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幼少~少年時代
22 ぬくもり
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2人でキャッキャと話していると、1階からグレイスが叫ぶ。
「はーい、あんた達ー! ゴハン出来たわよー!」
「おーっ! ゴハンだー! 行こうよティナ」
「ウン! オレ、ハラヘッタ!」
「お腹いっぱい食べていいんだからね?」
「ヤッタァ!」
クリスとティナは1階に降りてきて、食事の席に着いた。
クリスは目の前の料理に歓声を上げながら話す。
「わぁっ! 凄い御馳走っ。いっただっきまーす」
「? ……コレ、ナンダ? クエルノカ?」
ティナは目の前に出された料理を不思議そうに見つめている。
クリスは首をかしげているティナに話しかける。
「あ、そっか。あんた料理の事知らなかったわね」
「リョウリ? リョウリッテイウ、クイモノカ?」
「そうよ。スプーンとナイフ、フォークを使って、こうやって食べるのよ?」
「スプーン? ナイフ? フォーク?」
「これがスプーン。こうやって…スープを掬って飲むのよ……ズズッ」
「フンフン……」
「これがフォーク。こうやって…料理に刺して口に運ぶの……モグモグ…」
「フムフム……」
「これがナイフ。こうやって……フォークで押さえながら料理を切って食べやすい大きさにするのよ」
「ヘェー……ソウナノカ」
クリスはティナの目の前で実演しながら食べて見せる。
ティナは見様見真似でスプーン、ナイフ、フォークを使って食べ始める。
「フーン……コウヤッテ……モグモグ……」
「どう?」
「アッ! ウマイッ! オイシイッ!」
「へーっ、『旨い』と『美味しい』は分かるのね」
「ナンダコレッ!? リョウリッテ……スンゴクオイシイッ!」
ティナは凄い勢いでガツガツと食べ始めた。
ティナは料理を食べ、幸せそうな顔で話す。
「ウマイッ! ウマイッ! クリスノカアサン、リョウリ、ウマイッ!」
「ちょっとティナっ。食べてる時は話しちゃ駄目よ?」
「いいんだよクリス、お行儀なんて。ティナちゃん、おかわり沢山あるからね?」
「モット、イッパイ、クエルノカ!? ウレシイ、ウレシイッ!」
「ふふっ。ティナちゃんってば……もう可愛いったらありゃしないよ」
ティナは料理を口に運びながら、グレイスに聞く。
「ナアクリスノカアサン。コノフワフワシテテ、スカスカナノ、ナンダ?」
「それはパンって言うんだよ。小麦粉に砂糖と塩と水を混ぜて捏ねたやつにね、パン菌っていうのを入れて発酵させ、膨らませてから窯で焼くんだ。今まで食べた事無かったのかい?」
「ウンッ! オイシイッ! スカスカシテルケド、アマクテオイシイッ!」
「あたしらの主食であるパンをスカスカって表現するなんて、今までホントに食べた事無かったんだねぇ」
「ズズズッ……コノシロイミズハ?」
「それはスープだよ。今日は茹でてすり潰したジャガイモと牛乳に塩味を付けて、刻んで炒めたキャベツと一緒に煮込んで作ってみたよ」
「ジャガイモト、ギュウニュウト、キャベツ? トローットシテテ、スッゴクオイシイッ!」
「丁度牛乳をウチが貰える日だったからね。量を沢山作る為にスープにしたんだよ」
「モグモグ……コノニクガハイッテルリョウリハ?」
「それは煮物だよ。塩漬けされた干し肉を手頃な大きさに切って、一緒にニンジン、ジャガイモ、タマネギを入れて煮込んだんだよ。干し肉使い切ったから暫く手に入るまで同じのは作れないからね?」
「モニュモニュ……コノキイロイコロコロト、クロイツブツブガハイッテルリョウリハ?」
「それは茹でたジャガイモを刻んで、薄く切ったタマネギと一緒に干し肉の欠片を混ぜて、塩コショウしたサラダっていう食べ物だよ」
「サラダ……ショッパクテカラクテオイシイッ!」
「ティナちゃん? どれが一番美味しい?」
「ゼンブオイシイッ! エット…ゼンブオカワリッ!」
「あいよっ! たんとおあがり!」
「ヤッター! ウレシイ……ウレシイ……ゴハンオイシイ、ウレシイーッ!」
ティナはガツガツと口の中いっぱいに頬張りながら、お腹いっぱいになるまで食べ続けた。
食事が済むと、クリスはティナを連れて風呂の準備に風呂場へと向かった。
グレイスは上機嫌で鼻歌を歌いながら食べ尽くされた料理の後片付けをしている。
クリスは風呂場の軒下に置いてある薪を、水を張った風呂桶に繋がっている釜の中に積み重ね、台所の竈から分けて貰った火種を持って来て火をつけた。
ティナは燃え上がった薪を見て、ビックリしながら話す。
「ワッ!? ヒッ…ヒダッ! ケサナキャッ!」
「ちょっとっ!? 折角つけた火消さないでよっ!」
「ダッ、ダッテ……ヒダゾ? ケサナイト、ゼンブモエチャウゾ!?」
「燃えないってば! この釜の中でしか燃えないんだよ?」
「ソ、ソウナノカ? ホ…ホントニダイジョウブカ?」
「あんた火が怖いの?」
「コワクハナイケド…クマノカアサン、ヒヲミタラスグニケセッテイッテタ」
「あっ、そうか。森で火事になったら大変だもんね?」
「ヒッテ、トモダチコロスカラスキジャナイ」
「……そっか。死んじゃった友達、可哀そうだったね?」
「デモ…モエテシンダトモダチ……クッタラウマカッタ」
「…………あんた、ちゃっかり食べてたの?」
「ウン」
やがて風呂の湯はいい温度となり、入浴の準備が出来た。
クリスは脱衣場で服を脱ぎ、裸になると続けてティナの服を脱がし、裸にした。
「さ、お風呂入るわよ。あんた汚れてるもの。洗ってあげるから一緒においで」
「フロ…ッテナンダ?」
「さっき火をつけた所がお風呂って言って、身体をキレイにする所よ。さ、コッチへおいで」
「ウン、ワカッタ」
クリスは風呂から木桶でお湯を汲むと、ティナの背中から流す。
ティナの身体は汚れており、お湯を流した部分にこびりついていた泥が流れ、白い地肌が現れた。
クリスはティナの肌を見て、驚きながら話す。
「わっ!? ティナの肌って白いっ! 何これ、今まで汚れてたまんまだったのっ!?」
「? オレシロイ?」
「よぉーっし。こりゃ洗い甲斐あるわ。ちょっと待っててね」
クリスは風呂場の隅に置いてあった小さな壺を持って来る。
壺の蓋を開けたクリスにティナは首をかしげながら聞く。
「ナアクリス、コレナンダ?」
「これはね、沢山摘んだ花を袋で絞って取り出した香油よ。これで髪や身体を洗うとね、すっごく綺麗になるのよ?」
「フーン…」
「頭からお湯かけるから、じっとしててね?」
「ウン」
クリスはティナの頭からお湯をザバッとかけると、香油を手で掬い取って頭から流す。
そのまま念入りに、丁寧に髪の毛からつま先まで、両手でゴシゴシと洗い始める。
クリスは見違える程綺麗になってゆくティナに話しかける。
「おーっ、綺麗綺麗。ティナってすっごく色白ね。髪も醒めるような黒で素敵よ?」
「クリス、クスグッタイ! ウヒャヒャ! アヒャヒャ!」
「我慢しなさい。綺麗にしてあげてるんだからっ!」
「クゥッ…ウヒッ…ウククッ……」
「……良しっと、こんくらいかな? お湯かけるよー?」
「……プァッ……プゥーッ………」
クリスはティナの頭から再びお湯をかける。
目の前に現れた別人の様なティナの容姿に満足しながら、クリスは話す。
「ティナって……将来すっごい美人になるよ?」
「? ビジン…ッテナンダ?」
「とっても綺麗な女の人の事よ。わー…透き通るような白い肌、艶やかな黒髪」
「キレイナオンナノヒトカ。チョットウレシイカモ」
「さて、次はあたしが洗うからあんたは先にお風呂入ってて」
「オレモクリスアラウー」
「いいよ、自分で洗うから。あんたは気にしないで先にあったまっててよ」
「ウー…ワカッタ」
クリスは全身綺麗になったティナを抱き上げると、風呂の中へと入れてあげた。
クリスは自分の身体を洗いながら、ティナへ風呂の感想を聞く。
風呂の中に沈められたティナは、ボーッとしながら感想を漏らす。
「どう? お風呂って気持ちいいでしょ?」
「オフロ……アッタカイ。キモチイイ」
「でしょ? 森では水浴びくらいはしてたでしょうけど、それよりも気持ちいいでしょ?」
「コウユ…イイニオイ。オレ、オハナニナッタミタイ」
「ふふふっ。あっ、ティナ? その黒いトコ触っちゃ駄目よ? すっごく熱いからね?」
「? ココ? ……アチッ!?」
「触んないでって言ったでしょ! ソコの向こう側では薪が燃えてるんだから」
「ウー……モウサワンナイ」
「火傷したら大変だからね、気を付けてね?」
「ウン」
自分の髪と身体を洗い終えたクリスは木桶を手にしながらティナに話す。
「香油流すからお湯頂戴。あたし見えないから避けててね?」
「ウン」
「よっと………熱っ! ちょっとっ、お湯熱いよ!」
「? アツイカ?」
「熱い熱いっ!」
クリスは頭からかぶったお湯の熱さにビックリしながらティナに話す。
「あんたこんなあっついお湯に入ってて大丈夫なの?」
「コレクライナラ、ガマンデキルゾ」
「お風呂って熱いの我慢しながら入るモンじゃないんだよ?」
「エ、ソウナノカ?」
「お湯かき混ぜてよ」
「カキマゼル?」
「お湯の上と下とじゃ温度違うでしょ?」
「ウン、シタノホウガヌルイ」
「下のお湯を上にあげてかき混ぜてよ」
「ワカッタ。エット……コウスレバイイノカ?」
「どうやってるかは見えないけど、上と下のお湯がおんなじ熱さになればいいよ」
「ウン…………オナジクライニナッタゾ」
ティナは風呂の中で全身をワサワサと動かしてお湯の温度を混ぜた。
クリスはもう一度木桶でお湯を汲み、肩にかけて温度を確認する。
「……うん。まだ少し熱いけどこれなら大丈夫」
「ダイジョウブカ?」
「………ぷぅーっ。さて、あたしも入るね」
「ウン」
クリスはお湯を頭からかぶり、香油を洗い流すと立ち上がる。
髪からポタポタと雫を滴らせながらクリスは風呂桶を跨ぎ、一緒に風呂へと入った。
顔に玉のような大粒の汗を滲ませているティナを見て、クリスは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんティナ。熱かったら薄めるって教えてなかった」
「? ウスメル?」
「ほら、隣に大きな水瓶があるでしょ?」
「ウン、アル」
「お湯が熱くなったらそこから木桶で水を汲んで、お風呂に入れて温度を下げるのよ」
「ソウナノカ?」
「身体流す時にお湯減っちゃうしね。水を足して元に戻すの」
「ヘー……ナアクリス、ナンデオユガウエトシタデアツサガチガウンダ?」
「う……それあたしに聞く?」
「ナンデダ?」
クリスは子供の頃、ティナと同様に父親へ同じ質問をした事を思い出し、ティナに話す。
「あたしも子供の頃、それお父様に聞いた事あるんだけど…確かね、暖かい水は上に上がって、冷たい水は下に下がるんだってよ?」
「デモマゼタラ……アッ、ソウカ。アタタカイノトツメタイノガマザッテ、オナジニナルノカ」
「そそ。だからかき混ぜないと同じ温度になんないのよ」
「へー………アレ? ソレジャア、ウントタカクソラトンダラ、ソコモアツイノカ?」
「ううん。空のうんと高いところは逆に寒いんだってよ?」
「? ナンデダ?」
「あたしも分かんない。多分だけど、水と空気じゃ熱の伝わり方が逆になるんじゃないの?」
「ギャクニナルノカ?」
「あたし一度確認しにうんと高く飛んでみた事あるけどね、寒く感じる前に凄く頭が痛くなって途中で辞めたよ」
「ウントタカクトブト、アタマガイタクナルノカ?」
「うん。上の空気と下の空気とじゃ何かが違うんだと思うよ。だからあたし達がうんと空高く飛んでも、そこの空気に身体が付いて行けないんじゃないかな?」
「フーン……クリスアタマイイナ」
「あたしは実体験しか教えられないよ。色々聞きたかったらイザベラ様とローラ様に聞いてよ」
「ウン、ワカッタ」
「……さて、あったまった?」
「ウン、カラダガポカポカシテル」
「それじゃあ、そろそろ上がろっか?」
「ウン」
クリスとティナは風呂から上がり、全身から湯気を出しながら脱衣場へと戻っていった。
「はーい、あんた達ー! ゴハン出来たわよー!」
「おーっ! ゴハンだー! 行こうよティナ」
「ウン! オレ、ハラヘッタ!」
「お腹いっぱい食べていいんだからね?」
「ヤッタァ!」
クリスとティナは1階に降りてきて、食事の席に着いた。
クリスは目の前の料理に歓声を上げながら話す。
「わぁっ! 凄い御馳走っ。いっただっきまーす」
「? ……コレ、ナンダ? クエルノカ?」
ティナは目の前に出された料理を不思議そうに見つめている。
クリスは首をかしげているティナに話しかける。
「あ、そっか。あんた料理の事知らなかったわね」
「リョウリ? リョウリッテイウ、クイモノカ?」
「そうよ。スプーンとナイフ、フォークを使って、こうやって食べるのよ?」
「スプーン? ナイフ? フォーク?」
「これがスプーン。こうやって…スープを掬って飲むのよ……ズズッ」
「フンフン……」
「これがフォーク。こうやって…料理に刺して口に運ぶの……モグモグ…」
「フムフム……」
「これがナイフ。こうやって……フォークで押さえながら料理を切って食べやすい大きさにするのよ」
「ヘェー……ソウナノカ」
クリスはティナの目の前で実演しながら食べて見せる。
ティナは見様見真似でスプーン、ナイフ、フォークを使って食べ始める。
「フーン……コウヤッテ……モグモグ……」
「どう?」
「アッ! ウマイッ! オイシイッ!」
「へーっ、『旨い』と『美味しい』は分かるのね」
「ナンダコレッ!? リョウリッテ……スンゴクオイシイッ!」
ティナは凄い勢いでガツガツと食べ始めた。
ティナは料理を食べ、幸せそうな顔で話す。
「ウマイッ! ウマイッ! クリスノカアサン、リョウリ、ウマイッ!」
「ちょっとティナっ。食べてる時は話しちゃ駄目よ?」
「いいんだよクリス、お行儀なんて。ティナちゃん、おかわり沢山あるからね?」
「モット、イッパイ、クエルノカ!? ウレシイ、ウレシイッ!」
「ふふっ。ティナちゃんってば……もう可愛いったらありゃしないよ」
ティナは料理を口に運びながら、グレイスに聞く。
「ナアクリスノカアサン。コノフワフワシテテ、スカスカナノ、ナンダ?」
「それはパンって言うんだよ。小麦粉に砂糖と塩と水を混ぜて捏ねたやつにね、パン菌っていうのを入れて発酵させ、膨らませてから窯で焼くんだ。今まで食べた事無かったのかい?」
「ウンッ! オイシイッ! スカスカシテルケド、アマクテオイシイッ!」
「あたしらの主食であるパンをスカスカって表現するなんて、今までホントに食べた事無かったんだねぇ」
「ズズズッ……コノシロイミズハ?」
「それはスープだよ。今日は茹でてすり潰したジャガイモと牛乳に塩味を付けて、刻んで炒めたキャベツと一緒に煮込んで作ってみたよ」
「ジャガイモト、ギュウニュウト、キャベツ? トローットシテテ、スッゴクオイシイッ!」
「丁度牛乳をウチが貰える日だったからね。量を沢山作る為にスープにしたんだよ」
「モグモグ……コノニクガハイッテルリョウリハ?」
「それは煮物だよ。塩漬けされた干し肉を手頃な大きさに切って、一緒にニンジン、ジャガイモ、タマネギを入れて煮込んだんだよ。干し肉使い切ったから暫く手に入るまで同じのは作れないからね?」
「モニュモニュ……コノキイロイコロコロト、クロイツブツブガハイッテルリョウリハ?」
「それは茹でたジャガイモを刻んで、薄く切ったタマネギと一緒に干し肉の欠片を混ぜて、塩コショウしたサラダっていう食べ物だよ」
「サラダ……ショッパクテカラクテオイシイッ!」
「ティナちゃん? どれが一番美味しい?」
「ゼンブオイシイッ! エット…ゼンブオカワリッ!」
「あいよっ! たんとおあがり!」
「ヤッター! ウレシイ……ウレシイ……ゴハンオイシイ、ウレシイーッ!」
ティナはガツガツと口の中いっぱいに頬張りながら、お腹いっぱいになるまで食べ続けた。
食事が済むと、クリスはティナを連れて風呂の準備に風呂場へと向かった。
グレイスは上機嫌で鼻歌を歌いながら食べ尽くされた料理の後片付けをしている。
クリスは風呂場の軒下に置いてある薪を、水を張った風呂桶に繋がっている釜の中に積み重ね、台所の竈から分けて貰った火種を持って来て火をつけた。
ティナは燃え上がった薪を見て、ビックリしながら話す。
「ワッ!? ヒッ…ヒダッ! ケサナキャッ!」
「ちょっとっ!? 折角つけた火消さないでよっ!」
「ダッ、ダッテ……ヒダゾ? ケサナイト、ゼンブモエチャウゾ!?」
「燃えないってば! この釜の中でしか燃えないんだよ?」
「ソ、ソウナノカ? ホ…ホントニダイジョウブカ?」
「あんた火が怖いの?」
「コワクハナイケド…クマノカアサン、ヒヲミタラスグニケセッテイッテタ」
「あっ、そうか。森で火事になったら大変だもんね?」
「ヒッテ、トモダチコロスカラスキジャナイ」
「……そっか。死んじゃった友達、可哀そうだったね?」
「デモ…モエテシンダトモダチ……クッタラウマカッタ」
「…………あんた、ちゃっかり食べてたの?」
「ウン」
やがて風呂の湯はいい温度となり、入浴の準備が出来た。
クリスは脱衣場で服を脱ぎ、裸になると続けてティナの服を脱がし、裸にした。
「さ、お風呂入るわよ。あんた汚れてるもの。洗ってあげるから一緒においで」
「フロ…ッテナンダ?」
「さっき火をつけた所がお風呂って言って、身体をキレイにする所よ。さ、コッチへおいで」
「ウン、ワカッタ」
クリスは風呂から木桶でお湯を汲むと、ティナの背中から流す。
ティナの身体は汚れており、お湯を流した部分にこびりついていた泥が流れ、白い地肌が現れた。
クリスはティナの肌を見て、驚きながら話す。
「わっ!? ティナの肌って白いっ! 何これ、今まで汚れてたまんまだったのっ!?」
「? オレシロイ?」
「よぉーっし。こりゃ洗い甲斐あるわ。ちょっと待っててね」
クリスは風呂場の隅に置いてあった小さな壺を持って来る。
壺の蓋を開けたクリスにティナは首をかしげながら聞く。
「ナアクリス、コレナンダ?」
「これはね、沢山摘んだ花を袋で絞って取り出した香油よ。これで髪や身体を洗うとね、すっごく綺麗になるのよ?」
「フーン…」
「頭からお湯かけるから、じっとしててね?」
「ウン」
クリスはティナの頭からお湯をザバッとかけると、香油を手で掬い取って頭から流す。
そのまま念入りに、丁寧に髪の毛からつま先まで、両手でゴシゴシと洗い始める。
クリスは見違える程綺麗になってゆくティナに話しかける。
「おーっ、綺麗綺麗。ティナってすっごく色白ね。髪も醒めるような黒で素敵よ?」
「クリス、クスグッタイ! ウヒャヒャ! アヒャヒャ!」
「我慢しなさい。綺麗にしてあげてるんだからっ!」
「クゥッ…ウヒッ…ウククッ……」
「……良しっと、こんくらいかな? お湯かけるよー?」
「……プァッ……プゥーッ………」
クリスはティナの頭から再びお湯をかける。
目の前に現れた別人の様なティナの容姿に満足しながら、クリスは話す。
「ティナって……将来すっごい美人になるよ?」
「? ビジン…ッテナンダ?」
「とっても綺麗な女の人の事よ。わー…透き通るような白い肌、艶やかな黒髪」
「キレイナオンナノヒトカ。チョットウレシイカモ」
「さて、次はあたしが洗うからあんたは先にお風呂入ってて」
「オレモクリスアラウー」
「いいよ、自分で洗うから。あんたは気にしないで先にあったまっててよ」
「ウー…ワカッタ」
クリスは全身綺麗になったティナを抱き上げると、風呂の中へと入れてあげた。
クリスは自分の身体を洗いながら、ティナへ風呂の感想を聞く。
風呂の中に沈められたティナは、ボーッとしながら感想を漏らす。
「どう? お風呂って気持ちいいでしょ?」
「オフロ……アッタカイ。キモチイイ」
「でしょ? 森では水浴びくらいはしてたでしょうけど、それよりも気持ちいいでしょ?」
「コウユ…イイニオイ。オレ、オハナニナッタミタイ」
「ふふふっ。あっ、ティナ? その黒いトコ触っちゃ駄目よ? すっごく熱いからね?」
「? ココ? ……アチッ!?」
「触んないでって言ったでしょ! ソコの向こう側では薪が燃えてるんだから」
「ウー……モウサワンナイ」
「火傷したら大変だからね、気を付けてね?」
「ウン」
自分の髪と身体を洗い終えたクリスは木桶を手にしながらティナに話す。
「香油流すからお湯頂戴。あたし見えないから避けててね?」
「ウン」
「よっと………熱っ! ちょっとっ、お湯熱いよ!」
「? アツイカ?」
「熱い熱いっ!」
クリスは頭からかぶったお湯の熱さにビックリしながらティナに話す。
「あんたこんなあっついお湯に入ってて大丈夫なの?」
「コレクライナラ、ガマンデキルゾ」
「お風呂って熱いの我慢しながら入るモンじゃないんだよ?」
「エ、ソウナノカ?」
「お湯かき混ぜてよ」
「カキマゼル?」
「お湯の上と下とじゃ温度違うでしょ?」
「ウン、シタノホウガヌルイ」
「下のお湯を上にあげてかき混ぜてよ」
「ワカッタ。エット……コウスレバイイノカ?」
「どうやってるかは見えないけど、上と下のお湯がおんなじ熱さになればいいよ」
「ウン…………オナジクライニナッタゾ」
ティナは風呂の中で全身をワサワサと動かしてお湯の温度を混ぜた。
クリスはもう一度木桶でお湯を汲み、肩にかけて温度を確認する。
「……うん。まだ少し熱いけどこれなら大丈夫」
「ダイジョウブカ?」
「………ぷぅーっ。さて、あたしも入るね」
「ウン」
クリスはお湯を頭からかぶり、香油を洗い流すと立ち上がる。
髪からポタポタと雫を滴らせながらクリスは風呂桶を跨ぎ、一緒に風呂へと入った。
顔に玉のような大粒の汗を滲ませているティナを見て、クリスは申し訳なさそうに謝る。
「ごめんティナ。熱かったら薄めるって教えてなかった」
「? ウスメル?」
「ほら、隣に大きな水瓶があるでしょ?」
「ウン、アル」
「お湯が熱くなったらそこから木桶で水を汲んで、お風呂に入れて温度を下げるのよ」
「ソウナノカ?」
「身体流す時にお湯減っちゃうしね。水を足して元に戻すの」
「ヘー……ナアクリス、ナンデオユガウエトシタデアツサガチガウンダ?」
「う……それあたしに聞く?」
「ナンデダ?」
クリスは子供の頃、ティナと同様に父親へ同じ質問をした事を思い出し、ティナに話す。
「あたしも子供の頃、それお父様に聞いた事あるんだけど…確かね、暖かい水は上に上がって、冷たい水は下に下がるんだってよ?」
「デモマゼタラ……アッ、ソウカ。アタタカイノトツメタイノガマザッテ、オナジニナルノカ」
「そそ。だからかき混ぜないと同じ温度になんないのよ」
「へー………アレ? ソレジャア、ウントタカクソラトンダラ、ソコモアツイノカ?」
「ううん。空のうんと高いところは逆に寒いんだってよ?」
「? ナンデダ?」
「あたしも分かんない。多分だけど、水と空気じゃ熱の伝わり方が逆になるんじゃないの?」
「ギャクニナルノカ?」
「あたし一度確認しにうんと高く飛んでみた事あるけどね、寒く感じる前に凄く頭が痛くなって途中で辞めたよ」
「ウントタカクトブト、アタマガイタクナルノカ?」
「うん。上の空気と下の空気とじゃ何かが違うんだと思うよ。だからあたし達がうんと空高く飛んでも、そこの空気に身体が付いて行けないんじゃないかな?」
「フーン……クリスアタマイイナ」
「あたしは実体験しか教えられないよ。色々聞きたかったらイザベラ様とローラ様に聞いてよ」
「ウン、ワカッタ」
「……さて、あったまった?」
「ウン、カラダガポカポカシテル」
「それじゃあ、そろそろ上がろっか?」
「ウン」
クリスとティナは風呂から上がり、全身から湯気を出しながら脱衣場へと戻っていった。
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