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探索再開
268 地下5階 ドタバタ契約劇
しおりを挟む闇の上級精霊フェンリルは、クリスの顔をじっと見つめている。
何で自分の事を見ているのだろうと思ったクリスは、フェンリルへ聞く。
「あのぉ? あたしの顔に、何かついてます?」
「動くな。そのままじっとしていろ」
「えっ? あっ、はい」
クリスの瞳を凝視し、観察しているフェンリル。
フェンリルに言われるがまま、クリスはじっと見つめられ続ける。
カーソンは何をしているのだろうと思いながら、クリスとフェンリルを交互に見比べていた。
やがて観察を終えたフェンリルが視線を外し、クリスへと話しかける。
「ふむ、クリスと言ったか。お前は面白い奴だな」
「へっ?」
「ぶふっ!?」
クリスへの評価に、カーソンは不意を突かれて吹き出した。
「ちょっと待て! カーソンいま笑ったな!」
「いやだって…当たってるし」
「面白い顔って言われたの笑ってんじゃねぇっ!」
「いや俺は別に面白い顔だ言われて笑ったワケじゃな――」
「やかましいっ!」
ベシッ
クリスは右手でカーソンの頭を引っ叩く。
「痛い……叩くなよぉ」
「どこの、誰の、顔が面白いって笑ったコラぁ!」
「いやそれは俺じゃなく、フェンリルに聞けよ」
「聞けないからあんたに聞いてんでしょ!
どこが面白いから当たったって言ったのよ!」
「ええっと……そういうトコ」
「どういうトコよ!」
面白い顔した女だと言われ、憤慨するクリス。
行き場のない怒りをぶつける為、カーソンに向けて右拳を振り上げる。
カーソンは両手で防御態勢をとりながら、しどろもどろに弁明を始めた。
「お、俺だったら面白い奴って言われて嬉しいぞ?」
「あたしは嬉しくなんかないっ!」
「痛い痛いっ! 暴力反対!」
「このっ! このっ! こんにゃろうっ!」
容赦なくカーソンを叩くクリスへ、フェンリルは話しかけてくる。
「おいクリスとやら。番にはもっと優しくしてやれ」
「へっ!? つがい……って、ちっ、違うし!」
「違うのか? そうか違うのか、成る程な」
「妙に納得すんな! いっ、今は違うってだけよ!」
「ほう? では、将来的には番になるのだな?」
「なっ、なれたらいい…ってか、大きなお世話よ!」
返答に困るクリスへ、フェンリルはカーソンを顎で差しながら話す。
「お前の心は、そいつ以外に絶対居ないと言っている。
その存在を長い間探し続け、やっと見つけられた。とな」
「ふぁっ!? なっ、ななな何よあたしの心が言ったとかって!
てっ、ててて適当な事ほざいてっとぶっ飛ばすぞこのクソ狼!」
「ほう、面白い。やれるものならかかってこい」
曖昧な表現を使われたとはいえ、心の奥底に隠している本心を暴露されたクリスは顔を真っ赤にしながら喚き散らす。
その表情には否定しようがそれは気持ちの裏返し、暗に認めたと認識されてしまうのではないかという焦りが出ていた。
キャンキャンと吠えるクリスを冷めた態度で見つめながら、フェンリルは話す。
「いつまで己の心を偽り続けるつもりだ?」
「いっ、偽ってなんかねぇっ! このクソ狼!」
「ではそこの連中に、この男をくれてやるのか?」
「ぐぅっ……それはそれで、なんか嫌だ!」
「ならばお前は、どうしたいと言うのだ?」
「どっ、どうって……何をどうしろってんのよ!」
「お前の心は、我に何と訴えてきたのか教えてやろう」
「わーっ! わーっ! あたしに許可なく勝手に言うな!」
このままでは自分の本心を皆にバラされてしまうと混乱するクリス。
ブンブンと無意味に両手を振り回すクリスを無視し、フェンリルは話し出す。
「お前の心はな、我にこう語りかけてきた」
「やめろ言うな! 適当な事ほざくんじゃねぇ!」
「適当ではない。我は上級精霊、お前の心を読める」
「読んだから言うとかふざけんな!」
「お前の偽らざる心の声だ。いいから黙って聞け」
「やめろ喋るなクソ狼! ホントにやめろっ!
あああこのっ! 触れないなんて卑怯者っ!」
喋られては堪らないと、フェンリルの口を塞ごうとするクリス。
しかしフェンリルには実体が無く、その手は虚空を切り続けた。
必死に妨害を続けるクリスの奮闘も虚しく、フェンリルは語り始める。
「私はカーソンの事を守りたい、守らなければならない」
「やめっ…………は?」
「けれど死ぬ訳にもいかない。死んでなどいられない」
「…………」
「彼を守る為に私が死に、彼を困らせる事もしたくない」
「いや、まぁ……うん。そうかな……うん、そうかも?」
てっきり自分が如何にカーソンの身体を求めているのか、他人には絶対に知られたくない桃色の妄想を暴露されてしまうと焦っていたクリス。
フェンリルは予想外にも、真面目な話を続ける。
「力が欲しい。彼を守り、自分の命も守れる力を」
「あたしの心……フェンリルにそんな事言ってるんだ」
「彼の隣に立ち続けられる、強い女になりたい」
「強くなりたいかなぁ……うん」
「大好きな彼との子供が欲しい、母になりたい」
「…………は?」
「彼の巨根で前から後ろから、滅茶苦茶にされたい」
「ちょ、ちょっと待ちやがれこのクソ狼ぃっ!」
「激しく突かれて子種を射精され、孕ませて欲しい」
「そんな事まで言ってねぇっ! い、いや思ってねぇっ!」
急に生々しい桃色願望の暴露へと変わり、これ以上辱められては堪らないと、慌てて否定するクリス。
イザベラとローラは、クリスの妄想にニヤニヤと微笑む。
内容を理解出来ないカーソンは、よく分からないがクリスも生きてゆくのに大変なんだろうなと思い、憐れみの表情を浮かべる。
フェンリルの姿も声も感知出来ていないソニアとティコは顔を見合わせ、吠えるクリスに今何が起きているのだろうと、お互いに首をかしげていた。
何やら面白い事になりそうだと微笑みながら、イザベラとローラはカーソンへクリスをフェンリルから引き離すように指示する。
カーソンは何を疑うという事もなく、クリスを背中から抱いて抑えつける。
自分を公開処刑するつもりかと焦るクリスは、カーソンに拘束されたままジタバタと暴れた。
「やめろバカーソンっ! 離せっ! 離してよ!」
「落ち着け。フェンリルに手ぇ噛まれたらどうすんだよ」
「噛まれたほうがマシだっ! あたし殺す気か!」
「なに言ってんだよ。死ぬわけないだろ」
「死ぬっ! 恥ずかしすぎて死ぬっ!」
「お前、なんか凄い事を思ってたんだな?」
「うわぁーっ! やめて言わないで! 聞かないで!」
「俺の事守りたいだなんて、嬉しいよありがとう」
「中出しとかぇっ!? いや別にそんな……お、おぅ」
桃色の妄想に触れられず、感謝の言葉を受けたクリスは全身の力を抜く。
どうやら当人には曲解して伝わっていそうだと、次の言葉を待った。
「いつも怒ってるけど、俺の事心配してたんだな?」
「別に、いつも怒ってたワケじゃ…ねぇし……」
「お前に負担かけないように、俺もっと強くなんなきゃな」
「……あたし、追いつけなくなるじゃん」
「いいよ追いつかなくても。俺がお前を守る」
「……カッコつけてんじゃないわよ」
「カッコつけたいんだよ、せめてお前にだけは。
イザベラさん達には、弱音言ってばっかりだけど」
「ちょっとくらい……あたしにも言いなさいよ」
「ん、分かった。そのうちな?」
カーソンはクリスの首筋へ顔を近付ける。
「…………」
「ちょっと、何してんのよ?」
「すぅぅ……はぁぁ……」
「やっ、やめてよそんなトコの匂い嗅がないでってば」
「お前の匂い……優しい匂い……」
「くっ、臭くない……かな? 臭くないよね?」
「うん。いい匂い」
「ならいいけど……って、よくねぇやめろ!」
「すんすん……お前の匂い、いい匂い」
「やめてってば!」
「女の匂い……母さんの匂い……」
「言ってる傍から変な事してんじゃ……ない」
「あ、ごめん。これって変な事になるんだな」
「変だよ。変だけど……まぁ、いいよ。許したげる」
甘い言葉を囁きながら抱擁されたクリスは腰がへなへなと砕け、カーソンへと寄りかかる。
目の前でカーソンがクリスを口説く場面を見せつけられ、恐ろしい形相で2人を睨みつけるイザベラとローラ。
どうしてこうなったのか分からないが、目の前で乳繰り合う2人に嫉妬するソニアとティコの眉間には深い縦筋がくっきりと現れ、細い目で見つめていた。
6人の愛憎交わる現場の雰囲気に呆れながら、フェンリルはクリスへ話しかけてくる。
「と、いうわけでクリスよ。お前は力が欲しいのだろう?」
「いやまぁ、欲しいっちゃ欲しい……かな?」
「そこでだクリスよ。我と契約せぬか?」
「は? 契約?」
「闇の上級精霊たる我、フェンリルがお前に従ってやろう」
「……え? それって……えっ?」
「我がお前の力になってやろう」
「契約……あたしが、闇の上級精霊と?」
「なんだ不服なのか?」
「いや、そうじゃないけど……なんか突然で」
「お前の恋人も、風の上級精霊を従えているではないか」
「……妙なトコでおちょくってくるのよね、このクソ狼」
「クソクソ言うな。寛大な我とて限度があるのだぞ」
自分の力を貸してやろうと、クリスへ契約を迫るフェンリル。
クリスは後ろを振り向き、イザベラとローラへどうすればいいのかと指示を仰ぐ。
「あの……あたし、どうすればいいのでしょうか?」
「……別に? いいんじゃないの? 勝手にすれば?」
「貴女にも実力が伴ってきたのですね。小癪な」
「え、ええっと……なんか怒ってません?」
「別に怒ってなんかないわよ」
「気に食わないだけですわ」
「それって怒って……いえ何でもないです」
2人の視線に恐怖を感じ、クリスは肩をすくめる。
イザベラとローラは冷たい視線を送り続けたまま、クリスへ話す。
「私とローラは、最上級精霊と契約しているからね」
「制約で、上級精霊とは契約が出来ませんの」
「ひとりで過剰な戦力を手にしない為に、禁忌なのよ」
「どうせ手にしたところで、使いこなせませんからね」
「はぁ、そうなんですね」
委縮しているクリスへ、イザベラとローラは契約を促す。
「ソニアには見えていないんだし、契約しちゃえば?」
「闇の上級精霊フェンリルは、女性としか契約しません。
風の上級精霊セイレーンが、男性だけと契約のように。
ここでフェンリルと契約可能なのは、クリスだけですわ」
「勿体無いと思うんなら、あなたが契約しちゃえば?」
「契約したいのなら、してしまいなさい」
「……なんかお2人とも、投げやりのような気がする」
淡々と、契約したければ勝手にしろと言われているような気がするクリス。
機嫌を損ねさせたのは自分じゃなく、カーソンのせいなのだから怒りの矛先はあっちに向けて欲しいと涙目になった。
深呼吸し、気持ちを落ち着かせたクリスは振り向き、フェンリルへと話しかける。
「狼…じゃなかった。精霊フェンリルさん、契約します」
「そうか。では、これから宜しく頼む」
「はい……って、えっ!?」
契約すると伝えた途端、目の前に居たフェンリルはその実体の無い姿を消した。
事情が分からずに慌てるクリスへ、イザベラはぶっきらぼうに答える。
「あれっ? フェンリル消えちゃっちゃ」
「あなたの呼び掛け以外では、姿を現さないわよ」
「え? それってどういう……」
「呼べばいいのよ、あなたがフェンリルを」
「あっ、そっか。それじゃあ……出てきてフェンリル」
クリスが呼び掛けると、目の前にフェンリルが現れた。
契約時に居た1体とはまた別に、そっくりな2体目が。
「わっ!? 2匹出た。何でっ?」
「匹とはなんだ、匹とは。我に失礼だと思わんのか」
「おいなんだこの女。今度の主は随分と無礼な奴だな」
「いやだって、4本足の獣なんだから匹でしょ」
「そのふざけた常識を改めろ」
「せめて2体と呼べ、2体と」
「へぇ? 2人っては言わせないんだ?」
「最低限まで譲歩しての事だ、忘れるなよ?」
「おいおい我が分体よ。何でこんなのと契約したのだ?」
「何よこんなのって! 失礼ね!」
「失礼も無礼も、お互い様だろうが」
「気の強い女のようだな。それはそれで面白そうだ」
「もう1体の奴まであたしの事面白い女って言うな!」
契約者の呼びかけに応じ、実体を持って現れた2体のフェンリル。
喧々囂々と吠えあうクリスとフェンリルを見つめながら、カーソンはイザベラへ聞く。
「イザベラさん。何でフェンリル2体も出てきたんですか?」
「プライマリとセカンダリで、2体出たんじゃないかしら?」
「あ、なるほど。プライマリとセカンダリですか」
「随分と賑やかにしているけど、ちゃんと従えるのかしら?」
「あれでも俺の下級精霊達よりはマシですよ?」
「それはそれで、あなたの価値観に疑問があるわね……」
何かある度に口喧嘩を始める、カーソンと契約している下級精霊達。
新たに契約した闇の下級精霊シェイドのおかげで、口論が始まっても鎮静化するのが早くなった。
クリスも仲良く会話が出来る精霊と契約出来たかと、微笑ましく見つめていた。
クリスとフェンリルの口論が終わったのを見計らい、テイコは実体が見えるようになったフェンリルに恐れる事無く近寄ってゆく。
「わぁっ。この狼さん達、クリス様のペットですかっ?」
「ペットではない。我等はクリスを守護する精霊だ」
「小娘よ、我等をそこらの愛玩動物と同類に扱うな」
ティコはフェンリル達の頭を交互に撫で、話しかける。
「言葉を喋れる狼さんっ。すっごく可愛いっ!」
「我の姿に臆せず触れるとは……豪胆な小娘よ」
「むぅっ……不覚。なかなかに心地良いわ」
「いやーんもうっ、狼さん達可愛いっ!」
「……可愛いとは、今まで言われた事など無かったな」
「む、むふふ……小娘よ、もっと我を撫でてもよいぞ」
「わぁっ、やったぁ! とっても可愛いっ!」
「おい小娘。いい加減に……いや、好きにしろ」
「何処かの誰かが、可愛いは正義と言っていたが認めよう」
可愛いと言われ気分を良くしたフェンリル達は、ティコの顔をペロペロと舐め始める。
「きゃんっ。あははははっ! 可愛いっ!」
「ほーれほれ、我を褒め称えた褒美だ」
「有難く受け取るがいい。ペロペロ」
「あーんもう可愛いっ! わたしティコです、狼さんっ」
「ティコという名なのだな? よし、覚えたぞ」
「我等は闇の上級精霊フェンリルだ。覚えておけ」
「フェンリルさんっ! よろしくお願いしますっ!」
「うむ、お前はなかなか見所のある人間のようだな」
「我等を無条件に触れる権利を、お前にくれてやろう」
ティコは喜びながら、フェンリルとじゃれあっている。
クリスはフェンリルに話しかけた。
「なんかあたしとティコとじゃ、待遇が違うんだけど?」
「何を言う。当たり前ではないか」
「ティコは我等を可愛いと言った。主は何とした?」
「じゃあ、あたしも可愛いって言えばいい?」
「おう。それでいい」
「やぶさかではない」
「何となく、こう……イラッとさせてくるわねこいつら」
「うん? 何か言ったか主よ?」
「言いたい事があるのなら、ハッキリと言え」
「何でもありませーん」
ティコの顔を舐め続けたまま、適当に契約者へ対応するフェンリル達。
何で自分じゃなくティコと楽しそうにしているのだこいつらはと、クリスは嫉妬していた。
ティコはフェンリル達に押し倒され、床に寝転がったまま舐められ続けながらクリスへ聞く。
「クリス様ぁ。この子達にお名前付けてあげて下さぁい」
「えぇぇ、名前付けんの? めんどくせぇ……」
「そんなぁ。クリス様の守護精霊さん達ですよ?
お名前つけて、どうか可愛がってあげて下さぁい」
「うむ、そうだな。名を貰えば主に甘えてやっても良い」
「ふざけた名前を付けたら、噛みついてやるからな」
「あたし契約者なんだけど? 脅すってどういう事よ?」
「脅す? 何を言っておるのだ主よ?」
「人聞きの悪い事を言うでない」
心外だと言いながら、フェンリル達はクリスを見つめる。
そのつぶらな瞳に見つめられたクリスは、溜め息をつきながら話す。
「認めるわ。確かに、可愛いは正義だわ」
「この世の心理に触れたようだな、主よ」
「これでひとつ、賢くなったな」
「はいはい、おかげさまで」
「というわけで主よ、早く我等に名をつけてくれ」
「可愛い名は……望むところだがやめてくれ」
「なんでよ? 別にいいじゃん?」
「我等は別に構わぬが、他者から主が侮られるぞ」
「主の名付け能力を、馬鹿にされぬようにな?」
「ちょ……変な圧力かけてこないでよ」
フェンリル達は姿勢を正しながら、クリスへ自分達の名を求める。
変な名を付ければ契約者自身が恥をかくと指摘され、クリスは困惑する。
何故なら、親しみを込めるつもりで『カータン』と『カーリン』にしようと思っていたから。
自分の馬を『カートン』と名付けた時から、何も変わっていないクリスであった。
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