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Erased Dark Green
最後の手紙
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その夜、近所で複数の荒々しい男の怒鳴り声があがった。
同時に女性の悲鳴や物を壊す音が聞こえてきて、瑠実はベッドの上で震え上がった。
ずいぶん近くから聞こえたけれど、ひょっとしたらあれは俊哉の家ではないだろうか?
そっと窓からの覗いてみるものの、瑠実の家は通りから奥まっているので隣の家に視界を阻まれてしまい、俊哉の家は見えない。
遅い時間で静まり返った住宅街に、かなり荒い言葉使いの怒鳴り声が、結構長いこと響き渡った。
巻き込まれないように用心しているのか、通りに人影は見えない。緊張が高まってどうにかなりそうだった時に、パトカーのサイレンの音が近づくのを聞いて、瑠実は安堵の息を大きく吐いた。
警官が来る前に男たちは逃げて行ったのか、テレビドラマでよく耳にする捕り物のいざこざや、追いかける気配は全く感じられない。それでもパトカーは何度か周囲を回っているらしく、回転灯の赤い光が道路から奥まった瑠実の家の窓にも届く。静けさが戻ったのに安心した瑠実は、いつの間にか眠りに就いていた。
翌朝、登校時間になっても、俊哉と沙也加は登校班の集合場所に姿を現さなかった。
昨夜の騒動に怯えている子供たちを見て、班長は黙って出発することを決め、瑠実もそれに従った。
時々後ろを振り返りながら、こんなに近くにいながら子供の自分には何の力にもなってあげられないことに、瑠実は胸を痛めた。
その一日、瑠実は心配で授業も頭に入らず、家に帰る途中で俊哉の家に寄ろうとした。
ところが雨戸が閉まったままになっている。そのまま家に帰り、仕事から母が戻るのを今か今かと待って、ドアが開くと同時に昨夜のことを尋ねた。
「今朝、お隣の人から聞いたのだけれど、どうやら借金取りみたい。俊哉君のお父さんが違法カジノかなにかで大損したみたいなの。お商売も上手くいってなかったみたいだし、魔が差したのかしら」
大人は時々訳の分からないことを言う。
違法カジノが何かも、魔が差すという感覚も分からないけれど、今検索したら、あの怖い怒鳴り声が間近に迫ってきそうで怖くなり、瑠実はただ「ふぅん」とだけ答え、自分の部屋に避難した。
それから、数日後のことだった。瑠実は部活を終えてから友人とおしゃべりをしていて、いつもよりかなり遅く家に帰った。
すると、思いもよらない人がリビングにいて、瑠実を見るなり頭を下げて謝ってきた。
「瑠実ちゃん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
俊哉のお母さんが喉を詰まらせていきなり泣き出した。
一体何が起きたのかが分からず、オロオロする瑠実に、母が部屋に行っていなさいと命令する。口答えを許しそうにない母の強い視線に促され、瑠実は不承不承廊下を歩いて自分の部屋のドアを開けた。
同時に女性の悲鳴や物を壊す音が聞こえてきて、瑠実はベッドの上で震え上がった。
ずいぶん近くから聞こえたけれど、ひょっとしたらあれは俊哉の家ではないだろうか?
そっと窓からの覗いてみるものの、瑠実の家は通りから奥まっているので隣の家に視界を阻まれてしまい、俊哉の家は見えない。
遅い時間で静まり返った住宅街に、かなり荒い言葉使いの怒鳴り声が、結構長いこと響き渡った。
巻き込まれないように用心しているのか、通りに人影は見えない。緊張が高まってどうにかなりそうだった時に、パトカーのサイレンの音が近づくのを聞いて、瑠実は安堵の息を大きく吐いた。
警官が来る前に男たちは逃げて行ったのか、テレビドラマでよく耳にする捕り物のいざこざや、追いかける気配は全く感じられない。それでもパトカーは何度か周囲を回っているらしく、回転灯の赤い光が道路から奥まった瑠実の家の窓にも届く。静けさが戻ったのに安心した瑠実は、いつの間にか眠りに就いていた。
翌朝、登校時間になっても、俊哉と沙也加は登校班の集合場所に姿を現さなかった。
昨夜の騒動に怯えている子供たちを見て、班長は黙って出発することを決め、瑠実もそれに従った。
時々後ろを振り返りながら、こんなに近くにいながら子供の自分には何の力にもなってあげられないことに、瑠実は胸を痛めた。
その一日、瑠実は心配で授業も頭に入らず、家に帰る途中で俊哉の家に寄ろうとした。
ところが雨戸が閉まったままになっている。そのまま家に帰り、仕事から母が戻るのを今か今かと待って、ドアが開くと同時に昨夜のことを尋ねた。
「今朝、お隣の人から聞いたのだけれど、どうやら借金取りみたい。俊哉君のお父さんが違法カジノかなにかで大損したみたいなの。お商売も上手くいってなかったみたいだし、魔が差したのかしら」
大人は時々訳の分からないことを言う。
違法カジノが何かも、魔が差すという感覚も分からないけれど、今検索したら、あの怖い怒鳴り声が間近に迫ってきそうで怖くなり、瑠実はただ「ふぅん」とだけ答え、自分の部屋に避難した。
それから、数日後のことだった。瑠実は部活を終えてから友人とおしゃべりをしていて、いつもよりかなり遅く家に帰った。
すると、思いもよらない人がリビングにいて、瑠実を見るなり頭を下げて謝ってきた。
「瑠実ちゃん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
俊哉のお母さんが喉を詰まらせていきなり泣き出した。
一体何が起きたのかが分からず、オロオロする瑠実に、母が部屋に行っていなさいと命令する。口答えを許しそうにない母の強い視線に促され、瑠実は不承不承廊下を歩いて自分の部屋のドアを開けた。
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