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「えー、今日というこの日を無事に迎える事ができ、私たち教職員一同も大変嬉しく思っております」
朝のトラブルも収まり予定通り入学式が始まっていた。そして今現在あの時術師に絡まれていた校長が晴れやかな顔で式辞を読んでいる所だった。ついでに気付けば空も晴れていた。
だがしかし、トラブルが収まったといっても周りはまだその事に関してざわざわしているようだった。
それも当然の反応だ。
多くの一般人にとって術師は滅多に御目にかかれない人種だからだ。
それが学校を間違えるという珍事を起こしたのだ。平和な世界でこれ以上の事件もそうはない。
「ーーー以上を持ちまして入学式を閉会致します」
このまま何事もなく入学式が終える。そう誰もが思っていた。
しかし、そのアナウンスの終わりとともに静まり返る講堂に女性の声が響いた。
「見つけたわよ! そこの誰かさん!」
その声のする先にいたのは、朝の少女こと術師のリゼット=ロローだった。
その言葉の『誰かさん』が誰なのか、思い当たる人物が刹那には一人いた。
嫌な予感がし、後ずさる刹那の足元から電気の様なものが這い上がり、その身体を縛り付けた。
「なっ・・・!!!?」
「今度は逃がさないわよ!」
刹那の身体を縛るそれこそが、かつての英雄達の力ーーー錬成。
しかし錬成に対して何の対抗手段も用いない一般人にとってこれは危機的状況でしかない。
これから発する言葉を間違えれば、最悪死ぬ。そう思うには十分だった。
「あの時、逃げた事は・・・本当に申し訳ありませんでした」
「あら、素直なのね。そういう所は人として評価するわ。だけどね、術師としては失格よ。そんな情けない姿を一般人に見せて、術師としてのプライドはないの?」
「ですから俺は・・・術師ではーーー」
「まだそれを言うの? ニブルヘンリ、あれを」
リゼットの後方から頬のやつれた長身の男が現れ、男の持つスーツケースから赤紫色の綺麗な水晶玉とそれを乗せる台座を取り出した。
「人類国家人種保護法第3条、【アルファはアルファたる自覚を保ち、オーディナルとの過度な接触を禁ずる】。貴方はこの規則に反している。よって貴方を防衛機構に連行するわ」
「だから規則も何も、俺は術師じゃない!!!」
「ふふん。その嘘もこの翡翠晶の前では無意味よ。さぁニブルヘンリ、あの嘘吐きの化けの皮を剥がしなさい」
「御意に」
ニブルヘンリが水晶玉を台座に乗せて、刹那の目の前まで運んできた。
そしてその水晶玉を縛られている刹那の額に軽く押し当てた。
「ーーーこれで貴方が嘘吐きという事は証明されたわ。さぁ大人しく私たちに付いて」
「あの、お嬢」
「何よニブルヘンリ、いいからそいつを連れて」
「それが、反応していません」
「そんなわけッーーーー!?」
リゼットは慌てた様子で二人の側に駆け寄り、水晶玉の中をじっと覗き込んだ。
「う、嘘・・・」
リゼットは本当に信じられないといった表情で固まってしまっていた。
「こうなってはお嬢をイージスに連行しませんと、俺の首が飛びかねません。お嬢、大人しくお縄についてください」
「ちょっ!!? 私を連行なんかしたらその首私が飛ばすわよ!!! きっと術師としての力が未熟過ぎるのよ! もっと色んな所に当てて見ないと」
焦った様子で手から足から背中からと刹那の身体を2周3周してもその水晶玉は何の反応も見せなかった。
「なんでよ・・・」
「なんで、というよりお嬢はいったいどうやってこの方を術師と判断したのですか?」
「そんなの・・・分かったんだから仕方ないじゃない・・・!」
「まさか心力の感知もなく、本当にただの感だったのですか?!」
リゼットは小さく頷いた。
「あちゃー・・・いつかやるとは思っていましたが、これは謝って済む問題でもないでしょうね」
「だってだって・・・!」
そう言いながら涙ぐむリゼット。
それこそ聞いていた術師像からかけ離れたものだった。
高慢で我儘で思い通りにならなければ一般人なんて虐殺するような冷徹な人種、それが刹那や多くの一般人にとっての術師に対する認識だった。
そんな術師が自分達と変わらない、ただの子供のように泣く姿に周囲の人々は異様さを感じていた。
刹那がその事で呆気に取られているとリゼットが縋るように声を掛けてきた。
「貴方は術師なんでしょ? そうなんでしょ? そうで無ければおかしいの! そうでないならこの気持ちは一体なんなの!? 貴方を一目見てから貴方の存在が気になって気になって仕方が無くて、なによりそんな貴方がここにいる事の違和感が拭えない! どうして貴方はここにいるの!? どうして貴方は一般人の振りなんてしているの!!? お願いだから私に教えてよ!!!」
「・・・あんたの言っている意味が分からない。俺がここにいるのは俺が一般人だからだ。俺はあんた達と違って特別じゃない。だからここにいる。それが真実だ」
「そんな・・・嘘よ、嘘よ・・・!?」
リゼットは膝を落とした。
それと同時に刹那の拘束が解かれる。
その事に胸を撫で下ろしたのも束の間、刹那はリゼットに正面から勢いよく抱きしめられ、尻餅をついた。
「え、な・・・な???」
刹那が状況を飲み込めずにあたふたしていると、次の瞬間、刹那はリゼットと接吻を交わしていた。
「ーーーーーーーーーーーんッ??!?!!???!」
朝のトラブルも収まり予定通り入学式が始まっていた。そして今現在あの時術師に絡まれていた校長が晴れやかな顔で式辞を読んでいる所だった。ついでに気付けば空も晴れていた。
だがしかし、トラブルが収まったといっても周りはまだその事に関してざわざわしているようだった。
それも当然の反応だ。
多くの一般人にとって術師は滅多に御目にかかれない人種だからだ。
それが学校を間違えるという珍事を起こしたのだ。平和な世界でこれ以上の事件もそうはない。
「ーーー以上を持ちまして入学式を閉会致します」
このまま何事もなく入学式が終える。そう誰もが思っていた。
しかし、そのアナウンスの終わりとともに静まり返る講堂に女性の声が響いた。
「見つけたわよ! そこの誰かさん!」
その声のする先にいたのは、朝の少女こと術師のリゼット=ロローだった。
その言葉の『誰かさん』が誰なのか、思い当たる人物が刹那には一人いた。
嫌な予感がし、後ずさる刹那の足元から電気の様なものが這い上がり、その身体を縛り付けた。
「なっ・・・!!!?」
「今度は逃がさないわよ!」
刹那の身体を縛るそれこそが、かつての英雄達の力ーーー錬成。
しかし錬成に対して何の対抗手段も用いない一般人にとってこれは危機的状況でしかない。
これから発する言葉を間違えれば、最悪死ぬ。そう思うには十分だった。
「あの時、逃げた事は・・・本当に申し訳ありませんでした」
「あら、素直なのね。そういう所は人として評価するわ。だけどね、術師としては失格よ。そんな情けない姿を一般人に見せて、術師としてのプライドはないの?」
「ですから俺は・・・術師ではーーー」
「まだそれを言うの? ニブルヘンリ、あれを」
リゼットの後方から頬のやつれた長身の男が現れ、男の持つスーツケースから赤紫色の綺麗な水晶玉とそれを乗せる台座を取り出した。
「人類国家人種保護法第3条、【アルファはアルファたる自覚を保ち、オーディナルとの過度な接触を禁ずる】。貴方はこの規則に反している。よって貴方を防衛機構に連行するわ」
「だから規則も何も、俺は術師じゃない!!!」
「ふふん。その嘘もこの翡翠晶の前では無意味よ。さぁニブルヘンリ、あの嘘吐きの化けの皮を剥がしなさい」
「御意に」
ニブルヘンリが水晶玉を台座に乗せて、刹那の目の前まで運んできた。
そしてその水晶玉を縛られている刹那の額に軽く押し当てた。
「ーーーこれで貴方が嘘吐きという事は証明されたわ。さぁ大人しく私たちに付いて」
「あの、お嬢」
「何よニブルヘンリ、いいからそいつを連れて」
「それが、反応していません」
「そんなわけッーーーー!?」
リゼットは慌てた様子で二人の側に駆け寄り、水晶玉の中をじっと覗き込んだ。
「う、嘘・・・」
リゼットは本当に信じられないといった表情で固まってしまっていた。
「こうなってはお嬢をイージスに連行しませんと、俺の首が飛びかねません。お嬢、大人しくお縄についてください」
「ちょっ!!? 私を連行なんかしたらその首私が飛ばすわよ!!! きっと術師としての力が未熟過ぎるのよ! もっと色んな所に当てて見ないと」
焦った様子で手から足から背中からと刹那の身体を2周3周してもその水晶玉は何の反応も見せなかった。
「なんでよ・・・」
「なんで、というよりお嬢はいったいどうやってこの方を術師と判断したのですか?」
「そんなの・・・分かったんだから仕方ないじゃない・・・!」
「まさか心力の感知もなく、本当にただの感だったのですか?!」
リゼットは小さく頷いた。
「あちゃー・・・いつかやるとは思っていましたが、これは謝って済む問題でもないでしょうね」
「だってだって・・・!」
そう言いながら涙ぐむリゼット。
それこそ聞いていた術師像からかけ離れたものだった。
高慢で我儘で思い通りにならなければ一般人なんて虐殺するような冷徹な人種、それが刹那や多くの一般人にとっての術師に対する認識だった。
そんな術師が自分達と変わらない、ただの子供のように泣く姿に周囲の人々は異様さを感じていた。
刹那がその事で呆気に取られているとリゼットが縋るように声を掛けてきた。
「貴方は術師なんでしょ? そうなんでしょ? そうで無ければおかしいの! そうでないならこの気持ちは一体なんなの!? 貴方を一目見てから貴方の存在が気になって気になって仕方が無くて、なによりそんな貴方がここにいる事の違和感が拭えない! どうして貴方はここにいるの!? どうして貴方は一般人の振りなんてしているの!!? お願いだから私に教えてよ!!!」
「・・・あんたの言っている意味が分からない。俺がここにいるのは俺が一般人だからだ。俺はあんた達と違って特別じゃない。だからここにいる。それが真実だ」
「そんな・・・嘘よ、嘘よ・・・!?」
リゼットは膝を落とした。
それと同時に刹那の拘束が解かれる。
その事に胸を撫で下ろしたのも束の間、刹那はリゼットに正面から勢いよく抱きしめられ、尻餅をついた。
「え、な・・・な???」
刹那が状況を飲み込めずにあたふたしていると、次の瞬間、刹那はリゼットと接吻を交わしていた。
「ーーーーーーーーーーーんッ??!?!!???!」
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