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一章:転生乙女
07 至福でしたから
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「ルクス君、こちらですよ」
「待って、お姉ちゃん!」
私の弟、ルクス君が6歳になり、私が14歳となった日常の一場面。私は遊び盛りのルクス君と共に村の広場にやってきていました。
ルクス君はとても元気に育っています。
それに近頃ではそんなルクス君に沢山のお友達ができました。お姉ちゃんとしてとても喜ばしい事です。
村の広場は昼間、多くの人が集まります。
家事の合間に手の空いた主婦や休憩と言いつつ気の合う人々と談笑しあう大人達、そして村の子供達です。
私はあまり利用しませんでしたが、この和やかな雰囲気には居心地の良さを感じてしまいますね。
麗らかな日和に賑やかな笑い声はどこか懐かしくも思います。
「ーーー捕まえた!」
そう言ってルクス君が必死になって私にしがみつきました。
鬼ごっこ中ですので、本来はタッチをしたらすぐに離れるべきなのですが、この必死さを前にしては何も言うことはありませんね。
それにこうしていると、ルクス君の成長がよく分かります。
走る速さ、しがみつく力の強さ、そして私のおへそ辺りに来る頭。
「、、、本当に大きくなりましたね」
撫でるのにはちょうど良い高さにあるため、私はよく無意識のうちにルクス君の頭を撫でています。それは今も。
すると、お日様のようにルクス君が微笑みました。
懐かしい、、、?
いいえ、私は知っているのです。
これが幸せであることを。
「ーーーあ、ルクスまた甘えてる!!!」
「え、あ、、、ち、違うよ!!?」
お友達にそう揶揄われたルクス君は慌てて私から離れました。
残念です、、、が、お友達とのお付き合いも大事ですし、彼らがそういうお年頃だという事も理解している上、これは仕方のないことです。
私がここで大人な対応をみせなくては。
、、、と言っても、もう少しばかり撫でていたかったですね、、、何か代わりになるものはないでしょうか、、、
、、、、、
、、、あっ
「ーーーそれではククリ君も撫でてあげましょうか?」
「「「ーーーーーっはぁ!!!?」」」
そう驚きの声を上げるイミノ=フゥシュリーさんの御長男こと、ククリ君。と、周りの子供達。
、、、良い案だと思ったのですが、、、予想していた反応とは違いますね。なぜでしょうか?
「な、なんで俺があんたに撫でられなきゃいけないんだよ!!?」
「、、、?強制ではありませんよ?ただククリ君がルクス君を羨ましそうに見ていらしたので、もしかしたら撫でて欲しかったのかなと思いまして、そう提案してみたのです」
「羨ましそうになんかしてねーよ!!?」
「そうでしたか、、、どうやら私の思い違いのようでしたね。すみません」
お互いに利のある良い提案だと思ったのですが、それでは仕方ありませんね。しかし、そうは言っても諦めきれませんね。どうにかならないものでしょうか?
そう私がどうにか至福の時を得ようと苦悩していると、一人の女の子が私に声をかけてきました。
「ーーーあ、あの!!!わ、わたしの頭を撫でてください!!!」
「よろしいのですか?」
その女の子は顔を赤らめながらコクコクと頷きました。
なんと、、、撫でられる側から来てくださるとは、、、これは期待に応えられるよう精一杯努めませんと。
私はその子の身体に手を回し、ぎゅっと優しく抱き、そして頭を撫でました。
精一杯っといっても、私が彼女にしてあげられる事なんて大したことではないでしょう。
父のように、母のように、家族のように、、、私が安らげる場所があるように、この子にもあるのでしょう、心から安心できる拠り所が。
だからこそ今は、私の出来る限りの事を致しましょう。
「ほぇ、、、っ!?あ、あの、、、あのあの、、、!?」
「そういえば、お名前をお聞きしていませんでしたね。私はルクス君のお姉ちゃんで、カヤ=エリュテイアと申します。あなたのお名前は?」
「、、、シュナ、、、って言います」
「可愛らしい響きですね。私が見るにどうやらあなたはルクス君と同い年のようですね。これからもルクス君と仲良くしてくださると、姉として嬉しいです」
「は、はいぃ、、、」
そう返事を残すと、シュナさんから力が抜けてぐだっとこちらに身体が倒れてきました。
「シュナさん、、、?」
身体を起こし、シュナさんの様子を見ると、顔を真っ赤にして目をぐるぐると回していました。
、、、、、、、、、、まさか風邪!!!?このように言っては悪いですが、文明レベルの低い村ではただの風邪だって死に繋がりかねません!?
私は慌ててシュナさんを抱えて、ルクス君と共に村のお医者さんへと走っていきました。
「いいなぁ、、、」
「俺も撫でてもらえば良かったなぁ」
「明日頼んだら撫でてくれねーかな、、、」
その際にこのような言葉が聴こえたような気もしましたが、私はその言葉に反応しているほど余裕はありませんでした。
そしてシュナさんをお医者さんに連れていった結果を言いますと、、、
「ーーーのぼせているだけのようだね。しばらく安静にしていれば何の問題もないだろう」
とのことでした。
「待って、お姉ちゃん!」
私の弟、ルクス君が6歳になり、私が14歳となった日常の一場面。私は遊び盛りのルクス君と共に村の広場にやってきていました。
ルクス君はとても元気に育っています。
それに近頃ではそんなルクス君に沢山のお友達ができました。お姉ちゃんとしてとても喜ばしい事です。
村の広場は昼間、多くの人が集まります。
家事の合間に手の空いた主婦や休憩と言いつつ気の合う人々と談笑しあう大人達、そして村の子供達です。
私はあまり利用しませんでしたが、この和やかな雰囲気には居心地の良さを感じてしまいますね。
麗らかな日和に賑やかな笑い声はどこか懐かしくも思います。
「ーーー捕まえた!」
そう言ってルクス君が必死になって私にしがみつきました。
鬼ごっこ中ですので、本来はタッチをしたらすぐに離れるべきなのですが、この必死さを前にしては何も言うことはありませんね。
それにこうしていると、ルクス君の成長がよく分かります。
走る速さ、しがみつく力の強さ、そして私のおへそ辺りに来る頭。
「、、、本当に大きくなりましたね」
撫でるのにはちょうど良い高さにあるため、私はよく無意識のうちにルクス君の頭を撫でています。それは今も。
すると、お日様のようにルクス君が微笑みました。
懐かしい、、、?
いいえ、私は知っているのです。
これが幸せであることを。
「ーーーあ、ルクスまた甘えてる!!!」
「え、あ、、、ち、違うよ!!?」
お友達にそう揶揄われたルクス君は慌てて私から離れました。
残念です、、、が、お友達とのお付き合いも大事ですし、彼らがそういうお年頃だという事も理解している上、これは仕方のないことです。
私がここで大人な対応をみせなくては。
、、、と言っても、もう少しばかり撫でていたかったですね、、、何か代わりになるものはないでしょうか、、、
、、、、、
、、、あっ
「ーーーそれではククリ君も撫でてあげましょうか?」
「「「ーーーーーっはぁ!!!?」」」
そう驚きの声を上げるイミノ=フゥシュリーさんの御長男こと、ククリ君。と、周りの子供達。
、、、良い案だと思ったのですが、、、予想していた反応とは違いますね。なぜでしょうか?
「な、なんで俺があんたに撫でられなきゃいけないんだよ!!?」
「、、、?強制ではありませんよ?ただククリ君がルクス君を羨ましそうに見ていらしたので、もしかしたら撫でて欲しかったのかなと思いまして、そう提案してみたのです」
「羨ましそうになんかしてねーよ!!?」
「そうでしたか、、、どうやら私の思い違いのようでしたね。すみません」
お互いに利のある良い提案だと思ったのですが、それでは仕方ありませんね。しかし、そうは言っても諦めきれませんね。どうにかならないものでしょうか?
そう私がどうにか至福の時を得ようと苦悩していると、一人の女の子が私に声をかけてきました。
「ーーーあ、あの!!!わ、わたしの頭を撫でてください!!!」
「よろしいのですか?」
その女の子は顔を赤らめながらコクコクと頷きました。
なんと、、、撫でられる側から来てくださるとは、、、これは期待に応えられるよう精一杯努めませんと。
私はその子の身体に手を回し、ぎゅっと優しく抱き、そして頭を撫でました。
精一杯っといっても、私が彼女にしてあげられる事なんて大したことではないでしょう。
父のように、母のように、家族のように、、、私が安らげる場所があるように、この子にもあるのでしょう、心から安心できる拠り所が。
だからこそ今は、私の出来る限りの事を致しましょう。
「ほぇ、、、っ!?あ、あの、、、あのあの、、、!?」
「そういえば、お名前をお聞きしていませんでしたね。私はルクス君のお姉ちゃんで、カヤ=エリュテイアと申します。あなたのお名前は?」
「、、、シュナ、、、って言います」
「可愛らしい響きですね。私が見るにどうやらあなたはルクス君と同い年のようですね。これからもルクス君と仲良くしてくださると、姉として嬉しいです」
「は、はいぃ、、、」
そう返事を残すと、シュナさんから力が抜けてぐだっとこちらに身体が倒れてきました。
「シュナさん、、、?」
身体を起こし、シュナさんの様子を見ると、顔を真っ赤にして目をぐるぐると回していました。
、、、、、、、、、、まさか風邪!!!?このように言っては悪いですが、文明レベルの低い村ではただの風邪だって死に繋がりかねません!?
私は慌ててシュナさんを抱えて、ルクス君と共に村のお医者さんへと走っていきました。
「いいなぁ、、、」
「俺も撫でてもらえば良かったなぁ」
「明日頼んだら撫でてくれねーかな、、、」
その際にこのような言葉が聴こえたような気もしましたが、私はその言葉に反応しているほど余裕はありませんでした。
そしてシュナさんをお医者さんに連れていった結果を言いますと、、、
「ーーーのぼせているだけのようだね。しばらく安静にしていれば何の問題もないだろう」
とのことでした。
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