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ドラゴン女に相談される
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全身を綺麗に洗い、川遊びを一通り楽しんだ後、僕はドラゴンの擬人化美女の前に座る。
「ドラゴンさん、お待たせ。では話の続きをどうぞ。ちなみに僕を殺すとかはさすがにやめてね。シャルロッテ君から滞在の許可を得たばかりだからね、せめて十数年は生き延びたいところさ」
「シャルロッテ君って……神の名を軽く言うな。しかも許可を得たと? ……やはり人間じゃないようね。
いったいあなたは何者?
ちなみにさっき異質な臭いといったのは体臭の話ではない、魂の在り方が異質だといったのだ。たしかにきつい体臭ではあったが……
それに人間の女は白昼堂々と素っ裸で歩いたりはしない」
ああ、そうか、そうだった。僕は今素っ裸だった。何ていうだっけ、日本人標準の恥じらいのセリフ。アメリカ暮らしが長くて憶えていない。
ええい、ここは昭和の漫画スタイルで。
確かこうだった。右腕で胸を隠し、左手で股を隠すポーズを取る。
「いやーん、ドラゴンさんのエッチ……って、あれ? 君はメスのドラゴンでしょ?
まあ同性同士でも恥じらいはあるし、ジェンダーの定義は最近壊れつつあるようだし、それにしても君は人類の羞恥心に随分とお詳しいようで」
「あなたこそ、神と対等であるかのような言動。いったい何者なの?」
「おっと、そうでした自己紹介がまだだったね。僕は異世界からきたモガミ・ユーギだよ。現在、免停講習中の無害な神様さ」
「へえ、免停講習の意味が分からないけど異世界の神様とは。なるほど、あなたの異質さに納得したわ。私は、ベアトリクス。海のドラゴンロードと呼ばれているわ」
「あはは、ドラゴンロードか。それはすごいや。上位種の上位って感じだね」
「あなたを殺さないとって思ってたんだけど、シャルロッテ様の許可を得たっていうならそうもいかないわね」
「あはは、それはありがたい。せっかくここまで来たんだし、死んだらもったいないからね」
「素直に謝るわ、ごめんなさい。でも、異世界の神様がどうしてここに? 目的はあるのかしら」
「うーん、特にないかな、僕はこの世界に一個の命として平凡に暮らしたいだけだから。
ところで、ベアトリクスくん、君は海のドラゴンロードと言ってたね。ここは森だけど、なんで海のドラゴンが森にいるのかい?」
「……それがねぇ、いいわ、ちょっと相談に乗って頂戴。人間達がね、私の取り合いで喧嘩しちゃったのよ。それでね、もう面倒くさいからしばらく放っておくことにしたのよ――」
ベアトリクスはそのまま自分語りをはじめた。
興味深い話だった。
ベアトリクスは、港町で人間と共に暮らしていたフレンドリーなドラゴンだったそうだ。
圧倒的強者の彼女は非力な人間の面倒をよくみていたようだ。
食料の調達や教育、政治まで司ったそうだ。
やれやれ、人化を憶えて、弱者である人間を囲って最強ムーブをしていたということか。
それも最初は上手くいっていたが、街が大きくなるにつれ、全ての人間の相談に乗ることが出来なくなった。
人間たちはベアトリクスに会うために争った。そして勝った人間のみがベアトリクスへ会うことが出来る。
ベアトリクスに会える人間は選ばれた人間として下位の人間を支配した。
あっという間に格差社会が生まれた。それと同時に治安は悪くなる。
ほんとやれやれだ、僕はこういう展開は飽きるほど見てきた。
「ベアトリクス君、はっきり言っていいかい?」
「別にいいけど……なんでそんな軽蔑の眼差しを向けるのかしら?」
軽蔑の眼差しではない。
僕としては真剣そのものだし。意地悪に見えるのは元々の顔の作りが悪いのだ、そう全ては主神様のせいだろう。
しかし、この子は本当に善意で行ったのだろう。彼女は悪くない……と言いたい。
では汚れているのは人間の方だろうか。
いや人間だって心の底から彼女を慕っていたはずなのだ。
ようはお互いの距離感の問題だろう。
……で、あるならば圧倒的強者であるベアトリクスが原因ともいえるな。
僕は少し厳しい助言を彼女に言う事にした。
「ベアトリクス君よ、はっきり言うよ。君が100パーセント悪い! 間違いない。断言する。あー君が悪い。全ての原因は救世主ムーブをして人間に構い過ぎたのだ」
「じゃあ私は何をすればよかったのよ。強者が弱者を助けるのは当たり前じゃない」
「いいや、ちがーう。それは違うのだよ。君はまだまだ人生経験が足りないようだ。それは大きな間違いなのだ。
強者が弱者を助けるのは認める。世の中はそうあるべきだからね。でもその言葉は圧倒的な強者は該当していない。せいぜい財産がちょっと多い人とか。あくまで同じ次元の存在が行うべきで。
圧倒的な力を持つ人外の君がそれをしてはいけないのだ!」
「知った口を聞くのね、それでも最初は上手くいってたのよ、あなたに何が分かるというの?」
「わかーる、僕にはよく分かる。なぜなら。そのやらかしで何回国を滅ぼしたか、まさに僕の経験から君の行いを完全否定できるのだ、あっはっは。
…………。
ふう、まあ、反省してるんだよ、僕もね。だから僕は免停講習中なのだ……」
そう、男性ルートの僕は何回も破滅エンドを迎えた。女性ルートだって何回かはやらかしたが。
いつだって破滅をもたらす切っ掛けは圧倒的な力を得た後だった。
「なんか嫌なこと思い出させちゃったかしら。そっか、神様だって失敗するのね。少し安心しちゃった」
まあ、経験を積んでからは上手くいくようになったのだが。
そんな僕の経験から彼女にアドバイスするなら。
「ベアトリクスよ。君は人ではない。だから人のすることにいちいち意見してはいけない。例え愚かだろうと思ってもそれは一時的な問題だ。
絶対的な強者が口出しをすると、その瞬間は旨く行く。だがそれは小さな歪となって、やがて彼らは同族同士で取り返しのつかない過ちを侵してしまうんだ」
「じゃあ、私は何をすればいいの? せっかく人化を覚えたのに。私、人間が好きよ。また海の底で一人で生活しなければならないの?」
「いいや、そこまではしなくていいと思うよ。
今まで通り、君は人間と一緒に暮らして遊んでればいいんじゃない? そうだな、海のドラゴンだろ? 海で泳ぐ子供たちが溺れないように監視しつつ。
政治には介入せず。たまに相談に乗るくらいで解決策は提示しない。ま、子供の願い事くらいはかなえてあげればいいんじゃない?」
「……わかったわ。ふう。ありがとう。気が楽になった。貴女にあえてよかった。私、もう一度、人間達と過ごしてみる。ありがとう。えっと異世界の神様のモガミさん」
「ユーギでいいよ。あ、そうか、ここは欧米系ファンタジー世界だった。失礼。僕の名前はユーギ・モガミ。名前がユーギで姓がモガミさ」
ベアトリクスの顔からは笑みがこぼれていた。
うむ、いいことをした。
やはり、人生は笑って過ごすのが一番だ。
ちなみにベアトリクスはこの森の遥か南にあるグプタという港町からきたそうだ。
僕達がいるこの森はバシュミル大森林というモンスターの巣窟らしい。
この森より北には人は住んでいないようだ。
ならばと、僕はベアトリクスに道案内をたのみ南を目指すことにした。
「ドラゴンさん、お待たせ。では話の続きをどうぞ。ちなみに僕を殺すとかはさすがにやめてね。シャルロッテ君から滞在の許可を得たばかりだからね、せめて十数年は生き延びたいところさ」
「シャルロッテ君って……神の名を軽く言うな。しかも許可を得たと? ……やはり人間じゃないようね。
いったいあなたは何者?
ちなみにさっき異質な臭いといったのは体臭の話ではない、魂の在り方が異質だといったのだ。たしかにきつい体臭ではあったが……
それに人間の女は白昼堂々と素っ裸で歩いたりはしない」
ああ、そうか、そうだった。僕は今素っ裸だった。何ていうだっけ、日本人標準の恥じらいのセリフ。アメリカ暮らしが長くて憶えていない。
ええい、ここは昭和の漫画スタイルで。
確かこうだった。右腕で胸を隠し、左手で股を隠すポーズを取る。
「いやーん、ドラゴンさんのエッチ……って、あれ? 君はメスのドラゴンでしょ?
まあ同性同士でも恥じらいはあるし、ジェンダーの定義は最近壊れつつあるようだし、それにしても君は人類の羞恥心に随分とお詳しいようで」
「あなたこそ、神と対等であるかのような言動。いったい何者なの?」
「おっと、そうでした自己紹介がまだだったね。僕は異世界からきたモガミ・ユーギだよ。現在、免停講習中の無害な神様さ」
「へえ、免停講習の意味が分からないけど異世界の神様とは。なるほど、あなたの異質さに納得したわ。私は、ベアトリクス。海のドラゴンロードと呼ばれているわ」
「あはは、ドラゴンロードか。それはすごいや。上位種の上位って感じだね」
「あなたを殺さないとって思ってたんだけど、シャルロッテ様の許可を得たっていうならそうもいかないわね」
「あはは、それはありがたい。せっかくここまで来たんだし、死んだらもったいないからね」
「素直に謝るわ、ごめんなさい。でも、異世界の神様がどうしてここに? 目的はあるのかしら」
「うーん、特にないかな、僕はこの世界に一個の命として平凡に暮らしたいだけだから。
ところで、ベアトリクスくん、君は海のドラゴンロードと言ってたね。ここは森だけど、なんで海のドラゴンが森にいるのかい?」
「……それがねぇ、いいわ、ちょっと相談に乗って頂戴。人間達がね、私の取り合いで喧嘩しちゃったのよ。それでね、もう面倒くさいからしばらく放っておくことにしたのよ――」
ベアトリクスはそのまま自分語りをはじめた。
興味深い話だった。
ベアトリクスは、港町で人間と共に暮らしていたフレンドリーなドラゴンだったそうだ。
圧倒的強者の彼女は非力な人間の面倒をよくみていたようだ。
食料の調達や教育、政治まで司ったそうだ。
やれやれ、人化を憶えて、弱者である人間を囲って最強ムーブをしていたということか。
それも最初は上手くいっていたが、街が大きくなるにつれ、全ての人間の相談に乗ることが出来なくなった。
人間たちはベアトリクスに会うために争った。そして勝った人間のみがベアトリクスへ会うことが出来る。
ベアトリクスに会える人間は選ばれた人間として下位の人間を支配した。
あっという間に格差社会が生まれた。それと同時に治安は悪くなる。
ほんとやれやれだ、僕はこういう展開は飽きるほど見てきた。
「ベアトリクス君、はっきり言っていいかい?」
「別にいいけど……なんでそんな軽蔑の眼差しを向けるのかしら?」
軽蔑の眼差しではない。
僕としては真剣そのものだし。意地悪に見えるのは元々の顔の作りが悪いのだ、そう全ては主神様のせいだろう。
しかし、この子は本当に善意で行ったのだろう。彼女は悪くない……と言いたい。
では汚れているのは人間の方だろうか。
いや人間だって心の底から彼女を慕っていたはずなのだ。
ようはお互いの距離感の問題だろう。
……で、あるならば圧倒的強者であるベアトリクスが原因ともいえるな。
僕は少し厳しい助言を彼女に言う事にした。
「ベアトリクス君よ、はっきり言うよ。君が100パーセント悪い! 間違いない。断言する。あー君が悪い。全ての原因は救世主ムーブをして人間に構い過ぎたのだ」
「じゃあ私は何をすればよかったのよ。強者が弱者を助けるのは当たり前じゃない」
「いいや、ちがーう。それは違うのだよ。君はまだまだ人生経験が足りないようだ。それは大きな間違いなのだ。
強者が弱者を助けるのは認める。世の中はそうあるべきだからね。でもその言葉は圧倒的な強者は該当していない。せいぜい財産がちょっと多い人とか。あくまで同じ次元の存在が行うべきで。
圧倒的な力を持つ人外の君がそれをしてはいけないのだ!」
「知った口を聞くのね、それでも最初は上手くいってたのよ、あなたに何が分かるというの?」
「わかーる、僕にはよく分かる。なぜなら。そのやらかしで何回国を滅ぼしたか、まさに僕の経験から君の行いを完全否定できるのだ、あっはっは。
…………。
ふう、まあ、反省してるんだよ、僕もね。だから僕は免停講習中なのだ……」
そう、男性ルートの僕は何回も破滅エンドを迎えた。女性ルートだって何回かはやらかしたが。
いつだって破滅をもたらす切っ掛けは圧倒的な力を得た後だった。
「なんか嫌なこと思い出させちゃったかしら。そっか、神様だって失敗するのね。少し安心しちゃった」
まあ、経験を積んでからは上手くいくようになったのだが。
そんな僕の経験から彼女にアドバイスするなら。
「ベアトリクスよ。君は人ではない。だから人のすることにいちいち意見してはいけない。例え愚かだろうと思ってもそれは一時的な問題だ。
絶対的な強者が口出しをすると、その瞬間は旨く行く。だがそれは小さな歪となって、やがて彼らは同族同士で取り返しのつかない過ちを侵してしまうんだ」
「じゃあ、私は何をすればいいの? せっかく人化を覚えたのに。私、人間が好きよ。また海の底で一人で生活しなければならないの?」
「いいや、そこまではしなくていいと思うよ。
今まで通り、君は人間と一緒に暮らして遊んでればいいんじゃない? そうだな、海のドラゴンだろ? 海で泳ぐ子供たちが溺れないように監視しつつ。
政治には介入せず。たまに相談に乗るくらいで解決策は提示しない。ま、子供の願い事くらいはかなえてあげればいいんじゃない?」
「……わかったわ。ふう。ありがとう。気が楽になった。貴女にあえてよかった。私、もう一度、人間達と過ごしてみる。ありがとう。えっと異世界の神様のモガミさん」
「ユーギでいいよ。あ、そうか、ここは欧米系ファンタジー世界だった。失礼。僕の名前はユーギ・モガミ。名前がユーギで姓がモガミさ」
ベアトリクスの顔からは笑みがこぼれていた。
うむ、いいことをした。
やはり、人生は笑って過ごすのが一番だ。
ちなみにベアトリクスはこの森の遥か南にあるグプタという港町からきたそうだ。
僕達がいるこの森はバシュミル大森林というモンスターの巣窟らしい。
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