもしれない。
私とザックはキスを続けて、話をして、夜が明ける頃まで飽きる事なく抱き合った。
夜が明けたら、奴隷商人に関する事件が待っているのだから──
最後は息を詰めていたので、肩で息をしながら心臓を鎮める。顔や髪の毛にザックの解き放った精が飛び散っていた。起き上がると、とろりと垂れて横座りした太股に一塊が落ちた。口に咥えないで先端だけを突いたせいで、顔に向かって飛び散ってしまった。
ザックも私の足元から溜め息をつきながら起き上がる。解き放って少しくったりしているザック自身も視界に入ったが、まだまだ大きなままだった。
ザックは私の体液でベタベタになった口元を拭いながら私に向き直る。
「はぁ、最後のナツミのが顔にかかっ、た──」
ザックは、ザック自身の精でベタベタになった私の顔を見て、驚いて目を見開き言葉を失っていた。
「飛び散っちゃった。えへへ」
私は、滴り落ちてくる白濁の液を掌で受け、口元に流れてくる分も舌を出して舐め取る。
体から放出された快感も手伝って、熱に浮かされている感じがする。
「と、飛び散っちゃった。じゃぁ、ないだろう」
熱に浮かされた様に薄く笑う私を見たザックは少し頬を赤らめる。
ザックは私の乱れた髪の毛をかき上げる。それから辺りを見回し、瞼の腫れをとるために使っていたタオルを見つけて手に取った。
近くの小さな桶に汲んでいた水に浸して固く絞り、私の顔にそっと当てて拭い取る。
「ぷっ。ふふふ……ザックのがブワッってなって」
「わ、分かった。分かったから、みなまで言うな。もー、ほら。垂れる。垂れるから」
私が大胆に話すせいか、ザックは照れてしまっている様だ。
珍しいね。照れるザックがとても可愛い。
ザックはタオルの面を変えて、私の至るところに飛び散った精を拭い取る。
二人の大惨事を最小限だけ片付けると、ザックがガラスコップにピッチャーから水を注いで手渡してくれた。
随分前に持ってきた水だから、温くなってしまった。それでも、水が喉を通ると気持ちがいい。二人それぞれのコップの水を飲み干すと、溜め息をついて笑い合った。
「久しぶりだから凄く出たな……しかも、先端を触れられただけでイクとか。あー、何だかスッゲぇ恥ずかしい」
ザックが照れながら私の脇の下に手を入れる。それから、ベッドの上で胡坐をかいている自分の足を跨がせ私を座らせる。
「そんな事ないよ。私なんてもう三回もイッちゃったし」
跨ぐとザックの熱い分身が私の股の間で顔を出している。
少しくったりしているが私を抱き上げた時、腹筋に連動しピクリと動いていた。私は足をザックの腰の後ろでしっかり組んだ。
ザックの膝の上に座ると同じぐらいの顔の高さになった。笑うとザックが私の髪の毛を大きな右手でかき上げて何度も撫でてくれる。
それ、凄く気持ちがいい。私は目を細めてうっとりとザックを見つめる。
「こら、目尻を赤くして微笑むな……」
「さっきので涙が出てきちゃった。落ち着いていたのに、目尻が赤くなったね」
私がおでこをつけてザックの首に手を回すと、ザックが照れながらも私の低い鼻先に小さなキスを落とした。
それから、あきらめた様に溜め息をついた。
「そんなに俺を誘ってくれるな。俺は、ナツミに溺れるしか出来なくなるだろ」
「だって、ザックとするの気持ちがよくて。言った事がない言葉を言ってみたり」
「へぇ、そうなのか。どんな言葉?」
ザックがクスクス笑いながら私の頬にキスをした。
「えっとねぇ『イイ』とか『キスがイイ』とか『イッちゃう』とか、あ……」
そこまで言って突然羞恥心が遅う。首から頭にかけてキューッと音を立て顔が赤くなるのが分かった。
その様子を間近で見ていたザックが目を丸くする。
「何でそこで照れるんだよ……もっと凄い事してるのに」
「な、何だか言葉を改めて言うと、凄く恥ずかしい!」
「いいじゃないか。それを言うのは俺が初めてなんだろ?」
「う、うん」
思い起こせば──秋とのセックスは一方的なものだった。口や手で愛撫されれば軽く達する事はあっても、こんなに深く何度も達する事なんてなかった。ましてや膣内なんて。
実のところ秋にしか体を開いた事がないので、セックスってこんなものなのだろうと思っていたけれど、違ったのだね。
「ザックとのエッチはね」
「ん?」
「初めての事ばかりで驚かされるよ。そもそも、エッチがこんなに気持ちがいいなんて知らなかった」
「初めての事ばかり?」
ザックが意外そうに声を上げる。
「うん。えっと。こんなに何度も達したり、そもそもキスがこんなに気持ちいいとか知らなかったし」
そうだザックのキスは本当に蕩けてしまう。キスだけで頭の芯が痺れて麻痺する様な感じになる。もっと、もっと、触れて欲しくなる。
「……」
ザックは何か言いたそうに一度口を開いたが、息を飲んでから口を閉じる。
「ザックに口とか手でするのも凄く好き。ザックだからだと思うけど、気持ちよさそうにしてくれるのを見ると『ああ、私でもザックを気持ちよく出来るんだな』って……幸せに思う」
そう言ってザックの唇に吸い寄せられる様に軽くキスをした。
ザックが私にしてくれる様に、一度唇を舐めて口を開いてもらう。その間からスルリと私の舌を滑り込ませる。そしてザックの待ち構えていた舌と絡める。それなのに、すぐにザックに主導権を取られてしまう。悔しくて私はすぐにキスを止める。
離れてしまった私を、ザックが眉を下げて軽く笑う。
「そこで止めるなよ……」
ザックは掠れた声でもう一度キスを強請る。
「だって……ザックがすぐに自分のキスにしちゃうから」
私は不満を口にして俯く。そしてザックを下から見上げてみる。
その私の顔を見てザックが頬を染めた。口を震わせながら呟く。
「そんな事言われても、ナツミのキスだってさ……焦らされて焦らされて、俺の中で何かが切れそうになる」
「切れる?」
「そうさ。なけなしの優しさとか、理性とか。そういうのが切れてしまいそうになる。いつかの、媚薬を飲んだ時ですら、快楽に溺れたって乱暴な事は一切した事がないのに……」
ポツポツと呟くザックだが、そこまで言うと我慢出来ないとばかりに顔を傾けて吸いつく様なキスをしてくる。
「んん。ザック、ザック……好き」
私はキスの間で囁く。
「俺も……」
ザックにゆっくりと体を倒され再びベッドに沈み込む。
ザックは腰の後ろにしっかり回した私の足を解く。
そして、私の膝の部分をそれぞれの両手で握りしめ大きく曲げる。
私の胸の辺りまで足を曲げて押さえつけると、再び大きく反り返り涙を流す様に先端を濡らしているザックの分身を股の間に擦りつける。
「んっ」
私は瞳を細めて擦られる花芯の刺激に耐える。シーツを握りしめてこれから来るであろう衝撃に耐えようとした。
そんな私の様子を優しく笑って、ザックがゆっくりと腰を落としてきた。
「俺も……っっ。ナツミに触れるとっ。俺も初めての事ばかりで驚くんだっ。っっ」
そこまで言うと、大きく反り返った熱い杭をゆっくり、ゆっくりと私の中に潜り込ませてくる。
え? 初めての事ばかりって。ザックは驚く程経験が豊富なのに?
そう尋ねようとしたが出来なかった。
ザックの熱い杭を一気に沈められる時とは違う快楽が私を襲う。
背中をゾクゾクと這い上がる快感に喉を反らせて目を見開く。
ゆっくりと滑りのある道を進んでくるザックに私は体を震わせる。
ザックの長くて太いものはゆっくりと進んで奥まで到達する。
「あっ!」
その瞬間思わず体が震えた。毛穴という毛穴が一瞬開き、汗が噴き出して私の体を冷やそうとする。
奥に入れただけなのに私は軽くイッてしまった。
「っ、うっ。んんっ」
私の達した振動がザックにも伝わったのか、目の前の整った顔が歪んだ。
「ハハ……いきなり、だな」
そう言ってキスを一つ唇に落とし、金髪をかき上げる。
「私も驚いた……はぁ」
私は突然絶頂を迎えた事に驚いた。甘い溜め息をつき余韻に酔いしれた。
私のボンヤリする顔を見て、ザックは瞳をスッと細めた。
ザックは私の曲がった膝を強く握りしめる。そして、上半身を起こして私の足を曲げたまま更に体重をかける。体が柔らかくてよかった。しかし、こんなにのしかかられると流石に動く事が出来ない。
少し緩めてもらおうとザックを見上げると、視線の合ったザックが静かに呟いた。
「ナツミ、すまない」
「え? あっ」
何故か謝るザックがゆっくりと腰を後ろに引く、もう少しで抜けそうになるところまで腰を引くが、再びゆっくりと私の中に入り込む。奥まで突き体を沈み込ませて私のおでこに自分のそれをつける。
「ああっ!」
再び奥を突かれる。
しかし、今度は震える快楽だけで達するまでには至らないが、こんなのを繰り返されたら堪らない。快楽にひたひたと浸かりっぱなしになりそうだ。
「今日はナツミが止めてと言っても、聞いてやれそうにない」
「あっ、ああああっ」
そう言ってゆっくりとリズムよく抽送をはじめた。
私とザックの肌がぶつかり、そして水音が聞こえる。
とても淫らな音だ。その間私は嬌声を上げるしか出来なくなる。
「あっ、あん。んんっ」
だらしなく喘ぎ声を上げる事しか出来ない程、気持ちがいい。
我慢するとかしないとかそんなのどうでもいい。
腰をゆっくりと動かしながらザックが私の舌と自分の舌を絡める。その時ザックは腰を横八の字に動かす。まるで、私に自分の形を覚えさせようとしている様だ。
隙間なく埋まっているはずなのに、改めてザックがどんな張をしているのか感じとろうと内壁が蠢いている様だ。
「あっ、んんっ。それぇ。気持ちよくなるの早くなるからっ」
「俺もこれ気持ち良いから好き」
ザックの汗がパタパタと落ちてくる。しかし私は膝を押さえつけられたままで、体をねじる事も出来ない。痛くはないが背中を駆け上がる、お腹の奥に蓄積される切なさに似た気持ちよさから一切逃れる事が出来ない。
私はザックに強請ってしまう。
「イイよぅ。気持ちイイっ。もっと、してっ。ああっ」
そう強請ってザックの首に手を回し抱きつく。
するとザックが腰を少し引いて浅い場所を突き上げ始める。何故か少し角度をつけて擦りつけてくる。
すると、恐ろしい程広がる様な感覚が突き抜ける。
「?!?!」
目を見開いて、言葉が継げなくなって息を詰める。
ザックを見上げると口の端を上げて笑った。
「ココだろ……分かるぜ。怖いぐらい気持ちがいいんだろ?」
私は首を小さく縦に振ってザックに気持ちを伝える。
何とか息を吐き出すが、上手く息が継げないぐらい気持ちがいい。
「あっ、あっ。あああ! そこ、そこ。イッちゃう、イッちゃう。イクっ!」
イクとばかり口走り、駆け上がってくる快楽があっという間に体の中で弾ける。
全身が震えると、高い声を上げて喉を反らせて達してしまう。
そのタイミングでザックは、私の膝から手を離してくれた。達した瞬間に離された両足をすぐに伸ばす事が出来ない。それからザックは今度私の腰を両手でつかんだ。
何とか息を吐き出した頃には、自分の額から玉の様な汗が噴き出していたのを感じた。しかし、ザックは私の腰をつかんだまま新たに律動をはじめる。すぐに繋がった部分から鈍い水音が聞こえる。
「んんんっ!」
達して震える膣内をずっと撫でられるのは、気持ちがいいを通り越し訳が分からなくなる。快楽が弾けて仰け反った後は、感覚が研ぎ澄まされて必要以上に敏感になっている。
そんな場所を更に刺激されると、気持ちいいという感覚が続いて恐ろしくなる。
「あっ、あああっ! イッてるからぁ、あっ。イッてるってばっ、ザック、ザック!」
確か温泉でも似た様な事があった。
その後意識がなくなる大惨事になったのに、今日はゆっくりと体がほぐれているのもあって、もっと鋭利な感覚に私は気が狂いそうになった。
「あっ、あああっ、……!!!」
声が出なくなりそうになった時、ようやくザックの動きが止まる。
ようやく止まった律動に私は詰めていた息を大きく吸った。
心臓が早鐘を打つ。短く息をするのを繰り返して、再び大きく息を吸って落ち着いた。
「っ、はぁ、はぁ……イキそうだった」
ザックも荒い息を繰り返した。ザックが達しそうだったから止めてくれた様だ。
気がつくとボタボタとザックの汗が雨の様に私の体に滴り落ちていた。
両手を私の顔の横、ベッドの上につき喉を軽く反らせて首を振って笑った。
「気持ちが良すぎて泣けたか?」
私は気がつくと涙をぼろぼろと溢していた。同時に鼻水を啜り、ようやくの事を声を上げる。
「はぁ。おかしくなるかと、思った」
「おかしくなればいいさ、今日は一度出したから中でも長いぞ」
ザックは笑いながら私の両足を抱え直して、私に自分の腰の後ろに巻きつける様に促す。
「もう……」
長いとか早いとか、気持ちよくしてくれるザックなら……そういうのどうでもいいのに。
私は涙を拭いながら両足をザックの背中の後ろに巻きつける。
そして、ザックは私の背中に両腕を回して横にごろんと転がる。
今度は私の背中を優しく下から上に撫でる。掌全体ではなく指の腹だけを使って、優しく柔らかく撫でる。
触れるか触れないかの様な羽の様な触り方に皮膚が粟立つ。その間休む事なく腰をユルユルと動かすザック。
「んっ、ああっ。気持ち、いい……」
「背中の肌も吸いつくなぁ」
「汗かいたからね。んん……」
「そうだなぁ。俺もスッゲぇ汗。シーツが冷たくて気持ちいいなぁ。あ。またココも尖ってる」
「ああっ!」
「! こら、中を締め付けるなよ」
「だって、そこを触られると奥がキュンってなる」
「気持ちいい?」
「うん。あっ、んん」
「可愛いなぁ」
今度は片手で背中を抱きしめながら、もう片方の手で胸の尖りを再び指で弾く。
ゆっくりと快感が溜まっていく。抽送に合わせて胸を弄られると膣内でザックの熱い杭を離すまいと蠢くのが分かる。
気持ちいい。気持ちいい。それ以外、世界に何もない。
「ザックッ、それ以上されるとまたイッちゃうから」
「ああ、いいぜ」
「あっ、ああん」
ザックが改めて私の背中をベッドに押しつけ、今度は体を起こして両手で胸の尖りを弄りながら腰を前後に動かす。今度は奥の方を擦る様にゆっくりと動く。
「んっ、もっとぉ。もっと触れて、もっと動いて」
私は胸を突き出しなが、腰を揺らしながらザックに強請る。
「ああっ、でもな、このぐらいが気持ちいいぜ? この部分がなザラッとしていて」
そう言いながら、ザックが腰の角度を少し変えて私のお腹の辺りをスッと片手で押さえた。突然だった、中の角度をもって突いた再奥の部分。おそらくザックのものでしか、届かない場所を突かれて、ジュワっと蜜が湧き出るのを感じる。
「ああっ、やだぁ。何それ? あっ、あああ!」
頭がジンと痺れる。体がうねり、足の指先が白くなるまで力が入る。
「ココなっ、俺もすぐにもっていかれるぐらい、気持ちよくてなっ、それに!」
「えっ? 何? 駄目っ、ああっ。おかしくなるっっ」
私はシーツを握りしめながら藻掻く。
「くっ、落ち着けほら、力を抜け」
「そ、そんなの無理。ああっ」
ザックは私に力を抜く様に促す。どうやってやれって言うのよ、力を抜くなんて。せめて胸を弄るのを止めてくれたら……
半ばパニックになる私に、ザックが熱い息を吹きかける様に耳元で呟いた。
「ナツミの中で、ココを突くとな、っ。俺のを根元から締め上げてもっと奥に来る様に促すんだ。ほら、奥に行くからさっ。ほら、力を少し抜け? なっ」
「ヒッ、ああっ」
そう言って腰の動きが速くなるザック。
ザックも低い声も快楽で跳ねる。私の中で気持ちがよくて耐えているのだろう。
私は悲鳴の様な声しか、上げられなくなってきた。
力を抜く、力を抜くって……
グルグル考えると少しずつ抜けてきた。が、今度は恐ろしいほどの快楽を迎え入れる事になり訳が分からなくなってきた。
「ああっ、無理っ。おかしくなるし、きちゃうからっ! 怖い、怖いよっ!」
「大丈夫だ最高に可愛い。ああっ、この部分が気持ちよくて俺はいつも溺れるんだ。こんなのはナツミだけなんだ、ああっ!」
瞬間スッと力が全て抜けた私は、体全体がフワッと宙に浮いた様な錯覚に陥る。そして──
「ヒッ、ィっっ。あああ……」
目の前のザックが涙で見えなくなり自分の声も聞こえない。
耳元でザーッザーッと血が流れる音がする。心臓だけが早鐘を打っていたのを聞いた。
ザック、ザック。好きなの、もうザックなしでは私は──
体と心が満たされるとこんなにも切なくて、気持ちよくて。
ようやく、息が継げる様になると視界が広がった。
失神ではないが、聴覚や視界が恐ろしく狭くなっていた事に気がつく。
お腹の奥に注ぎ込まれたザックの精と、私の蜜でシーツが色を変えるほど濡れていた。
ザックがギュッと私の体を抱きしめてくれた。
ザックは荒い息づかいの後で一つ溜め息をつく。私の顔に張り付いた髪の毛をかき上げて、溜まった涙を吸い上げてキスをしてくれた。
「こんなに気持ちがいいのは、ナツミだけだ。搾り取られるって言うの? 多分……いや、止めとこ」
白い歯を見せて笑った。
ザックも金髪がおでこに張り付くほど汗だくになっている。
私はザックの金髪をかき上げて同じように彼の頬にキスをした。
「もう……『多分』の続きは? それに、搾り取るなんて……バカ」
言いかけた言葉が何か分からないけれども、そんな事はもうどうでもいい。
それからザックは私の頬を撫で鼻先にキスを落とした。それからキスを繰り返して深く唇を奪う。
「んっ、うん。ザック、はぁ」
キスの途中で私はザックの名前を呼んだ。
「黙れよ……まだナツミの中にいたい」
ザックのキスの間の艶っぽい呟きに私は黙る事しか出来なかった。
ザックはキスを繰り返しながら、言わなかった言葉の続きを思う。
多分──シュウという男がナツミの姉と関係を持っていたのに、ナツミの体を求めたのは、ナツミの方が具合が良すぎたからだろう。
酷く下品な話だがナツミとのセックスは良すぎて溺れる。
それは余計底なし沼の様にはまって抜け出せなくなる。
ナツミが男を誘惑する女ではなくてよかった。
そんな女だとしたら。
複数関係を持ってより快楽を求める女になったりしていたら。
俺は他の男を殺す事になっていたかもしれない。
私とザックはキスを続けて、話をして、夜が明ける頃まで飽きる事なく抱き合った。
夜が明けたら、奴隷商人に関する事件が待っているのだから──
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