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第五章 迷宮都市タラス
第85話 敵討ち⑦
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翌日、俺達はベヒモスの通ったであろう新しくできた林道の追跡を続けた。
倒れている木々はまだ新しい。ここを通ったのがつい最近だというのが分かる。
道中、魔物は現れなかった。
俺達はひたすら歩き続け、この先にいるであろう魔獣の王ベヒモス。そして両親の仇である奴を追いかける。
そして夕方にはテントを張り休憩をとる。
「倒れた木の後を見るにあと3日くらいで追いつくでしょう。この周辺には魔物はほとんどいませんし思ったより早く接敵できるかもしれません」
夕食を済ませると早めにテントに入る。
シャルロットから魔法についての授業を受けるためだ。
ルカとセバスティアーナさんは外で魔剣の整備をしている。
ルカは何本かの魔剣を用意していたのでそれを順番に手入れしていた。
それに何やら改造をするといっていたっけ。ベヒモス相手に使える手は増やしておくとのことだった。
「では昨日の続きよ。昨日は極大火炎魔法。最終戦争、序章、第三幕、『選別の炎』までを説明したわよね。今日は第二章について教えてあげるわ。あんたの好きなその本によると――」
俺は同時に本『美しき戯曲魔法』を開く。
第二章の魔法は氷結魔法の第一幕『永久凍土』から始まり暗黒魔法の第二幕『飢餓』、そして死霊魔法の第三幕『亡者の処刑人』に続く。
『亡者の処刑人』は何度か見たのが他の二つは俺は見たことがない。
……いや、『永久凍土』はたしか、王都で宮廷魔術師がドラゴンに使っているのを見たことがあったか。
遠くからだったのでよくわからないが氷の柱がドラゴンを包み込んだのを見た気がした。
「シャルロット、この第二幕『飢餓』ってどういう魔法なんだ?」
「暗黒魔法よ。攻撃力は無いけど……何て言ったらいいかしら。草木を枯らせるというか大地を腐らるというか、なんでそんな魔法が創られたのか知らないけど、……まあ植物系の魔物がいたら一撃で倒せるんじゃない?」
なるほど、人里で使ったら大変なことになるのは分かる。
食料が無くなるということだから。
おそらくは戦争で使うのだろう、籠城する城に向かって放てば、もはや降伏するしかないのだから。
使い方によっては人道的な魔法ともいえるのか……。
だが、本によるとそこから人類の選別が始まるのだ。
食糧を奪い合い、犯罪を犯した者は捕まり、処刑人に首をはねられるという。
まあこれは、あくまで本のストーリーで、後付けの小説みたいなもんだとシャルロットは言ってたけど。
でもシャルロットのお父さんが書いた本だよな。実際はどうなんだろう。
極大魔法については俺達はまだ理解が足りないのだろう。
おっと、考え込んでしまった。
俺は本から目を放すとシャルロットに聞いた。
「ちなみにシャルロットはこの魔法は使えるのか?」
「うーん、無理だと思う。前にも言ったけど、極大魔法ってのは自分の深淵にある魔力の根源が繋がらないと使えないのよ。あくまで私のイメージの話だけどね、それに個人差はあると思う。
まあ、私が使えるのはまだ3つだけど、この先増えるかは分からないし。ルカ様は一つも使えないって言ってた。不思議よね。マスター級の魔法使いでも使える人と使えない人もいるのよ」
根源の繋がりか。何とか俺にもわかるように説明してくれてるのだろうけど全然イメージがわかない。
まあ、それが理解できれば俺も極大魔法が使えるのだろうけど……。
「ちなみにシャルロットはいつごろ自分にその根源との繋がりを感じたんだ?」
「そうね、私の場合は中級魔法を全て習得して直ぐだったかしら。なんとなく感じたのよ。それから私の魔力も日に日に上がっていったし」
「そうか、さすがだな、俺は未だに使える中級魔法は一つだけだ、うらやましい限りだよ」
「何言ってんの。あんたは剣の才能があるじゃない。それに中級魔法一つだけっていってるけど、ヘイストと剣の組み合わせは最適解だし。あんたも天才といってもいいんじゃない?」
「そう言ってくれると嬉しいよ。俺もいつかは極大魔法を使えるようにって魔法学院に入学したときは憧れてたんだ。でも魔法の才能が無いことに気付いてから結構落ち込んでたんだ」
「安心なさいな、魔法のサポートは私に任せなさいって。そのために私が使える魔法について知りたいんでしょ?」
そうだな、魔法使いと完璧な連携を完成させれば、お互いの弱点を補うことが出来る。
一人で剣も魔法も完璧になる必要はないのだ。
両方完璧なセバスティアーナさんをずっと見てたせいで俺は焦っていたのだろう。
急ぐ必要はない。無名仙人も言ってたじゃないか。
そろそろいい時間だな。
「よし、シャルロット、今日はこの辺にしようか。明日も早いんだし寝るとしよう」
倒れている木々はまだ新しい。ここを通ったのがつい最近だというのが分かる。
道中、魔物は現れなかった。
俺達はひたすら歩き続け、この先にいるであろう魔獣の王ベヒモス。そして両親の仇である奴を追いかける。
そして夕方にはテントを張り休憩をとる。
「倒れた木の後を見るにあと3日くらいで追いつくでしょう。この周辺には魔物はほとんどいませんし思ったより早く接敵できるかもしれません」
夕食を済ませると早めにテントに入る。
シャルロットから魔法についての授業を受けるためだ。
ルカとセバスティアーナさんは外で魔剣の整備をしている。
ルカは何本かの魔剣を用意していたのでそれを順番に手入れしていた。
それに何やら改造をするといっていたっけ。ベヒモス相手に使える手は増やしておくとのことだった。
「では昨日の続きよ。昨日は極大火炎魔法。最終戦争、序章、第三幕、『選別の炎』までを説明したわよね。今日は第二章について教えてあげるわ。あんたの好きなその本によると――」
俺は同時に本『美しき戯曲魔法』を開く。
第二章の魔法は氷結魔法の第一幕『永久凍土』から始まり暗黒魔法の第二幕『飢餓』、そして死霊魔法の第三幕『亡者の処刑人』に続く。
『亡者の処刑人』は何度か見たのが他の二つは俺は見たことがない。
……いや、『永久凍土』はたしか、王都で宮廷魔術師がドラゴンに使っているのを見たことがあったか。
遠くからだったのでよくわからないが氷の柱がドラゴンを包み込んだのを見た気がした。
「シャルロット、この第二幕『飢餓』ってどういう魔法なんだ?」
「暗黒魔法よ。攻撃力は無いけど……何て言ったらいいかしら。草木を枯らせるというか大地を腐らるというか、なんでそんな魔法が創られたのか知らないけど、……まあ植物系の魔物がいたら一撃で倒せるんじゃない?」
なるほど、人里で使ったら大変なことになるのは分かる。
食料が無くなるということだから。
おそらくは戦争で使うのだろう、籠城する城に向かって放てば、もはや降伏するしかないのだから。
使い方によっては人道的な魔法ともいえるのか……。
だが、本によるとそこから人類の選別が始まるのだ。
食糧を奪い合い、犯罪を犯した者は捕まり、処刑人に首をはねられるという。
まあこれは、あくまで本のストーリーで、後付けの小説みたいなもんだとシャルロットは言ってたけど。
でもシャルロットのお父さんが書いた本だよな。実際はどうなんだろう。
極大魔法については俺達はまだ理解が足りないのだろう。
おっと、考え込んでしまった。
俺は本から目を放すとシャルロットに聞いた。
「ちなみにシャルロットはこの魔法は使えるのか?」
「うーん、無理だと思う。前にも言ったけど、極大魔法ってのは自分の深淵にある魔力の根源が繋がらないと使えないのよ。あくまで私のイメージの話だけどね、それに個人差はあると思う。
まあ、私が使えるのはまだ3つだけど、この先増えるかは分からないし。ルカ様は一つも使えないって言ってた。不思議よね。マスター級の魔法使いでも使える人と使えない人もいるのよ」
根源の繋がりか。何とか俺にもわかるように説明してくれてるのだろうけど全然イメージがわかない。
まあ、それが理解できれば俺も極大魔法が使えるのだろうけど……。
「ちなみにシャルロットはいつごろ自分にその根源との繋がりを感じたんだ?」
「そうね、私の場合は中級魔法を全て習得して直ぐだったかしら。なんとなく感じたのよ。それから私の魔力も日に日に上がっていったし」
「そうか、さすがだな、俺は未だに使える中級魔法は一つだけだ、うらやましい限りだよ」
「何言ってんの。あんたは剣の才能があるじゃない。それに中級魔法一つだけっていってるけど、ヘイストと剣の組み合わせは最適解だし。あんたも天才といってもいいんじゃない?」
「そう言ってくれると嬉しいよ。俺もいつかは極大魔法を使えるようにって魔法学院に入学したときは憧れてたんだ。でも魔法の才能が無いことに気付いてから結構落ち込んでたんだ」
「安心なさいな、魔法のサポートは私に任せなさいって。そのために私が使える魔法について知りたいんでしょ?」
そうだな、魔法使いと完璧な連携を完成させれば、お互いの弱点を補うことが出来る。
一人で剣も魔法も完璧になる必要はないのだ。
両方完璧なセバスティアーナさんをずっと見てたせいで俺は焦っていたのだろう。
急ぐ必要はない。無名仙人も言ってたじゃないか。
そろそろいい時間だな。
「よし、シャルロット、今日はこの辺にしようか。明日も早いんだし寝るとしよう」
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