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幼少~少年時代
29 グスタフの目
しおりを挟むクリスとティナが立ち上がろうとした時、谷に大きな影が落ち始めてきた。
やがて影は広がり、谷の上空には島が現れた。
ローラは両手をキュッと組み、イザベラは扇子をパチンと閉じ、呟いた。
「やはり来たか……馬鹿者共が……」
「ええ。今度は容赦致しませんわ」
「腐れグスタフめ、今度こそは殺させてなるものかっ!」
「翼の民の誇りにかけて、ティナを守り抜きますわっ!」
イザベラとローラは魔力を使い、ソニアの頭の中に話しかける。
(ソニア、ティナ連れて来る準備しておいて頂戴)
(島が調査に参りましたわ)
(はっ。準備致します)
(事と次第によっちゃ、私グスタフ殺すからね?)
(島との戦争も念頭に入れておいて下さいね?)
(かしこまりました。近衛全員、命を懸けてお守り致します)
(ありがとう)
(お願い致します)
島から将軍グスタフと部下2名が翼を広げ、谷へと降り立った。
グスタフは手にした槍を部下に預け、女王2人の座る大きな木の麓へ近付いて来る。
グスタフは女王2人にぺこりと頭を下げ、話しかける。
イザベラは扇子で自分を仰ぎながら、ローラは静かに睨み付けながらグスタフに話す。
「お久しぶり、でございますな。女王様」
「……谷の男衆を返しに来てくれたのか? グスタフ?」
「男衆をお返しするのは我等が皇帝陛下の御判断故、我等は存じませぬ」
「では、何をしにいらしたのですか?」
「我等は争いに来たのではありませぬ。谷の男達は島で預かっておりますが、決して人質などでは無くーー」
「返すつもりが無いのなら何しに参ったっ! グスタフっ!」
イザベラは飄々とした態度のグスタフに、怒りの余り怒鳴りつけた。
グスタフは一瞬ムッとしたが、表情には出さずに本題を持ち出す。
「南の森で同族が発見されたとの報告が入りました。そして、この谷の者に救われたとも」
「ほう? どこからそんな情報を手に入れた?」
「谷に教える義務はありませぬな。さて…その救われた者、どこに居られますかな?」
「……随分とお詳しい情報をお持ちのようですわね?」
「人間が南の森で我等が同族を探していると聞きつけました。我等も探していたのですよ」
(フンッ! 空から見てるだけで見付かるものか! たわけ共め!)
イザベラは心の中で思った。
グスタフは女王2人に詰め寄る。
「我等の同族がこの谷に匿われているのは分かっておりますぞ? それとも何か? 我等に見られたくない存在、とでも言うのですかな?」
イザベラはフッと笑いながらグスタフに話す。
「確かに、貴様には見せたくないな。ソニア、見せてあげなさい」
「はっ。さあティナ、こっちに来い」
「? ウン」
前もってティナを連れてやって来ていたソニアは、ティナをグスタフの前に案内する。
ソニアの背後には木剣から真剣に持ち替えた、クリスを始めとした近衛兵達が、腰に帯刀したまま待機している。
イザベラはグスタフにティナを紹介する。
「谷で保護した女の子。名前はティナだ」
「!? ……コイツ……コワイ」
「ティナ、大丈夫よ? 何も怖くなんて無いのよ?」
「グスタフ将軍にあなたを害する権利などございませんわ」
「グスタフ? ……ア、ハゲ?」
「禿げてなどおらぬわっ! この無礼者っ!」
「ヒグッ!?」
ティナはグスタフに怒鳴られ、初見から感じた恐怖感と相まって、すっかり萎縮した。
イザベラとローラは魔力で会話する。
(まずい……ハゲなんて教えるんじゃなかった)
(ティナ……すっかり怖がってしまいましたわ)
(初見でも怖がってたわね……もしかして、あのハゲに殺された記憶が残っているのかしら?)
(ええ、そうかも知れませんわ)
(何かあったら……スグにあの3人殺すわよ)
(はい。合図はお姉様にお任せ致しますわ)
イザベラはソニアをちらっと見て、目配せする。
ソニアはこくりとうなずき、グスタフと兵士達に見られないように注意しながら、背後の近衛達へ左手で合図を送る。
近衛達は小さくうなずき、直立不動の姿勢から両足の幅を広げ、いつでも抜刀出来る体勢へと変える。
谷の大木の麓には緊張感が漂った。
グスタフはティナをじろりと睨みつけながら話す。
「小娘……服を脱げ」
「? ナンデダ?」
グスタフはティナに服を脱ぐよう命じたが、イザベラが止める。
「ティナ、従う必要はないわ。あなたは女の子なんだから、自分から服を脱いじゃ駄目よ?」
イザベラの言葉にムッとしたグスタフは、ティナの服を無理やり引き剥がし、下着をずり下げた。
「ヒッ!? …………?」
ティナは、何で自分がいきなり裸にされたのか分からなかった。
グスタフはティナの裸を、さもいやらしい目つきでじろじろと眺める。
そしておもむろに、両手でティナの胸を揉みしだきながら話す。
「ふむ……確かに見た目女子のようではある」
「……オッパイ、イタイ」
「いささか小さいかの。まだ発達しておらぬようだが……なかなか良い感触だ」
「……イタッ!?」
「クククッ……何じゃ、乳首がコリコリしておるではないか。気持ち良いのか?」
「イタイ……ヤメ……イダァッ!?」
「儂をハゲなどとコケにしたお仕置きだ。ほれ、もっとグリグリこねくり回してやる」
「イタィィ……コワイィ……」
「いい加減やめんかグスタフ! 女の子に対して破廉恥過ぎるぞ!」
「女王、男にも胸はあるのですぞ? こんなに小さくては分かりませぬな」
「貴様っ! まだ疑うかっ!」
イザベラはこめかみに青筋を立てながらグスタフを怒鳴る。
グスタフは執拗にティナの乳首をいじくり倒しながら反論した。
グスタフは胸から手を離すとしゃがみ込み、ティナの股間をじっと見つめながら話す。
「まだ女とは決め付けれぬな。実は金玉があるかも知れぬ。おい、股を開け」
「……ヤダ! オマエコワイカラヤダッ!」
「いいから開けと言っておる!」
「ヤダァッ!」
「言う事聞かんかっ!」
「ワァァッ!?」
「動くな! ……そのままじっとしておれ」
グスタフは左手でティナの左足を掴み、いきなり立ち上がる。
ティナはグスタフに左足を掴まれたまま、逆さ吊りにされる。
左足は吊り上げられ、右足は拠り所無くだらんと下がったティナは、グスタフの目の前に裂けそうになる程開かれた股間を無防備に晒け出す。
グスタフはティナの開ききった股間に顔を近付け、匂いを嗅ぎながら話す。
「すんすん……ううむ、小便臭いな。どうやら金玉は無いようだ」
「イヤダ……コワイ……オレ、オマエキライ……」
「お前のようなクソガキに嫌われても全く困らぬわ。どれ、儂が本当にお前が女であるかどうか、直接確かめてやる」
「エッ!? ナニ……ナニサレルンダ……オレ?」
「少し痛いかも知れんが、我慢しろ」
「ヤダッ! イタイノヤダーッ!」
「黙らんかっ! ピクリとも動くなっ!」
「ヒッ!?」
グスタフは右手の中指をペロリと舐め、ティナの大切な部分に指をあてがう。
人差し指と薬指でティナの割れ目を左右に広げ、中指の差し込み所を見付ける。
そのまま指先に力を込めようとしたところで、イザベラとローラが立ち上がって大激怒した。
「いい加減にせんかグスタフぅーっ!」
「ティナの処女を奪い去るつもりですかっ!」
「もう勘弁ならぬっ! 殺すっ!」
「覚悟なさいっ!」
「あ、いや……儂はそんなつもりでは……ご勘弁を」
「アイタッ!?」
グスタフに手放されたティナは頭から地面に落ちる。
イザベラとローラは執拗にグスタフを責め立てる。
「こんな小さな女の子のアソコに指を突っ込む気かっ!? このたわけがっ!」
「赤ちゃんが産めない身体になってしまわれたらどうするおつもりですかっ!」
「その時はその時。島に連れ帰って儂の娘として育てます」
「ふざけるなっ! 貴様の魂胆が分からぬと思うてかっ!」
「ティナは貴方の玩具ではありませんっ!」
「こんな小さな女の子を性の対象にするとはっ! この変態めがぁっ!」
「女の敵っ!」
「……申し訳ございませぬ。儂もいささか大人気無かったと反省致します」
「ティナに謝れ! さもなくばこの場で貴様を殺してやるっ!」
「ローズヴェルクの名において、あなたを処刑致しますっ!」
「ほう? 島に宣戦布告なさるおつもりですかな?」
「知った事かっ! 今すぐ謝れっ! さもなくば殺すっ!」
「谷の怒りを買った貴方をっ! ルドルフが守ると思うてかっ!」
「皇帝陛下は常に我等をお守り下さっておられます。その程度の脅しに屈しては、将軍など務まりませぬな」
「では……死ねっ!」
「慈悲などありません! 惨たらしくお逝きなさい!」
「どうぞ。これで翼の民は滅亡ですな?」
イザベラとローラは魔力で会話する。
(……どうやら封印失敗の引き金は私達が引くようね)
(……ええ。ですが、本望ですわ)
(殺るわよ。私は両脚を潰す)
(では、私は両腕を)
(真っ二つにするのは同時にやりましょう)
(はい、分かりました)
イザベラとローラは両手の掌をグスタフに向け、今まさにくびり殺そうとした時、グスタフはニヤリとしながら2人を止める。
「ああ、少しお待ち下され。今、皇帝陛下よりご伝言を承っております」
「谷は戦争も辞さぬと言っておけ!」
「ふっ。たったひとりの小娘の為に、谷の民全員を犠牲……うっ!?」
島の皇帝、ルドルフから頭の中に話しかけられたグスタフは、みるみると顔が青ざめてゆく。
グスタフは顔面蒼白になり、慌てて2人に跪きながら、深々と頭を下げて話す。
「わ、分かりました。謝罪致します! 謝罪致しますので、どうか怒りをお鎮め下され」
「……………………」
「……………………」
「谷で保護した子は女の子で間違いありません。このグスタフ、確かに確認致しました」
「……哀れな奴め。ルドルフに見捨てられるところであったか」
「貴方など所詮その程度の者であったという事ですわね」
「申し訳ございません。このグスタフ、島の総意に背いてしまうところでございました」
「……ティナに謝れ」
「すぐにお行きなさい」
「ははっ。では、失礼致します」
グスタフは立ち上がり、ティナの前に来ると再び跪き、深々と頭を下げて謝罪する。
「……大変失礼致しました。ティナ様、申し訳ございませんでした」
「……グスッ。アヤマルクライナラ、オレヲイジメルナ」
「本当に申し訳ございません。どうかお許し下さい」
「……ヤダ。オレ、オマエキライ! ダイキライ!」
「どうか、この通り……」
「ヤダ! ……グスッ……グスッ……クリスゥゥー………」
ティナは泣きべそをかきながら、裸のままグスタフの前から逃げ出し、クリスに向かって駆け出した。
クリスはしゃがみ込み、駆け込んできて飛び付いたティナをしっかりと受け止めた。
そのままぎゅっと抱きしめ、右手でティナの後頭部を優しくぽんぽんと叩きながら話す。
「……よしよし。怖かったね? もう大丈夫よ?」
「グリズ……グリズゥ……ウェェェェーン……ブエェェェーン!」
「本当に酷いよね? とっても……とっても悲しいよね?」
「ァァァァーン…………ワァァァァーン…………」
「うんうん。大丈夫……もう大丈夫だからね?」
「グスッ……ゴワガッダ……ゴワガッダァァァ…………」
「ティナ……無事で良かった……良かったぁぁぁ……わぁぁぁぁーん……」
ティナの号泣に釣られ、クリスも泣き出す。
近衛達はティナとクリスを取り囲み、肩や背中をさすりながら無言で慰め始める。
グスタフは跪いたままピクリとも動かず、じっとしていた。
イザベラとローラは、グスタフを冷ややかな目で見ながら話す。
「グスタフ。貴様、とっとと帰れ」
「この谷に貴方は必要ありません。お帰り下さい」
「ですが……ティナ様からお許しを頂かねば……」
「あんな事されたティナが許してくれると思っておるのか? この馬鹿者」
「女に対してこれ以上無い辱めを与えたのに……許されるとでも思っているのですか?」
「…………申し訳、ございませぬ」
「いいからとっとと帰れ。お前のツラなど見たくもない」
「女を侮辱なさるからこんな事になるのです。殺されなかっただけ有難く思いなさい」
「……失礼致します」
グスタフは立ち上がり、そのまま島に向かって飛び立った。
取り残された2人の兵士はお互い顔を見合わせ、慌てて後を追いかけて飛んだ。
イザベラとローラは去って行くグスタフ達の後ろ姿を見上げながら呟く。
「バーカ!」
「愚か者!」
島は谷の上空から移動し、遠くへと去っていった。
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