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犯した過ち
121 危ない女
しおりを挟むヘレナは上機嫌になったクリスに聞く。
「ねえクリス。参考までに教えて?」
「ん? 何を?」
「一度に何回くらいイッてるの?」
「1回じゃとてもじゃないけど疼きが治まんないから2回。たまに3回しちゃう」
「そんなに?」
「毎晩コイツが抱き付いておちんちん擦り付けたまんま離れやしないからさぁ。もう我慢出来なくなっちゃって、明け方コイツが起きる前にほぼ毎日トイレでこっそり……って何言わせんのよっ!」
「? トイレでこっそりって……どういう事?」
「何でもないっ! 忘れろっ!」
「それって自慰ーー」
「うっさいうっさいっ! それ以上詮索すんなっ!」
「やだぁ……カーソンのチンポコだけじゃ飽き足らないなんて、クリスってば超ド淫乱ねぇ?」
「誰かに喋ったらぶっ殺すぞ!」
「言わないってば。ねえ、どうクリス? うちの話術、なかなかのモンでしょ?」
「…………」
「うち、伊達に10年も冒険者やってないんだから。どんなに怒ってる相手も気分よくさせられるよ?」
「……まんまと乗せられたってワケね」
「冒険者は話術が上手くないとね。情報収集は自分の命を左右させるくらい大事なんだよ?」
「そりゃ確かに……そうかもね」
「うちに仕事の下調べを一切合財任せてくれれば、君達は安心して仕事に専念出来るんだから」
「…………カップ返してくる!」
ヘレナの巧みな話術に取り込まれ、うっかり誰にも言えない秘密の事情を口走ってしまったクリスは、顔を真っ赤にしながら自分達の飲んだカップをお盆に戻す。
恥ずかしくて堪らないクリスは、カップを返しに行くのを口実に席から逃げ出した。
去って行くクリスの背中を見届けたヘレナは、クリスの性事情を心配しながらカーソンに話す。
「ねえカーソン。何発してあげてるか知らないけど、クリスは全然満足してないみたいだよ?」
「? クリス満足してないのか?」
「もっといっぱいしてあげてよ」
「? もっと何かをしてやればいいのか?」
「女ひとりロクに満足させてあげられない早漏で淡白な男なんかじゃダメだよ?」
「? ヘレナ、早漏とか淡白って……何だ?」
「自分がイッたら相手してくれた女の事なんかどうでも良くなっちゃう、超最低な男の事よ?」
「え……俺、最低な男なのか?」
「だからもっと頑張って、クリスの事満足させてあげてね?」
「俺……最低……ど、どうしようヘレナ。俺、クリスに嫌われたくない」
自分はクリスに嫌われていると思ったカーソンは、真剣な表情でヘレナをじっと見つめた。
カーソンに見つめられたヘレナは胸をときめかせ、うっとりとしながら答える。
「うふん、可愛い。そんな瞳で見つめられちゃったら……疼いちゃう」
「なあヘレナ。クリスから嫌われない方法、何か無いか?」
「あるけど……うちの言う事、ちゃんとやってくれる?」
「うん! やる! 何でもする!」
「本当!? よっしゃ! それじゃあ、お姐さんが教えてあげるねっ!」
「頼むヘレナ。俺、何でもするからクリスに嫌われない方法教えてくれ!」
「んふふ……それじゃあ、足開いて?」
「? 何でだ?」
「何でもするんでしょ?」
「う、うん…………こうか?」
「ローブめくって?」
「うん」
「ズボン下げて……チンポコ出して?」
「分かった」
カーソンはヘレナの言われるがまま、大胆にも公衆の場で下半身をヘレナの目の前にさらけ出す。
ヘレナは興奮しながらカーソンのシンボルに両手を伸ばし、丁寧に揉みしだきだす。
「うふん……素敵。これがもっとおっきくなるなんて……ごくり」
「ヘレナ……くすぐったい」
「我慢してね? クリスに嫌われない為に必要なのよ?」
「うん、分かった。我慢してればいいんだな?」
「うんうん。ああ……挿入れたい。これ欲しいわぁ……」
「? わっ、何すんだヘレナ。ちんちんって汚いんだぞ?」
「カーソンのは汚くないよ? 今からおっきくさせて……あっ、げっ、るっ!」
「なあヘレナ。俺、前におっきくなったちんちんクリスに見せたら、思いっきりビンタされたんだぞ?」
「あら、そうなの? …………え? 何それどういう事?」
「えっとな。何か急にちんちんおっきくなって、病気になったかもって思ったんでクリスに見て貰って、触らせたら……凄く怒ってほっぺた引っ叩かれた」
「いや、そうじゃなくて……毎晩ヤってるんでしょ?」
「? 何をだ?」
「……変ね? 何故だか知らないけど、あなたから童貞の臭いがするわ」
「? 童貞って何だ?」
「女の身体を知らない男の事よ。いやまさか……そんなハズ無い……よね?」
「俺よく分かんないけど……クリスに嫌われないなら何されてもいいから、助けてくれよヘレナ」
「じゃあ……じっとしててね? あーんっ……んぐぅっ!?」
「ヘレナ……離れろ。死にたくなかったら……今すぐそいつから離れろ!」
「あはっ。ごめんごめん、クリス」
ヘレナは背後から突然襲い掛かってきた凄まじい殺気に身の危険を感じ、慌てて顔を上げて殺気を放ち続けているクリスを見上げながら謝る。
クリスはお盆に新しいコーヒーを3人分持ち、2人の背後に立っていた。
ヘレナはわたわたとしながらカーソンのズボンを上げて下半身を隠し、持ち上げさせていたローブの裾を元に戻して太ももをポンポンと叩き、何事も無かったように取り繕った。
クリスはこめかみに青筋を立て、視線だけでも射殺せそうな程の殺気をヘレナに浴びせながら話す。
「ヘレナ。コーヒーか砂糖かミルク、好きなの選べ。頭からぶっかけてやる」
「ごめんなさい。それだけは許して」
「あたしが目を離してた隙に……この超ド変態破廉恥馬鹿女っ!」
「本当にごめん。クリスの為にお姐さんが一肌脱いであげようって思ーー」
「脱ぐ必要無ぇっ! それ以上そいつに近付くなっ!」
「クリス。ヘレナは俺がクリスに嫌われないように助けてくれてた。だから怒るーー」
「うっさいっ! 何されてたかも分かんないあんたは黙ってろっ!」
「……はい」
「……大体、何であたしがあんたを嫌いって事になってんのよ?」
「えっと……俺がクリスを満足させてあげられてないから……嫌われてるってヘレナが言った」
「おいヘレナ。あたしが満足してないとか、ワケ分かんない事勝手に吹き込むなっ!」
「だって……満足してないから、ひとりで自慰ってんでしょ?」
「真に受けてんじゃねぇっ!」
「嘘かどうかは顔と口調で大体分かるもん。毎晩ヤらせてくれる彼氏が居るってのに、そんな事してちゃーー」
「いい加減にしろっ! 本当にぶっ殺すぞっ!」
「……ごめんなさい」
ヘレナは2人の性事情の告白に辻褄を合わせられず、クリスに詳しく聞こうとしたが問答無用で殺されそうな程の恐怖を感じ、それ以上聞く事は出来なかった。
クリスはお盆をテーブルの真ん中に置き、ぶつぶつを文句を言いながら自分の席に腰かけた。
「……ったく。あんたの分のも貰ってきてやったのに、何て事しやがってんのよ」
「うちの女が疼いちゃって疼いちゃって……我慢出来なかったの。ごめんね?」
「嫌という程犯されまくって、もう男なんかこの世から居なくなっちゃえって言ってた奴は、どこのどいつよ?」
「カーソンにだけは居て欲しいなぁ」
「……勝手な事ほざいてんじゃないわよ。ほれ、熱々のうちに飲みなさい」
「え? うちにもくれるの?」
「あんただけ無しなんて意地悪出来ないでしょ! 臨時とはいえパーティ組んだんだから」
「おおっ!? うちの事仲間って思ってくれるのね?」
「だからこれ以上こいつに変な事吹き込むのはやめなさい。街から出てスグにあたしから、バラバラに切り刻まれたくなかったらね!」
「はーいっ」
「折角おじさんが特別なコーヒー作ってくれたのに……ああもう気分悪い」
「あ、これってコーヒーなの? こんなの今まで見た事無い」
「そうよ。あんた仲間に入れるって話したら、ギルドからのお祝いってこれ出してくれたんだから」
クリスの持ってきたコーヒーには、ふわふわの生クリームが山のようにこれでもかと浮かんでいた。
カーソンは生クリームの山を見て喜びながら話す。
「わっ、本当に生クリームだったんだな」
「そうよ。あたしがあんたに嘘ついてたとでも思ったの?」
「ううん。クリスの言う事は嘘じゃないって思ってたけど、やっぱりこういうのはちゃんと自分の目で見ないとな」
「あんた用に砂糖多めに入れて作ってあげたんだってよ」
「おーっ、嬉しい。いただきまーす」
カーソンは生クリームをスプーンで掬い、ぱくぱくと食べ始めた。
生クリームを素で食べ始めたカーソンにクリスは注意する。
「あっ、こら。それかき混ぜてから飲みなさいよ」
「むぐむぐ……入れるのはいつものふわふわになってない生クリームでいい」
「何の為におじさんがそれ作ってくれたと思ってんのよ」
「生クリーム旨い。俺これ大好き」
「……人の話聞いちゃいないわね。あーもうっ、口の周り生クリームまみれにしちゃってっ」
「え? あ、もったいない。ぺろぺろ……」
「こらこら、舌で舐め回さないのっ。ほんとにもうっ、いつまでたっても子供なんだからっ」
「むぐっ!? むー……」
クリスは胸のポケットから手拭用の布を取り出し、カーソンの口周りを丁寧に拭き取る。
ヘレナはカーソンとクリスのやり取りを微笑ましく見守りながら話す。
「ふふっ。何かクリスって大変だね?」
「? 何がよ?」
「カーソンのお姉ちゃん、恋人、お母さんの3つもこなしてるのね?」
「あ、分かる? 本当にこいつってば、ひとりじゃ何も出来ないんだから世話してやるの大変よ?」
「いいなぁ。うちもこんな可愛くて世話の焼ける男が欲しいなぁ……」
「……あんたには絶対あげないからね」
「カーソンってば、何でこんなに女心くすぐる素敵な男の子なの?」
「知らないわよ。普通に考えたら凄く面倒くさい男なハズなのに、何でか全然そう思わないのよ」
「うちの知ってる冒険者の中じゃ一番、めちゃくちゃ強いのに……こんな子供っぽいトコあるのね?」
「ま、剣術の腕じゃ誰もこいつにゃ到底敵わないわ。こいつが本気で戦ってるトコなんて、あたしですらまだ数えるくらいしか見た事ないもの」
「へー。カーソンって今まで本気で戦った事滅多に無いの?」
「無いよ。いつもどっか手加減してるフシがあるわ」
「うちもそんなに見てないけど、あれで手加減して戦ってるんだ?」
「こいつはいつも回避に重点置いてるからね。斬るのはカウンターが来ても避けられると思ってる時だけよ」
「へえーっ。回避に力入れてる剣士って、あんまり聞いた事無いや」
「こいつが本気になるのはね、自分や仲間の命が危なくなった時だけよ」
「それってさ、あくまで自分や仲間が殺されそうにならないと本気出さないって事?」
「そそ。だから本気になったのは数えるくらいしかないの」
「クリスには、カーソンが本気かどうかって分かるんだ?」
「こいつと真正面から殺り合う連中でもね、相手の強さを理解出来るくらいの熟練者ならば、誰でも分かると思うよ。ま、分かった頃には大抵殺されてるけどね」
「……そりゃクリス以外、他の連中にゃ誰も分かんないね」
「きっと全然苦しむ事無く、殺してくれると思うよ? よかったら試してみなよ」
「そりゃ勘弁。あのチンポコ味わうまでは死ねない」
「まだ言うかっ!?」
「うん。うちの新しく出来た生きる希望だもん」
「そんなの生きる希望にすんじゃねぇっ!」
クリスはちょっとでも油断すると、卑猥な話に持って行くヘレナに呆れ果てた。
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