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緊急事態

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翌朝まだ日の出前のことだった。
心地良い眠りから全身がゾワっと悪寒がして目を覚ました。
嫌な感じがする、と起き上がるとキーンと耳鳴りがする。


この不快感はなんだろう。
テントから出ようとベッドから降りると外からルドーさんの声がした。


「全員起きろ!魔物が来る!」

普段からは想像出来ないほどの大きな声で、切羽詰まった声色だった。

テントから出ると外にはルドーさんが居るだけで魔物の姿はない。しかし嫌な耳鳴りと悪寒は治らず、手が震える。

「アンナ!すぐに退避し、防御壁の中に」

「あ…あの…」

声まで震え、言葉が出でこず自分が恐怖を感じていることに気付いた。

「魔物の魔素を気配として感じとれるのか…大丈夫だ。他の治癒師と共に退避し安全な所で防御壁の中にいて欲しい」

そんなやり取りをしている間に次々と兵が起床し戦闘準備を始め、外がどんどん騒がしくなる。

「ルドー隊長!」
部下の1人が指示を仰にきていた。

「治癒師を安全な所へ。4番隊を護衛に付け防御壁を。その他は各部隊長の指示通りに…数が多い、それを引き連れている魔物は俺がやる」

「かしこまりました!」

「…アンナも早く移動してくれ。大丈夫だ、必ず倒すし守るから。それとこれを。納品していない俺が預かっていたポーションが入っている。足りなくなったときは使え。」

マジックバッグを受け取り肩にかけた。
早く動かなければ邪魔になる。
分かっているのに体が言うことをきかない。
すると後ろから4番隊の人が来て私の手を引いた。

「怪我…しないでくださいね!」

「あぁ、当たり前だ」

ルドーさんは答えるとすぐに森の奥に向かって飛んでいった

不安と恐怖で体が震えて手を引いてもらえなければ動けない自分が情けない。

「少し急ぎます。走れますか?」

足まで震えている私を見て、返事を待たずに抱き抱えられた。

「失礼します。」

人を抱えているのに私が1人で走るよりもずっと速く走れることに驚いているとあっという間に他の治癒師と合流できた。

「申し訳ありません、ありがとうございました…これ、体力回復ポーションです。使ってください」

「いえ、これくらいなんてことないです。訓練で担いでいる男共に比べたらアンナ様はウサギを持って走ったかと思うくらい小さくて軽いですから」

私以外の人は慣れたように防御壁を張ったり、準備を始めた。
治癒師2人からここで待機するように言わる。

「4番隊は怪我をした人をここまで連れてくるのが仕事だ。
そしてそれを治すのが治癒師の仕事。でもアンナ様は治癒師でもないし…ここではポーションも作れない。
あぁ、ポーション配るくらいはできますよね?この中に入ってるので僕たちが怪我を治した人に飲ませてください。」

少し嫌味のこもった言い方だが事実だ。
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