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26 任命
しおりを挟む「ーーーーーやっと起きたみたいだな」
「ええ。何だかんだあって既にひと月近く会っていなかったみたいだし、"久しぶり"でいいのかしらね」
医師からの了承も得て、自由に出歩く許可が父から降りたのは私が目覚めてから七日後の事だった。その間、お母様とは気まずい時間を共有し、その事とは別に何故かお兄様に手厚く甘やかされ過ごしていた。
そして今、快復した私は因縁の相手ともなる"星月"の攻略キャラ、ダークスと再会していた。
「それにしてもーーーーーお父様! ルーチェをそのように小脇に抱えるなどと、いくら子供とはいえレディーに対して失礼ですわよ!」
「あ、そ、そうだな……」
お父様は「すまなかった」と言い、丁寧にルーチェを下に降ろした。
快復したとは言え病み上がりの娘を気遣い、お父様は執事長のポールと共に私の私室まで彼らを連れてきてくれていた。
その理由はもちろん明白だ。
「一応確認しておくけど、決闘の勝者は私。それに異論はないわね」
「……あぁ」
ダークスは少し不満そうな表情を浮かべたが、騒ぎ立てる事もなく、すんなり負けを認めた。
「なら、残る話は決闘前にした約束だけど、覚えているかしら?」
「負けた方が勝った方の言うことを『なんでも一つ聞く』ってやつだろ……ていうかさ…………俺様もいい加減降ろせよ⁉︎」
執事長ポールに抱えられていたダークスが騒ぎ、ポールは静かにダークスを下に降ろした。
「ったく……なんなんだ! 俺様は神子だぞ神子! もっと丁寧に扱えっての!」
「……そう、聞いたのね。でも関係ないわ、そんなこと」
神子の存在価値は現状では計り知れない。それは神子という存在が余りにも希少で、最後に神子が確認されたのが300年も前になるからだ。ようは300年振りに現れた神子がどの様な扱いを受けるのか、それが想像の域を出ないなら御の字だけれど……最悪、国と教会が争う様な事態にさえなりかねない。
ただ彼の性格と魔力の低さからゲーム上では大した信仰心が集まらず、むしろ教会側ですら一部彼をお荷物の様に思い蔑ろにしていたらしい。
けれど彼女がいる今ならきっと絶大な影響力を持つ事になるでしょう。
ダークスに足りない魔力量を補い、彼の支えとなるもう一人の神子、ルーチェ。
そんな彼女が"星月"の本編とは違い、このままダークスの隣に居続けられるならーーーーーそのもしもを実現出来たなら。
「ーーーーーだってアンタ達をこれから、私の世話係に任命するんだから」
【大魔導士】ダークスの妹、ルーチェの死亡を阻止する事が、きっとティアラ=ヴィドフニルに訪れる最悪な結末を回避する、その足掛かりになるはずよ。
だから私が彼女をーーーーールーチェをこの残酷な運命から護ってみせるわ!
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