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第二十章 そして《伝説》へ…
第四話 白百合とうれしい出迎え
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前回のあらすじ
よくわからないままに蛮族パーリナイ参加を検討してしまった閠。
そして出迎えてくれたのは懐かしい顔ぶれだった。
境の森の手前で竜車を降りた私たちを出迎えてくれたのは、ヴォーストの町で冒険屋事務所を構える私の叔父、メザーガとその一党の一人、土蜘蛛のガルディストさんでした。
メザーガは気だるげで飄々としていて、ガルディストさんは気さくで人好きのする笑顔が魅力的です。
もとは《一の盾》というメザーガの一党からはじまった《メザーガ冒険屋事務所》ですが、このふたりはその中でも結構気が合うというか、悪友同士という空気があって、うらやましい年の重ね方をしているなあと思わされるものです。
言葉を飾らずに言うと、年取っていくらか落ち着いたチンピラみたいな感じです。
厄介なことに非常に腕の立つチンピラなのですが。
「やあ、久しぶりだな。元気してたかい」
「ええ! やはり辺境の冬はいいものですね!」
「ははは、子供は風の子ってやつだな」
「もう成人ですよう!」
辺境で侮られて子ども扱いされたなら、「いまなんち言た?」と辺境言語が交わされるところですが、からかわれてもそんなに嫌な気がしないのがガルディストさんの不思議なところです。
若いころはさぞかし女の子と遊んでいたのではと思われます。
ああ、いえ、土蜘蛛なので、人族とは逆で鼻息の荒い女性をうまくあしらってる悪女ならぬ悪男みたいな感じかもしれません。
本人は結婚する気もないみたいですし。
「ところでお二人ですか? 馬車は二台ですけれど」
「おいおい、この馬車をもう見忘れたのか?」
「えっと……あっ!」
メザーガたちの後ろに並んだ二台の馬車のうち、一台は事務所においてあったものでした。
しかしてもう一台は、懐かしい幌には、《メザーガ冒険屋事務所》の所章《一の盾》の紋章と、私たち《三輪百合》の紋章が並べて描かれていました。
「あ、私たちの馬車だこれ」
「南部に預けてたの、持ってきてくれたの?」
「おうとも。人がくれてやったもんを早々に置いていきやがって。ボイだって寂しかったろいたたたたた」
「ボイに手をかまれる人ははじめて見たんだけど」
「犬は序列をしっかり決めるらしいですからね」
「この犬畜生が!」
「映画で真っ先に殺されるチンピラみたいなセリフだ」
馬車のそばで寝そべっていて、そして今しがた頭をなでようとしたメザーガの手を歯形が残るくらいきっちりかみついて見せたのは、私たちの馬であるボイでした。
馬車と一緒にメザーガに贈られたボイは、大熊犬というとても大きな犬種の馬で、私たち三人と荷物の乗った幌馬車を一頭で曳けて、多少の害獣なら自分で追い払ってしまえる、賢くて強い馬でした。
「やあ、ボイ、忘れてないかな……とと、はいはい、寂しかったね」
「うーん、でっかいもふもふとでっかい女。これは流行るわ」
「君のトレンドはいつも尖ってる気がする」
そっと目線を合わせたウルウとトルンペートに、ボイは早速鼻先を寄せ、頭を擦り付けて、再会を喜んでいるようでした。短くはなかった別離の時間を埋めるようでもあります。
竜車には載せられなかったので、南部はハヴェノ、お母様の実家であるブランクハーラ家に預けてきたのですが、こうして数か月ぶりに再会できると私も胸がいっぱいにあいたたたたた。
「ボイに手をかまれる人はこれで二人目だね」
「犬は序列をしっかり決めるらしいもんね」
「はわわ! 私が悪かったですから!」
辺境に連れていくのは無理だったとはいえ、長らくよそ様に預けて放置してしまったのですから、ボイが怒るのも無理はありません。私は何とかなだめてすかして干し肉で機嫌をとって、それでようやく許してもらえたのでした。
二人は普通にわしゃわしゃ撫でてました。くそう。
「どうせまた旅を続けるんだろうからな、せっかく贈ったもんはしっかり使ってもらうぜ」
「それでうちの事務所の宣伝にもなるってわけだ。おじさんたちに楽させてくれよ」
「広告料取ろうかなあ」
「お前らまだうちに籍あるからな? うちの従業員だからなお前ら?」
私たちは早速馬車に荷を移し替え、新たな旅の支度をすっかり整えたのでした。
その間に、メザーガとお母様、従兄妹同士の二人は久闊を叙していたようでした。
「久しぶりねメザーガおにいちゃん」
「やめろやめろ気持ち悪い。お前そんな感じじゃないだろうが」
「かわいい従兄妹に対してつれないこと言うのね。悲しくて泣いちゃうかも」
「お前が泣いたの妹に目つぶし食らって反射で流してたときだけだろ」
「そうそう、『これが、涙……?』って驚いたわね」
「ブランクハーラは人間やめてるが、精神はせめて人界に寄せてくれるか?」
メザーガのことは、お母様からよく聞いていたんですよね。ご自分の冒険譚や、古い冒険譚の他に話すものといえば、メザーガの冒険譚が多かったように思います。
私が小さい頃は、一年に一度、夏ごろにひょっこり顔を出してくれて、お母様とよくじゃれあっていたような気がします。
「それさあ。リリオフィルター通してるから多分そこまで美しい情景じゃないよね」
「退屈してた奥様に追い回されて、追い詰められた賞金首みたいな怒声あげてたわね」
「あれれ?」
うーん、言われてみると思い出の中のメザーガはよく走っていたような気がします。
私のことを抱き上げたり、高い高いと放り投げてくれていたような記憶もあるんですが、よくよく思い返してみると「娘が惜しくねえのかてめえは!」「せめてガキのほうに気をそらせ母親!」とか叫んでいたような気がします。
チンピラでしょうか?
お母様だけでなくお父様とも仲良くじゃれていたような気がしましたが、その流れだともしかしたら嫉妬したお父様に五分刻みにされかけていたのかもしれません。
「ブランクハーラのサイコパスと辺境のヤンデレ貴族に追い掛け回されて五体無事でいるの、メザーガもしかしてすごい人なんじゃないの?」
「まあ巷に出回ってる冒険譚が本当なら、もしかしなくてもすっごい冒険屋らしいわよ」
「あれで?」
「あれでなのよねえ」
「お前らおっさんはいくら殴っても許される砂袋とでも思ってる?」
「砂袋は喋らないですよ」
「しまいにゃ泣くぞ?」
まあ、そんなこと言いながらも、夏とは言え普通に辺境まで来て手土産に辺境生物狩ってきて、お母様とお父様の二人がかりで追い掛け回された上に、手加減が死ぬほど下手だったころの私の遊び相手までして、文句たらたらに元気いっぱい帰っていったのですから、メザーガも人のこと言えない程度にはたいがい人間やめてるのは確かです。
「というかメザーガ! なんだったんですか、あの思わせぶりなセリフは! 覚悟していけとか!」
「あー? 最大級に度肝抜かれたろうが」
「抜かれて戻ってこなくなるかと思いましたけど!」
メザーガは、お母様の実家を訪ねて旅立った私に、覚悟していけなどと言って送り出したのですけれど、まさかその覚悟というのが、死んだと思っていたお母様が生きていたことだとは思ってもいませんでした。
そして私が思っていたのと違って、お母様がかなり破天荒な人柄だったということもまた、私を驚かせたのでした。
「そらお前、俺が『お前のおふくろは実は生きている』て言ったらどう思ったよ」
「それは、まあ、驚いたかもしれませんけれど」
「それでずぼらなおっさんが続けるんだよ。『襲い掛かってきた飛竜とっ捕まえて、背中に乗って実家に飛んで帰ったんだと。理由はお前の親父さんの愛が重いからだってな』と続けるわけだ」
「まず間違いなく信じませんでしたけれども!」
気になりすぎて道中気が気ではなかったかもしれません。
そう考えると、詳しく教えなかったのはメザーガの気遣いともいえるかもしれません。
あるいは、メザーガ自身がそんなトンチキな話を真顔で伝える自信がなかったからかもしれません。
実際にそんな話を聞いてたら、まずお酒が入っているかどうかを確認していたはずです。
いまとなっては、せめてお酒が入っていてほしかったという気持ちです。
「まあ、ともあれマテンステロにも無事再会して、大方実家で親父さんとも手合わせして、いくらか腕も上がったか?」
「ふふん! そうですとも! 私はなんとお父様に一撃いれたんですよ!」
「ほう、お前さんがねえ。ちっちゃなリーニョだと思っていたのがまあ、」
「火達磨にして、粘膜に唐辛子ぶちまけて、動けなくなったところを見事に顔面パンチだったね」
「そうそう。ダメだったら海水ぶっかけて雷ぶつける予定だったんだっけ?」
「ちっちゃなリーニョだったのがよぉ! 人間のやることかそれが!?」
「人間だからやるんだよ」
「人類に失望した神かなんかかお前は!?」
うーん。
メザーガ的にも結構えげつない戦法だったみたいですね。
まあメザーガも技巧派ではありますが、なんだかんだ本人が強いですから、そういう小細工はあまり使わない印象ありますもんね。
どちらかというとそういう手合いであるガルディストさんは、苦笑いしながらも理解は示してくれているようでした。
「ええい、一皮むけたんだかなんだかわからん。お前、冬ごもりの間に休みボケしてないだろうな」
「むっ、反論しづらい正論はやめてください」
「せめて否定しろ! まあいい。どうせ剣は嘘をつけねえんだ」
そうです。そうでした。
メザーガが腰のものを叩いて見せたように、私もまた頷いて応えました。
剣士が久方ぶりに相対したのです。剣の具合を確かめるのが武辺者というもの。
「よし。じゃあ一つ手合わせしてみるか?」
「ぜひ!」
用語解説
・メザーガ・ブランクハーラ
人間族。リリオの母親の従兄妹にあたる。四十がらみの冒険屋。
ヴォーストの街で冒険屋事務所を経営している。
・ガルディスト
土蜘蛛の野伏。パーティのムードメーカーであり、罠や仕掛けに通じる職人。また目利きも利く。
よくわからないままに蛮族パーリナイ参加を検討してしまった閠。
そして出迎えてくれたのは懐かしい顔ぶれだった。
境の森の手前で竜車を降りた私たちを出迎えてくれたのは、ヴォーストの町で冒険屋事務所を構える私の叔父、メザーガとその一党の一人、土蜘蛛のガルディストさんでした。
メザーガは気だるげで飄々としていて、ガルディストさんは気さくで人好きのする笑顔が魅力的です。
もとは《一の盾》というメザーガの一党からはじまった《メザーガ冒険屋事務所》ですが、このふたりはその中でも結構気が合うというか、悪友同士という空気があって、うらやましい年の重ね方をしているなあと思わされるものです。
言葉を飾らずに言うと、年取っていくらか落ち着いたチンピラみたいな感じです。
厄介なことに非常に腕の立つチンピラなのですが。
「やあ、久しぶりだな。元気してたかい」
「ええ! やはり辺境の冬はいいものですね!」
「ははは、子供は風の子ってやつだな」
「もう成人ですよう!」
辺境で侮られて子ども扱いされたなら、「いまなんち言た?」と辺境言語が交わされるところですが、からかわれてもそんなに嫌な気がしないのがガルディストさんの不思議なところです。
若いころはさぞかし女の子と遊んでいたのではと思われます。
ああ、いえ、土蜘蛛なので、人族とは逆で鼻息の荒い女性をうまくあしらってる悪女ならぬ悪男みたいな感じかもしれません。
本人は結婚する気もないみたいですし。
「ところでお二人ですか? 馬車は二台ですけれど」
「おいおい、この馬車をもう見忘れたのか?」
「えっと……あっ!」
メザーガたちの後ろに並んだ二台の馬車のうち、一台は事務所においてあったものでした。
しかしてもう一台は、懐かしい幌には、《メザーガ冒険屋事務所》の所章《一の盾》の紋章と、私たち《三輪百合》の紋章が並べて描かれていました。
「あ、私たちの馬車だこれ」
「南部に預けてたの、持ってきてくれたの?」
「おうとも。人がくれてやったもんを早々に置いていきやがって。ボイだって寂しかったろいたたたたた」
「ボイに手をかまれる人ははじめて見たんだけど」
「犬は序列をしっかり決めるらしいですからね」
「この犬畜生が!」
「映画で真っ先に殺されるチンピラみたいなセリフだ」
馬車のそばで寝そべっていて、そして今しがた頭をなでようとしたメザーガの手を歯形が残るくらいきっちりかみついて見せたのは、私たちの馬であるボイでした。
馬車と一緒にメザーガに贈られたボイは、大熊犬というとても大きな犬種の馬で、私たち三人と荷物の乗った幌馬車を一頭で曳けて、多少の害獣なら自分で追い払ってしまえる、賢くて強い馬でした。
「やあ、ボイ、忘れてないかな……とと、はいはい、寂しかったね」
「うーん、でっかいもふもふとでっかい女。これは流行るわ」
「君のトレンドはいつも尖ってる気がする」
そっと目線を合わせたウルウとトルンペートに、ボイは早速鼻先を寄せ、頭を擦り付けて、再会を喜んでいるようでした。短くはなかった別離の時間を埋めるようでもあります。
竜車には載せられなかったので、南部はハヴェノ、お母様の実家であるブランクハーラ家に預けてきたのですが、こうして数か月ぶりに再会できると私も胸がいっぱいにあいたたたたた。
「ボイに手をかまれる人はこれで二人目だね」
「犬は序列をしっかり決めるらしいもんね」
「はわわ! 私が悪かったですから!」
辺境に連れていくのは無理だったとはいえ、長らくよそ様に預けて放置してしまったのですから、ボイが怒るのも無理はありません。私は何とかなだめてすかして干し肉で機嫌をとって、それでようやく許してもらえたのでした。
二人は普通にわしゃわしゃ撫でてました。くそう。
「どうせまた旅を続けるんだろうからな、せっかく贈ったもんはしっかり使ってもらうぜ」
「それでうちの事務所の宣伝にもなるってわけだ。おじさんたちに楽させてくれよ」
「広告料取ろうかなあ」
「お前らまだうちに籍あるからな? うちの従業員だからなお前ら?」
私たちは早速馬車に荷を移し替え、新たな旅の支度をすっかり整えたのでした。
その間に、メザーガとお母様、従兄妹同士の二人は久闊を叙していたようでした。
「久しぶりねメザーガおにいちゃん」
「やめろやめろ気持ち悪い。お前そんな感じじゃないだろうが」
「かわいい従兄妹に対してつれないこと言うのね。悲しくて泣いちゃうかも」
「お前が泣いたの妹に目つぶし食らって反射で流してたときだけだろ」
「そうそう、『これが、涙……?』って驚いたわね」
「ブランクハーラは人間やめてるが、精神はせめて人界に寄せてくれるか?」
メザーガのことは、お母様からよく聞いていたんですよね。ご自分の冒険譚や、古い冒険譚の他に話すものといえば、メザーガの冒険譚が多かったように思います。
私が小さい頃は、一年に一度、夏ごろにひょっこり顔を出してくれて、お母様とよくじゃれあっていたような気がします。
「それさあ。リリオフィルター通してるから多分そこまで美しい情景じゃないよね」
「退屈してた奥様に追い回されて、追い詰められた賞金首みたいな怒声あげてたわね」
「あれれ?」
うーん、言われてみると思い出の中のメザーガはよく走っていたような気がします。
私のことを抱き上げたり、高い高いと放り投げてくれていたような記憶もあるんですが、よくよく思い返してみると「娘が惜しくねえのかてめえは!」「せめてガキのほうに気をそらせ母親!」とか叫んでいたような気がします。
チンピラでしょうか?
お母様だけでなくお父様とも仲良くじゃれていたような気がしましたが、その流れだともしかしたら嫉妬したお父様に五分刻みにされかけていたのかもしれません。
「ブランクハーラのサイコパスと辺境のヤンデレ貴族に追い掛け回されて五体無事でいるの、メザーガもしかしてすごい人なんじゃないの?」
「まあ巷に出回ってる冒険譚が本当なら、もしかしなくてもすっごい冒険屋らしいわよ」
「あれで?」
「あれでなのよねえ」
「お前らおっさんはいくら殴っても許される砂袋とでも思ってる?」
「砂袋は喋らないですよ」
「しまいにゃ泣くぞ?」
まあ、そんなこと言いながらも、夏とは言え普通に辺境まで来て手土産に辺境生物狩ってきて、お母様とお父様の二人がかりで追い掛け回された上に、手加減が死ぬほど下手だったころの私の遊び相手までして、文句たらたらに元気いっぱい帰っていったのですから、メザーガも人のこと言えない程度にはたいがい人間やめてるのは確かです。
「というかメザーガ! なんだったんですか、あの思わせぶりなセリフは! 覚悟していけとか!」
「あー? 最大級に度肝抜かれたろうが」
「抜かれて戻ってこなくなるかと思いましたけど!」
メザーガは、お母様の実家を訪ねて旅立った私に、覚悟していけなどと言って送り出したのですけれど、まさかその覚悟というのが、死んだと思っていたお母様が生きていたことだとは思ってもいませんでした。
そして私が思っていたのと違って、お母様がかなり破天荒な人柄だったということもまた、私を驚かせたのでした。
「そらお前、俺が『お前のおふくろは実は生きている』て言ったらどう思ったよ」
「それは、まあ、驚いたかもしれませんけれど」
「それでずぼらなおっさんが続けるんだよ。『襲い掛かってきた飛竜とっ捕まえて、背中に乗って実家に飛んで帰ったんだと。理由はお前の親父さんの愛が重いからだってな』と続けるわけだ」
「まず間違いなく信じませんでしたけれども!」
気になりすぎて道中気が気ではなかったかもしれません。
そう考えると、詳しく教えなかったのはメザーガの気遣いともいえるかもしれません。
あるいは、メザーガ自身がそんなトンチキな話を真顔で伝える自信がなかったからかもしれません。
実際にそんな話を聞いてたら、まずお酒が入っているかどうかを確認していたはずです。
いまとなっては、せめてお酒が入っていてほしかったという気持ちです。
「まあ、ともあれマテンステロにも無事再会して、大方実家で親父さんとも手合わせして、いくらか腕も上がったか?」
「ふふん! そうですとも! 私はなんとお父様に一撃いれたんですよ!」
「ほう、お前さんがねえ。ちっちゃなリーニョだと思っていたのがまあ、」
「火達磨にして、粘膜に唐辛子ぶちまけて、動けなくなったところを見事に顔面パンチだったね」
「そうそう。ダメだったら海水ぶっかけて雷ぶつける予定だったんだっけ?」
「ちっちゃなリーニョだったのがよぉ! 人間のやることかそれが!?」
「人間だからやるんだよ」
「人類に失望した神かなんかかお前は!?」
うーん。
メザーガ的にも結構えげつない戦法だったみたいですね。
まあメザーガも技巧派ではありますが、なんだかんだ本人が強いですから、そういう小細工はあまり使わない印象ありますもんね。
どちらかというとそういう手合いであるガルディストさんは、苦笑いしながらも理解は示してくれているようでした。
「ええい、一皮むけたんだかなんだかわからん。お前、冬ごもりの間に休みボケしてないだろうな」
「むっ、反論しづらい正論はやめてください」
「せめて否定しろ! まあいい。どうせ剣は嘘をつけねえんだ」
そうです。そうでした。
メザーガが腰のものを叩いて見せたように、私もまた頷いて応えました。
剣士が久方ぶりに相対したのです。剣の具合を確かめるのが武辺者というもの。
「よし。じゃあ一つ手合わせしてみるか?」
「ぜひ!」
用語解説
・メザーガ・ブランクハーラ
人間族。リリオの母親の従兄妹にあたる。四十がらみの冒険屋。
ヴォーストの街で冒険屋事務所を経営している。
・ガルディスト
土蜘蛛の野伏。パーティのムードメーカーであり、罠や仕掛けに通じる職人。また目利きも利く。
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