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第十九章 天の幕はいま開かれり
第九話 亡霊と凍てついた湖
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前回のあらすじ
こいつら相撲取ったんだ!!
なんやかんやで旅程は長引き、ようやく目的地に辿り着いたのは予定より二日遅れだった。
なんだよ。なんやかんやはなんやかんやであって、特に何があったわけではない。ないったらない。
余裕をもって準備してくれたらしいけど、それでも燃料とか食料とか水とか、無駄に消費しちゃったんだから、立ってるだけで死ぬこともある極寒の冬ではよろしくないことだろう。
だというのにリリオもトルンペートも上機嫌なので、私一人だけむくれてしまう。
若さか。これが若さなのだろうか。体力的にも、精神力的にも。若さゆえの楽観性なのか。
そうはいっても私、まだ二十六なんだよな。そのうち二十七になるけど、まだ三十路前。うーん。二十代で若さを気にしちゃうのも、いろいろだめかもしれない。
「ほら、見えましたよ」
私の膝の上で遠くを指さしたリリオ。その指先を私は目で追う。
山道を抜け、見下ろした先には平野が広がっていた。
常緑樹が濃い緑を雪の下にのぞかせる、山がちな景色の中で、そこだけが奇妙に平坦に開けている。
「ほら、あそこに村が見えるでしょう。あのほとりの村にお世話になります」
「んん……ずいぶん端っこに……って、ほとり?」
指さされた先には、確かに何軒かの小ぢんまりした建物があった。そりゃ森のそばの方がなにかと便利なんだろうけど、それにしたって平野の中には一軒も家がない。牧場とかできそうなのに。
そこで気づくのが、リリオのほとりという言い回しだ。
ほとり、という単語の正しい用例を私が自身をもって主張できるほど知らないけど、でも普通は川のほとりとか、湖のほとりとか、水際に使う言葉だったと思うんだけど。
そこではたと気付く。
もしや、そういうことなのか。
「奥の大きな山がボレタント山、いま抜けてきた二つの山の、大きな方が小ボレタント山の兄ヶ岳、小さい方が弟ヶ岳です。そしてそれらに囲まれたあれこそが、北の輝きを見るにはもってこいのレウチースカ湖です」
「あれ、やっぱり湖なんだ……」
きらりと輝くほどに平坦な平地……ではなく、あれは凍った湖だったらしい。
山に囲まれた盆地のような地形はまるで鍋の底で、これはいわゆるカルデラ湖というものかもしれなかった。
火山活動の影響で形成されるやつだね。詳しくは知らなくてもみんな何となく名前だけは知ってるやつ。
馬車はそりそりとなめらかに雪道を滑っていく。
雪むぐりも道は覚えているみたいで、その足取りには迷いがないし、手綱を取るリリオも懐かしそうではあれ、迷うようなことはなく安心できる。
とはいえ。
「……この道、私たちが通ったあとしかないよね」
「まあ雪が積もればわだちなんて消えますし……そもそも冬場は往来がほとんどなくなりますしね!」
笑顔でそんな解説入れてくれるリリオだけど、こんな山奥で外部との交流がなかったらさぞかし大変なんではなかろうか。いや、それいったら、辺境の大体どこであっても冬場の交通網は壊滅状態らしいけど。
不安になりながらも辿り着いた村は、実に閑散としたものだった。
寒村というやつだ。物理的にも寒いし経済的にもお寒い。まあ辺境の冬は以下略、だけど。
建物の多くは寄り添い合うように、恐らくは湖のほとりに沿うように並んでいた。
多分、湖が解けたら船を出して漁をする生活なのだろう。この時期は使えない船の類は、凍り付いてしまわないようにか、家に立てかけるように置かれていたり、雪避けの屋根みたいに使われていた。
ただ、びっくりするくらい大きくて立派な建物もあって、こう言っては失礼かもしれないけど田舎の寒村に不似合いな都会的なセンスも感じる造形だ。
いかにも金がかかっていそうだし、いかにも金を使いそうな、維持費だけでいくらするんだろうなんて考えてしまうご立派な邸宅だ。
「早速、村長を訪ねましょう。空き家があるはずなので、そちらを借ります」
リリオがそんなことを言うので、てっきりこの豪邸が村長の家かと思ったら、見向きもせずに素通り。
通りがかりにちょっと見て見たら、門扉は鎖がかけられてるし、人の気配もない。でも雪下ろしはされてるし、一応管理はされてるっぽい。
なんだろうなあ、と思ってる間に辿り着いた村長宅は、他の家と大差ないもので、やはり漁を生業にしているような趣だった。
リリオの訪問に出てきたのは老人のような白熊で、違った、白熊のような老人で、髪も眉毛も髭も恐ろしく長く、もはや顔が見えない。どころか分厚く着込んだ毛皮と入り混じって境界すらわからない。
ちっこい客人を見るなり、この村長から「やんれまァめんずらすなァ」と辺境訛りが炸裂したので、私には翻訳不能な会話が始ま
「失礼。冬場に外の方がいらっしゃるのは珍しいもので……道中さぞかしご不便だったことでしょう。狭苦しい所ですが、是非あたたまってください」
らない!?
思わずぎょっとして二度見してしまった。
白熊村長はそのワイルドな見た目に似合わない、渋くも甘やかなダンディボイスで私たちを招き入れ、暖炉近くの椅子を勧めてくれた。その仕草もまた丁寧で洗練されている。
本人が言うように決して広くはない家だったけれど、家具や丁度は品がよく上等なもののように見受けられ、ごちゃごちゃした生活感というものがない。
こういうのは人を通す部屋だけで、実際には奥の方は生活感にあふれているのかもしれないけど、そもそも応接間というものを用意してる村なんてまずないから、かなりレアなケースだ。
私がほへーと間抜け顔で見まわしていると、白熊村長は白湯にメープルシロップをたらしたものを用意してくれた。甘茶として用いるハーブや果実があまりとれない辺境の冬では、これがスタンダードなおもてなしだ。
「何しろ辺鄙な村で、お嬢様がお帰りとは露知らず……そちらの方は旅のお連れ様で?」
「ええ、こちらはウルウ。ウルウ、こちらは村長のマルディコです」
「はじめまして。お世話になります」
「私の嫁なのでお見知りおきを」
「よっ……奥方様を連れて帰られるとは、驚きましたな」
「あ、トルンペートも私の嫁です。三人で結婚しました」
「式は挙げてないけどね」
「…………それは、大変結構なことで」
一度はこらえた村長だったけど、さすがにちょっと処理に時間がかかった。
なんか申し訳ない。
白熊村長の解凍もかねて、村のこととか、今回の目的とか、そう言う雑談を交わしてみたけど、いやほんとうに流暢にしゃべる人だ。
っていうのも、どうもここが観光地だかららしかった。
「冬場は行き来も大変で、見どころもそうないのですが、夏場はきれいな湖で泳いでいただくこともできますし、宿には温泉も引いております。ですので時期になりますと観光地、また避暑地としてみなさまにご利用いただいております」
なるほど、いまはシーズン・オフってことらしい。
先程の豪邸は、シーズンにだけ開く旅館みたいなものってことだね。
リリオん家の別荘もあったりするらしい。さすがにそこを今から使えるようにってのは難しいだろうけど。
最大限に観光地としておもてなし力を高める一環として、村長さんや営業にかかわる人はみんな仕草や言葉を勉強して、いまや内地の人が来ても満足できるレベルまでになったのだそうだ。
シーズン・オフでも油断せずに応接間は整えてる村長さんは意識高いんだね。
まあさすがに寒さには耐え切れず、白熊みたいなことになってるみたいけど。
村長さんが貸してくれたのは、観光客用のコテージみたいなのだった。
お高い宿を取るほどではないけど、そこそこ快適に過ごしたい客層用で、ベッドなどの家具は一通り完備してある。
ただ、さすがに冬場の利用はほぼないらしく、ストーブは幌馬車のやつを流用することにした。
これよりランクが下がる、いわゆるバンガローみたいなやつは、すぐには準備できないというか、雪の下なので掘り起こすところかららしい。
「うう……あったまるまでかかるけど、でも久し振りに屋根のある所だ……」
「なんだかんだウルウって都会っ子だもんね」
リリオについて野外活動も多いけど、そうなんだよ、私都会っ子のもやしっ子なんだよ。
慣れてきたし、ぼちぼちこなせるようになってきたけど、安眠度は露骨に違う。ていうか、なれてきた今でもゲーム内アイテム使って快適さを少しでも上げようと足掻いてるしね。
虫とか、蒸し暑さとか、臭いとか。いろいろあるのだ。
「さすがに疲れたし、夜まで休みましょ。真冬の薄明かりとはいえ、しっかり夜になってからの方が綺麗に見えるわよ」
ということで私たちは冷たいベッドに悲鳴をあげながら潜り込み、一休み。
なんて軽く言ったけど、自分で思ってた以上に疲れがたまってたらしく、リリオに揺さぶられてようやく起きるくらいぐっすり寝こけてしまっていた。
寝ぼけ眼をこすって、うん、と一つ伸びをすれば、二人はもう準備万端だった。
万端って言うか、なにその装備。
二人はしっかり着込んでいるだけでなく、折り畳みの椅子や、なんかドリルみたいなのなんかも用意してた。
椅子はともかくそのドリルは何なのさ。っていうかドリルて。
「釣りです」
「ふむん?」
「氷上釣りってやつね。湖の氷に穴開けて、そこから釣り糸を垂らすのよ」
「あー……見たことはあるやつ」
「あんたそう言うのほんと多いわよね」
まあ、テレビとかネットとかでだけど。
釣りかあ。私には釣りの才能はあんまりなさそうだけど、氷上釣りは面白そうだ。ワカサギとか釣るやつだ。
なんでも、オーロラを見れるかどうかは運次第だし、釣りをして時間を潰しながら何日か粘ってみようってことらしかった。
なるほど、釣りで時間も潰せるし、見れなくても当座の食料はゲットできるという一石二鳥なわけだ。
なんだか楽しみで急に眼が冴えてくるあたり、私の体も現金なことだ。
村の人も使っているというそりにあれやこれやと道具を積んで、私たちは湖に向かった。
私にはどこが境目なんだか全くわからなったけど、リリオたちが、ほらここですよ、ここから湖です、というあたりからは、確かに足元の感覚が違う、ような気もした。
表面に薄く雪も積もってるけど、心なし滑る、気もする。
少し歩いて適当なところにそりを止め、まずは風よけのテントを立てた。本当に簡単なもので、効果のほどは頼りない見た目だけど、かわりにすぐに立て終わる。
ランタンをそこにぶら下げて、ふとあたりを見回してみると、離れたところで同じような明かりがいくつか見える。村の人が釣りをしているんだろう。彼らは生活のためだろうけど。
リリオがさっきのドリルを凍った湖面に突き立てた。
これは、なんて言うんだろう、長い棒状の造りで、片側はらせん状にブレードが巻き付いている。で、反対側はハンドルになっていて、これを回してがりがりがりと氷に穴をあけていくようだった。
「リリオなら殴った方が早いんじゃないの」
「まあ、鶴嘴とかで穴開ける人もいますけど、危ないですね」
「叩く感じの衝撃だと、ヒビが広がって足元ごとぱっかーんと割れちゃったりすることもあるらしいわよ」
「こわっ」
普通に立てるし、そりとかも持ってきたけど、そうだよな。
いま、私は表面だけ凍った湖の、その上に立ってるわけだ。
リリオが掘った穴は結構な深さというか、氷の厚みがあるけど、それでもともすれば全部割れて冷たい水の中に、なんてこともあり得るんだよね。
私はそんな怖い想像をしてしまったけど、リリオたちは慣れてるのか気にした風もない。
いやまあ、私だって《薄氷渡り》使えば普通に水の上歩けるんだけどさあ。
そう言う問題でもない気がする。
ともあれ、三人分の穴をあけたら、椅子に座ってそれぞれ糸を垂らす。
釣り竿は少し小さくて一見おもちゃみたいな感じだけど、リールもあるし、結構しっかりした造りだ。
釣り糸は先端に重しがついている。そして途中で五、六本枝のように釣り糸が分岐して、そこに釣り針がつけられていた。
餌は何かと思えば、つけない。というより、餌になるものも、この寒さではろくに取れない。
だから、ルアー、いや、毛針に近い感じでやる。色とりどりの古い布切れを裂いて巻き付けていて、意外にこれでも魚は引っかかるらしい。
まあ魚に色が見えているのかどうか私は知らないけれど、人によってはこだわるポイントらしい。
「なにが釣れるの?」
「色々釣れますよ。美味しいのとか……そこそこ美味しいのとか」
「それ絶対普通の人が食べたらやばい奴でしょ」
リリオは時々ナチュラルに毒とか食うので困る。
そしてそれが別に辺境貴族特有の頑丈さとかでは別になく、リリオ個人の悪食のせいだというのがまた困る。アラバストロさんは普通にお腹壊すらしいんだよなあ。
「そうねえ、実際色々釣れるわよ。公魚に、鱸の仲間とか、大きいのだと鯉、川魳とか」
「カマスって大きくなかったっけ?」
「釣れるのはまあ、大きくても一尺……三十センチくらいよ。大きいやつはこの程度の針にはあんまり食いつかないわ」
「食いついたら?」
「諦めるか、氷を割るしかないわね」
大きすぎても面倒なわけだ。
私たちはそうしてしばらくの間お喋りしながら釣り糸を垂らしていたけど、一匹も釣れないうちからトルンペートが立ち上がり、リリオもテントを片付け始めた。
釣りが得意ではない私でもまだ退屈してないのに、早すぎるのでは。
と思ったら、「ほら、次行くわよ」なんて言われる。
そしてしばらく歩いた先で、また同じように準備して釣り糸を垂らすのだ。
それでまたしばらくしたら、釣果に関係なく移動する。その繰り返しだ。
釣りって腰を据えるものだと思っていたんだけど、なんだこれ。忙しないな。
「つまりあの場所にはいないってこと?」
「さあ。それはわかんないわ」
「じゃあなんで移動するのさ」
「死ぬからよ」
「は」
トルンペートは大まじめに言った。
「クッソ寒いから、じっと座ってたら気づいたときには眠くなって死ぬわ」
「手遅れになる前に、こまめに体動かさないと危ないんですよねえ」
かなり切実な理由だった。
そのくせ、周りで同じように釣ってる村人たちは、飯のためだけでもなく、趣味でもあるみたいだから大概おかしい。
用語解説
・なんやかんや
なんやかんやはなんやかんやです。
・ボレタント山(La Boletanto)
辺境に所在する活火山。
大昔の大噴火で山体の一部を吹き飛ばし、レウチースカ湖ができたとされる。
住民が住み着いてからは噴火の記録はないが、近くに温泉が湧いていたり、ちゃんと活動しているようだ。
・小ボレタント山
やや大きな兄ヶ岳と、やや小さな弟ヶ岳を合わせてこのように呼ぶ。
ボレタント山と向き合う形でレウチースカ湖を三方から囲む。
こちらは火山ではないものの、地質学者によればボレタント山と地質がよく似ており、過去の大噴火で対岸まで吹き飛ばされた山体が割れて突き刺さったのではないかという説もある。
・レウチースカ湖(La Leŭciska Lago)
ボレタント山の火山活動によって形成されたとされるカルデラ湖。
冬季は全面氷結し、氷上釣りなどが行われる。
豊かな生態系を持ち、周辺環境含めて多種多様な生物がすんでいる。
夏季には辺境各地のみならず内地から観光に来る者もいるほどの名勝地。
というよりは、内地から来ようとする観光客が猛者なだけか。
・白熊村長
マルディコ氏。ラッコの獣人。
親戚一同みな小柄でモフモフしてかわいいのだが、幼少期の彼はそれを嫌って鍛錬に励んだ。
その結果、背も伸びて筋肉もつき、狩りもうまくて頭も良くて真面目という文武両道青年になるものの、かわいさを求める価値観の女性陣にはまったくモテず、いまの奥さんに出会ったのは四十代だとか。
なお、筋肉をつけすぎた結果、重くなり過ぎて水に浮かぶことができなくなってしまった。
それでも、水面を走るだけなら十五メートルくらいまではいけるらしい。
・《薄氷渡り》
ゲーム内《技能》。《暗殺者》系統がおぼえる。
設定では「一時的に体重をなくす」ことができるとされ、水上を歩行可能にするだけでなく、使用中所持重量限界を緩和できる。
また足音が消え、一部の敵Mobから発見されなくなるまたは発見されにくくなる効果がある。
『生きるということは、薄氷を踏んで歩くが如く』
こいつら相撲取ったんだ!!
なんやかんやで旅程は長引き、ようやく目的地に辿り着いたのは予定より二日遅れだった。
なんだよ。なんやかんやはなんやかんやであって、特に何があったわけではない。ないったらない。
余裕をもって準備してくれたらしいけど、それでも燃料とか食料とか水とか、無駄に消費しちゃったんだから、立ってるだけで死ぬこともある極寒の冬ではよろしくないことだろう。
だというのにリリオもトルンペートも上機嫌なので、私一人だけむくれてしまう。
若さか。これが若さなのだろうか。体力的にも、精神力的にも。若さゆえの楽観性なのか。
そうはいっても私、まだ二十六なんだよな。そのうち二十七になるけど、まだ三十路前。うーん。二十代で若さを気にしちゃうのも、いろいろだめかもしれない。
「ほら、見えましたよ」
私の膝の上で遠くを指さしたリリオ。その指先を私は目で追う。
山道を抜け、見下ろした先には平野が広がっていた。
常緑樹が濃い緑を雪の下にのぞかせる、山がちな景色の中で、そこだけが奇妙に平坦に開けている。
「ほら、あそこに村が見えるでしょう。あのほとりの村にお世話になります」
「んん……ずいぶん端っこに……って、ほとり?」
指さされた先には、確かに何軒かの小ぢんまりした建物があった。そりゃ森のそばの方がなにかと便利なんだろうけど、それにしたって平野の中には一軒も家がない。牧場とかできそうなのに。
そこで気づくのが、リリオのほとりという言い回しだ。
ほとり、という単語の正しい用例を私が自身をもって主張できるほど知らないけど、でも普通は川のほとりとか、湖のほとりとか、水際に使う言葉だったと思うんだけど。
そこではたと気付く。
もしや、そういうことなのか。
「奥の大きな山がボレタント山、いま抜けてきた二つの山の、大きな方が小ボレタント山の兄ヶ岳、小さい方が弟ヶ岳です。そしてそれらに囲まれたあれこそが、北の輝きを見るにはもってこいのレウチースカ湖です」
「あれ、やっぱり湖なんだ……」
きらりと輝くほどに平坦な平地……ではなく、あれは凍った湖だったらしい。
山に囲まれた盆地のような地形はまるで鍋の底で、これはいわゆるカルデラ湖というものかもしれなかった。
火山活動の影響で形成されるやつだね。詳しくは知らなくてもみんな何となく名前だけは知ってるやつ。
馬車はそりそりとなめらかに雪道を滑っていく。
雪むぐりも道は覚えているみたいで、その足取りには迷いがないし、手綱を取るリリオも懐かしそうではあれ、迷うようなことはなく安心できる。
とはいえ。
「……この道、私たちが通ったあとしかないよね」
「まあ雪が積もればわだちなんて消えますし……そもそも冬場は往来がほとんどなくなりますしね!」
笑顔でそんな解説入れてくれるリリオだけど、こんな山奥で外部との交流がなかったらさぞかし大変なんではなかろうか。いや、それいったら、辺境の大体どこであっても冬場の交通網は壊滅状態らしいけど。
不安になりながらも辿り着いた村は、実に閑散としたものだった。
寒村というやつだ。物理的にも寒いし経済的にもお寒い。まあ辺境の冬は以下略、だけど。
建物の多くは寄り添い合うように、恐らくは湖のほとりに沿うように並んでいた。
多分、湖が解けたら船を出して漁をする生活なのだろう。この時期は使えない船の類は、凍り付いてしまわないようにか、家に立てかけるように置かれていたり、雪避けの屋根みたいに使われていた。
ただ、びっくりするくらい大きくて立派な建物もあって、こう言っては失礼かもしれないけど田舎の寒村に不似合いな都会的なセンスも感じる造形だ。
いかにも金がかかっていそうだし、いかにも金を使いそうな、維持費だけでいくらするんだろうなんて考えてしまうご立派な邸宅だ。
「早速、村長を訪ねましょう。空き家があるはずなので、そちらを借ります」
リリオがそんなことを言うので、てっきりこの豪邸が村長の家かと思ったら、見向きもせずに素通り。
通りがかりにちょっと見て見たら、門扉は鎖がかけられてるし、人の気配もない。でも雪下ろしはされてるし、一応管理はされてるっぽい。
なんだろうなあ、と思ってる間に辿り着いた村長宅は、他の家と大差ないもので、やはり漁を生業にしているような趣だった。
リリオの訪問に出てきたのは老人のような白熊で、違った、白熊のような老人で、髪も眉毛も髭も恐ろしく長く、もはや顔が見えない。どころか分厚く着込んだ毛皮と入り混じって境界すらわからない。
ちっこい客人を見るなり、この村長から「やんれまァめんずらすなァ」と辺境訛りが炸裂したので、私には翻訳不能な会話が始ま
「失礼。冬場に外の方がいらっしゃるのは珍しいもので……道中さぞかしご不便だったことでしょう。狭苦しい所ですが、是非あたたまってください」
らない!?
思わずぎょっとして二度見してしまった。
白熊村長はそのワイルドな見た目に似合わない、渋くも甘やかなダンディボイスで私たちを招き入れ、暖炉近くの椅子を勧めてくれた。その仕草もまた丁寧で洗練されている。
本人が言うように決して広くはない家だったけれど、家具や丁度は品がよく上等なもののように見受けられ、ごちゃごちゃした生活感というものがない。
こういうのは人を通す部屋だけで、実際には奥の方は生活感にあふれているのかもしれないけど、そもそも応接間というものを用意してる村なんてまずないから、かなりレアなケースだ。
私がほへーと間抜け顔で見まわしていると、白熊村長は白湯にメープルシロップをたらしたものを用意してくれた。甘茶として用いるハーブや果実があまりとれない辺境の冬では、これがスタンダードなおもてなしだ。
「何しろ辺鄙な村で、お嬢様がお帰りとは露知らず……そちらの方は旅のお連れ様で?」
「ええ、こちらはウルウ。ウルウ、こちらは村長のマルディコです」
「はじめまして。お世話になります」
「私の嫁なのでお見知りおきを」
「よっ……奥方様を連れて帰られるとは、驚きましたな」
「あ、トルンペートも私の嫁です。三人で結婚しました」
「式は挙げてないけどね」
「…………それは、大変結構なことで」
一度はこらえた村長だったけど、さすがにちょっと処理に時間がかかった。
なんか申し訳ない。
白熊村長の解凍もかねて、村のこととか、今回の目的とか、そう言う雑談を交わしてみたけど、いやほんとうに流暢にしゃべる人だ。
っていうのも、どうもここが観光地だかららしかった。
「冬場は行き来も大変で、見どころもそうないのですが、夏場はきれいな湖で泳いでいただくこともできますし、宿には温泉も引いております。ですので時期になりますと観光地、また避暑地としてみなさまにご利用いただいております」
なるほど、いまはシーズン・オフってことらしい。
先程の豪邸は、シーズンにだけ開く旅館みたいなものってことだね。
リリオん家の別荘もあったりするらしい。さすがにそこを今から使えるようにってのは難しいだろうけど。
最大限に観光地としておもてなし力を高める一環として、村長さんや営業にかかわる人はみんな仕草や言葉を勉強して、いまや内地の人が来ても満足できるレベルまでになったのだそうだ。
シーズン・オフでも油断せずに応接間は整えてる村長さんは意識高いんだね。
まあさすがに寒さには耐え切れず、白熊みたいなことになってるみたいけど。
村長さんが貸してくれたのは、観光客用のコテージみたいなのだった。
お高い宿を取るほどではないけど、そこそこ快適に過ごしたい客層用で、ベッドなどの家具は一通り完備してある。
ただ、さすがに冬場の利用はほぼないらしく、ストーブは幌馬車のやつを流用することにした。
これよりランクが下がる、いわゆるバンガローみたいなやつは、すぐには準備できないというか、雪の下なので掘り起こすところかららしい。
「うう……あったまるまでかかるけど、でも久し振りに屋根のある所だ……」
「なんだかんだウルウって都会っ子だもんね」
リリオについて野外活動も多いけど、そうなんだよ、私都会っ子のもやしっ子なんだよ。
慣れてきたし、ぼちぼちこなせるようになってきたけど、安眠度は露骨に違う。ていうか、なれてきた今でもゲーム内アイテム使って快適さを少しでも上げようと足掻いてるしね。
虫とか、蒸し暑さとか、臭いとか。いろいろあるのだ。
「さすがに疲れたし、夜まで休みましょ。真冬の薄明かりとはいえ、しっかり夜になってからの方が綺麗に見えるわよ」
ということで私たちは冷たいベッドに悲鳴をあげながら潜り込み、一休み。
なんて軽く言ったけど、自分で思ってた以上に疲れがたまってたらしく、リリオに揺さぶられてようやく起きるくらいぐっすり寝こけてしまっていた。
寝ぼけ眼をこすって、うん、と一つ伸びをすれば、二人はもう準備万端だった。
万端って言うか、なにその装備。
二人はしっかり着込んでいるだけでなく、折り畳みの椅子や、なんかドリルみたいなのなんかも用意してた。
椅子はともかくそのドリルは何なのさ。っていうかドリルて。
「釣りです」
「ふむん?」
「氷上釣りってやつね。湖の氷に穴開けて、そこから釣り糸を垂らすのよ」
「あー……見たことはあるやつ」
「あんたそう言うのほんと多いわよね」
まあ、テレビとかネットとかでだけど。
釣りかあ。私には釣りの才能はあんまりなさそうだけど、氷上釣りは面白そうだ。ワカサギとか釣るやつだ。
なんでも、オーロラを見れるかどうかは運次第だし、釣りをして時間を潰しながら何日か粘ってみようってことらしかった。
なるほど、釣りで時間も潰せるし、見れなくても当座の食料はゲットできるという一石二鳥なわけだ。
なんだか楽しみで急に眼が冴えてくるあたり、私の体も現金なことだ。
村の人も使っているというそりにあれやこれやと道具を積んで、私たちは湖に向かった。
私にはどこが境目なんだか全くわからなったけど、リリオたちが、ほらここですよ、ここから湖です、というあたりからは、確かに足元の感覚が違う、ような気もした。
表面に薄く雪も積もってるけど、心なし滑る、気もする。
少し歩いて適当なところにそりを止め、まずは風よけのテントを立てた。本当に簡単なもので、効果のほどは頼りない見た目だけど、かわりにすぐに立て終わる。
ランタンをそこにぶら下げて、ふとあたりを見回してみると、離れたところで同じような明かりがいくつか見える。村の人が釣りをしているんだろう。彼らは生活のためだろうけど。
リリオがさっきのドリルを凍った湖面に突き立てた。
これは、なんて言うんだろう、長い棒状の造りで、片側はらせん状にブレードが巻き付いている。で、反対側はハンドルになっていて、これを回してがりがりがりと氷に穴をあけていくようだった。
「リリオなら殴った方が早いんじゃないの」
「まあ、鶴嘴とかで穴開ける人もいますけど、危ないですね」
「叩く感じの衝撃だと、ヒビが広がって足元ごとぱっかーんと割れちゃったりすることもあるらしいわよ」
「こわっ」
普通に立てるし、そりとかも持ってきたけど、そうだよな。
いま、私は表面だけ凍った湖の、その上に立ってるわけだ。
リリオが掘った穴は結構な深さというか、氷の厚みがあるけど、それでもともすれば全部割れて冷たい水の中に、なんてこともあり得るんだよね。
私はそんな怖い想像をしてしまったけど、リリオたちは慣れてるのか気にした風もない。
いやまあ、私だって《薄氷渡り》使えば普通に水の上歩けるんだけどさあ。
そう言う問題でもない気がする。
ともあれ、三人分の穴をあけたら、椅子に座ってそれぞれ糸を垂らす。
釣り竿は少し小さくて一見おもちゃみたいな感じだけど、リールもあるし、結構しっかりした造りだ。
釣り糸は先端に重しがついている。そして途中で五、六本枝のように釣り糸が分岐して、そこに釣り針がつけられていた。
餌は何かと思えば、つけない。というより、餌になるものも、この寒さではろくに取れない。
だから、ルアー、いや、毛針に近い感じでやる。色とりどりの古い布切れを裂いて巻き付けていて、意外にこれでも魚は引っかかるらしい。
まあ魚に色が見えているのかどうか私は知らないけれど、人によってはこだわるポイントらしい。
「なにが釣れるの?」
「色々釣れますよ。美味しいのとか……そこそこ美味しいのとか」
「それ絶対普通の人が食べたらやばい奴でしょ」
リリオは時々ナチュラルに毒とか食うので困る。
そしてそれが別に辺境貴族特有の頑丈さとかでは別になく、リリオ個人の悪食のせいだというのがまた困る。アラバストロさんは普通にお腹壊すらしいんだよなあ。
「そうねえ、実際色々釣れるわよ。公魚に、鱸の仲間とか、大きいのだと鯉、川魳とか」
「カマスって大きくなかったっけ?」
「釣れるのはまあ、大きくても一尺……三十センチくらいよ。大きいやつはこの程度の針にはあんまり食いつかないわ」
「食いついたら?」
「諦めるか、氷を割るしかないわね」
大きすぎても面倒なわけだ。
私たちはそうしてしばらくの間お喋りしながら釣り糸を垂らしていたけど、一匹も釣れないうちからトルンペートが立ち上がり、リリオもテントを片付け始めた。
釣りが得意ではない私でもまだ退屈してないのに、早すぎるのでは。
と思ったら、「ほら、次行くわよ」なんて言われる。
そしてしばらく歩いた先で、また同じように準備して釣り糸を垂らすのだ。
それでまたしばらくしたら、釣果に関係なく移動する。その繰り返しだ。
釣りって腰を据えるものだと思っていたんだけど、なんだこれ。忙しないな。
「つまりあの場所にはいないってこと?」
「さあ。それはわかんないわ」
「じゃあなんで移動するのさ」
「死ぬからよ」
「は」
トルンペートは大まじめに言った。
「クッソ寒いから、じっと座ってたら気づいたときには眠くなって死ぬわ」
「手遅れになる前に、こまめに体動かさないと危ないんですよねえ」
かなり切実な理由だった。
そのくせ、周りで同じように釣ってる村人たちは、飯のためだけでもなく、趣味でもあるみたいだから大概おかしい。
用語解説
・なんやかんや
なんやかんやはなんやかんやです。
・ボレタント山(La Boletanto)
辺境に所在する活火山。
大昔の大噴火で山体の一部を吹き飛ばし、レウチースカ湖ができたとされる。
住民が住み着いてからは噴火の記録はないが、近くに温泉が湧いていたり、ちゃんと活動しているようだ。
・小ボレタント山
やや大きな兄ヶ岳と、やや小さな弟ヶ岳を合わせてこのように呼ぶ。
ボレタント山と向き合う形でレウチースカ湖を三方から囲む。
こちらは火山ではないものの、地質学者によればボレタント山と地質がよく似ており、過去の大噴火で対岸まで吹き飛ばされた山体が割れて突き刺さったのではないかという説もある。
・レウチースカ湖(La Leŭciska Lago)
ボレタント山の火山活動によって形成されたとされるカルデラ湖。
冬季は全面氷結し、氷上釣りなどが行われる。
豊かな生態系を持ち、周辺環境含めて多種多様な生物がすんでいる。
夏季には辺境各地のみならず内地から観光に来る者もいるほどの名勝地。
というよりは、内地から来ようとする観光客が猛者なだけか。
・白熊村長
マルディコ氏。ラッコの獣人。
親戚一同みな小柄でモフモフしてかわいいのだが、幼少期の彼はそれを嫌って鍛錬に励んだ。
その結果、背も伸びて筋肉もつき、狩りもうまくて頭も良くて真面目という文武両道青年になるものの、かわいさを求める価値観の女性陣にはまったくモテず、いまの奥さんに出会ったのは四十代だとか。
なお、筋肉をつけすぎた結果、重くなり過ぎて水に浮かぶことができなくなってしまった。
それでも、水面を走るだけなら十五メートルくらいまではいけるらしい。
・《薄氷渡り》
ゲーム内《技能》。《暗殺者》系統がおぼえる。
設定では「一時的に体重をなくす」ことができるとされ、水上を歩行可能にするだけでなく、使用中所持重量限界を緩和できる。
また足音が消え、一部の敵Mobから発見されなくなるまたは発見されにくくなる効果がある。
『生きるということは、薄氷を踏んで歩くが如く』
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