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意外と楽しいポーション作り 2

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「最後にこれに治癒魔法を付与したものと合わせて…」

「もう少し…治癒魔法の練習が必要だな」

「んー。上級が難しい理由はここですね。そもそも瀕死からでも回復させれるくらいの治癒魔法が使えないと失敗しちゃう…」

「そうだな、基礎はできているし魔力もある。あとは精度。アンナは感覚派だから回数をこなして覚える方が早いかもしれないね。」

「こう…なんて言うかジワーって集まってきたらギュッ!って丸める感じでそれをぴーって糸みたいに編んで手に集めた魔力をぐるぐるーって形成したものを込める…ってことで合ってます?」

「わからない…。糸みたいに編むというのだけは何となく共感できるが。いいか、私の魔力をアンナに流して付与するから覚えて」

そういうとルドーさんは私の後ろに立つと私の手のひらを上に向けると上から握り、手を繋いで魔力を少しずつ入れてくる。

「私の魔力が回路に入ったのは分かるか?」

「っ!はい。」

「ではそのまま練るからそれを覚えて」

「ゆっくり…お願いします」

耳元で話すルドーさんの声が頭に響く
少し低くて優しい声だ

温かくて優しい魔力を追いかけて治癒魔法を完成させていく


すると私の体は黄色から金…白い光に包まれた。

「アンナ…上手だ。これが治癒魔法の最高到達点だ、患者の状態にもよるがこれをかけると瀕死の状態でも回復を見込めるところまで治癒できる。」

「は…いっ…」

「このままポーションへ付与しようか」

繊細な魔力操作に頭がパンクしそうだし、手は震えている。
ルドーさんが手を添えてくれなければ上手く付与できなかった。

「よし。完璧だ、お疲れ様」

「はぁっ…ふぅー…ぁっ!」

額には汗が滲み、足元はフラフラで力が抜けてよろけてしまい後ろにいたルドーさんにもたれかかってしまった。

「すみません…」

「大丈夫か?魔力は…大丈夫そうだな。操作に体力が持っていかれてるな。危ないから1人で練習はしないように」

「はい…。ちょっと休めば大丈夫そうなので忘れない内にもう一度するので見てもらってもいいですか?」

「私は良いが、無理はするな」

「大丈夫です。」

ルドーさんは当たり前かのように私を抱き上げ、ソファーに寝かせてくれた。
甘いものを持ってくると言って出て行き、部屋で1人イメージのおさらいとをしようと目を閉じた。


イメトレを…と思い出すがそれはルドーさんの体温や魔力…そして心地の良い声。
いや、ちがう!そこじゃない!
自分にツッコミを入れたが集中できず、顔が赤くなるだけだった。



「果物と焼き菓子を持ってきたが食べるか?」

戻ってきたルドーさんに体を起こされ、ソファーに座る
なんとなく直視できずに皿の上にあるクッキーを見ていた。

「そんなに狙いを定めなくても獲らないよ。それより、顔が赤いが…熱か?」

「そういうつもりでは…っ!いえ、体調はもう大丈夫です!熱…きっと知恵熱!慣れないことしたから」

「ははっ!知恵熱っ…たしかにな、でも熱には分からない。頭に触れるぞ。」

笑いながらも私を心配し、治癒魔法をかけてくれた。

ただの仮病…というか顔が熱いだけだったので申し訳なく思ったが、少しダルかった体が軽くなり元気になったのでまた練習が再開できそうだ。





お茶とお菓子で休憩したあと、ルドーさんに見守ってもらいながら再挑戦する。

良い感じに魔力操作できている…光が黄色から金色になった。
あともうひと息。
丁寧に魔力を編んでいく…しかし針の穴に糸が通らないというか、同じところから上手く進めない。
息をするのを忘れて突発しようとギュッっと魔力を操作すると目の中にパチパチと光が飛んだ。

「アンナ!ストップ!…力技でなんとかしようとするな。
治癒魔法は魔力を増やしても精度が悪いと効果は上がらないし、無駄になるだけだ。」

「すみません…あとちょっとが抜け出せなくて。」

「力技でカバーできるのは攻撃魔法や防御魔法だ…アンナは脳筋だから攻撃魔法は得意そうだな」

「それ、失礼ですよ」

「騎士としては褒めている。火力は高いに越したことないしな」

「くそー…もう一回!」



再挑戦し、同じところで躓く。
うーん…と唸っているとルドーさんが手を繋ぎお手本を流してくれる。するとスルスルと完成し光は白くなり次のポーションが完成してしまった。

やっぱりルドーさんは凄い。

自分の中でも難しいのに、人の回路を使ってしかも完成ではなく道しるべのための通り道を作り出すのだ。

神技。ルドーさんの頭の中と操作の繊細さを可能にする才能を少し分けて欲しい。

余りある魔力量のおかげで更に続けて練習を繰り返し、すごーーーーーく時間はかかるが1人でもできるようになった。


フラフラとソファーに座り込み今日はもう無理だ。と目を閉じた

「お疲れ様。まさか1日で出来るとは思わなかったよ」

「これ…できてる内に入りますか?」

「時間がかかったのは確かだが1人でできたのも事実だ。」

「疲れました…。さすがに魔力が減った感じも分かります。」

「なるほど…、ここまで使って実感するのか。」

「今って何%くらい残っていますか?」

「んー、93%くらいかな?」

「え?ほとんど減ってない!どういうことです?こんなに疲れたのに」

「疲れを感じているのは魔力ではなく体力の問題だろう。普段でも98%以上キープしているし…」


「私って凄いんですね。治癒魔法師にもなろうかな」

「まぁ、なれるだろうな。ポーションでは少量だが実際に人にかけるとなるともう少し魔力も消費する。アンナが治癒魔法師になると言えば騎士団専属になり、遠征にも駆り出されるが皆んな喜ぶだろうな。それにこの上級ポーションを作ったのがアンナだと知られると確実に呼ばれるぞ。」

「あー。そうか、危ないのは怖いしな…。ルドーさんも喜んでくれますか?」

「それは…何とも言えない。騎士団長としてはもちろん嬉しいが、個人的には危険な場所にアンナを連れて行くのは反対だ。」

「でも私、攻撃や防御魔法覚えれば強いですよね?」

「単純な魔力量だけならな。でも魔物討伐や戦場はそれだけで勝てるほど甘くない。判断力や洞察力、恐怖に勝てないと使いものにならないからな。全て満たせてそこから魔法や剣の技術が合わさって戦力と呼べる。」

「そうですよね…舐めたこと言ってすみません。」

「いい。そうやって戦わず、皆が平和に暮らすために私たちがいる。アンナは守られる側の人間だ。強くならなくていい。」

「もし…治癒魔法師として帯同したら守ってくれますか?」

「もちろんだ。」

「ルドーさんが守ってくれるなら鬼に金棒!安心して遠征に行けますね!」

「今回はポーションと在籍している治癒魔法師で十分だ。
今回作った上級ポーションはどうする?
アンナが作ったと納めるか?」

「いいえ、ルドーさんが作ったことにしておいてください。私は中級まで納める契約をすでにしているので…それに、軽く言いましたが血を見るのも苦手なので治癒魔法師には向いてないです。」

「治癒魔法師になれば血液は普通だしグロい光景も覚悟していないとなれない職だ。無理になる必要はない。このポーションだけでも大助かりだから」

「紙で切った傷がギリギリ直視できるレベルなので諦めます」

「本当にダメなんだな。…アンナは平民ではなく、貴族だったんだろうな。」

「さぁ?…お、覚えていないのですがそんなお金持ちではなかったような…。普通の家庭で育った気がします。」

「マナーも教養もあった。語学や魔法を覚えるのも早かったしな。あんな高度な算術ができる平民はまず居ない」



高度な算術…簡単な暗算と掛け算や割り算。
前世では小学校レベルが出来ただけで、レストランではめちゃくちゃ褒められた。
そして経理をしていてたのでその知識を生かして店の帳簿管理や在庫管理のために導入したシステムをスタッフに説明すると天才だと褒め称えられたのだ。

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