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写真撮影3
揺らめくフレッシュグリーン
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理花と薫子の微妙な空気を読んで、瀬尾も新城も困ってしまい、助けを求めるように部長の進藤に視線が向かう。 その視線を受けた進藤が、解決策はないかとスマホを探り、ふと思いついたように瀬尾に訊ねた。
「なぁ、大智、【香】ってペンネームのエディターにメッセージを送って、脚本を書いてくれないか尋ねてみないか?詳しい設定抜きのセリフだけの台本でもいいから頼んでみようよ」
進藤の言葉に反応して、理花は思わず薫子を見てしまったが、薫子は何も言わないで欲しいというようにわずかに首を振った。
もちろん、正体をバラす気はないけれど、脚本を書くには理花は力不足だとみんなの前で言うくらいなら、自分が【香】だと名乗りを上げて書いてあげればいいのにと思ってしまう。
ああ、なんだろうな、今日の薫子も私も、トゲトゲした感情のまま、突っつきあっているようで好きじゃない。
もやもやした気持ちを抱えながら、瀬尾が何というだろうかと自然に視線がそちらに向かう。
「う~ん。知り合いならまだしも、学生の俺たちのために、台本なんて書いてくれると思うか?セリフが延々と続くアマチュアの小説を読んだことがあるけれど、登場人物の動作も胸中も作者の頭の中だけにあって、読者にはセリフしか伝わらないから、だんだん読むのが苦痛になるんだ。劇の台本も同じ形式だから、万が一【香】が引き受けて小説サイトに載せてくれたとしても、読者がつかないと分かったら、連載中止になる可能性がある。代金を払っているわけでもないし、中途半端なまま終わってしまったら、立て直しがきかないぞ」
「そんなのやってみなけりゃ分かんないだろ。大智にしては、何だか珍しく消極的だな」
「ちょっと、二人とも熱くなるなよ。仲間割れ厳禁。人数がただでさえ少ない部なんだから、映画が撮れなくなるだろ?」
新城がタイミングよく二人の間に入り、薫子は緊張を解いたように見えたが、次に瀬尾が薫子に話しかけた時、再び薫子の肩が上がって表情が硬くなるのが、傍から見ていてもはっきりと分かった。
「ひょっとして岸野さんも物語を書くの?ほら、さっき物語と作文と脚本の違いを語っただろ?あれって、書いたことがないと気が付かないと思うんだ」
「おお、さすが大智!それは俺も気が付かなかった。だったらさ、青木さんと岸野さんに、う~ん、硬いな。理花ちゃんと薫子ちゃんに、数ページの恋愛シーンを書いてもらって、お互いの作品を演じてもらうってのはどう?」
進藤の提案に、理花は慌てて首を振った。
「冗談言わないで、進藤君。私は演じるなんて一言も言ってないし、薫子の言う通り、脚本で手一杯なんだから」
「理花ちゃん、俺たちのことは、司、大智、真人の名前で呼んでよ。長いつきあいになるから、堅っ苦しいのやめよ」
「うん、分かった…っじゃなくて、今の私の話を聞いてた?」
「ああ、聞いてた。でもさ、俺見たいんだよね。タイプの違う人間がどんな物語を書いて、相手の脚本をどう演じるか。なっ、大智も真人も興味あるだろ?」
大智も真人も顔を見合わせると、そうだなと言いながら一応考える振りをするけれど、その表情は興味深々であるのが見て取れる。
「理花、私やってもいいと思う。私が書いた脚本を理花が演じて、理花が書いたのを私が演じるんでしょ?何だか面白そうじゃない?」
薫子の目が、何だかいつもと違う感じできらめいて見えるのは気のせいだろうか?もはや周りの部員たちも乗り気になっていて、押し切られそうな雰囲気に、理花はいやな予感を覚えた。
ことを決定づけたのは、カメラマンを担当する新城の返事だ。外見からしてインテリっぽい新城が筋道立てて話すと、誰もがその言い分を納得してしまう。
「僕も賛成かな。カメラ映りをチェックしたけれど、演技はまた別のものだから、現時点ではどちらがヒロインとは言えない。脚本だって内容次第で撮り方が違ってくるから、良い方の台本に合う人を選びたい。全てにおいて一番良いチョイスをしたいな」
真人の持つ有無を言わせぬ説得力って反則だよね?理花だって言いたいことはあるわけで……
演技したことがないのは薫子も同じだとしても、相手役は大智君だよ?
薫子がどんな脚本を書くか分からないし……
やだよ~失敗して笑われたらどうしよう。
多分、百面相をしていたのかもしれない。心配そうな表情の大智が理花の顔を覗き込み、チョコレート色の瞳がすぐ目の前で瞬きをする。びっくりして身体が気を付け状態に硬直してしまった。
大智は咄嗟に笑いをかみ殺したようだ。ぴくぴくと唇を引きつらせながら、聞こえるか聞こえないかの声で「息!」と理花に注意をする。
知らずに止めていた息を整えながら、こんなんで演技は無理。絶対に無理!と、理花は心の中で叫んでいた。
けれど、多数決がとられて、理花と薫子が書いた脚本をお互いに演じることが決まってしまい、言い出しっぺの司が嬉しそうに、提出期限を理花と薫子に伝えて、大丈夫かどうか確かめる。
「明日から、火・水と、2日間キャンプだから、理花ちゃんと、薫子ちゃんには来週の月曜日に脚本を持ってきてもらうのはどうだろう?枚数はできるだけで構わない。準備室を使って大智と二人が入れ違いでお互いの脚本を読み合わせて、火曜日にみんなの前で演技を発表する。これでいいかな?」
薫子が頷き、みんなの視線が理花に集まる。頷かないわけにはいかなくて、渋々首を縦に振ると、部員たちが激励の拍手を送った。
ああ、明日からのキャンプを楽しみにしていたのに、脚本と演技が頭から離れてくれるかな?薫子は心配じゃないのかな?
そう思ってみると、薫子は鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で、にっこりと微笑みかけてきた。
「なぁ、大智、【香】ってペンネームのエディターにメッセージを送って、脚本を書いてくれないか尋ねてみないか?詳しい設定抜きのセリフだけの台本でもいいから頼んでみようよ」
進藤の言葉に反応して、理花は思わず薫子を見てしまったが、薫子は何も言わないで欲しいというようにわずかに首を振った。
もちろん、正体をバラす気はないけれど、脚本を書くには理花は力不足だとみんなの前で言うくらいなら、自分が【香】だと名乗りを上げて書いてあげればいいのにと思ってしまう。
ああ、なんだろうな、今日の薫子も私も、トゲトゲした感情のまま、突っつきあっているようで好きじゃない。
もやもやした気持ちを抱えながら、瀬尾が何というだろうかと自然に視線がそちらに向かう。
「う~ん。知り合いならまだしも、学生の俺たちのために、台本なんて書いてくれると思うか?セリフが延々と続くアマチュアの小説を読んだことがあるけれど、登場人物の動作も胸中も作者の頭の中だけにあって、読者にはセリフしか伝わらないから、だんだん読むのが苦痛になるんだ。劇の台本も同じ形式だから、万が一【香】が引き受けて小説サイトに載せてくれたとしても、読者がつかないと分かったら、連載中止になる可能性がある。代金を払っているわけでもないし、中途半端なまま終わってしまったら、立て直しがきかないぞ」
「そんなのやってみなけりゃ分かんないだろ。大智にしては、何だか珍しく消極的だな」
「ちょっと、二人とも熱くなるなよ。仲間割れ厳禁。人数がただでさえ少ない部なんだから、映画が撮れなくなるだろ?」
新城がタイミングよく二人の間に入り、薫子は緊張を解いたように見えたが、次に瀬尾が薫子に話しかけた時、再び薫子の肩が上がって表情が硬くなるのが、傍から見ていてもはっきりと分かった。
「ひょっとして岸野さんも物語を書くの?ほら、さっき物語と作文と脚本の違いを語っただろ?あれって、書いたことがないと気が付かないと思うんだ」
「おお、さすが大智!それは俺も気が付かなかった。だったらさ、青木さんと岸野さんに、う~ん、硬いな。理花ちゃんと薫子ちゃんに、数ページの恋愛シーンを書いてもらって、お互いの作品を演じてもらうってのはどう?」
進藤の提案に、理花は慌てて首を振った。
「冗談言わないで、進藤君。私は演じるなんて一言も言ってないし、薫子の言う通り、脚本で手一杯なんだから」
「理花ちゃん、俺たちのことは、司、大智、真人の名前で呼んでよ。長いつきあいになるから、堅っ苦しいのやめよ」
「うん、分かった…っじゃなくて、今の私の話を聞いてた?」
「ああ、聞いてた。でもさ、俺見たいんだよね。タイプの違う人間がどんな物語を書いて、相手の脚本をどう演じるか。なっ、大智も真人も興味あるだろ?」
大智も真人も顔を見合わせると、そうだなと言いながら一応考える振りをするけれど、その表情は興味深々であるのが見て取れる。
「理花、私やってもいいと思う。私が書いた脚本を理花が演じて、理花が書いたのを私が演じるんでしょ?何だか面白そうじゃない?」
薫子の目が、何だかいつもと違う感じできらめいて見えるのは気のせいだろうか?もはや周りの部員たちも乗り気になっていて、押し切られそうな雰囲気に、理花はいやな予感を覚えた。
ことを決定づけたのは、カメラマンを担当する新城の返事だ。外見からしてインテリっぽい新城が筋道立てて話すと、誰もがその言い分を納得してしまう。
「僕も賛成かな。カメラ映りをチェックしたけれど、演技はまた別のものだから、現時点ではどちらがヒロインとは言えない。脚本だって内容次第で撮り方が違ってくるから、良い方の台本に合う人を選びたい。全てにおいて一番良いチョイスをしたいな」
真人の持つ有無を言わせぬ説得力って反則だよね?理花だって言いたいことはあるわけで……
演技したことがないのは薫子も同じだとしても、相手役は大智君だよ?
薫子がどんな脚本を書くか分からないし……
やだよ~失敗して笑われたらどうしよう。
多分、百面相をしていたのかもしれない。心配そうな表情の大智が理花の顔を覗き込み、チョコレート色の瞳がすぐ目の前で瞬きをする。びっくりして身体が気を付け状態に硬直してしまった。
大智は咄嗟に笑いをかみ殺したようだ。ぴくぴくと唇を引きつらせながら、聞こえるか聞こえないかの声で「息!」と理花に注意をする。
知らずに止めていた息を整えながら、こんなんで演技は無理。絶対に無理!と、理花は心の中で叫んでいた。
けれど、多数決がとられて、理花と薫子が書いた脚本をお互いに演じることが決まってしまい、言い出しっぺの司が嬉しそうに、提出期限を理花と薫子に伝えて、大丈夫かどうか確かめる。
「明日から、火・水と、2日間キャンプだから、理花ちゃんと、薫子ちゃんには来週の月曜日に脚本を持ってきてもらうのはどうだろう?枚数はできるだけで構わない。準備室を使って大智と二人が入れ違いでお互いの脚本を読み合わせて、火曜日にみんなの前で演技を発表する。これでいいかな?」
薫子が頷き、みんなの視線が理花に集まる。頷かないわけにはいかなくて、渋々首を縦に振ると、部員たちが激励の拍手を送った。
ああ、明日からのキャンプを楽しみにしていたのに、脚本と演技が頭から離れてくれるかな?薫子は心配じゃないのかな?
そう思ってみると、薫子は鼻歌でも歌いそうなほど上機嫌で、にっこりと微笑みかけてきた。
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