42 / 49
二章
42 大切な人②
しおりを挟む
これは私がエーデルトラウト=ラウグスと呼ばれる以前の、ただのエーデルトラウトであった頃のお話。
私の母は異国より長き旅を経て、ここラウグス王国へとやって来た魔導士、その名はシェルシア。
母は古くより魔法大国と呼ばれ栄えてきたこの国に、魔導の真髄の手掛かりを求めていたそうだ。
けれど、その国に魔導士は多くとも、誰も彼もが彼女の足元にも及ばない拙い者たちばかりだったと言う。
それは当時の聖女でさえ同様に。
それほど私の母は魔導士として優秀だったのだ。
私の父である現国王、ルードルフ=ラウグスはそんな彼女に興味を抱き、城に招いたという。
その際に父と母は一夜限りの契りを交わしたという。しかし、それは王家により秘匿とされた。
そののち母は私を身篭り、身重な状態で有りながらも誰にも頼らずに母は私を産み、そして女で一つで立派に私を育ててくれた。私にとって母と過ごしてきた時間こそ、何ものにも変え難い至福の時であった。
しかし私が六つになろうという頃に、突然王家の遣いと名乗る者たちが我が家へと立ち入り、私と母は強制的に王城へと連れ去られ、気付けば母と離れ離れにされ、私は身も知らぬ男の前へと突き出されていた。
当時の私はその男が父であるなど思いもよらず、ただただ恐々としていた。
「ーーーーーシェルシアの子よ。名をなんという?」
「、、、、、エーデルトラウト」
「良き名だ。エーデルトラウトよ。其方を今日よりこのルードルフ=ラウグスの息子とし王家に招き入れよう」
男はにこやかに手を差し伸べたが以前私の恐怖は拭えず、私は涙を零し、懇願するようにこう言葉を呟いていた。
「か、母様、、、母様はどこ、、、!?母様、、、母様、、、!!?」
その様子に男は戸惑い、私を連行してきた兵に怒りの目を向け、このように叫んだ。
「ーーーーーシェルシアをどこへやった!!!」
兵士はびくりとし、細々と話始めた。
「、、、このガ、、、あ、いえ、、、、殿下と連れ添われていましたご婦人は、マリエナ教大司祭ホーキス様がご歓待なさると仰られましたので、、、、、道中ホーキス様に、、、、、」
「、、、、、なにを、、、なにを勝手な真似をッ!!?すぐにシェルシアを取り戻して来い!!!この馬鹿タレ共が!!!」
「「はい!!!」」
兵士達は慌てて部屋を去ると、ルードルフ王は複数回深呼吸をし息を整え、私に向かいこのように言った。
「、、、必ず、、、必ず助ける!君の大切な人を必ず、、、、、!」
震える声で、今にも泣き出しそうに。
私はその瞬間この人に親近感が湧いたのだろう。この人は怖い人じゃない。そう感じた。
「母様は強い、です、、、、、誰よりも強くて、誰よりも凄いです。母様はいつも言ってました、、、、、母様は王様にも勝った事があるって。だから離れ離れは寂しいけど、僕は大丈夫、、、です。だからあなたも、、、泣かないで」
「ーーーーーあぁ、そうだな」
私の母は異国より長き旅を経て、ここラウグス王国へとやって来た魔導士、その名はシェルシア。
母は古くより魔法大国と呼ばれ栄えてきたこの国に、魔導の真髄の手掛かりを求めていたそうだ。
けれど、その国に魔導士は多くとも、誰も彼もが彼女の足元にも及ばない拙い者たちばかりだったと言う。
それは当時の聖女でさえ同様に。
それほど私の母は魔導士として優秀だったのだ。
私の父である現国王、ルードルフ=ラウグスはそんな彼女に興味を抱き、城に招いたという。
その際に父と母は一夜限りの契りを交わしたという。しかし、それは王家により秘匿とされた。
そののち母は私を身篭り、身重な状態で有りながらも誰にも頼らずに母は私を産み、そして女で一つで立派に私を育ててくれた。私にとって母と過ごしてきた時間こそ、何ものにも変え難い至福の時であった。
しかし私が六つになろうという頃に、突然王家の遣いと名乗る者たちが我が家へと立ち入り、私と母は強制的に王城へと連れ去られ、気付けば母と離れ離れにされ、私は身も知らぬ男の前へと突き出されていた。
当時の私はその男が父であるなど思いもよらず、ただただ恐々としていた。
「ーーーーーシェルシアの子よ。名をなんという?」
「、、、、、エーデルトラウト」
「良き名だ。エーデルトラウトよ。其方を今日よりこのルードルフ=ラウグスの息子とし王家に招き入れよう」
男はにこやかに手を差し伸べたが以前私の恐怖は拭えず、私は涙を零し、懇願するようにこう言葉を呟いていた。
「か、母様、、、母様はどこ、、、!?母様、、、母様、、、!!?」
その様子に男は戸惑い、私を連行してきた兵に怒りの目を向け、このように叫んだ。
「ーーーーーシェルシアをどこへやった!!!」
兵士はびくりとし、細々と話始めた。
「、、、このガ、、、あ、いえ、、、、殿下と連れ添われていましたご婦人は、マリエナ教大司祭ホーキス様がご歓待なさると仰られましたので、、、、、道中ホーキス様に、、、、、」
「、、、、、なにを、、、なにを勝手な真似をッ!!?すぐにシェルシアを取り戻して来い!!!この馬鹿タレ共が!!!」
「「はい!!!」」
兵士達は慌てて部屋を去ると、ルードルフ王は複数回深呼吸をし息を整え、私に向かいこのように言った。
「、、、必ず、、、必ず助ける!君の大切な人を必ず、、、、、!」
震える声で、今にも泣き出しそうに。
私はその瞬間この人に親近感が湧いたのだろう。この人は怖い人じゃない。そう感じた。
「母様は強い、です、、、、、誰よりも強くて、誰よりも凄いです。母様はいつも言ってました、、、、、母様は王様にも勝った事があるって。だから離れ離れは寂しいけど、僕は大丈夫、、、です。だからあなたも、、、泣かないで」
「ーーーーーあぁ、そうだな」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
出勤したら解雇と言われました -宝石工房から独立します-
はまち
恋愛
出勤したら代替わりをした親方に解雇と言われた宝石加工職人のミカエラは独り立ちを選んだ。
次こそ自分のペースで好きなことをしてお金を稼ぐ。
労働には正当な報酬を休暇を!!!低賃金では二度と働かない!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる