リッチさんと僕

神谷モロ

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第13話 幕間 プロジェクトD

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 俺はついに例の計画を実行に移した。
 そう、きっかけは俺が病気で寝込んでいた時のことだった。
 食事はいつも俺が準備していたので今まで気付かなかった。……相方の飯がまずい。

 これは死活問題だ。それに、俺はもうアラフォーだし、老後の備えが必要だ。

 というわけで、ついに以前から構想を描いていたサポートロボットを作る時が来たのだ。

 
 まずは試作機を作って感覚をつかんでおく必要がある。

 とりあえずは寸胴な二頭身のロボットを作った。まだ造形技術が未熟だったし、とりあえずは無事に動けばいいのだ。

 しかし、これはこれで有りだ。少し外形を調整して、青と白でカラーリングすれば、あっという間にDえもん。
 奇妙奇天烈摩訶不思議ではあったが、これはあくまで試作機だ、ロボットとは何かの勉強用なので俺の好きに作ってもいいのだ。文句を言う人間はこの世界には居ないし。
 ちなみに俺は旧作の方が好きだ。


 さて、それと並行して人工知能を作らないといけない。
 しかし、これは俺の魔法スキルと相性が良かった。

 前世の世界の電子回路と、この世界の魔石は役割として酷似していたからだ。
 俺の異世界転生者としてのスキルで、人工知能は割と簡単に実現できた。我ながらチートなスキルをもらったものだ。


 作業は続いた。俺は試作機で得たノウハウをもとについに後継機の製作に移った。

 本体のデザインは大人の事情で、人型がベストだと言う結論に達した。
 元ネタのあるロボットの造形はさすがにまずいし、だからといって部分的に変えると、海外でみるパチモンになってしまい、急に萎えるのだ。

 幸い人型モデルは同居人の少年がいたので彼をベースにデザインしていった。
 彼は中性的な見た目で、モデルとしては最適だと思った。

 女装させれば、可愛い男の娘になるだろうなと思いながら。

 そうだな、どうせなら女の子ロボットにしよう、俺は同性に面倒を見てもらいたくないのだ。

 異世界なんだから、ここはメイドさんが定番かな、夢が溢れるじゃないか。


 それから俺の創作意欲はマックスになり、気づいたら素体は完成していた。

 素体の材料は、試作段階ではゴーレムなんかに使う魔法粘土を試したが強度が不安だった。
 華奢に作ると簡単に手足がもげるのだ。だからゴーレムはあんなにずんぐりな見た目なのかと納得した。
 だが、俺は妥協したくない。ロボットは見た目が全てなのだ。可愛くないといけない。
 
 そこで俺は、同居人の少年が見つけたミスリル鉱石から金属繊維を作り出し、これを格子状に編み込み魔法粘土と組み合わせた。
 これにより、高い物理魔法防御と柔軟性を兼ね備えた理想的な素材ができたのだ。
 
 髪の毛も、ミスリル繊維を活用した。やや青みかかった美しい銀髪が出来た。我ながら天才じゃないだろうかと思った。

 そうして、さまざまなパーツを作りだし、いよいよ完成形になって気付いた。服が無いことに……。
 裸はさすがにまずい。女性型とはいえ実際はただのマネキンであり、まずい部分はないのだが妄想力で補完してしまい色々まずいのだ。

 おれは十数年ぶりにおしのびで、人里へ向かった。メイド服を手に入れんがために。
 さすがに一から作るのは無理だし、俺は手芸には興味がないのだ。

 ――後に、とある町のあらゆる服飾店でメイド服ばかりを爆買いする中年の変態があらわれたという噂が広まった。極端に品薄となったため、一時的に特需が生まれ、これをきっかけに様々なデザインのメイド服が誕生した。中にはフェティシズムを前面に押し出したものも一部で人気となった。


 ついでに、料理や医療など様々な専門書も一通り買い揃えておいた。
 どうせなら美味い飯を食いたいし、俺の知識にも偏りがあるからな。

 こうして、後継機の開発は順調に進んだ。

 途中、知能をつかさどる魔導集積回路が暴走し、頭が爆発するというショッキングな事件があったが、紆余曲折を経て、俺専用のメイドロボットは完成した。


 おっと、忘れちゃいけない。

「さあ、最後の仕上げだ、このポケットをお腹の部分につけてごらん?」

「はいマスター、……これは何でしょうか?」

「これはな、ごほん、異次元ポッケ~!だ。さあ一緒に」

「異次元ポッケ~!」
「異次元ポッケ~!」
 ふたつのダミ声が重なった。 

「……で、これは何でしょうか?」

「うむ、これはな、俺が憧れるもっとも凄い猫型ロボットの最強アイテム、に、似せた収納用の魔道具だ。
 君には、そういうロボットになってほしいという願いをこめて作ったんだ」


「はあ、猫型ですか? 私は人型ですよ? 猫耳でも付けるおつもりですか?」

 猫耳メイド……いや、それもありだが、さすがにあざとすぎるので却下だ。ちなみに本家にも耳は無い。

「まあ、そう言うわけだ。これからいろんなことを覚えていくといいよ。ちなみに猫型なのに耳がないのはね――――」


 こうして、ロボさんは誕生したのでした。
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