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お見合い開始
アンドロイドは恋に落ちるか
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プログラマーだと自己紹介を始めた牧田アンディーと、不満気に研二を見つめる莉緒を残して、研二がダイニングルームに繋がるドアを開く。ちょうどキッチンで入れ替えた茶の盆を持ち、ケンディーがダイニングに向かって歩き始めたところだった。
後ろ手に急いでドアをしめた研二に、ケンディーが気が付いて足を止める。
「兄さん、ごめん。どうしても俺の地が出ちゃうな」
「まぁ、お前みたいに真っすぐな性格の奴に、人を騙せという方が無理なんだろうが、俳優になったと思って一週間僕を演じてくれよ。お茶は僕が持っていくから、お前は奏太に戻って莉緒ちゃんに挨拶してくれ」
「えっ?もう俺に戻っていいの?やった。ラッキー!」
嬉々としてお盆を研二に渡し、その場を去ろうとした奏太に研二が釘を刺した。
「先に言っておくが、口説くなよ。羽柴は僕の大事な友人で、しかも大切なスポンサーなんだからな。今ままでみたいにド派手な女と軽く遊ぶつもりでいたら、僕が容赦しない。家から叩きだすからな」
「分かった。そんなに怖い顔するなってば。俺だって好きでとっかえひっかえしたわけじゃない。いつも女の子の方から強引に何度も誘ってきて、断り切れずに何度かに一度付き合っただけだよ。そしたらいつのまにか周囲からカップル認定されてしまって、気が付いたら女の子からつまらないと言われてフラれるんだ。俺だって真面目に一人と長く付き合いたい願望はあるんだよ」
「それならいい。でも莉緒ちゃんに手を出したら、最後まで責任をとるつもりでいろ。H・T・Lに入りたいんだったら今回の実験の詳細を僕の代わりに検分してくれ」
脅しかよと奏太は顔をしかめてから、自分だけを働かせているんじゃないかを念のために確認する。
「兄さんもモニターでチェックしているんだよな?」
「いや、僕は所内の防犯カメラに録画された映像をチェックしている。奏太に言われた通り生身の人間を調べるためにな。アンディーの様子も直に見たいけれど、莉緒ちゃんの傍に僕がいるとアンディーとの会話が弾まないから、出ていくわけにもいかない」
「確かに。それで、防犯カメラに怪しい人間は映っていたのか?俺たちが夜に入って調べものをしていた映像はうまく消してくれているんだよな?」
「ああ、僕たちのは大丈夫だ。今のところ怪しい人物が忍び込んだ映像はないが、奏太とラボに行った帰りに、杉下から変な質問を受けたんだ」
「えっ?俺は聞いてないから、兄さんが一人になるのを狙っていたのかな?どんなことを聞かれたんだ?」
いかにも府に落ちないという様子で、研二が一つ目は…と語った。
「僕自身のデーターを外部入力したかと聞かれた。僕も杉下もケンディーへの外部入力が上手くいかないことを分かっているのにな。それについては、思うところがあって試したと嘘をついた。そうしたら次の質問がきた。ダイレクトに僕自身をケンディーに読み取らせた後で、腕のコントロールボックスを操作するなり、皮膚の下に隠すなりしたときに、感電しなかったかというんだ」
「それって、ケンディーに欠陥があるってことじゃないか」
大変な事実を知って大声をあげそうになり、奏太は慌てて声を抑えた。
「ああ。杉下は静電気のような痛みを指に感じたらしい。それで僕はどうだったかと聞かれた」
「兄さんはどう答えたの」
「そういえば、そうだったかなと濁しておいた。ケンディーを始動するときに、最初は外部入力が上手くいったことは話したな?」
奏太が頷くのを見て、研二が話を続けた。
「若い所員が撮ってきたデーターを入力し数日間のテストをした。問題は無かったはずなのに、念には念をいれてと杉下が言い出して、彼自身のデーターを入力したところ、別の人格が入り込んだんだ。杉下の話を聞いて、感電で機械が狂ったのかと一瞬思ったんだが‥‥‥」
「いや、漏電しているのなら、いつ触っても感電するはずだろ。どうして感電するタイミングを【ダイレクト入力した後に】と限定するんだよ?それに安全性に問題があるなら、杉下チーフはそのときに兄さんに報告するか、報告書に書いて見せる義務があるんじゃないか」
「そうなんだ。それが書類上の報告は一切なくて、一昨日初めて聞かされた。奏太はケンディーの中に入ってから腕のコントロールボックスを触ったか?」
奏太は初めてケンディーの中に取り込まれたときのことを考えた。上がったままの腕、床に倒れている自分を見てパニックになりかけたこと。次から次へと映像が溢れかえる。
「どうだったかな。かなり動揺していたから覚えていないけれど、ボックスは剥き出しのままだったし、蓋を閉めるために触ったんじゃないか。あっ、今頭の中に閃いた。これはケンディーの記録だな。俺も兄さんも触っている。俺は感電なんて一度もしていないけれど。兄さんはどうだ」
「僕もないな。不可解なのは、杉下は僕が答え終わった後に[あれ]と言ったんだ。見回しても何もないし、気味が悪かったよ。お前がすぐに呼びにきたからよかったものの。僕の知っている杉下とはまるで違ってみえた」
「そんな人に研究所を任せておいて大丈夫なのか?他のアンドロイドをめちゃくちゃにされてからじゃ遅いぞ」
「副所長に見張るように言ってある。それに杉下もちょうど休みに入ったから、その間に色々調べてみるよ。奏太も異変を感じたら、すぐにケンディーから脱出するんだぞ。引き留めて悪かった。すぐに本物に戻って来い」
「うん。ようやく自由になれると思うと嬉しいよ」
奏太は言うが早いか、すぐに二階の自室へと向かった。
後ろ手に急いでドアをしめた研二に、ケンディーが気が付いて足を止める。
「兄さん、ごめん。どうしても俺の地が出ちゃうな」
「まぁ、お前みたいに真っすぐな性格の奴に、人を騙せという方が無理なんだろうが、俳優になったと思って一週間僕を演じてくれよ。お茶は僕が持っていくから、お前は奏太に戻って莉緒ちゃんに挨拶してくれ」
「えっ?もう俺に戻っていいの?やった。ラッキー!」
嬉々としてお盆を研二に渡し、その場を去ろうとした奏太に研二が釘を刺した。
「先に言っておくが、口説くなよ。羽柴は僕の大事な友人で、しかも大切なスポンサーなんだからな。今ままでみたいにド派手な女と軽く遊ぶつもりでいたら、僕が容赦しない。家から叩きだすからな」
「分かった。そんなに怖い顔するなってば。俺だって好きでとっかえひっかえしたわけじゃない。いつも女の子の方から強引に何度も誘ってきて、断り切れずに何度かに一度付き合っただけだよ。そしたらいつのまにか周囲からカップル認定されてしまって、気が付いたら女の子からつまらないと言われてフラれるんだ。俺だって真面目に一人と長く付き合いたい願望はあるんだよ」
「それならいい。でも莉緒ちゃんに手を出したら、最後まで責任をとるつもりでいろ。H・T・Lに入りたいんだったら今回の実験の詳細を僕の代わりに検分してくれ」
脅しかよと奏太は顔をしかめてから、自分だけを働かせているんじゃないかを念のために確認する。
「兄さんもモニターでチェックしているんだよな?」
「いや、僕は所内の防犯カメラに録画された映像をチェックしている。奏太に言われた通り生身の人間を調べるためにな。アンディーの様子も直に見たいけれど、莉緒ちゃんの傍に僕がいるとアンディーとの会話が弾まないから、出ていくわけにもいかない」
「確かに。それで、防犯カメラに怪しい人間は映っていたのか?俺たちが夜に入って調べものをしていた映像はうまく消してくれているんだよな?」
「ああ、僕たちのは大丈夫だ。今のところ怪しい人物が忍び込んだ映像はないが、奏太とラボに行った帰りに、杉下から変な質問を受けたんだ」
「えっ?俺は聞いてないから、兄さんが一人になるのを狙っていたのかな?どんなことを聞かれたんだ?」
いかにも府に落ちないという様子で、研二が一つ目は…と語った。
「僕自身のデーターを外部入力したかと聞かれた。僕も杉下もケンディーへの外部入力が上手くいかないことを分かっているのにな。それについては、思うところがあって試したと嘘をついた。そうしたら次の質問がきた。ダイレクトに僕自身をケンディーに読み取らせた後で、腕のコントロールボックスを操作するなり、皮膚の下に隠すなりしたときに、感電しなかったかというんだ」
「それって、ケンディーに欠陥があるってことじゃないか」
大変な事実を知って大声をあげそうになり、奏太は慌てて声を抑えた。
「ああ。杉下は静電気のような痛みを指に感じたらしい。それで僕はどうだったかと聞かれた」
「兄さんはどう答えたの」
「そういえば、そうだったかなと濁しておいた。ケンディーを始動するときに、最初は外部入力が上手くいったことは話したな?」
奏太が頷くのを見て、研二が話を続けた。
「若い所員が撮ってきたデーターを入力し数日間のテストをした。問題は無かったはずなのに、念には念をいれてと杉下が言い出して、彼自身のデーターを入力したところ、別の人格が入り込んだんだ。杉下の話を聞いて、感電で機械が狂ったのかと一瞬思ったんだが‥‥‥」
「いや、漏電しているのなら、いつ触っても感電するはずだろ。どうして感電するタイミングを【ダイレクト入力した後に】と限定するんだよ?それに安全性に問題があるなら、杉下チーフはそのときに兄さんに報告するか、報告書に書いて見せる義務があるんじゃないか」
「そうなんだ。それが書類上の報告は一切なくて、一昨日初めて聞かされた。奏太はケンディーの中に入ってから腕のコントロールボックスを触ったか?」
奏太は初めてケンディーの中に取り込まれたときのことを考えた。上がったままの腕、床に倒れている自分を見てパニックになりかけたこと。次から次へと映像が溢れかえる。
「どうだったかな。かなり動揺していたから覚えていないけれど、ボックスは剥き出しのままだったし、蓋を閉めるために触ったんじゃないか。あっ、今頭の中に閃いた。これはケンディーの記録だな。俺も兄さんも触っている。俺は感電なんて一度もしていないけれど。兄さんはどうだ」
「僕もないな。不可解なのは、杉下は僕が答え終わった後に[あれ]と言ったんだ。見回しても何もないし、気味が悪かったよ。お前がすぐに呼びにきたからよかったものの。僕の知っている杉下とはまるで違ってみえた」
「そんな人に研究所を任せておいて大丈夫なのか?他のアンドロイドをめちゃくちゃにされてからじゃ遅いぞ」
「副所長に見張るように言ってある。それに杉下もちょうど休みに入ったから、その間に色々調べてみるよ。奏太も異変を感じたら、すぐにケンディーから脱出するんだぞ。引き留めて悪かった。すぐに本物に戻って来い」
「うん。ようやく自由になれると思うと嬉しいよ」
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