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博士の愛読書
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『うん、まぁ、これでいいかな。この線ですすめてくれ』
部下に研究計画書を返しながら水谷博士が頷くと、ロナルドはほっとした様子で部屋から出て行った。
水谷勉は、ある日本企業が作ったドイツの研究所で、新エネルギーを研究している。
本棚には物理学や熱力学の本がびっしりと並び、机の上のパソコン画面には、学会で発表された同分野の研究論文が英語で映し出されていた。
「いつ見ても、熱力学の方程式の羅列は美しい」
水谷博士は満足げに溜息をつくと、部下たちの研究報告書に目を戻し、赤ペンで改善点や、課題の追及の余地などを書き込んでいく。
ドアがノックされ、秘書兼事務員の理恵子・アーベルが顔を出した。
「博士、今日は奥様とお子様たちは日本からいらっしゃるのでしたね。空港へ迎えに行かれる時間を忘れないでください」
理恵子は学生時代にドイツに留学をして、その時に付き合ったドイツ人と結婚をした。
それ以来、20年間ドイツに住んでいるので、流暢なドイツ語に比べ、使わない日本語の助詞「て・に・を・は」がおかしくなるのはそのためだ。
研究に没頭して食事も忘れがちになる博士を放っておけず、見るに見かねた理恵子が時々口を挟むが、孤高の研究者の雰囲気を持つ博士に深く立ち入ることはせず、普段はお互いに淡々と事務的な会話を交わすのみで、家族ぐるみのつきあいをするまでには至らない。
もともと仕事以外で、他人との会話を楽しむことに意義を感じない博士だが、たまには部下の士気を盛り上げようと所員に話しかけてみれば、何事が起ったかとみんなが身構えるので、そんな努力もしなくなった。
博士には結婚して15年経つ妻の安祐美と、中学2年になる長女の里奈と3歳年下の長男の祐樹がいる。
海外赴任が決まった時、当初は家族でドイツに渡るつもりだったが、里奈が難関の私立中学校の受験に合格したため、将来性を考えて安祐美と祐樹も日本に残ることになった。
子供たちの夏休みを利用して、安祐美と子供たちはこちらに一カ月ほど滞在するパターンが出来上がり、多忙の博士は、荷物の多い食料品の買い出しは付き合うが、市内観光などは妻の安祐美に任せきりになってしまっていた。
安祐美は夏休み以外にも年に2度、子供を実家に預けて博士の面倒をみにくる。
でも、博士の研究は待ってくれはしないので、結局1か月ほどの滞在中、安祐美は一人で街中をぶらつくか、読書で時間を潰すことになった。
以前、安祐美は夫の仕事を理解しようと、物理や燃料電池などの研究書物を購入して読んでいたが、博士はそんな妻を優しく諭した。
「君のような素人に本だけで理解されてしまったら、自分達の存在が必要なくなってしまうよ。それに、新しいことは秘密裏に進められていて表には出ないんだ。その本に書かれていることは、もうすでに研究されつくした古い事柄だから、読んでも仕方ないよ」
妻は溜息をついて本を閉じ、悲し気にじっとその本の表紙を見つめた。
自分は何か間違ったことを言ったのだろうか?
この分野を勉強もしたことない妻が読んでも、理解できるとは思わない。
仮に理解できたとしても、一般の教養とはかけ離れていて、役に立つことはないから読むだけ時間の無駄なのだ。
それよりも、妻が来てくれて、雑多な家事を引き受けてくれるだけで、研究に没頭できるから、妻の存在はありがたいし、家事以外の時間を妻自身の為に有効に使って欲しいのだ。
でも、博士は上手く伝える言葉の術を持たない。
研究はありのままの報告を必要とする。華美な装飾や、湾曲した説明は、誤解の元になるので必要ないし、仮につけた場合は、進まぬ研究やつまらない研究を隠すための覆いでしかない。
難しい言葉をパソコンで検索しながら、分厚い物理学の本を読まなくなった妻は、時間を持て余してしまったようだった。
この街の書店には、日本語で書かれた本はなく、英語の本も値が張るので、そう何冊も購入できない。
では日本から新書を持って来ればいいかというと、1か月分の本にかかる高額な代金ばかりか、スーツケース内の本来なら衣類や日本食に割かれるスペースを大幅に食い、重量が問題になってしまう。
安祐美が考えたのは、読み捨てにできる中古の単行本を、大量に仕入れてもってくることだった。
ハニークイーンロマンスだとかその類の本は、一冊が小さく軽量で、深く考えなくても読めるので、暇つぶしにはちょうどいいらしい。
いい歳の母親がおとぎ話のような恋愛本を読むのに抵抗があったのか、安祐美は「このくらいの内容なら、私にも書けるかも」と茶化しながらも真剣に読み、時には涙を流すので、そんなに良い内容なのかと気になった博士は、試しに一冊本を手に取って、パラパラとめくってみた。
瞬間に眠りに誘われて内容が1ページも頭に入らず、妻がその何十冊という本を置いて日本に帰った時、本当に捨てて構わないのだろうかと途方にくれた。
研究書などを大切に取っておく博士は、内容がいかなるものでも、本を捨てることにためらいがある。
結局ドイツにいる日本人会のメンバーたちに持っていくことにした。
ドイツに限らず、海外で暮らす日本人は、困ったことや行事など、苦も楽も分かち合うのを名目に、日本人会なるものを結成している。
当然派閥もできるし、それに関わるとやっかいなので、人と群れることを好まない博士は、どちらに入るとも言わず、適当に顔を出して、医療や生活などに関しての大切な情報を得ていた。
日本人会のメンバーは、ご多分に漏れず、日本語の活字に飢えていて、本はなんでも喜んで回し読みをした。
それを思い出した博士は、妻が置いていった本をデンと寄付したのだ。
その日の日本人会は、情報交換という名のおしゃべり会にはならず、メンバーは目の前に積まれた本に次々に手を出して、静かに読みだした。
そして、一様に目を見張り、博士の顔をまじまじと見つめた。
「水谷博士は、こういう本をお読みになるんですか」
「いや~っ、見かけによらずロマンチックなんですね」
焦った博士は、手近にあった本を捲った。タイトルは「100通のラブレター」だった。
赤面した博士がしどもど言い訳をしようとすると、メンバーたちは今までの壁を取っ払ったように博士を小突き、「いいじゃないですか」とか、「あまりにも頭が良すぎる方なので近寄りがたかったのですが、親近感を持ちました」などと笑顔を向けた。
博士が今まで通り仏頂面でいても、もう誰も気まずくなったり、気を使ったりしなくなり、むしろ照れ隠しに取られて、にこにこと迎えられる。
人との距離の取り方が分からなかった博士は、知らないうちに人の輪の中に溶け込めるようになった。
ドイツ赴任が4年目に、結婚も19年目になる春の季節に、日本から一冊の本が届いた。
ハードカバーの新書のタイトルは「見えない明日を乗り越えて」というもので、新人だろうか、「綾瀬ほのか」という博士の知らない著者だった。
本に添えられた妻の手紙には、いつもお仕事お疲れ様です。気持ちのこもった本です。読んでみてくださいと書いてあった。
日中、文献や方程式、研究書など、大量の文字と格闘している博士は、正直にいって自分から読みたい本以外、疲れた眼を更に酷使する気力が残っていなかった。
でも、せっかく妻が送ってきてくれたのだから、少しだけでも目を通そうとページをめくった。
そこには、恋人と離れても、相手を信じて愛をつらぬく女性の物語が書かれていた。
仕事一筋で恋人に優しい言葉もかけられず、思いやる行動さえも起こせない不器用な男は、博士を彷彿とさせた。
頭はよくないが一途に相手を思う明るい女性は、まるで妻の安祐美のようだった。
何だか自分たちのことを書かれているようで、気恥ずかしくなり、博士は途中で本を閉じた。
数日後、その日は一週間後に控えた日本の本社で行われる重役会議で、発表しなければならない研究報告をまとめることに、博士は追われていた。
研究費を少しでも多く出してもらうため、研究成果を役員たちに認めてもらわなければならない。
そんな時に昼休みだから話せると思ったのか、安祐美から電話があり、本の感想を求められた。
博士は苛立ちを隠しながら、まだ本を読んでいないことを伝えた。
「…そっか」と電話口から聞こえた落胆したような声に、博士は感じなくてもいい罪悪感を覚えて、不愉快になった。
こっちは仕事に押されて疲れて果てているのに、こんな夢物語のような本を押しつけてくるなと気分がどんどん尖っていった。
「少しだけ読んだけど、君がいつも読む気楽な本に似ているね」
電話口でハッと息を飲む音が聞こえた。
言葉を発した先から、博士はしまったと思ったが、ロナルドが何かを発見したらしく、急いできてくれと呼んでいるので、フォローもできず、忙しいからと電話を切った。
夜10時に静まり返ったマンションに戻り、博士は崩れるようにソファ―に座った。
疲れた。とにかく疲れた。そのままぼーっと天井を見上げていたが、昼間の妻からの電話を思い出した。
一言も声を発したくないくらい疲れていたが、思わず妻に当たってしまったことが気になって、スマホで妻の番号を押す。
ところが、何度鳴らしても妻は出ない。
面倒くさかったが、メールで「昼間の電話何だった?」と打ち込む。
忙しかったから感情的になった。ごめんと続くはずが、その後のやり取りを思うと、疲れすぎて気分が滅入り、そのまま送信する。
いつもはすぐに返ってくる返事が、数分経っても来なかった。
何だよ。本くらいでへそを曲げるなんて、幼稚な態度をとるなと湧いた怒りが、ソファーと同化していた腰をあげる動力となり、何とかシャワーを浴びる。
冷蔵庫のレトルトを温め、もう慣れ過ぎて、美味しいともまずいとも思わなくなったグラタンを、ただエネルギー補給の為にビールと一緒に流し込んだ。
スマホを見たが、シャワーを浴びている間にも着信履歴は無かった。
本一冊の感想で、ここまで抵抗されるとは思わなかった。
それは、自分の言い方も悪かったけれど、忙しいのはいつも理解してくれていたじゃないか。 一体、今回に限って何なんだ!
不安とも怒りとも区別がつかない感情を持て余し、博士はベッドに置いてあったその本を手に取った。
仕方ない。読めばいいんだろ?読んで妻が納得する誉め言葉をメールすれば、こちらの努力も汲んでくれるだろう。
博士は読んだ。仕事ばかりで、自分に目もくれなくなった恋人に、どうやったら目を向けてもらえるかと悩んだ末、彼の仕事を理解するための本を探しに、本屋で立ち往生をする女性の話を・・。
沢山種類がありすぎて、どれを手に取っても内容が分からず、仕方がないのでその女性は、一番文字が大きな初心者向きの分厚い本を数冊買うのだ。
頭の悪い自分を嘆きながら、必死で一つ一つの単語をパソコンで検索して、それこそカタツムリが這うようなスピードで、一文一文を理解していく。
こんな難しいことを研究しているんだ。やっぱり自分の恋人はすごいんだ。自分に割く時間がないからと言って、寂しがるのは贅沢なんだと思うようにする。
彼が仕事だけに目を向けられるようにと、たまに会うときも、その女性は自分の気持ちを告げることもせず、ただ黙って恋人の研究がうまく行って認められた話や、逆にうまくいかなくて漏れる愚痴を聞くのだ。
そして、沢山の愛情を込めた言葉を残して帰っていく。
ある日、恋人の話が、本から得た知識と重なった時、彼女は分厚い本を見せて、彼を理解しようと努力していることを自慢してしまうのだ。
研究者はプライドが高い。過去の研究結果を印刷した本は、今自分が研究している内容には追いつかないと説明され、女性は努力ばかりか、自分自身を全否定されたように感じて落ち込んでしまう。
いつになったら、彼に認めてもらえるのだろうか?もう私は要らないのだろうか?
こんなに開いた距離で暮らしていて、心も一つになれないのに、いつかは一つの場所に住めるようになるのだろうか?見えない明日に手を伸ばそうとして、彼女は苦悩する。
待っていてもいいのだろうか?私たちの明日はあるのだろうか?
幸せって何だろう?もう私はその感覚も忘れてしまったけれど、研究が成功してせめて彼だけでも幸せな気分になれますように・・・。
本を読む博士の目の奥が熱くなった。ページを抑えた親指に温かいものが落ちた。
何だろうと思ったら、今度はページに沁みができた。
博士は泣いていた。
急いで残りの3分の1ページを飛ばし、最後のあとがきを探すとそこには 、
ー 単身赴任の夫へ、いつまでもあなたを待っています。愛を込めて妻より ー
と書かれていた。
安祐美の書いた本だった。
いつかの言葉を思い出す。「これくらいの内容なら、私にも書けるかも」
愛を語った本を読む照れ隠しに、うそぶいた妻の顔を思い出す。
あいつ、本当に書いたんだ!博士は知らなかった妻の才能に感嘆した。
もともと読書家で、文系だった妻の文章は、切々と語って読み手の心に訴えてくるものがあった。
真剣な愛の言葉に、自分は何と答えたろう。
「君がいつも読む気楽な本に似ているね」
大馬鹿野郎め!似ているわけがない!こんなに愛に満ちた言葉を紡げるのは妻だけだ。
何と言う酷いことを言ったのだろう!
いくら研究成果を出したって、自分の妻一人幸せな気分にしてやれないなんて、人間として最低だ!
文中で妻は、勉強している本を否定されて、自分の努力ばかりか自分自身を全否定された気持ちになったと書いていた。
それなのに今度は、妻が本に込めた気持ちそのものを、罵倒して叩き潰してしまったのだ。
いたたまれずスマホをもう一度かける。途中で留守電に切り替わったスマホを握り締め、博士は許してくれと呻き声を漏らした。
あれから1週間、妻は一度も電話に出なかった。娘や息子にかけても誰も返事をしてくれない。
さすがの博士も不安でいっぱいになり、胃が痛くてここ数日食べ物もろくに喉を通らなくなった。
会議のために日本に向かう飛行機に乗り、空港に降り立った博士は、荷物を受け取るレーンに並んだ。
果たして妻は家にいるだろうか?
気持ちだけが急くが、飛行機内の荷物を運んでいる最中なのだろう、ターンテーブルは止まったままだ。
ようやくターンテーブルが回り出し、出口から吐き出されるように荷物が現れた。
回り出したスーツケースに目を凝らしても、博士のものはまだ見当たらない。
一度失くした信頼を取り戻すには、どうすればいいだろう?
答えを求めて視線をさまよわせるが、浮かんでは消える考えは、目の前を通り過ぎるスーツケースと一緒に流れていく。
一緒に住んでいれば謝ることもできるし、妻が気に入る何かをして名誉挽回ができるのに、離れて暮らしている時の喧嘩は、するもんじゃないと心から悔やんだ。
過ぎていったスーツケースを、一人の男性が隣に並んだ女性のために取ってやる。
それを見るともなしに見ていた博士は、ふと、今まで自分が妻の喜ぶことを何かしてやっただろうかと考えた。
何も思いつかず、目の前が暗くなる。
ようやく見つけた自分のスーツケースを持ち上げて床に下ろし、出口へと向かう。
さっきまであんなに急いていたのに、ふと誰もいない家を想像して、急に足取りが重くなった。
待っている人のいない家になんか帰りたくない。
土産で重くなったスーツケースを押しながら、博士を足早に追い抜いて行った人たちが、出口でお帰りという歓声に迎えられるのが聞こえた。
博士は俯いてその幸せそうな一行の横を通りすぎる。
「あなた。こっちよ!」
最初は聞き違いかと思った。安祐美の声がするなんて、あまりにも思い詰めたから空耳が聞こえたんだとそのまま進む。
「お父さん、こっちだってば」
里奈と祐樹の声が重なった瞬間、博士はスーツケースを放り出して、声の方へ走り出していた。
「ただいま」
博士は自分の家族をしっかりと腕に抱きしめた。
「お父さん、反省した?」
腕の中の里奈が、いたずらっ子のように眉をあげて博士の顔を窺う。
「うん、ごめん。反省した」
「お父さんが素直だと、逆に気持ち悪いね」
祐樹の言葉に湿っぽさが飛んで、みんなが笑った。
腕を解いた博士は、安祐美に向き直り悪かったと心から謝った。
「あなた、あの本を最後まで読んだ?」
「途中まで読んだら、あまりにも自分に腹が立って読めなくなった。それくらいお前の思いやりが伝わる本だった。ありがとう安祐美」
何度も小さく頷いた安祐美の目が赤くなっていた。
それを誤魔化すようにくるりと目を回した安祐美が、にっと唇の両端をあげて問いかける。
「最後まで読んでいたら、きっとありがとうなんて言えないわよ」
「えっ?どういうことだ?ハッピーエンドじゃないのか?」
急に狼狽えだした父親の様子を見て、安祐美と子供たちが噴き出した。
目じりに浮かんだ涙を拭いながら、安祐美がこつんと夫の肩に頭を載せる。
「あのね、小説の中の博士は、偉大な発明をしてノーベル賞を取るの。そして長年影から黙って夫を支えた妻は、夫の受賞式で幸せの涙をほろりと流すのよ。私もそこへ連れていってね。そしたら電話でのこと許してあげる」
博士はその内容に驚いて絶句したが、聞いているうちに、くっくっと笑い出し、やがて止まらなくなり、それにつられて家族全員が大笑いした。
好奇な目を向けて通り過ぎる人たちも、博士には気にならなかった。
こんなに笑ったのはどのくらいぶりだろうと愉快でしかたなかった。
「そんな思いもよらないラストが書けるなんて、ノーベル賞を取るのは安祐美かもしれないよ」
「だめ、私ではなく、あなたが何かしてくれなくっちゃ。普段我儘言わないけど、最後までとっておいたお願いは高くつくのよ」
笑って気分がのっているのか、いつになく安祐美も饒舌になる。
「じゃあ、僕からは大事な家族に平和賞を贈る。いつも支えてくれて、ありがとう。酷い言葉で傷つけても、家族の愛情で包んでくれてありがとう。これからは仕事だけでなく、きちんと君たちを見て、君たちの気持ちに応えられるように努力する」
博士の言葉に、安祐美も里奈も祐樹も大きく頷き、きっとだよと再び抱き合った。
「さぁ、授賞の後はご馳走を食べなくちゃ。偶然だけど家に用意してあるの」
博士が放り出してあったスーツケースの方へと安祐美が歩き出す。
その後を楽し気に子供たちが追っていく。
愛しい家族の後ろ姿を眺めながら、自分が失ったかもしれない大切な絆を思うと、博士は思わず身をすくませた。
ーこれからは仕事だけでなくきちんと家族の気持ちに応えられるように努力するー
自分が誓った言葉を忘れず心に留めて、実行しようと博士は思った。
鞄にしのばせてきた「見えない明日を乗り越えて」の続きを今夜読もう。
安祐美がスーツケースを手に振り替える。
その笑顔に博士も笑顔で返しながら、きっと自分の愛読書は、これから先一冊になるだろうと予感した。
部下に研究計画書を返しながら水谷博士が頷くと、ロナルドはほっとした様子で部屋から出て行った。
水谷勉は、ある日本企業が作ったドイツの研究所で、新エネルギーを研究している。
本棚には物理学や熱力学の本がびっしりと並び、机の上のパソコン画面には、学会で発表された同分野の研究論文が英語で映し出されていた。
「いつ見ても、熱力学の方程式の羅列は美しい」
水谷博士は満足げに溜息をつくと、部下たちの研究報告書に目を戻し、赤ペンで改善点や、課題の追及の余地などを書き込んでいく。
ドアがノックされ、秘書兼事務員の理恵子・アーベルが顔を出した。
「博士、今日は奥様とお子様たちは日本からいらっしゃるのでしたね。空港へ迎えに行かれる時間を忘れないでください」
理恵子は学生時代にドイツに留学をして、その時に付き合ったドイツ人と結婚をした。
それ以来、20年間ドイツに住んでいるので、流暢なドイツ語に比べ、使わない日本語の助詞「て・に・を・は」がおかしくなるのはそのためだ。
研究に没頭して食事も忘れがちになる博士を放っておけず、見るに見かねた理恵子が時々口を挟むが、孤高の研究者の雰囲気を持つ博士に深く立ち入ることはせず、普段はお互いに淡々と事務的な会話を交わすのみで、家族ぐるみのつきあいをするまでには至らない。
もともと仕事以外で、他人との会話を楽しむことに意義を感じない博士だが、たまには部下の士気を盛り上げようと所員に話しかけてみれば、何事が起ったかとみんなが身構えるので、そんな努力もしなくなった。
博士には結婚して15年経つ妻の安祐美と、中学2年になる長女の里奈と3歳年下の長男の祐樹がいる。
海外赴任が決まった時、当初は家族でドイツに渡るつもりだったが、里奈が難関の私立中学校の受験に合格したため、将来性を考えて安祐美と祐樹も日本に残ることになった。
子供たちの夏休みを利用して、安祐美と子供たちはこちらに一カ月ほど滞在するパターンが出来上がり、多忙の博士は、荷物の多い食料品の買い出しは付き合うが、市内観光などは妻の安祐美に任せきりになってしまっていた。
安祐美は夏休み以外にも年に2度、子供を実家に預けて博士の面倒をみにくる。
でも、博士の研究は待ってくれはしないので、結局1か月ほどの滞在中、安祐美は一人で街中をぶらつくか、読書で時間を潰すことになった。
以前、安祐美は夫の仕事を理解しようと、物理や燃料電池などの研究書物を購入して読んでいたが、博士はそんな妻を優しく諭した。
「君のような素人に本だけで理解されてしまったら、自分達の存在が必要なくなってしまうよ。それに、新しいことは秘密裏に進められていて表には出ないんだ。その本に書かれていることは、もうすでに研究されつくした古い事柄だから、読んでも仕方ないよ」
妻は溜息をついて本を閉じ、悲し気にじっとその本の表紙を見つめた。
自分は何か間違ったことを言ったのだろうか?
この分野を勉強もしたことない妻が読んでも、理解できるとは思わない。
仮に理解できたとしても、一般の教養とはかけ離れていて、役に立つことはないから読むだけ時間の無駄なのだ。
それよりも、妻が来てくれて、雑多な家事を引き受けてくれるだけで、研究に没頭できるから、妻の存在はありがたいし、家事以外の時間を妻自身の為に有効に使って欲しいのだ。
でも、博士は上手く伝える言葉の術を持たない。
研究はありのままの報告を必要とする。華美な装飾や、湾曲した説明は、誤解の元になるので必要ないし、仮につけた場合は、進まぬ研究やつまらない研究を隠すための覆いでしかない。
難しい言葉をパソコンで検索しながら、分厚い物理学の本を読まなくなった妻は、時間を持て余してしまったようだった。
この街の書店には、日本語で書かれた本はなく、英語の本も値が張るので、そう何冊も購入できない。
では日本から新書を持って来ればいいかというと、1か月分の本にかかる高額な代金ばかりか、スーツケース内の本来なら衣類や日本食に割かれるスペースを大幅に食い、重量が問題になってしまう。
安祐美が考えたのは、読み捨てにできる中古の単行本を、大量に仕入れてもってくることだった。
ハニークイーンロマンスだとかその類の本は、一冊が小さく軽量で、深く考えなくても読めるので、暇つぶしにはちょうどいいらしい。
いい歳の母親がおとぎ話のような恋愛本を読むのに抵抗があったのか、安祐美は「このくらいの内容なら、私にも書けるかも」と茶化しながらも真剣に読み、時には涙を流すので、そんなに良い内容なのかと気になった博士は、試しに一冊本を手に取って、パラパラとめくってみた。
瞬間に眠りに誘われて内容が1ページも頭に入らず、妻がその何十冊という本を置いて日本に帰った時、本当に捨てて構わないのだろうかと途方にくれた。
研究書などを大切に取っておく博士は、内容がいかなるものでも、本を捨てることにためらいがある。
結局ドイツにいる日本人会のメンバーたちに持っていくことにした。
ドイツに限らず、海外で暮らす日本人は、困ったことや行事など、苦も楽も分かち合うのを名目に、日本人会なるものを結成している。
当然派閥もできるし、それに関わるとやっかいなので、人と群れることを好まない博士は、どちらに入るとも言わず、適当に顔を出して、医療や生活などに関しての大切な情報を得ていた。
日本人会のメンバーは、ご多分に漏れず、日本語の活字に飢えていて、本はなんでも喜んで回し読みをした。
それを思い出した博士は、妻が置いていった本をデンと寄付したのだ。
その日の日本人会は、情報交換という名のおしゃべり会にはならず、メンバーは目の前に積まれた本に次々に手を出して、静かに読みだした。
そして、一様に目を見張り、博士の顔をまじまじと見つめた。
「水谷博士は、こういう本をお読みになるんですか」
「いや~っ、見かけによらずロマンチックなんですね」
焦った博士は、手近にあった本を捲った。タイトルは「100通のラブレター」だった。
赤面した博士がしどもど言い訳をしようとすると、メンバーたちは今までの壁を取っ払ったように博士を小突き、「いいじゃないですか」とか、「あまりにも頭が良すぎる方なので近寄りがたかったのですが、親近感を持ちました」などと笑顔を向けた。
博士が今まで通り仏頂面でいても、もう誰も気まずくなったり、気を使ったりしなくなり、むしろ照れ隠しに取られて、にこにこと迎えられる。
人との距離の取り方が分からなかった博士は、知らないうちに人の輪の中に溶け込めるようになった。
ドイツ赴任が4年目に、結婚も19年目になる春の季節に、日本から一冊の本が届いた。
ハードカバーの新書のタイトルは「見えない明日を乗り越えて」というもので、新人だろうか、「綾瀬ほのか」という博士の知らない著者だった。
本に添えられた妻の手紙には、いつもお仕事お疲れ様です。気持ちのこもった本です。読んでみてくださいと書いてあった。
日中、文献や方程式、研究書など、大量の文字と格闘している博士は、正直にいって自分から読みたい本以外、疲れた眼を更に酷使する気力が残っていなかった。
でも、せっかく妻が送ってきてくれたのだから、少しだけでも目を通そうとページをめくった。
そこには、恋人と離れても、相手を信じて愛をつらぬく女性の物語が書かれていた。
仕事一筋で恋人に優しい言葉もかけられず、思いやる行動さえも起こせない不器用な男は、博士を彷彿とさせた。
頭はよくないが一途に相手を思う明るい女性は、まるで妻の安祐美のようだった。
何だか自分たちのことを書かれているようで、気恥ずかしくなり、博士は途中で本を閉じた。
数日後、その日は一週間後に控えた日本の本社で行われる重役会議で、発表しなければならない研究報告をまとめることに、博士は追われていた。
研究費を少しでも多く出してもらうため、研究成果を役員たちに認めてもらわなければならない。
そんな時に昼休みだから話せると思ったのか、安祐美から電話があり、本の感想を求められた。
博士は苛立ちを隠しながら、まだ本を読んでいないことを伝えた。
「…そっか」と電話口から聞こえた落胆したような声に、博士は感じなくてもいい罪悪感を覚えて、不愉快になった。
こっちは仕事に押されて疲れて果てているのに、こんな夢物語のような本を押しつけてくるなと気分がどんどん尖っていった。
「少しだけ読んだけど、君がいつも読む気楽な本に似ているね」
電話口でハッと息を飲む音が聞こえた。
言葉を発した先から、博士はしまったと思ったが、ロナルドが何かを発見したらしく、急いできてくれと呼んでいるので、フォローもできず、忙しいからと電話を切った。
夜10時に静まり返ったマンションに戻り、博士は崩れるようにソファ―に座った。
疲れた。とにかく疲れた。そのままぼーっと天井を見上げていたが、昼間の妻からの電話を思い出した。
一言も声を発したくないくらい疲れていたが、思わず妻に当たってしまったことが気になって、スマホで妻の番号を押す。
ところが、何度鳴らしても妻は出ない。
面倒くさかったが、メールで「昼間の電話何だった?」と打ち込む。
忙しかったから感情的になった。ごめんと続くはずが、その後のやり取りを思うと、疲れすぎて気分が滅入り、そのまま送信する。
いつもはすぐに返ってくる返事が、数分経っても来なかった。
何だよ。本くらいでへそを曲げるなんて、幼稚な態度をとるなと湧いた怒りが、ソファーと同化していた腰をあげる動力となり、何とかシャワーを浴びる。
冷蔵庫のレトルトを温め、もう慣れ過ぎて、美味しいともまずいとも思わなくなったグラタンを、ただエネルギー補給の為にビールと一緒に流し込んだ。
スマホを見たが、シャワーを浴びている間にも着信履歴は無かった。
本一冊の感想で、ここまで抵抗されるとは思わなかった。
それは、自分の言い方も悪かったけれど、忙しいのはいつも理解してくれていたじゃないか。 一体、今回に限って何なんだ!
不安とも怒りとも区別がつかない感情を持て余し、博士はベッドに置いてあったその本を手に取った。
仕方ない。読めばいいんだろ?読んで妻が納得する誉め言葉をメールすれば、こちらの努力も汲んでくれるだろう。
博士は読んだ。仕事ばかりで、自分に目もくれなくなった恋人に、どうやったら目を向けてもらえるかと悩んだ末、彼の仕事を理解するための本を探しに、本屋で立ち往生をする女性の話を・・。
沢山種類がありすぎて、どれを手に取っても内容が分からず、仕方がないのでその女性は、一番文字が大きな初心者向きの分厚い本を数冊買うのだ。
頭の悪い自分を嘆きながら、必死で一つ一つの単語をパソコンで検索して、それこそカタツムリが這うようなスピードで、一文一文を理解していく。
こんな難しいことを研究しているんだ。やっぱり自分の恋人はすごいんだ。自分に割く時間がないからと言って、寂しがるのは贅沢なんだと思うようにする。
彼が仕事だけに目を向けられるようにと、たまに会うときも、その女性は自分の気持ちを告げることもせず、ただ黙って恋人の研究がうまく行って認められた話や、逆にうまくいかなくて漏れる愚痴を聞くのだ。
そして、沢山の愛情を込めた言葉を残して帰っていく。
ある日、恋人の話が、本から得た知識と重なった時、彼女は分厚い本を見せて、彼を理解しようと努力していることを自慢してしまうのだ。
研究者はプライドが高い。過去の研究結果を印刷した本は、今自分が研究している内容には追いつかないと説明され、女性は努力ばかりか、自分自身を全否定されたように感じて落ち込んでしまう。
いつになったら、彼に認めてもらえるのだろうか?もう私は要らないのだろうか?
こんなに開いた距離で暮らしていて、心も一つになれないのに、いつかは一つの場所に住めるようになるのだろうか?見えない明日に手を伸ばそうとして、彼女は苦悩する。
待っていてもいいのだろうか?私たちの明日はあるのだろうか?
幸せって何だろう?もう私はその感覚も忘れてしまったけれど、研究が成功してせめて彼だけでも幸せな気分になれますように・・・。
本を読む博士の目の奥が熱くなった。ページを抑えた親指に温かいものが落ちた。
何だろうと思ったら、今度はページに沁みができた。
博士は泣いていた。
急いで残りの3分の1ページを飛ばし、最後のあとがきを探すとそこには 、
ー 単身赴任の夫へ、いつまでもあなたを待っています。愛を込めて妻より ー
と書かれていた。
安祐美の書いた本だった。
いつかの言葉を思い出す。「これくらいの内容なら、私にも書けるかも」
愛を語った本を読む照れ隠しに、うそぶいた妻の顔を思い出す。
あいつ、本当に書いたんだ!博士は知らなかった妻の才能に感嘆した。
もともと読書家で、文系だった妻の文章は、切々と語って読み手の心に訴えてくるものがあった。
真剣な愛の言葉に、自分は何と答えたろう。
「君がいつも読む気楽な本に似ているね」
大馬鹿野郎め!似ているわけがない!こんなに愛に満ちた言葉を紡げるのは妻だけだ。
何と言う酷いことを言ったのだろう!
いくら研究成果を出したって、自分の妻一人幸せな気分にしてやれないなんて、人間として最低だ!
文中で妻は、勉強している本を否定されて、自分の努力ばかりか自分自身を全否定された気持ちになったと書いていた。
それなのに今度は、妻が本に込めた気持ちそのものを、罵倒して叩き潰してしまったのだ。
いたたまれずスマホをもう一度かける。途中で留守電に切り替わったスマホを握り締め、博士は許してくれと呻き声を漏らした。
あれから1週間、妻は一度も電話に出なかった。娘や息子にかけても誰も返事をしてくれない。
さすがの博士も不安でいっぱいになり、胃が痛くてここ数日食べ物もろくに喉を通らなくなった。
会議のために日本に向かう飛行機に乗り、空港に降り立った博士は、荷物を受け取るレーンに並んだ。
果たして妻は家にいるだろうか?
気持ちだけが急くが、飛行機内の荷物を運んでいる最中なのだろう、ターンテーブルは止まったままだ。
ようやくターンテーブルが回り出し、出口から吐き出されるように荷物が現れた。
回り出したスーツケースに目を凝らしても、博士のものはまだ見当たらない。
一度失くした信頼を取り戻すには、どうすればいいだろう?
答えを求めて視線をさまよわせるが、浮かんでは消える考えは、目の前を通り過ぎるスーツケースと一緒に流れていく。
一緒に住んでいれば謝ることもできるし、妻が気に入る何かをして名誉挽回ができるのに、離れて暮らしている時の喧嘩は、するもんじゃないと心から悔やんだ。
過ぎていったスーツケースを、一人の男性が隣に並んだ女性のために取ってやる。
それを見るともなしに見ていた博士は、ふと、今まで自分が妻の喜ぶことを何かしてやっただろうかと考えた。
何も思いつかず、目の前が暗くなる。
ようやく見つけた自分のスーツケースを持ち上げて床に下ろし、出口へと向かう。
さっきまであんなに急いていたのに、ふと誰もいない家を想像して、急に足取りが重くなった。
待っている人のいない家になんか帰りたくない。
土産で重くなったスーツケースを押しながら、博士を足早に追い抜いて行った人たちが、出口でお帰りという歓声に迎えられるのが聞こえた。
博士は俯いてその幸せそうな一行の横を通りすぎる。
「あなた。こっちよ!」
最初は聞き違いかと思った。安祐美の声がするなんて、あまりにも思い詰めたから空耳が聞こえたんだとそのまま進む。
「お父さん、こっちだってば」
里奈と祐樹の声が重なった瞬間、博士はスーツケースを放り出して、声の方へ走り出していた。
「ただいま」
博士は自分の家族をしっかりと腕に抱きしめた。
「お父さん、反省した?」
腕の中の里奈が、いたずらっ子のように眉をあげて博士の顔を窺う。
「うん、ごめん。反省した」
「お父さんが素直だと、逆に気持ち悪いね」
祐樹の言葉に湿っぽさが飛んで、みんなが笑った。
腕を解いた博士は、安祐美に向き直り悪かったと心から謝った。
「あなた、あの本を最後まで読んだ?」
「途中まで読んだら、あまりにも自分に腹が立って読めなくなった。それくらいお前の思いやりが伝わる本だった。ありがとう安祐美」
何度も小さく頷いた安祐美の目が赤くなっていた。
それを誤魔化すようにくるりと目を回した安祐美が、にっと唇の両端をあげて問いかける。
「最後まで読んでいたら、きっとありがとうなんて言えないわよ」
「えっ?どういうことだ?ハッピーエンドじゃないのか?」
急に狼狽えだした父親の様子を見て、安祐美と子供たちが噴き出した。
目じりに浮かんだ涙を拭いながら、安祐美がこつんと夫の肩に頭を載せる。
「あのね、小説の中の博士は、偉大な発明をしてノーベル賞を取るの。そして長年影から黙って夫を支えた妻は、夫の受賞式で幸せの涙をほろりと流すのよ。私もそこへ連れていってね。そしたら電話でのこと許してあげる」
博士はその内容に驚いて絶句したが、聞いているうちに、くっくっと笑い出し、やがて止まらなくなり、それにつられて家族全員が大笑いした。
好奇な目を向けて通り過ぎる人たちも、博士には気にならなかった。
こんなに笑ったのはどのくらいぶりだろうと愉快でしかたなかった。
「そんな思いもよらないラストが書けるなんて、ノーベル賞を取るのは安祐美かもしれないよ」
「だめ、私ではなく、あなたが何かしてくれなくっちゃ。普段我儘言わないけど、最後までとっておいたお願いは高くつくのよ」
笑って気分がのっているのか、いつになく安祐美も饒舌になる。
「じゃあ、僕からは大事な家族に平和賞を贈る。いつも支えてくれて、ありがとう。酷い言葉で傷つけても、家族の愛情で包んでくれてありがとう。これからは仕事だけでなく、きちんと君たちを見て、君たちの気持ちに応えられるように努力する」
博士の言葉に、安祐美も里奈も祐樹も大きく頷き、きっとだよと再び抱き合った。
「さぁ、授賞の後はご馳走を食べなくちゃ。偶然だけど家に用意してあるの」
博士が放り出してあったスーツケースの方へと安祐美が歩き出す。
その後を楽し気に子供たちが追っていく。
愛しい家族の後ろ姿を眺めながら、自分が失ったかもしれない大切な絆を思うと、博士は思わず身をすくませた。
ーこれからは仕事だけでなくきちんと家族の気持ちに応えられるように努力するー
自分が誓った言葉を忘れず心に留めて、実行しようと博士は思った。
鞄にしのばせてきた「見えない明日を乗り越えて」の続きを今夜読もう。
安祐美がスーツケースを手に振り替える。
その笑顔に博士も笑顔で返しながら、きっと自分の愛読書は、これから先一冊になるだろうと予感した。
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