73 / 92
第五章 迷宮都市タラス
第73話 俺達の冒険はこれから……。
しおりを挟む
俺とシャルロットは再びルカ・レスレクシオンの屋敷を訪れていた。
まず俺達は驚いた。何にといえば、建物全体に関してだ。
庭の雑草は全て刈り取られ。美しい芝生の絨毯が広がっている。
窓ガラスも陽の光を反射してキラキラと輝いている。
外壁も初めて見たときは灰色をしていたが元々は白かったんだと実感した。
――なんということでしょう。あのゴミ屋敷がすっかり綺麗で見通しのいい家に生まれ変わっていたのです。
最初は別の家と間違えてしまったのかとシャルロットは言っていました。
でも、間違いなくルカ・レスレクシオンの屋敷です。
「……驚いた。セバスティアーナさんは武術家として優れているけどメイドとしても完璧だったんだ」
「ええ、そうね……一昨日のアレが、なんという事でしょう……」
玄関から見渡すルカ・レスレクシオンの屋敷にはゴミ、いやホコリひとつないのではないだろうか。
廊下は物一つなく、木目にはワックスが掛けられピカピカに輝いていた。
そして、最初に来た時には分からなかったが。この屋敷は10人位なら暮らせる位の部屋数がある。
まあ、地下施設に比べれば全然規模は小さいが。
俺達はセバスティアーナさんに案内され、地下室に入っていった。
ルカの執務室には俺達も座れるように大き目のテーブルが用意されていた。
そしてセバスティアーナさんはお茶の準備をしていた。
ルカは仕事中のようだった。彼女は分解された二十番の魔剣の部品を一つ一つ手に取り。何かぶつぶつ言いながら紙に何かを書いていた。
俺達が来たのに気づくと、一旦、眼鏡を掛け直し。俺達を迎えた。
「ようこそ、さて、自己紹介をしよう。吾輩がルカ・レスレクシオンじゃ、吾輩に関しては道中、セバスちゃんから聞いておろう。ということでよろしく」
聞いていた通り随分フランクな人のようだ。
「はい、こちらこそ。俺は、カイル・ラングレンです。ルカ様の魔剣のおかげで無事ここまで来ることが出来ました。お会いできて光栄です」
「私はシャルロット・レーヴァテインです。同じく魔剣に助けられました。感謝の念に耐えません」
俺達は軽く握手を交わすと促されるまま席に座る
「ふむ、いい感じの若者じゃな、よろしく。吾輩としても二十番を再び、吾輩の元まで届けてくれたのには感謝しておる。ではさっそく今後の事について話そうではないか」
「はい、でも、先に謝らせてください。俺はその魔剣を壊してしまいました……」
「うむ、一通り分解してみたがのう。どうにも根本的に機械部分の強度不足じゃな。お主が気に病む必要はない。むしろ喜ばしい事じゃ。
何事も実験よ、壊れたのは設計者である吾輩の責任、カイル少年よ、そんな不良品を使っても、それでもよく生きてくれた。
だが、こうしてモノ作りは進歩していくのじゃ。よし、吾輩は今この時より、二十番の最適化のため研究にうちこむ。
駄目だった部品は新たに業者に発注。いや、それが致命的な欠陥になったか。やはり吾輩が一から全て造る必要があろうて」
ルカは、ぶつぶつ言いながら再び紙になにか書きなぐる。
そして、紅茶をがぶ飲みしながら叫んだ。
「よし! これは一から設計の見直しじゃ! 少し、というかだいぶ時間が掛かるのう……だが、まあ、やれんことはないじゃろう。カイル少年はしばらくは九番のノダチを使うことになるが……」
「いいえ、これも素晴らしい魔剣です。それに剣士としての修行もまだまだです。その魔剣にたよってたら俺はいつまでも強くなれません」
「ふむ、殊勝なことじゃ」
後ろからセバスティアーナさんが発言する。
「私も、カイル様の修行を約束しましたので。微力ながらお手伝いさせていただきます」
それにシャルロットも元気よく答える。
「そうよ、私達は強くなったけど、まだまだよ、それにここは最北端。冒険者としての仕事もたくさんあるし。バシュミル大森林はすぐそこ。強い魔物はいくらでもいるわ」
「ほう、ではお主らはここで冒険者として生活するという事じゃな? では家はどうするつもりかの? ここにもいくつか部屋はある。よければ好きに使うとよい」
「何から何まですいません。いずれお金が貯まったら恩返しさせていただきます」
「うむ、よい若者達じゃ。では期待するとしよう」
「ところでルカ様、皇帝陛下からお手紙を預かってるんですけど、……俺から渡せば読んでくれるはず……とのことですが、どうされます?」
俺は皇帝陛下から預かった親書をルカに手渡す。露骨に嫌な顔をするかと思ったが案外普通の表情で溜息を着くのみだった。
「ふぅ……。 まったくオリビアちゃんはまだ諦めておらんかったか。ああ、お主らは気にするほどのことではない。吾輩を国の要職に即けて首都で暮らせといったものだ」
「良い話ではないですか? なぜ断り続けるのですか?」
「……だって、めんどくさいじゃろうが。それに……友の仇を取るまではここを離れるつもりはないしな……。それはさておき、お主らの冒険譚でも聞かせておくれよ」
こうして俺達は正式に冒険者として迷宮都市タラスに根を下ろすことになったのだ。
まず俺達は驚いた。何にといえば、建物全体に関してだ。
庭の雑草は全て刈り取られ。美しい芝生の絨毯が広がっている。
窓ガラスも陽の光を反射してキラキラと輝いている。
外壁も初めて見たときは灰色をしていたが元々は白かったんだと実感した。
――なんということでしょう。あのゴミ屋敷がすっかり綺麗で見通しのいい家に生まれ変わっていたのです。
最初は別の家と間違えてしまったのかとシャルロットは言っていました。
でも、間違いなくルカ・レスレクシオンの屋敷です。
「……驚いた。セバスティアーナさんは武術家として優れているけどメイドとしても完璧だったんだ」
「ええ、そうね……一昨日のアレが、なんという事でしょう……」
玄関から見渡すルカ・レスレクシオンの屋敷にはゴミ、いやホコリひとつないのではないだろうか。
廊下は物一つなく、木目にはワックスが掛けられピカピカに輝いていた。
そして、最初に来た時には分からなかったが。この屋敷は10人位なら暮らせる位の部屋数がある。
まあ、地下施設に比べれば全然規模は小さいが。
俺達はセバスティアーナさんに案内され、地下室に入っていった。
ルカの執務室には俺達も座れるように大き目のテーブルが用意されていた。
そしてセバスティアーナさんはお茶の準備をしていた。
ルカは仕事中のようだった。彼女は分解された二十番の魔剣の部品を一つ一つ手に取り。何かぶつぶつ言いながら紙に何かを書いていた。
俺達が来たのに気づくと、一旦、眼鏡を掛け直し。俺達を迎えた。
「ようこそ、さて、自己紹介をしよう。吾輩がルカ・レスレクシオンじゃ、吾輩に関しては道中、セバスちゃんから聞いておろう。ということでよろしく」
聞いていた通り随分フランクな人のようだ。
「はい、こちらこそ。俺は、カイル・ラングレンです。ルカ様の魔剣のおかげで無事ここまで来ることが出来ました。お会いできて光栄です」
「私はシャルロット・レーヴァテインです。同じく魔剣に助けられました。感謝の念に耐えません」
俺達は軽く握手を交わすと促されるまま席に座る
「ふむ、いい感じの若者じゃな、よろしく。吾輩としても二十番を再び、吾輩の元まで届けてくれたのには感謝しておる。ではさっそく今後の事について話そうではないか」
「はい、でも、先に謝らせてください。俺はその魔剣を壊してしまいました……」
「うむ、一通り分解してみたがのう。どうにも根本的に機械部分の強度不足じゃな。お主が気に病む必要はない。むしろ喜ばしい事じゃ。
何事も実験よ、壊れたのは設計者である吾輩の責任、カイル少年よ、そんな不良品を使っても、それでもよく生きてくれた。
だが、こうしてモノ作りは進歩していくのじゃ。よし、吾輩は今この時より、二十番の最適化のため研究にうちこむ。
駄目だった部品は新たに業者に発注。いや、それが致命的な欠陥になったか。やはり吾輩が一から全て造る必要があろうて」
ルカは、ぶつぶつ言いながら再び紙になにか書きなぐる。
そして、紅茶をがぶ飲みしながら叫んだ。
「よし! これは一から設計の見直しじゃ! 少し、というかだいぶ時間が掛かるのう……だが、まあ、やれんことはないじゃろう。カイル少年はしばらくは九番のノダチを使うことになるが……」
「いいえ、これも素晴らしい魔剣です。それに剣士としての修行もまだまだです。その魔剣にたよってたら俺はいつまでも強くなれません」
「ふむ、殊勝なことじゃ」
後ろからセバスティアーナさんが発言する。
「私も、カイル様の修行を約束しましたので。微力ながらお手伝いさせていただきます」
それにシャルロットも元気よく答える。
「そうよ、私達は強くなったけど、まだまだよ、それにここは最北端。冒険者としての仕事もたくさんあるし。バシュミル大森林はすぐそこ。強い魔物はいくらでもいるわ」
「ほう、ではお主らはここで冒険者として生活するという事じゃな? では家はどうするつもりかの? ここにもいくつか部屋はある。よければ好きに使うとよい」
「何から何まですいません。いずれお金が貯まったら恩返しさせていただきます」
「うむ、よい若者達じゃ。では期待するとしよう」
「ところでルカ様、皇帝陛下からお手紙を預かってるんですけど、……俺から渡せば読んでくれるはず……とのことですが、どうされます?」
俺は皇帝陛下から預かった親書をルカに手渡す。露骨に嫌な顔をするかと思ったが案外普通の表情で溜息を着くのみだった。
「ふぅ……。 まったくオリビアちゃんはまだ諦めておらんかったか。ああ、お主らは気にするほどのことではない。吾輩を国の要職に即けて首都で暮らせといったものだ」
「良い話ではないですか? なぜ断り続けるのですか?」
「……だって、めんどくさいじゃろうが。それに……友の仇を取るまではここを離れるつもりはないしな……。それはさておき、お主らの冒険譚でも聞かせておくれよ」
こうして俺達は正式に冒険者として迷宮都市タラスに根を下ろすことになったのだ。
2
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

半神の守護者
ぴっさま
ファンタジー
ロッドは何の力も無い少年だったが、異世界の創造神の血縁者だった。
超能力を手に入れたロッドは前世のペット、忠実な従者をお供に世界の守護者として邪神に立ち向かう。
〜概要〜
臨時パーティーにオークの群れの中に取り残されたロッドは、不思議な生き物に助けられこの世界の神と出会う。
実は神の遠い血縁者でこの世界の守護を頼まれたロッドは承諾し、通常では得られない超能力を得る。
そして魂の絆で結ばれたユニークモンスターのペット、従者のホムンクルスの少女を供にした旅が始まる。
■注記
本作品のメインはファンタジー世界においての超能力の行使になります。
他サイトにも投稿中
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる