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第十五章 竜囲い

最終話 竜囲い

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前回のあらすじ

ひりゅうのかいかた じゅうひりゅうへん。
飛竜乗りには変な人が多いのでした。





 モンテート要塞の竜舎場は、いままでの旅の中でもかなり見ごたえのある場所だった。
 ランタネーヨの牧場で、盲目の牛と呼ばれる巨大なモグラや、羊と呼ばれるもこもこの蜥蜴を見せられた時と同じか、それ以上のカルチャーショックだった。比較対象が地味だが。

 最初に飛竜のキューちゃんを見た時は、あ、これ死ぬなって直感するくらいには超生物感バリバリだったんだけど、山肌に空いた横穴の中で、もこもこの冬毛に包まれて丸くなっている飛竜はでかい猫みたいな感じがあった。
 だらしない奴になると、ひっくり返って腹見せて寝こけてたしね。

 まあ、それというのも、この飼育種の飛竜たちは、野生種のキューちゃんに比べるとだいぶおとなしくて、顔つきも丸っこいからかもしれない。
 あと、担当の飛竜乗りがもれなくずぞぞぞぞぞぞぞと音を立てて喫飛竜している姿が見られたのもあるかもしれない。

 辺境貴族で、かつ隊長でもあるグラツィエーロさんが顔出しても全く気にせず喫飛竜続けるし、上司の扱い雑だし、飛竜乗りというのは個々人の自己主張が激しい職種みたいだった。
 まあ飛竜を乗り回して戦うような人たちだ。普通の兵士みたいに足並み揃えてっていう感じよりスタンドプレイの結果によるチームワークみたいなところはあるだろう。

 飛竜の数はかなりのもので、モンテートの飛竜乗りだけでも帝国征服できるんじゃないかと思ったんだけど、なかなか難しいみたいだった。
 飛竜は確かにとてつもない距離を飛んで渡れるけど、これが兵站という概念とまず仲が悪い。現地調達にも限度があるし、燃費が悪い。
 戦力としても、飼育種は野生種と比べるとスタミナや馬力で劣るらしい。それでも普通の砦とか相手だったら圧倒できそうだけど、素早さを伸ばした結果耐久力はかなり落ちていて、バリスタみたいな兵器でも落とされかねないみたいだ。当たればだけど。

 実際に運用した上での数値を説明してもらったんだけど、撃墜対被撃墜比率キルレシオ、つまりこっちが相手を倒す間に、こちらは相手にどれだけ倒されるかの比率で言うと、野生種一に対して飼育種三。一頭落とすのに三頭がかりで相打ちってことだ。
 これもうまくいってってことで、実際はもうちょっと渋いので、確実を期して一頭に対して最低五頭以上で囲んで叩くのが基本戦法らしい。

 まあそもそも、一対一を好む本能的に蛮族のイメージが強い辺境人だけど、実際には囲んで棒で叩くが基本理念の理性的な蛮族らしいので、飛竜もその基本戦法にのっとった結果、数字上でも正しいってなっただけらしいけど。

 火力はあるけど弾数に限りがあり、高速で飛べるけど燃費が悪く、維持整備にも手間がかかるって、なんとなくだけど戦闘機みたいだ。
 モンテート要塞みたいな人間の食料も難しい場所で燃料、つまりエサはどうしているのかなって思ったんだけど、落とした飛竜の肉が主らしい。かなり栄養価があって腹持ちもいいんだとか。
 それだけだともちろん足りないんだけど、肉食に見えて雑食の飛竜は、穀類とか植物性のものでも大丈夫みたいで、それらを飼料にしてるみたい。なんなら竜車運輸の緩衝材として用いられている藁とかクローバーっぽいのも食べるらしい。

 戦死した飛竜乗りや内地の諜報員を竜葬と称して食べさせるんだぜとか若い飛竜乗りが言ってきたが、グラツィエーロさんが窘めてくれた。怖がらせようとしてきたらしい。

「まったく。今はやっとらんから安心しな」

 ……今は?
 まあいいや。掘り下げるとよろしくなさそうな気がするし。

 そうして竜舎場をたっぷりと堪能した私たちは、最後に、貸してもらった横穴に我が物顔で丸くなるキューちゃんピーちゃんを見舞った。
 穀類とか藁とかの飼料はあまりお気に召さないようで、持参した枝肉とかをバリバリやってたようだ。
 周囲の横穴の飛竜たちは、壁越しにも気配やにおいで野生種の存在を感じるらしく落ち着かない様子だったけど、うちの二頭は泰然としたものだ。あ、いや、若いピーちゃんは気になるのか、鼻をスピスピ言わせてきょろきょろしてるけど。

 丁度ブラッシングをしてもらっていたところの様で、飛竜乗りが恍惚とした表情で手入れに精を出している。野生種を触る機会なんてないだろうし、楽しいのだろう。
 壁際にごろんと二、三人転がされているのは、腕が良くなかったので蹴り飛ばされたらしい。それでも恍惚とした顔してるあたり本物だが。

 私たちは退屈そうな二頭を撫でてやり、喫飛竜をさっと済ませて、要塞へと帰ってきた。
 その頃にはもうすっかりいい時間で、ぼろくそにされた飛竜場もある程度修復されていた。これがなくても発着できないことはないけど、飛竜の負担が大きいので、修繕整備は最優先らしい。

 暖かい屋内にほっと一息つき、ほどよい空きっ腹を抱えて夕食の席へ。
 相変わらず食卓に並ぶのは芋に豆に漬物にと変わり映えしないけど、今日のメインはまた珍しいものだった。
 さすがに飛竜肉のローストみたいな豪勢なものはそう何度も出ないようだけれど、それに勝るとも劣らない逸品だ。

 温められた皿に盛られたのは、オムレツだった。鶏卵のオムレツより色味が濃く、橙に近い。
 乳酪ブテーロの香りがふんわりと立ち上るのは得も言われぬ心地にされたし、何より目を引くのはその大きなことで、「雑巾ほどあるオムレツの、ほくほくしたの」を食べるのだ。

 ナイフを入れると、程よく半熟にとろけた中身が、流れ出ない程度にとろりと崩れる。
 橙色の卵に包まれていたのは、細かく刻んだ野菜と、肉だった。スパニッシュオムレツのような風情だ。
 これを慎重に掬い上げて口に含むと、まず乳酪ブテーロの香り、それから卵の旨味と甘みとが広がった。この卵の味の濃いことと言ったら、今までに食べたことのないほどだった。舌に絡みつく濃厚な旨味が、わずかな塩で実によく引き立てられていた。
 中身の野菜は、珍しさもない、変わったところのないものばかりだったけど、濃厚な卵に包まれることで、その素朴なところがかえってよく味わえた。
 肉は、これは飛竜の肉であるらしかった。燻製にしたものを刻んで、自身からあふれ出した脂でカリカリになるまで炒めて、その脂と一緒に野菜を炒め、これらを卵に封じ込んだのだった。
 この脂がまた、さっくりと軽いけれど、香りがよくたち、くるんだ卵を開く際に、遠慮なしに立ち上ってくる。

 もちろん、この卵は飛竜の卵だった。
 野生の飛竜の卵など、辺境と言えども手に入ることはないので、これは飼育下でなければ手に入らない、他所では希少なものだそうだ。
 飛竜の数は、厳密に制限されて飼育されていて、交配も血統をもとに定められているそうだ。
 だからこうして口に入る卵というのはみな無精卵で、ひと月かふた月に一度、一抱えもあるようなものを産み落とすので、それを調理するのだという。
 この卵は、栄養価にも富み、魔力も豊富で、例にもれず長期の保存がきくので、表にどの飛竜のいつ頃の卵かを記して、古いものから使っていくそうだ。
 幼竜にとってもよい飼料になるので、殻ごと食べさせることも多いとか。

 私には食べ物の魔力がどうとかいうのはよくわからないけど、しかし食べると元気になるような味がするのは確かだった。栄養のあるものを食べているな、という感じがする。腹も満ちるし、頭もすっきりするのだ。
 あれだけ味も濃く、かなりの大きさだったのに、気づいたらすべて食べきってしまったくらいだ。
 要塞で病人や怪我人が出た時は、飛竜の卵料理を食べさせるとすぐに良くなるなんて話もあるそうだった。

 私が飛竜の卵や生態について感心していると、説明する子爵さんも話し甲斐がある様で、説明がてら卵の殻を使った細工品も見せてくれた。
 その細工物というのは、犬位なら丸々入ってしまいそうな大きな卵が台座に据えられたようなもので、鮮やかな朱色の卵の表面には、丁寧に彫り込まれたのであろう飛竜の図柄が広がっていた。
 それだけでもイースター・エッグのように美しいというのに、これはランプやランタンのように使うものなのだという。

 食堂の明かりをちょっと落として、殻を外した台座に組み込まれたオイルランプのようなものに火を灯し、また殻をかぶせる。
 すると、内側からの光が朱色の殻に透かされて、暖炉の火のような暖かみのある赤色がさっと部屋中を照らした。そしてまた、表面に刻まれた透かし彫りの部分は光が強く抜け、壁に巨大な飛竜が浮かび上がるという仕掛けだった。

「わしは飛竜や戦士の勇壮な絵図が好みだが、さいなどは星空を写し取った星図のものが好みでな。なかなか悪くなかろう」

 ゆらゆらと火が揺れるたびにゆらめく光の絵は、成程確かに幻想的で美しいものだった。
 ただ、それを前に自慢げに両手を広げているのが山賊の親玉みたいな顔なので、なんかの儀式っぽいけど。

 卵の殻は非常に丈夫なため、こうした丸ごと使った工芸品の他、ふたを取り付けて保存容器にしたり、かけらを服に縫い込んで急所を守ったり、研ぎあげれば刃物として使えたり、また砕いて粉末にして煉瓦や陶磁器の材料にもなるという。
 一つ一つが大きいし、竜舎場では結構手に入るのでいろいろ利用されているけれど、これをよそに持っていったらそれこそ邸宅が建てられるような高値で取引される代物みたいだ。
 管理がしっかりしているので絶対にないけど、もし有精卵なんか持ってったら領地くらいは買えるかもしれない。違法品だけど。

 夕食が終わり、甘茶ドルチャテオとともに歓談するにあたって、子爵さんは私たちに土産だと言っていくつかの品々を見繕ってくれた。

「なに、うちじゃあ余り気味じゃからの」

 などと農家のじい様みたいなことを言って寄越してきたのは飛竜素材の装備であった。
 まあ、そりゃ一杯取れるでしょうよ。

「リリオ、お前は……割に装備も大事に扱っとるのう。意外じゃ。白革は今更じゃし、年頃のもんが喜びそうなもん用意させたでな」

 リリオに用意されたのは、上等な小箱におさめられた、これは、髪飾りかな。ふわふわとした白い羽を、花の花弁のようにまとめて束ねたものを、ヘアピンのようなものに取り付けた形だった。まるでリリオの白い髪から咲いたようだ。
 とても珍しい白い飛竜の羽だそうだから、これまた高いんだろう。屋敷が建つような。

「成人したというのにお前ときたら着飾らんからの。嫁に愛想尽かされんよう、少しは洒落も覚えるころじゃろ」
「ありがとうございます! 二人とも、似合いますか?」
「はいはい可愛い可愛い」
「今度はすぐに壊さないでよね」
「あんですとー!」

 トルンペートには、なんか革張りのケースが用意されていた。
 これだけで結構な豪勢さだけど、開けた先はまた結構な代物だった。
 布張りのケースにおさめられていたのは、十二本一組の投げナイフ一式だった。
 刃先がやや幅広で、やや小ぶり。一緒におさめられたホルスターに収めて腰に巻けそうだ。
 しっとりとした刃は金属的というよりもどこか有機的になまめかしい白で、滑り止めの臙脂色の革が柄に巻き付けられていた。

「飛竜の肋骨アバラァ削り出した短剣よ。しなやかだが軽いんで、芯材にかねを仕込んどる。なんじゃったか?」
重石鉄ペザシュトノにございます」
「おお、それよそれ。鉛んごつ重いでの、ちっくと重心の釣り合いがむつかしいが、すぐ覚えるじゃろ」
「ありがたく頂戴いたします」

 なるほど、この白色は骨の白ということか。
 風精との相性も良く、ある程度魔術に通じているトルンペートにはいい装備だろう。
 デザインもスマートで格好良く、より《暗殺者アサシン》っぽさが上がった気がする。
 このパーティ暗殺者二人もいてほんとバランス悪いな。
 それにしても、うちで余ったから、みたいな出され方したけど、これ気軽に投げたら盗まれるレベルの高級品だよな。

「嫁どん、ウルウどんには何がええじゃろかと迷ったんだども、どうせリリオが碌なもん寄越しおらんち思うてな、祝いにはちっくと武骨じゃが、細工は華やかにしたべ」

 で、私。
 私には、守り刀というのをくれた。
 刀子っていうのかな。全体が二十センチくらいで、刃よりも柄の方がやや長い。
 魔術的な模様が掘られた磁器のようになまめかしい片刃は、飛竜の牙から削り出したものなんだそうだ。
 武器とかじゃなくて、工具、道具って感じの刃物で、さらに言えば美術品的な拵えでもある。
 鞘と柄は艶やかな黒い素材で出来ていたけれど、これも金属でもなし、木材でもない。何かの角などのようなつるりとした触り心地だ。
 その黒い肌に螺鈿のように、黒みを帯びた銀の真珠層で、おそらく黒百合のたおやかな姿が描かれている。

 私はあまりこの手の芸術品に造詣が深くないのだけれど、思わずほうとため息の漏れるような、妙な色気のある造りだ。
 そしてまた、造詣は深くないなりに、多分これも例にもれずドン引くほど高いんだろうなというのはお察しだ。
 ガチじゃん。
 これガチの美術品じゃん。

 子爵さんはえらいいい笑顔だし、おばあちゃん武装女中もいい仕事しましたみたいな顔だし、これ完全に手付金だよね。守り刀ってこれ、嫁入り道具的なあれだよね。
 大変いい物を頂きましてっていうか私が頂かれてんじゃないかこれ。
 黒地に黒百合ってこれ完全に私イメージしたデザインでしょ前からあったわけないでしょこのために作ったやつでしょ怖ッ。
 え、私が来てから作ったのこれ?
 子爵さん土下座かましたあとすぐに作らせたのこんなもん?
 仮にマテンステロさんから連絡が言った時点で、傷物とかなんとか考えながらも一応準備してくれてたとして、そんな早々とできるの?

 様々な疑問を押し込めつつ、笑顔で押し頂いた。
 受け取らないわけにもいかないし、いやまあ、怖くはあるけど別にリリオとの関係を解消したいわけでもないし。まあ歓迎してもらってるって思っとこう。

 それにしても、なんというか。
 囲われ始めてるなあ、などと、思ってしまうのだった。





用語解説

・盲目の牛
 しいて言うならば巨大なモグラ。
 完全に家畜化されており、現状では自分の寝心地の良い形に土を掘るくらいしかせず、自分で餌を摂ることもできない。
 濃い乳を出す。
 これとは別に普通のいわゆる牛もいるようだ。

・羊
 鱗の隙間から、鱗から更に変化した長いふわふわの体毛をはやす四つ足の爬虫類。
 とげのついた尻尾を持ち、外敵に対してある程度自衛ができるが、基本的に憶病で、積極的な戦闘はしない。
 いわゆる普通の羊もいるようではある。

・竜葬
 犯罪者や諜報員をエサにして食わせるというのは、脅しとしてはよく言われるが、実際には人の味を覚えるといけないので、行われたことはない。
 ただ、死亡した飛竜乗りの一部を遺された飛竜に食わせるという風習、また逆に飛竜乗りが戦死した相棒の一部を食べるという風習はいまもある。
 尤も、飛竜が落ちて飛竜乗りだけが脱出するというパターンはあっても、背中に乗った飛竜乗りが死亡するようなダメージで飛竜だけが生き残ることはまずなく、また懐いた相方以外を乗り手として認めることが滅多にないために安楽死させる場合が多く、ほとんど形骸化している。

・飛竜の卵
 竜卵は食べたものに怪力をもたらすと言われる伝説の食べ物である。内地では。
 また竜の卵を秘境で手に入れ、孵った竜と冒険する冒険譚も古来からあるが、まさかそんな夢物語みたいなことが現実にあるわけがない。一方西部では。
 鶏卵より色味が濃いのは何らかの色素のためと思われるが、詳細は不明。
 栄養価は高く、味も濃い。
 以前、どこかの馬鹿娘が丸まる温泉卵にしたら滅茶苦茶美味しいのではないかと試させたことがあるが、このサイズを適温で加熱して芯まで程よく温める苦労は凄まじいもので、料理人曰く割に合わないとのこと。
 殻は非常に頑丈で、卵割台に固定して、鑿と槌で底に穴を開けるようにして開く。

・髪飾り
 非常に珍しい白色個体の飛竜の羽を用いた髪飾り。
 魔術的にも調整されており、メタ的なことを言えば飛び道具の命中率と回避率が上がる。
 素材の量的にはそれほどでもないので、屋敷は建たない。
 殺してでも奪い取ることを計画する程度ではあるが。

・飛竜の肋骨アバラァ削り出した短剣
 適切な処理を施した飛竜の骨は、下手な金属よりも強く、軽い。
 また風精との相性が良く、メタ的に言えば飛び道具の命中率が大幅に上昇。
 センス次第で曲芸めいたこともできるだろう。トルンペートはもともとしてるが。
 当然高価で、投げられた相手が刺さった短剣を命がけで持ち去ろうとしても不思議ではない。

重石鉄ペザシュトノ(Pezaŝtono)
 土蜘蛛ロンガクルルロたちが扱う金属。
 銀灰色で、非常に硬く重いために重い石、ペザシュトノの名前を付けられた。
 融点が三千度以上と非常に高く、特殊な炉と高い冶金技術を必要とする。
 鉛のように、とは言っているが、実際には鉛より重く、金に近い比重。
 恐らく肋骨剣の芯材というより、バランス・ウェイトとしてごく少量用いられているのだろう。
 土蜘蛛ロンガクルルロはこの金属の武具を造ったこともあるのだが、重すぎて人気がなく、歴史的にすたれた。

・守り刀
 辺境ではこんなちっぽけな刀子などなんの自衛手段にもならない。
 実用というよりは「これは俺のもの」という見せつけのようなもの。
 ウルウが危惧するように、三品の中で一番高価。
 値段をつけようにも、一品もので辺境素材で辺境職人製という、鑑定人泣かせ。

・何かの角
 実際には角ではなく牙。
 黒毛岐佐ニグラエレファントという動物の牙。
 非常に密で重量があり、大変硬い。
 加工に手間がかかるため、材料費より加工費の方が高くつく。
 開き直ってほぼ素の状態に持ち手を付けて武器だと言い張った例もある。
 実際モンスターをハント出来そうな破壊力だったそうな。
 
黒毛岐佐ニグラエレファント(Nigra elefanto)
 クロゲキサ。
 北部では絶滅。辺境では乾燥地帯に棲息。
 背高は五メートルを超すものもある。重量は十トン以上の記録あり。
 太い足と長大な鼻を持つ象の仲間で、耐寒のため褐色の体毛に覆われている。耳は小さい。
 湾曲した黒い象牙は二メートルを超すことも多い。
 極めて密で硬いため武器や、凍った土を掘るのに使われるが、重たいため育ちすぎると自重でかしぐ。
 老齢個体が地面に象牙をめり込ませて餓死したと思しき骨格が発見された例もある。
 なお、骨も肉も黒い。
 非常に頑強な生物だが、貴重な蛋白源でもあり、辺境では命を対価にしても狩りの対象とされてきた。

・黒みを帯びた銀の真珠層
 大黒瑪瑙扇アガートトリダクノの真珠層。
 

大黒瑪瑙扇アガートトリダクノ(Agato tridakno)
 オオグロメノウオウギ。
 北洋及び辺境ペクラージョ湖に棲息し、移動などはせず海底に転がっている。
 北洋種と辺境種は近縁種ではあるが厳密には別種。
 貝殻は扇形で、波状に湾曲し、分厚い。
 殻長は二メートル前後。重量は二百キログラム程度。
 外側は黒褐色だが、内側は黒みを帯びた真珠層を持ち、虹色にきらめく。
 肉はやや大味ではあるが甘みがあり、塩辛などにもされる。
 その見た目から発見が、重量から入手が難しく、傷のない貝殻は非常に高価。
 巨大な真珠を育むという伝説があるが、実際には精々小粒のものか、歪んだ謎の塊ができる程度。
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