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幼少~少年時代
30 素質
しおりを挟む島が遥か彼方へと去り、谷には再び平穏な空気が流れた。
ソニアとクリスはティナに服を着せ、気の毒そうに話しかける。
「ティナ、大変だったな? 大切なものを奪われずに良かったな?」
「酷い奴だよね? あんな奴やっつけてやりたいよね?」
「……ウン。グスタフ、ダイキライ」
「剣術を鍛えれば、あんな奴よりもっと強くなれるぞ?」
「剣術鍛えて、今度グスタフが来たら仕返ししてやろうね?」
「ウン。オレ、ツヨクナッテ、グスタフニシカエシスル!」
「良し。それでは兵舎に帰って早速訓練だ」
「あたしと一緒に強くなろうね?」
「ウン!」
近衛兵達とティナはイザベラとローラに一礼し、兵舎へと戻っていった。
兵舎の訓練場に戻って来たティナは、短めの木剣と木盾を持って来たソニアに話しかけられる。
「ほらティナ、お前用の木剣と木盾だ。戦闘姿勢はお前に任せる」
「? セントウシセイ…ッテナンダ?」
「剣と盾を使って戦うか、剣1本だけで戦うかだ」
「ドウチガウンダ?」
「相手の攻撃を防げる盾を持つと守備が安定する。ナタリーとクリスは主にこの戦闘姿勢だ」
「フムフム……」
「剣1本を両手に持つと攻撃に特化する。相手の攻撃は剣でいなすか避けてかわすんだ。チェイニー・コロナ・エリ・レイナは主にこの戦闘姿勢だ」
「ヘー……」
「あるいは私のように、とても大きくて長い剣で戦う戦闘姿勢だな。だがこれは腕力が必要だから、お前には勧められない」
ソニアは振り返り、背中に背負った片手剣3本分の大きさを誇る木製の大剣をティナに見せる。
ティナはソニアから木剣と木盾を受け取りながら話す。
「ジャア、ケントタテデ…………ア、タテオモイ」
「持てなさそうか?」
「……ウン。タテオモクテ、モチニクイ」
「そうか、お前はまだ小さくて非力だからな。最初は剣1本での戦闘姿勢から始めるといい」
「ウン、ワカッタ」
「ではクリス、私も傍で見ているからお前がティナの相手をしてやれ」
「はい、隊長。じゃあティナ、とりあえず素振りしてみてよ」
「ウン。エイッ! エイッ! ヤアッ!」
ティナはソニアとクリスの前で素振りをして見せる。
ソニアとクリスは、ティナの素振りを見ながら残念そうに話す。
「……やはり素人か」
「そうですね。剣の持ち方からしてなってません」
「? オレ、ダメカ?」
「剣の持ち手がまるっきり逆だ」
「それじゃ左利きの持ち方よ?」
「? ヒダリキキ…ッテナンダ?」
「ティナは右手と左手、どちらが得意なのだ?」
「使いやすい手はどっち?」
「? ドッチモトクイ……ダトオモウ」
ティナは利き腕の概念を理解出来なかった。
ソニアはティナに聞く。
「物を投げた時、右と左ではどちらがより遠くに投げれるんだ?」
「? ドッチデモナゲレルゾ?」
「投げようとすれば投げられるだろう。どちらがより遠くに投げやすいか聞いているのだ」
「ドッチデモナゲレルシ、ドッチデモトオクニナゲレルゾ?」
「? どういう事だ?」
「エット……オレマダチッチャクテトベナイコロ、イシナゲテキノミニブツケテトッテタ」
「右と左、どっちでも投げてたのか?」
「ウン。ダカラドッチデナゲテモ、キノミニブツケレル」
「ほう。では、私に見せてくれないか?」
「ウン。イシアルカ?」
「いいや、無い。代わりにこのナイフを壁に投げてみろ」
「ナイフ? ア、ソレ?」
ソニアは腰ベルトの後ろにぶら下げている護身用のナイフを鞘から抜き取り、ティナに手渡す。
ティナはソニアからナイフを受け取り、しげしげと見つめる。
「フーン……コレモナイフッテイウノカ」
「刃の部分には触るなよ? 切れて血が出て痛いぞ?」
「エッ!? イタイノヤダ……」
「触らなければ切れないから安心しろ。それを右手で投げて壁に当ててみろ」
「ウン、ワカッタ」
「先端が真っ直ぐ飛ぶように投げてみろ」
「ウン。…………エイッ!」
ティナは振りかぶり、右手で5メートル程先にある木製の壁に向かってナイフを投げつける。
カツッ
ナイフは一直線に飛び、訓練場の壁へと突き刺さる。
ソニアはクリスからナイフを受け取り、ティナに渡しながら話す。
「今度はこのナイフを、左手で同じように投げてみろ」
「ウン」
「出来ればさっき投げたナイフと同じところを狙え」
「ワカッタ。……ヤッ!」
ティナは振りかぶり、左手で先程と同じ位置を狙ってナイフを投げつける。
カツッ
ナイフは一直線に飛び、右手で投げたナイフの刺さった位置からほんの数ミリ隣りに突き刺さる。
ほぼ同じ高さ、同じ位置に刺さった2本のナイフを見て、ソニアとクリスは驚きの声を上げる。
「うおっ!? ……こいつは凄い」
「おわっ!? ティナ、本当に両方利き腕なんだっ!?」
「モットトオクテモ、オナジトコネラエルゾ?」
「ティナ……お前、鍛えればとてつもなく強い剣士になれる素質があるぞ?」
「右からも左からも同じ威力の斬撃を出せそうな力を持ってるなんて……凄い!」
「オレ、スゴイ? ウレシイ!」
「こいつは……とんでもない逸材かも知れん」
「何かあたし、あっという間に追い越されちゃいそう……」
ソニアとクリスはティナの潜在能力に、たとえようの無い恐怖を感じた。
ソニアは壁に刺さった2本のナイフを抜き取り、1本を自分の鞘にしまい、もう1本をクリスに返しながら話す。
「ティナの将来が楽しみだな。さて、そろそろ昼だ。各自昼食に行け」
「はいっ!」
「戻り次第訓練を再開しろ。では、解散!」
「はいっ!」
近衛達は訓練を中断し、各自自分の家へ昼食を食べに帰っていった。
クリスとティナは自宅に帰り、居間のテーブル席に座る。
テーブルの上には昼食が準備されていたが、肝心のグレイスが居ない。
クリスはテーブルの上に書き置きを見付け、拾い上げて読む。
「……あ、お母様達みんなで釣りに行ってるんだ」
「? ツリ…ッテナンダ?」
「ヨミ婆ちゃんが声かけて、谷の女全員で魚捕りに行ってるみたいよ。」
「エッ!? コノタニ、サカナイルノカ!?」
「そりゃ居るわよ」
「ミズクミシタトキ、カワニサカナイナカッタゾ?」
「ああ、泉から流れて来る川は綺麗すぎてね、魚が住めないのよ」
「ジャア、ドコニサカナイルンダ?」
「トイレよりも下流よ」
「トイレ? アア、サカナハウンチトオシッコクッテイキテルノカ」
「ゴハン前にそんな事言わないのっ! だからあたし達、あんまり魚釣って食べないんだから」
「ソコ、ドコダ? オレ、イッテツカマエル!」
「まずはお昼ゴハン食べてからね?」
「ウン!」
クリスとティナは食事を始める。
ティナはクリスに太ると言われた事などすっかり忘れ、お腹いっぱいになるまで食べ続けた。
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