殉愛の狂ゲーマー 〜俺は終末世界で推しキャラの最強を証明する〜

一味違う一味

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◆デパート最上階・映画館  ???side








「例のが何か判明した」


「「「は?」」」



 先程の爆発についての話し合いをしに行ったら、どうせ見つからないと切り捨てていたモノが見つかったらしい。

 いや、それは良い話かもしれないけど、それより目先の障害について話そうよ。今を乗り越えないと、その先はないんですよ? それとも、その可能性さんが私達を助けてくれるんですか?

 そんな言葉を吐きそうになったが必死に堪えた。

 もはや私のストレスの許容量は限界に近い。いっそのこと、スッキリするためにこのバカ男も階段から落としてやろうか。

 現在集まっているのは、目の前のバカ男に任命された避難者グループの暫定リーダーだ。総数はバカ男と私を含めて四人、残念ながら私も何の利益もないのに責任だけが増える、このクソみたいな仕事を任せられてしまったのだ。

 理由は、うちの店長とヒス女の関係を報告した功績(?)から信用できると判断されたらしい。やだ、私の自業自得じゃないですか。



「仲いいね、君達」


「そんなこと言ってる場合ですか!?」


「そうです。何の為に私達が集まったと思ってるんですか!」



 どうやら私が心中で一人漫才をやってる間に話し合いは掴み合いに以降する直前のようだった。けど私も他のリーダーに賛成なので止めはしない。むしろ煽りたいくらいだ。



「そうだそうだ、もっと言ったれ!」


「……」



 そうそう、こんな風に……

 あれ、何で皆して私を見てるんだろう? しかも、そんな残念な人を見る目で。って、さっきの言葉は私が口に出してたのか。どおりで私の心情とピッタリ一致してた訳だよ。納得。

 だがしかし、そんなのは知ったことではない。はよ会議を始めろや。

 そんな気持ちを視線に込めてバカを含める男共をにらみつけると慌てた様子でバカが話を再開する。



「ま、まぁ話を聞いてくれ。この話題を最初に持って来たのには理由がある」


「ど、どんなですか?」



 もう一人もコクコクと頷いて話を促した。

 どうやら皆、冷静になってくれたようだ。私のお陰でな。崇めてくれてもいいんですよ?

 ストレス過負荷で色々吹っ切れた私が暴走しかけているとドアが開く音がした。現在場所は映画館の上映室なのでノックしても音が聞こえない、そのため用がある人間は普通に中へ入ってくるのだ。



「おお、丁度来てくれたか。紹介しよう、彼こそが我々の希望にしてだ」


「どーもォ。オレは神と最高の女にに選ばれた男だ。マトンって呼んでくれ」



 バカ男が紹介したのは阿呆っぽい男だった。ガムを噛みながら話す彼は言動の通り軽そうな見た目をしており、猿顔を下卑た表情に歪め、具志堅○高の十倍はあるパーマをフサフサと無駄に揺らしていた。

 類は友を呼ぶって本当なんだな、と呑気な事を考えていると彼等は信じ難い話を始めた。



「それで、頼んでた被害状況はどったった?」


「西の方の一階でガス爆発って何処だな。まァ、特に燃えてねェし場所はここの反対側だ、問題ねェだろ」



 言うまでもなく、この映画館の外は無数の化物に溢れている。だからこそ私達はここへ隠れ潜み、生き延びる手段を模索し続けているのだから。

 あんな爆発があった後だ。さぞかし化物共も慌ただしくしていたと思われる。

 そんな場所を彼はかのように話したのだ。とても信じられる話ではなかった。

 私達の纏め役であるバカ男を除いて。



「はっはっは、信じられないのも無理はない。しかし彼は本当に見てきた事を報告してくれているのだよ。ほら、彼の持っているモノを見たまえ」



 バカがバカな事を言っても面白くないですよ、ただ不快なだけです。

 笑い声に腹を立てたので侮辱の一つでもしてやろうかと思ったが阿呆みたいなアフロが持っているものを見た途端そんな気は失せた。



「ああ、これかァ? に一匹捕まえてきたんだよ」



 それは、私達を恐怖のどん底に突き落とした象徴にして、いずれ成るかもしれない存在、通称『ゾンビ』だった。

 他の化物達もほとんどがゾンビのような見た目をしているにも関わらず、なぜ人間型だけが『ゾンビ』と呼ばれるのか。

 それは、他の化物は始めからだったのに対し、人間型は直前まで共に笑い合っていた人間同類が死後に歩き出し私達を襲うからだ。

 死後『ゾンビ』になるのは絶対ではないとは言え、かなりの確率でなる。私達に死の恐怖だけでなく、死後の恐怖まで与えた恐怖の象徴、それが『ゾンビ』だ。



「お前ら、この化物……『フラジール・ゾンビ』っつうんだけどよォ、コイツ等が普通の人間より遥かに強いのは知ってるよなァ?」



 アェェェ、と叫びながらジタバタ暴れる『フラジール・ゾンビ』(?)を笑顔で押さえつける彼は余裕が伺えた。

 あの化物達が、どんなに小さくとも大の男を軽く投げ飛ばす膂力を持つ事をしる私達は思わず懐疑的な視線を向けるが、振り回した足の一本が床に固定されている筈の座席を蹴り飛ばした事で、その疑惑は晴れる。

 てか、あいつ階段から落としたヒス女じゃん。妙な因縁を感じるんだけど。うわっ、何か白濁液を垂らした。うみかな? 膿だよね? 膿だと言ってよ!

 だって私の足に、ちょっとついちゃったんだもん。この液体がアフロの下半身から生成されたモノだとしたら足を切り落としたくなる。まだゾンビの膿の方がマシだ。



「そんな化物であるコイツをォ、オレは簡単に殺せる」

 

 言葉と共に『フラジール・ゾンビ』の頭を握り潰すアフロ猿、ついでに飛び散る脳髄。だから汁を飛ばすなって言ってんだろ。いや、声には一切だしてないけど。だって怖いし。

 しかし、ここまで力を持っていると証明されてしまえば信じない訳にはいかない。あれ? このアフロが爆発の状況確認をしてて、しかもだったって事は、バカ男さんってバカ男じゃなかったの!? ごめんね、バカ男さん!

 謝るから、そこのアフロに私を守ってもらえるように頼んで!



「オレが魔物モンスターから守ってやる。だが、勿論ただじゃねェ。お前等には、ちょっとした対価を払ってもらう」



 おおっ、そっちから言ってくれるとは有り難い。いいよ、いいよ、ちょっとした対価くらい幾らでも言っちゃって。そこのバカ男に。



「別に構わねェよな? 命より大切なもんなんてねェんだからよ」



 粘着くような視線で私を、私だけを見るアフロは尋常ではないほど気持ち悪い顔をしていた。もはや『フラジール・ゾンビ』と遜色ないほどに。気持ち悪い。

 いや、あの、対価の請求はバカ男にしてほしいんですが……

 ズボンにを張り始めたマトンを見て、私はさっきの液体が膿でないと確信した。

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