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Case:岡本 5
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聡司の手はとても大きい。掌も大きいけど、指が長い。細い指の割に節々がはっきりしているから男性の手だと分かる。いつもこの手で私を抱きしめ、優しく愛撫をくれる。家事などは不器用なのに私に触れると時は違う。
違うんだけど。これはそうね、ちょっとうーん、もどかしい、まだるっこい、歯がゆい、じれったい!
さっきからずっとニットの上から私のバストを掬い上げ、はっきりと形が分かるほど尖っている乳首を弾いて擦ってを繰り返す。おかげで、身体の奥に溜まる快感は、寄せては返す波のとなっていた。乳首ばかり責めるからじわじわと快楽の頂点を目指そうとするけれども、服の上からは決定的なものにはならず物足りない。与えられる快感が中途半端な事は、もちろん聡司も理解している。恐らく分かってやっているのだ。
「っ!」
私は下唇を噛んでぶるっと震える。
足りないのに。触れられている場所から微々たる快感は広がっていく。もじもじと膝を擦り合わせて、漏れてしまいそうな声を耐える。今ショーツの中は湿気と熱で蒸れているはず。恥ずかしい。
小さな快感の波をやり過ごそうと瞳を閉じて唇を噛む。そうしないと悩ましい声を映画館で上げる事になってしまう。そんなの白い目で見られるし下手をしたらつまみ出されてしまうかもしれない。なのに非常識だと理解しているのに『止めて』と言えない。
ああっ、ヤダ。さっきから乳首ばかり擦って弄って……感じやすくて敏感なの知っててそこばかり。
足りないから直に触れて欲しい──だけど映画館で直に触って欲しいって、どうかしてる。
胸ばかりじゃなくて全身に触れて欲しい──だけどこの場所で出来るはずがない。
そんな私の耐えている姿を見て、聡司は小さく呟く。
「ね、僕を見て」
語尾だけ掠れる甘い声。聞いた途端、腰から首にかけてゾクリとした感触が上がってくる。私は瞳を閉じたまま、小さく震えてから首を左右に振る。
ヤダ、見たくない。どんな顔をしているのかなんて、声を聞いたから想像出来る。
聡司を見たら『お願い、早く、触れて欲しい』と、強請りたくなる。そんな非常識な事を言わせるつもりなの? それなのに聡司は私に体重をかけてシートに沈める。ゆっくりと私の左耳に唇を近づけて吐息と一緒に囁いた。
「涼音。僕を見て」
小さいけれども、甘くてとろけそうな声。私の頑なな意思なんてあっという間に崩れてしまう。観念して恐る恐る瞳を開く。シートに押し倒された視界の端に、スクリーンが見える。ストーリーは随分と進んでいた。
恋人達の嫉妬を含んだ交わりが、芸術的に描かれている。そんな見たかった映画だけど、目の前の恋人、聡司の顔を見たら全てすっ飛んでしまった。
聡司のラフにかき上げた前髪が一房おでこに垂れ、細いフレーム越しの瞳が切なそうに揺れていた。その吸い込まれそうな黒い瞳に私は釘付けになる。私と視線が合った聡司は嬉しそうに口角を上げた。
「やっと僕を見てくれた」
聡司は微笑んでいても泣きそうな声だ。私の唇に優しく吸い付いた、柔らかくて温かい唇が小さく震えていた。
言葉が足りないとすれ違って、相手を黒い感情に突き落としてしまう事は悠司で体験したばかりだ。聡司が自信がなさそうになる程私は、気持ちを伝えていないかしら? こんなに素敵で魅力的な二人に私はいつだって振り回されているのに。
思っているだけでは、なかなか伝わらないものね。
私は、聡司の首に回した手に力を込めて大きな身体を抱き寄せる。聡司は突然の事に驚き、バランスを崩して慌てて私の身体の横に手をついた。私はぶら下がったまま聡司の唇に、自分のそれを近づけて合わせるだけのキスをする。軽く合わせてから離れ、聡司の後ろに回していた手を外し、彼の両頬を優しく撫でる。白くてシミ一つない肌に赤みを差した。
「えっ、な? 何を」
小さくうろたえる聡司が目の前にいる。
「いつも見てるわよ?」
「本当に? だっていつも三人なのに。あの、天野さんがいるのに」
聡司は『あの、天野さん』という部分を強調していた。
ああ、やっぱり。聡司を不安定にしているのは悠司の存在があるのよね。私は寂しそうに呟く聡司の頬を優しく撫でる。
「三人でいても見ているわよ。それに今は聡司だけ。今、私の瞳に映っているのは聡司だけでしょう?」
「そうですね……それでも、心の中にいるのは僕じゃないのかも。僕は何をやっても不器用だし。恋も初めての事ばかりだし。そんな僕だから……」
「そんな風に聡司が思うのは、ここに悠司がいなからよ」
「え?」
「聡司こそ誰の事を考えているの? 今、あなたの瞳に映っているのは私なのに、心の中にいるのは悠司なのね?」
「!」
私がそう言うと聡司は驚いて目を丸くした。童顔の顔が更に強調されて可愛く見えた。
「聡司こそ私の事だけを考えて?」
私は小さく呟いて、聡司の頬に添えていた右手をゆっくりと首に、肩に滑らせる。そして胸の辺りを撫でると、ドクドクと心臓の音が聞こえる。身体をゆっくりと撫でると、少しだけ肩の力を抜いた聡司は小さく溜め息をついて口を尖らせた。
「狡いですよ……同じ言葉で返すなんて。それに僕の心の中には天野さん……悠司はちょっとだけいるけど、いませんよ」
拗ねた口調だけど聡司の表情は落ち着いた柔らかく優しいものになった。『いるけど、いない』という言い回しは、聡司なりに複雑な心を表現していると思う。それが三人でいる証拠だと思う。
聡司の苦しさは、私の言葉が足りなかったせいなのね。聡司の顔がいつもの表情になった。心に刺さる何か黒い気持ちが晴れたと思う。
「聡司の視界が狭くなりすぎているからよ。今日の聡司の時間は、私だけのものよね?」
「もちろん。当たり前ですよ! ムグッ!」
思わず聡司の声が大きくなったので私は片手で聡司の口を押さえた。しーっと歯を見せて小さな声になる様にジェスチャーをすると、聡司は辺りをキョロキョロと見回した後小さく溜め息をついて囁いた。
映画を見ている人達の席が遠くに散っているのとまばらな事もあり、誰も私達を気にする様子はない。
映画は最高に盛り上がっていた。男女が身体を繋げたまま、会話を続けているのが遠くで聞こえる。視界の端に入るスクリーンの字幕は『俺だけを見つめて、ほら、感じて……』と表示されている。まさかの私達の台詞と似ていて笑ってしまいそうだ。
聡司は喉仏を動かしてゴクンと唾を飲み込んでから拗ねた声で囁いた。
「今の僕は涼音だけのものですよ」
「うん……だけど、ね」
私はシャツの上から聡司の胸を撫でていたがその手をゆっくりと下へ下へと滑らせる。そして、ズボンの前で張っている彼の部分をするりと撫でる。
「ッ!」
大きく固くなった陰茎をズボン越しに撫でると、目の前の聡司が息を飲んだのが分かった。
「映画館なのにこんなにしちゃって」
「だって、涼音が悶絶しているのが可愛くて」
「やっぱり私に意地悪して触れていたのね?」
私は仕返しとばかりに聡司の陰茎をズボン越しに強く撫でる。
「意地悪に触れるってそんなつもりは。えっ、す、涼音? ちょっ、ちょっと待って。ッッッ!」
急に焦りだした聡司の声が、熱い吐息と共にするりと耳に入る。
その声を聞いた途端、思わず私は身体を震わせる。なぜかって? しつこく乳首を弄られていた時とは別の快感が呼び起こされたからだ。
わっ。ちょとこれは……もっと聡司の声を聞きたいかも。
斜め上に角度を持ったそれはズボンを突き破る勢いで膨れたていた。これではキツくて苦しいだろう。私は必死に手を伸ばして下から上に形通りに杭を撫でると、ズボンがくっきりとその形に縁取られる。
おっきくて熱い……いつもこれが私を優しくも凶暴にかき混ぜるのよね。私は聡司の顔を見つめ微笑むと、聡司は唇を真一文字に結んで震えた。その間私は、陰茎をズボン越しに下から上に撫でる事を止めない。時には頂点を掌で包みながら押し撫でる。すると聡司は瞳をぎゅっと閉じて首を小さく左右に振った。
「駄目だよ涼音、そっ、こ、はっ! あっ」
私が何度も口にし心で呟いた『駄目』という言葉を、今度は聡司が口にする。口を開いて最低限のボリュームで囁くけど、私が陰茎をズボン越しに強く握り擦ると溜まらず声が上ずる。
思わず顎を上げて僅かに与えられる快感を逃そうとする。聡司の白い頬に赤みが増して息が荒くなっている。瞼を閉じてしまったが閉じる前瞳にはうっすらと涙の膜が見えた。
『C'est trop génial !! j'arrive, j'arrive』
スクリーンではとうとうヒロインが達しそうな声を悩ましい声で上げている。字幕を見なくとも何を言っているのか何となく分かる……気がする。そんなヒロインの悩ましい声よりも、今は目の前にいる聡司に私は夢中になる。聡司の熱い杭を掌で押し擦ると、とうとう私の鎖骨辺りに自分のおでこを押し当ててブルブルと震えた。
ね、気持ちいいけど堪らないでしょ? よく分かるわよ。もどかしいでしょ? 達する事が出来ないでいつまでも弱い快楽を与えられるのって。
「ッ、くっ、そこっ、僕っ」
フーッフーッっと、息を荒くし呟く聡司。熱い吐息が首に触れてくすぐったいけど止められない。
ヤダ、何? この可愛い生き物は……私は今の聡司を見ていると、もっともっと彼を責め立ててどんな反応をするのか楽しみで仕方ない。もう少しこの責め狂いを彼に与え続けていたい。
今までベッドの上でのオーラルセックスはあったけど、こんな風に相手を一方的に責める事はなかった。いつも二人に追いやられるのは私だったから。
「ふふふ……聡司、可愛い」
どうしよう、癖になりそう。そう私が呟いた途端聡司はビクンと身体を震わせて、陰茎をズボン越しに握った私の手を更に上から強く握った。
「あっ……」
『Ah……』
聡司の気の抜けた呟きと同時に、スクリーンの中でヒロインが呟く。
この声と一緒に、私の手の中で聡司の陰茎がズクリと一際大きくなって固くなった。
これって、もしかして。
私はパッと顔を上げて、聡司に視線を合わせる。聡司の瞼がゆっくりと持ち上がり、額から一粒の汗が落ちた。数秒感だけ息をつめた聡司はゆっくりと大きく息を零すそれから、私のおでこにキスを落とした。
「あっ、ぶなかった、ホントに。出るかと思いましたよ。酷いですよ、もう」
そう言いながら聡司は私の背中にぎゅっと両腕を回した。私の耳元に唇をつけたままぽつりと呟く。腰をピタリとつけた聡司だが、まだ下半身は熱く固く滾っている。
「酷いのはお互い様でしょ? 私だって」
中途半端に放り出されたのは私も同じなのだと、口を尖らせて拗ねてみせる。
「しかも可愛いとか言われるし」
あら、私の言葉が気に入らなかったのかしら? 聡司も恥ずかしそうに呟いていた。
「……後でたっぷりお返ししますからね」
聡司が身体を起こしながら私の顔を覗き込んで悪戯っぽく笑った。
あら。ちょっとそれはまずいけど……私は聡司を責めるって言うのも、新鮮で楽しいかもしれないわ。
「私だって沢山お返しするわよ」
今日は私も聡司をうんと甘やかしたいと、そう思った。
それから映画を見終わった私達は『名前のない』場所を後にし、聡司のお姉さんと待ち合わせる場所へ移動する事にした。
違うんだけど。これはそうね、ちょっとうーん、もどかしい、まだるっこい、歯がゆい、じれったい!
さっきからずっとニットの上から私のバストを掬い上げ、はっきりと形が分かるほど尖っている乳首を弾いて擦ってを繰り返す。おかげで、身体の奥に溜まる快感は、寄せては返す波のとなっていた。乳首ばかり責めるからじわじわと快楽の頂点を目指そうとするけれども、服の上からは決定的なものにはならず物足りない。与えられる快感が中途半端な事は、もちろん聡司も理解している。恐らく分かってやっているのだ。
「っ!」
私は下唇を噛んでぶるっと震える。
足りないのに。触れられている場所から微々たる快感は広がっていく。もじもじと膝を擦り合わせて、漏れてしまいそうな声を耐える。今ショーツの中は湿気と熱で蒸れているはず。恥ずかしい。
小さな快感の波をやり過ごそうと瞳を閉じて唇を噛む。そうしないと悩ましい声を映画館で上げる事になってしまう。そんなの白い目で見られるし下手をしたらつまみ出されてしまうかもしれない。なのに非常識だと理解しているのに『止めて』と言えない。
ああっ、ヤダ。さっきから乳首ばかり擦って弄って……感じやすくて敏感なの知っててそこばかり。
足りないから直に触れて欲しい──だけど映画館で直に触って欲しいって、どうかしてる。
胸ばかりじゃなくて全身に触れて欲しい──だけどこの場所で出来るはずがない。
そんな私の耐えている姿を見て、聡司は小さく呟く。
「ね、僕を見て」
語尾だけ掠れる甘い声。聞いた途端、腰から首にかけてゾクリとした感触が上がってくる。私は瞳を閉じたまま、小さく震えてから首を左右に振る。
ヤダ、見たくない。どんな顔をしているのかなんて、声を聞いたから想像出来る。
聡司を見たら『お願い、早く、触れて欲しい』と、強請りたくなる。そんな非常識な事を言わせるつもりなの? それなのに聡司は私に体重をかけてシートに沈める。ゆっくりと私の左耳に唇を近づけて吐息と一緒に囁いた。
「涼音。僕を見て」
小さいけれども、甘くてとろけそうな声。私の頑なな意思なんてあっという間に崩れてしまう。観念して恐る恐る瞳を開く。シートに押し倒された視界の端に、スクリーンが見える。ストーリーは随分と進んでいた。
恋人達の嫉妬を含んだ交わりが、芸術的に描かれている。そんな見たかった映画だけど、目の前の恋人、聡司の顔を見たら全てすっ飛んでしまった。
聡司のラフにかき上げた前髪が一房おでこに垂れ、細いフレーム越しの瞳が切なそうに揺れていた。その吸い込まれそうな黒い瞳に私は釘付けになる。私と視線が合った聡司は嬉しそうに口角を上げた。
「やっと僕を見てくれた」
聡司は微笑んでいても泣きそうな声だ。私の唇に優しく吸い付いた、柔らかくて温かい唇が小さく震えていた。
言葉が足りないとすれ違って、相手を黒い感情に突き落としてしまう事は悠司で体験したばかりだ。聡司が自信がなさそうになる程私は、気持ちを伝えていないかしら? こんなに素敵で魅力的な二人に私はいつだって振り回されているのに。
思っているだけでは、なかなか伝わらないものね。
私は、聡司の首に回した手に力を込めて大きな身体を抱き寄せる。聡司は突然の事に驚き、バランスを崩して慌てて私の身体の横に手をついた。私はぶら下がったまま聡司の唇に、自分のそれを近づけて合わせるだけのキスをする。軽く合わせてから離れ、聡司の後ろに回していた手を外し、彼の両頬を優しく撫でる。白くてシミ一つない肌に赤みを差した。
「えっ、な? 何を」
小さくうろたえる聡司が目の前にいる。
「いつも見てるわよ?」
「本当に? だっていつも三人なのに。あの、天野さんがいるのに」
聡司は『あの、天野さん』という部分を強調していた。
ああ、やっぱり。聡司を不安定にしているのは悠司の存在があるのよね。私は寂しそうに呟く聡司の頬を優しく撫でる。
「三人でいても見ているわよ。それに今は聡司だけ。今、私の瞳に映っているのは聡司だけでしょう?」
「そうですね……それでも、心の中にいるのは僕じゃないのかも。僕は何をやっても不器用だし。恋も初めての事ばかりだし。そんな僕だから……」
「そんな風に聡司が思うのは、ここに悠司がいなからよ」
「え?」
「聡司こそ誰の事を考えているの? 今、あなたの瞳に映っているのは私なのに、心の中にいるのは悠司なのね?」
「!」
私がそう言うと聡司は驚いて目を丸くした。童顔の顔が更に強調されて可愛く見えた。
「聡司こそ私の事だけを考えて?」
私は小さく呟いて、聡司の頬に添えていた右手をゆっくりと首に、肩に滑らせる。そして胸の辺りを撫でると、ドクドクと心臓の音が聞こえる。身体をゆっくりと撫でると、少しだけ肩の力を抜いた聡司は小さく溜め息をついて口を尖らせた。
「狡いですよ……同じ言葉で返すなんて。それに僕の心の中には天野さん……悠司はちょっとだけいるけど、いませんよ」
拗ねた口調だけど聡司の表情は落ち着いた柔らかく優しいものになった。『いるけど、いない』という言い回しは、聡司なりに複雑な心を表現していると思う。それが三人でいる証拠だと思う。
聡司の苦しさは、私の言葉が足りなかったせいなのね。聡司の顔がいつもの表情になった。心に刺さる何か黒い気持ちが晴れたと思う。
「聡司の視界が狭くなりすぎているからよ。今日の聡司の時間は、私だけのものよね?」
「もちろん。当たり前ですよ! ムグッ!」
思わず聡司の声が大きくなったので私は片手で聡司の口を押さえた。しーっと歯を見せて小さな声になる様にジェスチャーをすると、聡司は辺りをキョロキョロと見回した後小さく溜め息をついて囁いた。
映画を見ている人達の席が遠くに散っているのとまばらな事もあり、誰も私達を気にする様子はない。
映画は最高に盛り上がっていた。男女が身体を繋げたまま、会話を続けているのが遠くで聞こえる。視界の端に入るスクリーンの字幕は『俺だけを見つめて、ほら、感じて……』と表示されている。まさかの私達の台詞と似ていて笑ってしまいそうだ。
聡司は喉仏を動かしてゴクンと唾を飲み込んでから拗ねた声で囁いた。
「今の僕は涼音だけのものですよ」
「うん……だけど、ね」
私はシャツの上から聡司の胸を撫でていたがその手をゆっくりと下へ下へと滑らせる。そして、ズボンの前で張っている彼の部分をするりと撫でる。
「ッ!」
大きく固くなった陰茎をズボン越しに撫でると、目の前の聡司が息を飲んだのが分かった。
「映画館なのにこんなにしちゃって」
「だって、涼音が悶絶しているのが可愛くて」
「やっぱり私に意地悪して触れていたのね?」
私は仕返しとばかりに聡司の陰茎をズボン越しに強く撫でる。
「意地悪に触れるってそんなつもりは。えっ、す、涼音? ちょっ、ちょっと待って。ッッッ!」
急に焦りだした聡司の声が、熱い吐息と共にするりと耳に入る。
その声を聞いた途端、思わず私は身体を震わせる。なぜかって? しつこく乳首を弄られていた時とは別の快感が呼び起こされたからだ。
わっ。ちょとこれは……もっと聡司の声を聞きたいかも。
斜め上に角度を持ったそれはズボンを突き破る勢いで膨れたていた。これではキツくて苦しいだろう。私は必死に手を伸ばして下から上に形通りに杭を撫でると、ズボンがくっきりとその形に縁取られる。
おっきくて熱い……いつもこれが私を優しくも凶暴にかき混ぜるのよね。私は聡司の顔を見つめ微笑むと、聡司は唇を真一文字に結んで震えた。その間私は、陰茎をズボン越しに下から上に撫でる事を止めない。時には頂点を掌で包みながら押し撫でる。すると聡司は瞳をぎゅっと閉じて首を小さく左右に振った。
「駄目だよ涼音、そっ、こ、はっ! あっ」
私が何度も口にし心で呟いた『駄目』という言葉を、今度は聡司が口にする。口を開いて最低限のボリュームで囁くけど、私が陰茎をズボン越しに強く握り擦ると溜まらず声が上ずる。
思わず顎を上げて僅かに与えられる快感を逃そうとする。聡司の白い頬に赤みが増して息が荒くなっている。瞼を閉じてしまったが閉じる前瞳にはうっすらと涙の膜が見えた。
『C'est trop génial !! j'arrive, j'arrive』
スクリーンではとうとうヒロインが達しそうな声を悩ましい声で上げている。字幕を見なくとも何を言っているのか何となく分かる……気がする。そんなヒロインの悩ましい声よりも、今は目の前にいる聡司に私は夢中になる。聡司の熱い杭を掌で押し擦ると、とうとう私の鎖骨辺りに自分のおでこを押し当ててブルブルと震えた。
ね、気持ちいいけど堪らないでしょ? よく分かるわよ。もどかしいでしょ? 達する事が出来ないでいつまでも弱い快楽を与えられるのって。
「ッ、くっ、そこっ、僕っ」
フーッフーッっと、息を荒くし呟く聡司。熱い吐息が首に触れてくすぐったいけど止められない。
ヤダ、何? この可愛い生き物は……私は今の聡司を見ていると、もっともっと彼を責め立ててどんな反応をするのか楽しみで仕方ない。もう少しこの責め狂いを彼に与え続けていたい。
今までベッドの上でのオーラルセックスはあったけど、こんな風に相手を一方的に責める事はなかった。いつも二人に追いやられるのは私だったから。
「ふふふ……聡司、可愛い」
どうしよう、癖になりそう。そう私が呟いた途端聡司はビクンと身体を震わせて、陰茎をズボン越しに握った私の手を更に上から強く握った。
「あっ……」
『Ah……』
聡司の気の抜けた呟きと同時に、スクリーンの中でヒロインが呟く。
この声と一緒に、私の手の中で聡司の陰茎がズクリと一際大きくなって固くなった。
これって、もしかして。
私はパッと顔を上げて、聡司に視線を合わせる。聡司の瞼がゆっくりと持ち上がり、額から一粒の汗が落ちた。数秒感だけ息をつめた聡司はゆっくりと大きく息を零すそれから、私のおでこにキスを落とした。
「あっ、ぶなかった、ホントに。出るかと思いましたよ。酷いですよ、もう」
そう言いながら聡司は私の背中にぎゅっと両腕を回した。私の耳元に唇をつけたままぽつりと呟く。腰をピタリとつけた聡司だが、まだ下半身は熱く固く滾っている。
「酷いのはお互い様でしょ? 私だって」
中途半端に放り出されたのは私も同じなのだと、口を尖らせて拗ねてみせる。
「しかも可愛いとか言われるし」
あら、私の言葉が気に入らなかったのかしら? 聡司も恥ずかしそうに呟いていた。
「……後でたっぷりお返ししますからね」
聡司が身体を起こしながら私の顔を覗き込んで悪戯っぽく笑った。
あら。ちょっとそれはまずいけど……私は聡司を責めるって言うのも、新鮮で楽しいかもしれないわ。
「私だって沢山お返しするわよ」
今日は私も聡司をうんと甘やかしたいと、そう思った。
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