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酉の市
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今年の酉の市は三の酉まである。三の酉まである年は火事が多いと伝わっている。
今年の二の酉、つまり二回目の酉の日が丁度土曜日だったので、ツバキを誘って八王子駅前の酉の市に行くことにした。
ツバキとは前回同様JR八王子駅の待ち合わせで、大通りを歩いてきた私は食べたいものを物色してきていた。
「私はウズラの卵入りたこ焼きと、手羽餃子が食べたい。ツバキ君は?」
「えっと、えっと。何があるんですか?」
「なんでもあるよ」
「なんでも」
そんな会話をしつつ、ツバキが大通りに出ると、立ち並ぶ大勢の屋台を見て、目を白黒させていた。時期外れの祭りにこんなに屋台が並ぶとは思ってなかったらしい。
「まるでお祭りみたいですね。あ、お祭りか。てへへ。あ、あ。えーと、お好み焼き……広島風のと、あと、どれにしようかな……ステーキ牛串と、あと、えーと、えーと。あはは、迷いますね」
「好きなだけ迷って良いよ。今日は割り勘だ」
「あ、はい。勿論」
そんなことを言いつつ先程見かけたウズラの卵入りのたこ焼き屋台に戻ると、中年の女性が「嗚呼、さっきのまた来るって言ってたお嬢さん。わざわざ戻ってきてくれてありがとうございます」と、「サービス。ウズラ摘まんでいって」と山盛りにされた缶詰のウズラの卵を指さしてくれた。ありがたく一粒摘まんで口の中に放り込む。私は子供の頃から鶏の卵より濃厚な味わいのウズラの卵が好物で、母はよくウズラの卵で目玉焼きを作ってくれたものだ。
「お、美味しそうですね。ウズラの卵かぁ」
「ツバキ君、シェアしようね」
「え、え。良いんですか? 嬉しいなぁ」
屋台の女性はにこにこと笑って私たちを見ている。仲の良い姉妹と思われているのかもしれない。
「はい、焼き立て。お嬢さんありがとうね」
そう言って容器に入った五個の大きなたこ焼きをぶら下げて、手羽餃子の屋台にも行く。手羽餃子も好きな食べ物だ。屋台で食べられるとは運が良い。
「ソースは何味にしますか?」
「柚子胡椒が良いかな」
「あいよ」
屋台のおじさんがちゃっちゃと焼けた手羽を容器に移す……前に、千切りキャベツを容器に敷いて、その上に数個の手羽餃子を置き、ソースをたっぷりとかける。仕上げに隅にキムチを添えて。
「あ」
「お待たせ、嬢ちゃん」
お金を支払って他の屋台に行くために離れてから、こっそりとツバキに話しかける。
「ツバキ君、ツバキ君」
「はぁい。ノバラさん、なんでしょう?」
「キムチ、食べられる?」
「ん、大丈夫ですよ。ノバラさん、キムチ食べられないんですか?」
「……辛いものと匂いのきついものは嫌い……キムチは両方を兼ね備えている……」
ツバキがによによ笑いながら、「可愛いですねぇ」と言ってきたので、私は頬をぷっくりと膨らませて次の屋台に進んだ。
「コンビニでビール買おうね。ジーマが良いかな。ジーマはなんとなく祭りっぽい」
「ところで、ノバラさん。座れるところないんですか?」
「外にはないよ」
「え?」
「駅からちょっと歩くけど、私の家に寄ろうか。狭いけれど、座れるし。暖かいし」
「え。え。ちょっといきなり。お呼ばれするってはじめっからわかってたら心の準備をですね、」
「ん? 来ない?」
「いえ! 行きます!」
同性の友人の家に行く程度、緊張するほどでもないと思うのだが。若い子の感性はわからない。
「どうぞ。狭い家だけれど」
「お、お邪魔します……ふああ……いい匂いがする……」
部屋の匂いを嗅がれると少し恥ずかしい。初めて案内した相手ならなおさらだ。
「芳香剤の匂いかな。煙草臭くない? 一応換気扇の前で吸っているから部屋に匂いはついていないと思うんだけれど」
「いえ、とても甘い、いい匂いがします!」
私はスティックタイプの芳香剤を使っている。瓶の中に液体が入っていて、スティックを差して湿らせて部屋の中に香りをつけるタイプのものだ。本当はアロマやお香を焚きたいのだが、あれこれ匂いが混ざるとよくわからない香りになるので避けている。
「適当に座って」
「は、はい」
私の家はとても狭い。フローリングだが和洋折衷にしていて、今の時期だと布団をどかしてホットカーペットの上に座って貰うしかない。テーブルは仕事用のノートパソコンを設置しているテーブルと、食事用のテーブルが一つずつあるので、食事用のテーブルの近くに座って貰った。ツバキは部屋をきょろきょろと眺めていたが、特に見るものがある訳ではないだろう。女性が住むには少し雑多な普通の部屋だ。
「冷めないうちに食べようか」
「あ、あ。いただきます……」
ジーマの瓶を開けて、一口。甘さのある炭酸が喉に気持ちいい。
さて、肝心の食事だが、ウズラの卵入りたこ焼きを少し行儀悪いが一口で頬張り口に入れると、ウズラの卵のコクのある黄身の味と、とろとろのたこ焼きが合わさって、口の中いっぱいに旨みが広がる。少し冷めているので、火傷の心配もない。もごもごしながら幸せを噛み締める。
ツバキに箸でたこ焼きを分けようとしていたら、なにか期待するような顔でこちらを見てくるので、試しに口元にたこ焼きを寄せると、あーん、と大きく口を開けて、もぐ、と頬張った。
「~~っ! ん、ん! おいひい! すご、これ、美味しいです!」
ツバキの語彙が少ないけれど、素直な喜びの言葉に可愛い子だな、と思いながらもう一つの包みを開ける。手羽餃子だ。こちらは箸で千切りキャベツごと口に入れる。シャキシャキとしたキャベツと柚子胡椒のさっぱりとしたソースが絡んで、手羽の脂身が緩和されていてとても美味。餃子の具は少ないながらも、手羽のプルプルとした食感とキャベツのシャキシャキ感がしっかりしているので歯応えも申し分ない。ソースは柚子胡椒で正解だったと舌鼓を打つ。
ツバキが一生懸命お好み焼きを食べているのに、横から「あーん」と、無理矢理箸でキムチとキムチの味の染み込んだ手羽餃子を口に放り込んだ。
「美味しいよね?」
「美味しいです!」
良い子だ。
「ノバラさん、牛串食べますか?」
「嗚呼、じゃあ一切れだけ」
ツバキが箸で串焼きの一切れを分けて、私の口元に運んでくる。じー、と見詰められているので、仕方なく控えめに口を開いた。その中にそっと牛肉が乗せられる。
「えへへ、えへへ。あーん、しあいっこですね」
屋台の牛肉は固い。必死にもごもごしているのですぐには答えられはしなかった。なんとなく柔らかくなったかな、と言う筋張った肉をアルコールで飲み下して、やっと「そうだね」と答える事が出来た。
「辛いの苦手なノバラさん、女の子っぽくて可愛いです」
「……じゃあ、今度、ツバキ君に辛いジンジャーエールを飲ませてあげよう。美味しいよ」
「えー。えー。ジンジャーエールは嫌いじゃないですけど……」
「手作りのジンジャーエールを出す喫茶店があるんだ。次、蓮にボジョレーヌーボーを飲みに行く前にでも寄ろうか」
「! はい! あ、でも別の日が良いかな」
「どうして?」
「ノバラさんと沢山会いたいからです! えへへ、迷惑ですか?」
「……いや、可愛いけど……」
「わ、わぁい!」
にこにこ、にこにこ。
ツバキは終始ご機嫌だった。
「あ、これから大鳥神社にお参りに行くんですよね?」
「いや、混むから行かないよ?」
「え?」
ツバキは意外そうな顔をして、「でも屋台飯が美味しいから良いです」とやっぱりにこにこしていた。
今年の二の酉、つまり二回目の酉の日が丁度土曜日だったので、ツバキを誘って八王子駅前の酉の市に行くことにした。
ツバキとは前回同様JR八王子駅の待ち合わせで、大通りを歩いてきた私は食べたいものを物色してきていた。
「私はウズラの卵入りたこ焼きと、手羽餃子が食べたい。ツバキ君は?」
「えっと、えっと。何があるんですか?」
「なんでもあるよ」
「なんでも」
そんな会話をしつつ、ツバキが大通りに出ると、立ち並ぶ大勢の屋台を見て、目を白黒させていた。時期外れの祭りにこんなに屋台が並ぶとは思ってなかったらしい。
「まるでお祭りみたいですね。あ、お祭りか。てへへ。あ、あ。えーと、お好み焼き……広島風のと、あと、どれにしようかな……ステーキ牛串と、あと、えーと、えーと。あはは、迷いますね」
「好きなだけ迷って良いよ。今日は割り勘だ」
「あ、はい。勿論」
そんなことを言いつつ先程見かけたウズラの卵入りのたこ焼き屋台に戻ると、中年の女性が「嗚呼、さっきのまた来るって言ってたお嬢さん。わざわざ戻ってきてくれてありがとうございます」と、「サービス。ウズラ摘まんでいって」と山盛りにされた缶詰のウズラの卵を指さしてくれた。ありがたく一粒摘まんで口の中に放り込む。私は子供の頃から鶏の卵より濃厚な味わいのウズラの卵が好物で、母はよくウズラの卵で目玉焼きを作ってくれたものだ。
「お、美味しそうですね。ウズラの卵かぁ」
「ツバキ君、シェアしようね」
「え、え。良いんですか? 嬉しいなぁ」
屋台の女性はにこにこと笑って私たちを見ている。仲の良い姉妹と思われているのかもしれない。
「はい、焼き立て。お嬢さんありがとうね」
そう言って容器に入った五個の大きなたこ焼きをぶら下げて、手羽餃子の屋台にも行く。手羽餃子も好きな食べ物だ。屋台で食べられるとは運が良い。
「ソースは何味にしますか?」
「柚子胡椒が良いかな」
「あいよ」
屋台のおじさんがちゃっちゃと焼けた手羽を容器に移す……前に、千切りキャベツを容器に敷いて、その上に数個の手羽餃子を置き、ソースをたっぷりとかける。仕上げに隅にキムチを添えて。
「あ」
「お待たせ、嬢ちゃん」
お金を支払って他の屋台に行くために離れてから、こっそりとツバキに話しかける。
「ツバキ君、ツバキ君」
「はぁい。ノバラさん、なんでしょう?」
「キムチ、食べられる?」
「ん、大丈夫ですよ。ノバラさん、キムチ食べられないんですか?」
「……辛いものと匂いのきついものは嫌い……キムチは両方を兼ね備えている……」
ツバキがによによ笑いながら、「可愛いですねぇ」と言ってきたので、私は頬をぷっくりと膨らませて次の屋台に進んだ。
「コンビニでビール買おうね。ジーマが良いかな。ジーマはなんとなく祭りっぽい」
「ところで、ノバラさん。座れるところないんですか?」
「外にはないよ」
「え?」
「駅からちょっと歩くけど、私の家に寄ろうか。狭いけれど、座れるし。暖かいし」
「え。え。ちょっといきなり。お呼ばれするってはじめっからわかってたら心の準備をですね、」
「ん? 来ない?」
「いえ! 行きます!」
同性の友人の家に行く程度、緊張するほどでもないと思うのだが。若い子の感性はわからない。
「どうぞ。狭い家だけれど」
「お、お邪魔します……ふああ……いい匂いがする……」
部屋の匂いを嗅がれると少し恥ずかしい。初めて案内した相手ならなおさらだ。
「芳香剤の匂いかな。煙草臭くない? 一応換気扇の前で吸っているから部屋に匂いはついていないと思うんだけれど」
「いえ、とても甘い、いい匂いがします!」
私はスティックタイプの芳香剤を使っている。瓶の中に液体が入っていて、スティックを差して湿らせて部屋の中に香りをつけるタイプのものだ。本当はアロマやお香を焚きたいのだが、あれこれ匂いが混ざるとよくわからない香りになるので避けている。
「適当に座って」
「は、はい」
私の家はとても狭い。フローリングだが和洋折衷にしていて、今の時期だと布団をどかしてホットカーペットの上に座って貰うしかない。テーブルは仕事用のノートパソコンを設置しているテーブルと、食事用のテーブルが一つずつあるので、食事用のテーブルの近くに座って貰った。ツバキは部屋をきょろきょろと眺めていたが、特に見るものがある訳ではないだろう。女性が住むには少し雑多な普通の部屋だ。
「冷めないうちに食べようか」
「あ、あ。いただきます……」
ジーマの瓶を開けて、一口。甘さのある炭酸が喉に気持ちいい。
さて、肝心の食事だが、ウズラの卵入りたこ焼きを少し行儀悪いが一口で頬張り口に入れると、ウズラの卵のコクのある黄身の味と、とろとろのたこ焼きが合わさって、口の中いっぱいに旨みが広がる。少し冷めているので、火傷の心配もない。もごもごしながら幸せを噛み締める。
ツバキに箸でたこ焼きを分けようとしていたら、なにか期待するような顔でこちらを見てくるので、試しに口元にたこ焼きを寄せると、あーん、と大きく口を開けて、もぐ、と頬張った。
「~~っ! ん、ん! おいひい! すご、これ、美味しいです!」
ツバキの語彙が少ないけれど、素直な喜びの言葉に可愛い子だな、と思いながらもう一つの包みを開ける。手羽餃子だ。こちらは箸で千切りキャベツごと口に入れる。シャキシャキとしたキャベツと柚子胡椒のさっぱりとしたソースが絡んで、手羽の脂身が緩和されていてとても美味。餃子の具は少ないながらも、手羽のプルプルとした食感とキャベツのシャキシャキ感がしっかりしているので歯応えも申し分ない。ソースは柚子胡椒で正解だったと舌鼓を打つ。
ツバキが一生懸命お好み焼きを食べているのに、横から「あーん」と、無理矢理箸でキムチとキムチの味の染み込んだ手羽餃子を口に放り込んだ。
「美味しいよね?」
「美味しいです!」
良い子だ。
「ノバラさん、牛串食べますか?」
「嗚呼、じゃあ一切れだけ」
ツバキが箸で串焼きの一切れを分けて、私の口元に運んでくる。じー、と見詰められているので、仕方なく控えめに口を開いた。その中にそっと牛肉が乗せられる。
「えへへ、えへへ。あーん、しあいっこですね」
屋台の牛肉は固い。必死にもごもごしているのですぐには答えられはしなかった。なんとなく柔らかくなったかな、と言う筋張った肉をアルコールで飲み下して、やっと「そうだね」と答える事が出来た。
「辛いの苦手なノバラさん、女の子っぽくて可愛いです」
「……じゃあ、今度、ツバキ君に辛いジンジャーエールを飲ませてあげよう。美味しいよ」
「えー。えー。ジンジャーエールは嫌いじゃないですけど……」
「手作りのジンジャーエールを出す喫茶店があるんだ。次、蓮にボジョレーヌーボーを飲みに行く前にでも寄ろうか」
「! はい! あ、でも別の日が良いかな」
「どうして?」
「ノバラさんと沢山会いたいからです! えへへ、迷惑ですか?」
「……いや、可愛いけど……」
「わ、わぁい!」
にこにこ、にこにこ。
ツバキは終始ご機嫌だった。
「あ、これから大鳥神社にお参りに行くんですよね?」
「いや、混むから行かないよ?」
「え?」
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