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新たなる旅路
177 蒔いていた種
しおりを挟む一行は3人の村人達を馬車に乗せ、イサリ村へと運ぶ。
軽く休憩をとった後、村を出てネストへと戻った。
ネストへは陽が落ちかけた頃に到着する。
馬屋へ馬車を預けると、荷物と共にメデューサの首が入った袋を下げ、冒険者ギルドへ向かった。
クリスはフィピロニュクスへ袋を渡しながら話す。
「おじさーん、魔物の首、持って来ました」
「おおっ! イサリの洞窟に居た魔物、正体が分かったのか?」
「こいつでしたよ。確認お願いします」
「ふむ、どれどれ…………うおっ!?」
フィピロニュクスは袋の中身を見て、飛び上がって仰け反りながら驚いた。
「なななっ……何だこいつは!? へっ、蛇か!?」
「魔物の正体はメデューサでしたよ」
「な、何っ!? 今、何て言った? メデューサだって!?」
「そうです、メデューサ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! メデューサったら……ええっ!?」
「目は瞼を縫い合わせて塞いでます。見ても石化しませんよ」
「ほ、本当だろうな? 見た途端石にされやしないだろうな?」
「大丈夫ですってば」
「そ、そうか? じゃあ……」
フィピロニュクスは恐る恐る、受付のカウンターへ袋をひっくり返す。
メデューサは恐ろしい形相のまま、カウンターへゴロンと転がった。
「たっ…たまげた。メデューサなんてウソだろ? まさか本当に実在するとは……」
「私達も初めて見たけど、別に大した事無かったわよ?」
「た、大した事ないって……こんな災厄クラスの魔物、本来なら大騒ぎだぞ?
国で抱えてる魔法使い招集して、駆除しなきゃならん案件だったってぇのに……」
「私達が、その魔法使いですわよ? 何の問題もありませんわ」
「……そうか、ははっ…そういえばそうだった」
フィピロニュクスは、メデューサの首をペンでつつきながら話す。
「ははっ……俺、蛇が苦手なんだよ。こんなの目の前に居たら、石化される前に心臓麻痺で死んじまうところだったよ」
「犠牲になった人達には気の毒だけど、早めに討伐出来て良かったですね?」
「ああ、確かにそうだな。流石は伝説の冒険者パーティだ、ありがとう」
「その伝説って肩書き、やめて欲しいなぁ」
「まるでもう、この世に居ないみたいな扱いじゃないですか?」
「それだけ周りが畏怖してるんだよ。そろそろ肩書きに慣れてくれよ」
「慣れませんってば」
「俺達もみんなと同じ、ただの人間ですよ?」
「君達ほど人間離れした存在が居るもんかよ。いやホントに……うん」
「んっ? 本当に…何だ?」
「ああ、深い意味は無いよ。こうして目の前で会話してる事すら不思議な存在って事だよ」
ソニアに勘繰られたフィピロニュクスは、他意は無いと話した。
ギルド職員達は大慌てで棚に保管されている資料を漁っている。
フィピロニュクスは袋へゴールドを入れ、クリスへ手渡しながら話す。
「報酬は5万ゴールドだったんだが、相手が災厄クラスの魔物だった。
とりあえず追加で10万上乗せして、15万ゴールド支払うよ」
「え? いいんですか? そんなに貰っても?」
「いや、もっと支払わなきゃないんだが、ウチのギルドでは決められない。
本部へこの首と報告書を提出して、然るべき額を支払うよ。
また未精算の報酬になるがすまない、許してくれ」
「いいですよ。15万でも貰えて嬉しい額ですし」
「後は、夕飯をここで食っていってくれないか? ギルドで全額支払うから」
「? ここで晩ゴハンをですか?」
「この金で、今ここに居る冒険者達に奢ってやってくれ」
フィピロニュクスは報酬とは別の袋を、カーソンへ渡そうとする。
カーソンは首をかしげながら、理由を聞いた。
「? 何でです?」
「ここの慣例なんだよ。先輩冒険者が新米冒険者にメシを奢るんだ」
「そんな慣例、いつ出来たんですか?」
「何言ってんだよ。この慣例を作ったのはカーソン、お前さんだぞ?」
「えっ? 俺?」
「昔、お前さん他の冒険者にメシ奢っただろ? それが始まりだよ」
「俺、そんな事した覚え……あ? もしかして、あの時のシチュー?」
「それ以来、奢った冒険者は伝説と呼ばれるほど強くなる。
奢られた冒険者もその運を分けて貰って出世するってな。
ウチのギルドじゃ毎日、冒険者達が奢り奢られまくってるんだぞ?」
「それ広めたのって、あの4人組ですか?」
「その通り。最近お前さんに再会して、お礼出来たって喜んでたぞ?」
「そうかぁ……あいつらも真似して、流行らせたのかぁ」
「他のギルドでも流行りつつある、とてもいい習慣だろ?」
「うん、そうですね。腹減ってたらちゃんと仕事出来ないし、とてもいいですね」
「と、いうワケで頼むよ。金が余ったらそのまま貰ってくれ。足りなかったら追加で払うからさ」
「ええ、喜んで。じゃあ、食ってる間に俺達のカードへメデューサ退治の記録、お願いします」
「分かった。人数分のカード、確かに預かるよ」
「ところで今日の晩ゴハン、メニューは何です?」
「それこそ牛肉のシチューさ。偶然ってあるもんだなぁ」
「おおっ、シチューかぁ。怖いくらいの偶然ですね」
カーソンは、フィピロニュクスからゴールドを受け取ろうとする。
クリスはカーソンの手を遮りながら話す。
「これは受け取りませんよ、おじさん」
「えっ? 何でだよクリス」
「これはギルドのお金で、あたし達のお金じゃないもん。このお金で奢ったら、ギルドが奢った事になるよ」
「……あ、言われてみりゃそうだ。奢るんなら俺達のお金からだよな」
「そそ。そういう事よ」
「ほいじゃ、これからみんなに奢るか?」
「また変に知名度上げちゃうけどね。まっ、しょうがないか」
カーソンとクリスは、受付向かいの食堂へと向かった。
伝説の冒険者が夕食を奢る、ギルド内の冒険者達は歓声を上げながら食堂へ並び始める。
「うおーっ! やったぜ! 晩メシ奢って貰える!」
「しかも奢って下さるのが……こりゃあ俺、冒険者として成功するわ」
「あんた達! くれぐれも失礼のないようにしなよ!」
「この前オストで馬鹿共が乳やらナニやら触らせて、怒って逃げられちまったんだからね!」
「お触り禁止だかんな! ちゃんと守れよ!」
「やべえ、さっき食ったばっかで腹減ってねえ」
「跳べ。跳んで胃袋の上に隙間作れよ」
「おうよ。吐いてでもご馳走になるぜ」
「あたしちょっくら街の中走ってくるわ。少しでもお腹減らさなきゃ」
「おっ! 俺も走ろうかな」
「帰ってきた時に売り切れてても知らねえぞ?」
「ほいじゃ今すぐ全力で突っ走ってくるわ」
「やべえ、走ったら酒が回ってぶっ倒れそうだぜ」
既に夕食を終えていた冒険者達はその場で飛び跳ね、胃袋に空きを作ろうとする。
どうにか腹をこなそうと、街中を走りだす冒険者達も出没する。
街中を駆け回る冒険者の集団に、何か事件が起きたのかと街の衛兵がギルドへ確認しに来る事態となった。
イザベラとローラはテーブル席へ座り、夕食が運ばれてくるのを待ちながら話す。
「冒険者生活って、楽しいわね」
「本当、毎日が楽しくて仕方がありませんわ」
「谷に居た頃じゃ、こんな事全く考えられなかったわね?」
「歴代のローズヴェルク家の守り手様達には、大変申し訳なく思いますが。
封印が解かれなければ私達、この様な暮らしなんて出来ませんでしたね?」
「ソーマの馬鹿のお陰よね。お告げ通りの事やらかしてくれるなんてね」
「でもお姉様、もうひとつのお告げはどうなるのでしょうね?」
「この世を救う力を持つ男……まあ、少なくともソーマではないわね」
「と、なると……やはりカーソンがでしょうか?」
イザベラとローラは、クリスやソニアと共に夕食を配るカーソンの事を見つめる。
2人が何かを言いたそうに見ていると気付いたソニアは、配膳をしているカーソンへ話しかけ、向かわせた。
カーソンはテーブル席へ座り、イザベラとローラへ聞く。
「どうしました? 俺に何か用事ですか?」
「ええ。あなたの事を思っていたのよ」
「この世界に平和をもたらす男の事を……ですわ」
「えっ? 俺が何かすれば、世界が平和になるんですか?」
「うん、今の状況を見れば分かるわ。もう既に、あなたはその仕事をしているわね」
「こんなに沢山の人間達にその存在を知られ、慕われているのですものね」
「8年前に谷から送り出したのは、本当に正解だったわね」
「クリスは未だに受難が続いていますけどね?」
「ごめんローラ。その件はもう、そろそろ許してよ」
「許すかどうかは、クリスが決める事ですわよ?」
「だから解除しようか聞いたのにね、私達もさせてくれる気が無いから断られたもの」
「あらあら、頑なな乙女ですこと……くすくす」
「こっそり解除して、泣かれても知らんぷりしてヤッちゃおうかしら?」
「それはとても魅力的ですがお姉様、流石にクリスが可哀想ですわよ?」
イザベラとローラが、また自分には理解出来ない話をしているとカーソンは思う。
カーソンは2人へ聞く。
「それで俺、何をすれば世界が平和になるんでしょ?」
「時が来れば、いずれ分かるわ。あのね、カーソン。解かれた封印、私達は必ず再封印するわ」
「でもその時に、きっとあなた達に助けて頂かなければならなくなると思います」
「どうか私達の事、助けてちょうだい」
「お願い致しますわ」
「もちろんですよ。その為にソニアさんやクリス、俺が居るんですから」
「ありがとう、頼りにしているわよ? あっ、来た来た! 美味しそう!」
「あっ、これが例のシチューですわね? とっても美味しそうですわ!」
冒険者達へ配り終えたソニアとクリスが、自分達の分を運んできた。
イザベラ達は他の冒険者達と共に、夕食のシチューを楽しむ。
ニャーン
ギルド入り口から、1匹の猫が中へと入ってきた。
猫はそのまま進み、受付の前へと座り込む。
フィピロニュクスは席を立ち、表へ出てくると猫へ話しかける。
「おっ? メシ食いに来たのか? よしよし、待ってろ」
フィピロニュクスは食堂へと歩き出し、猫はその後を付いて行った。
食堂の給仕係へ小銭を渡し、猫用のエサが乗った皿を受け取る。
猫を手招きし、ホールの隅へ移動すると皿を床に置くフィピロニュクス。
猫はフィピロニュクスを見上げ、ニャンと鳴くと用意されたエサを食べ始めた。
しゃがんで猫の食事を見守るフィピロニュクスへ、カーソンは話しかける。
「おじさん、ネコ飼ってるの?」
「いや? そういうワケじゃない。犬もよく来るよ、野良だけどな」
「ゴハンあげてるんですね?」
「まあな。ほれ、お前さん昔野良連中に迷子の猫を探して貰った事あるだろ?」
「んー? ああ、ドリテスって女の子だったっけ?」
「ドリテスは悪人の役人よ。あの子は確かトルテよ?」
「あ、いけね。ドリテスは悪い役人だったか。そうそう、トルテって子だ」
「俺達ギルドもどうにかしてその情報網を取り込みたくてな、こうして餌付けしてるんだ」
「8年もずっとですか?」
「今まで一度も情報は貰ってないけどな。それは別として、こうして食いに来るのが可愛くてな」
「へえ。お前も腹減ってたんだな? ゴハン貰えて良かったな?」
カーソンは猫へ話しかけた。
猫はピクリと耳を動かし、カーソンを見上げる。
カーソンを見た猫は目を丸くし、ニャッと鳴くと一目散に外へと出て行った。
食べ残した餌を見ながら、フィピロニュクスとカーソンは話す。
「あれっ? カーソンに話しかけられたら逃げた?」
「……何だろう? 『居た』って言って出て行きましたよ?」
「居た? あの猫そう言ったのか?」
「ええ。俺の顔見て、居たって言いましたよ?」
「何だカーソン、もう情報集めの依頼してたのか?」
「いえいえ、まだ何も頼んでませんよ?」
「むしろ猫のほうが、お前さん探してたって事か?」
「どうでしょう? 俺には探される覚えないですけど……」
「また戻ってくるかね? 皿は片付けるの待っとくかな」
「そうですね。あいつら、よっぽど困ってない限り人には媚びませんから」
「そうなのか? じゃあ、メシせびりに来る連中ってやむなくここに来るんだな?」
「ですね。俺、あいつらに『飢え死にするくらいなら人間へ助け求めろ』って言った覚えがあります」
「へぇ……動物と話せるって便利だなぁ。俺も話してみ……お、来たか」
「……あれ? 今度はイヌも来ましたよ?」
「お、おお? 随分とまぁ……沢山連れてきたな」
戻ってきた猫と共に、数十匹の野良犬、野良猫がギルド内へ入ってきた。
犬と猫はカーソンに向けて、ワンワンニャンニャンと鳴いている。
カーソンはその鳴き声に耳を傾けながら話す。
「おいおい、そんな事で喧嘩するなよ。どっちが先に見付けたとか関係ないぞ?」
バウッ ワフッ ワンッ
ニャン ニャンッ ニィー
「……え? それ、ホントか?」
ワフン クゥーン
ニィー
「……分かった伝える。おじさん、街の中に魔物が居ます」
「へぇ、そう言ってるのかこいつら……なっ、何だとぅ!?」
「こいつらのボス達は、どうにかして早く伝えようとしてたみたいです。
ところが若い連中にここ行かせると、ゴハンだけ食って帰ってくるみたいで。
それで今日もここ来てたネコに任せたそうなんですけど……あいつも食ってましたよね」
「おいおい……本当に魔物居るのか?」
「ええ。暗くて水の流れる所って言ってるから、たぶん地下の下水道ですね」
「どんな魔物だとかって言ってないか!?」
「緑色していて、オスは殺してるけどメスは交尾してるって。おい、交尾ってなんだそれ?」
ワンッ
ニャゥ
「すまん、確かにそれどころじゃないよな。おじさん、たぶんゴブリンじゃないですかね?」
「すぐに手配する! お前達! 動けるならすぐに地下の下水道へ行ってくれ!」
「おっ! 緊急手配かぁ? いくらだ?」
「ゴブリンだったら1匹200だが250にする! やばいのだったら戻って報告!」
「乗った! ちょっくら行ってくるぜ!」
「うちらも行くよ! どうも捕まってるっぽい話だし!」
「どさくさ紛れにお前らまで犯しそうだかんね!」
「しっ、しねえよ馬鹿! 俺らとゴブリン一緒にすんじゃねえよ!」
「肌の色が違うだけだろ?」
「うるせえ行くぞ! 早く助けねえと死んじまうぞ!」
「あいよっ!」
冒険者達はフィピロニュクスの指示に応え、ギルドから飛び出して行った。
フィピロニュクスはギルド職員へも指示を飛ばす。
「役所に緊急の要請を出せ! 下水にゴブリンが居る可能性が非常に高い!
ここ数日で行方不明になった奴が居ないか調べさせろ!
下水に関わる仕事を手配していたか、作業中かどうかもだ!
ギルドは既に駆除へ動いてると言え! 医者の手配も忘れるな!」
ギルド職員もフィプロニュクスの指示に応じ、即座に動き出した。
フィピロニュクスはしゃがみ込み、犬と猫達へ話す。
「そうかお前達、最近来る回数増えたと思ってたんだが、この事を伝えたかったんだな?
ずっと気付かなくて済まなかった、もう手配したから大丈夫だ。晩飯食ってってくれよな?」
ワフン
ニャンッ
犬と猫達は、新たに用意された食事へとありついた。
イザベラ達は一連の流れを静観し、それぞれ口に出す。
「フィピロニュクスとやら? あなた、なかなかの切れ者ね?」
「犬と猫からの情報なのに、即座に行動するとは大したものですわ」
「誤った情報だったらどうする気だ?」
「それは大丈夫ですよソニアさん。カーソンがちゃんと聞いた情報ですし」
「おじさんの言う事は分かるけど、自分達が言う事分かってくれずに困ってたそうですよ」
フィピロニュクスは食事をしている犬猫達を見ながら話す。
「実はな、こいつらが頻繁に来た数日後に必ず事件が起きてたんだよ。
きっと何かを伝える為に来てたって気は、ずっとしてたんだ。
カーソンが通訳してくれて、やっとそうだったんだって分かったよ。
あの時見付かった変死体、それに魔物……俺が何とかしてりゃもしかして……」
「終わった事をいつまでも悔やんでちゃ駄目よ?」
「そうですわよ? 今日こうして分かったのですからね?」
「次にまた同じ失敗さえしなければ、それでいいのではないか?」
「そうですよおじさん。この子達も、おじさんに伝えたくて頑張ってたんですし」
「んでもこいつらメシ食って、すっかり忘れてボスに怒られてたんだけどな?」
クゥーン
ニャーン
犬や猫達はカーソンの言葉に食事を止め、情けない声で鳴いた。
カーソンは紙を用意し、犬や猫達へ話しかける。
「よし。今後お前達がおじさんに何を伝えたいか、簡単な決め事をしようか?」
「ん? 俺に伝える簡単な決め事?」
「ええ。こうやって紙をこいつらの前に置いて、手形を押させるんです」
「手形……おお、そうか! なるほどなぁ!」
「いいか、お前達? 覚えるのは3つだけだからな?
腹が減ってここに来ただけなら、手形を紙に1回だけ押せ。
それ以外に伝えたい事があったら、もう1回押して2回な?
今みたいに魔物が街に居るような事を伝えるなら、3回押すんだぞ?
これでお前達が何を言いたいかは、押した手形の数でおじさんが分かってくれる。
これを帰ったらボスに伝えてくれ。みんなにもな? おじさん、これでどうですか?」
「名案だ。お前達、今日はありがとう。これからは手形の数で俺に教えてくれよ?」
ワンッ
ニャンッ
「そうそう、今日みたいな事は3回な? これからも頼んだぞ? 現場に案内もな?」
犬や猫達は目の前に置かれた紙へそれぞれ3回手形を押し、理解した旨を人間側へ伝えた。
食事を終え、帰ってゆく犬や猫達。
入れ替わりに討伐へ出ていた冒険者達が、ゴブリンの首をぶら下げて帰ってきた。
「おーう。野良達の言ってた通りだったぜ。9匹居やがった」
「3人男が殺されてて、女が2人ひでえ事になってやがった」
「女連中はそいつらに寄り添って慰めてるぞ。冒険者の被害は無しだ」
「被害にあった奴らはまだ身元が分かんねえ。気が狂っちまってるから聞けねえしな」
「下水から出る時に医者とすれ違ったからよ、きっと助かるはずだ」
「何とか女2人の命は助けられたな。それで良しとしようじゃねえか?」
「みんなありがとう、良くやってくれた。清算するから首出してくれ」
フィピロニュクスは騒動の事後処理へと動き出した。
イザベラ達は一連の騒動が落ち着いた事を確認し、ギルドを出ると宿屋へ向かった。
大部屋を取り、中に入ると着替えを始める。
ようやく一息つきながら、テーブル席へ腰かけたまま話し合う。
「結構騒々しかったけど、事態は落ち着いたようね?」
「犬や猫が魔物の存在を教えるとは、変わった街ですわね?」
「あの猫、カーソンを見た途端に動いたようだが?」
「あんた、あの猫に見覚えあった?」
「いや、無いよ。ただ、あいつらにはずっと言い伝えられてたってよ」
「言い伝えられてた? 何を?」
「背中に翼のある人間は、自分達の話を聞いてくれるから……って」
「は!? 何それ!?」
「あら、犬や猫達には私達の翼が見えるのかしら?」
「ええ、どうもそうみたいです。精霊も見えているそうです」
「まあっ、そうなのですか?」
「……ふむ。動物の目には全てが見えてしまっているのか」
「動物と話せるあんたじゃなきゃ、知る事の出来なかった真実だね……」
「言葉は伝わらないし、字の読み書きも出来ないあいつらには、俺達の正体を人間に伝える手段が無いですけどね」
「黙っててくれるように、あなたからお願いしてちょうだいね?」
「はい、分かりました」
「もしかして、カートンやクリシ…ああ、そういえば谷で一緒に過ごしましたわね」
「ええ。あいつらはもう、分かってて黙ってくれてますよ。ロザニアもです」
「いい子達ねぇ。今度私もニンジン、ちょっと怖いけどあげてみようかしら?」
「私も、そう致しますわ」
「何となくあいつらが、可愛く思えてきたぞ」
「いやソニアさん、カートン達可愛いですってば」
イザベラ達は、動物の目には自分達の偽りの姿が通用していないと知り、驚いていた。
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