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第五章 迷宮都市タラス
第71話 ルカとセバスティアーナの出会い③
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八番の魔剣『ヴェノムバイト』はあらゆる毒を生成できる猛毒の魔剣。
これを使えば。……ええい! 今から解毒剤を作ったところで間に合うものか!
くそっ! 時間だ! せめて半日欲しい。なんとか時間をかせがねば。そうだ、彼女の血液型は。
ベッドに寝かしたセバスティアーナの血を採血する。
顔が青い。もう死んでいるのか。だが、心臓は吾輩の魔法機械で強制的に動かしている……。
採血の結果が出た。よし! 血液型が一致した。ならば、吾輩のやることは一つだ。もっともこれは未完成の手術で、成功率は五分五分だ、だがやるには充分の勝率よ。
生きていてくれよ。セバスティアーナ!
研究室にある医療器具を取り出すとすぐに手術を開始する。
まずは吾輩の血液を彼女に流し込むことで毒を薄める。吾輩の血は毒に耐性があるためそれだけで時間は稼げるはずだ。
その間に解毒剤を作り出す。
毒の原型はある。このベノムバイトはあらゆる毒を創り出す毒のサンプルでもあるのだ。
「かならず助けてやるぞ。『魔剣開放』!」
………………。
…………。
……。
セバスティアーナの目が開く。
「……ここは?あなたが、神様? 始祖ユーギ・モガミ様なのですか? ……ルカ様にそっくりなのですね」
「あほ! 吾輩はルカ本人じゃ。もっとも神と言われて悪い気はせんがな。だが少しオーバーだし、神がいい奴とは限らんからのう。
ま、それを言えば吾輩もいいやつではないか。うん吾輩はそなたの神じゃな。はっはっは」
セバスティアーナはぼんやりとした意識の中で周りを見回す。
そこには色んな実験道具や、複雑な式が書きなぐってある紙。そして血液と思われる赤い液体の入った瓶が天井からぶら下がっていた。
そして、その瓶は彼女の手首に管で繋がっていたのだ。セバスティアーナは理解した。私は助けられたのだと。
「………はい。ルカ様は私の神です。私の命を救ってくれました……。 私は……ルカ様を殺そうとしたのに……それが私の使命であり……」
「もうよい。まだ回復しておらん。しばらく寝ておれ」
…………。
セバスティアーナは眠っていた。
時折起きては軽い食事をとる。そして再び眠りについた。
一週間ほど経ち、毒は体から抜け自分の足で立てるまでになった。
「さすがはニンジャーということかのう、回復が早い。というか正直、立てるようになるとは思わなんだ」
「……ルカ様。私はどうすればいいでしょうか? 私は任務を失敗しました。そして掟に従い自死を選びました。ですがそれも失敗、私には生きる価値が無いのです」
「ふむ、生きる価値がないか……。価値がないのだな? 本当に無いのだな? それこそお主の人生はこの先もまったく価値はないと? 銅貨一枚の価値もないと?」
もの凄い剣幕でいうルカにセバスティアーナはたじろぐ。
しかし、セバスティアーナには他に返す言葉がない。
「はい、もう、故郷には戻れませんし。私など銅貨一枚の価値もありません……」
しばらくの沈黙の後、ルカは答えた。
「よし、ならば買った。お主の人生を吾輩が買ったぞ! まさかニンジャーに二言はなかろう?」
「いいえ、ニンジャーは嘘をつくのが仕事です……ですが、私はもうニンジャーでもありませんし。そうですね、ルカ様に買われます。でも、私はルカ様を殺そうとしましたよ?」
「それは任務であったのだろ? 前の主の命令であろうて。で、今の主はだれじゃ?」
「……。ルカ様です。私は、私の主は、ルカ様ただ一人です」
「うむ、よく言った。では、前の主に引継ぎも兼ねて挨拶にいこうじゃないか」
これを使えば。……ええい! 今から解毒剤を作ったところで間に合うものか!
くそっ! 時間だ! せめて半日欲しい。なんとか時間をかせがねば。そうだ、彼女の血液型は。
ベッドに寝かしたセバスティアーナの血を採血する。
顔が青い。もう死んでいるのか。だが、心臓は吾輩の魔法機械で強制的に動かしている……。
採血の結果が出た。よし! 血液型が一致した。ならば、吾輩のやることは一つだ。もっともこれは未完成の手術で、成功率は五分五分だ、だがやるには充分の勝率よ。
生きていてくれよ。セバスティアーナ!
研究室にある医療器具を取り出すとすぐに手術を開始する。
まずは吾輩の血液を彼女に流し込むことで毒を薄める。吾輩の血は毒に耐性があるためそれだけで時間は稼げるはずだ。
その間に解毒剤を作り出す。
毒の原型はある。このベノムバイトはあらゆる毒を創り出す毒のサンプルでもあるのだ。
「かならず助けてやるぞ。『魔剣開放』!」
………………。
…………。
……。
セバスティアーナの目が開く。
「……ここは?あなたが、神様? 始祖ユーギ・モガミ様なのですか? ……ルカ様にそっくりなのですね」
「あほ! 吾輩はルカ本人じゃ。もっとも神と言われて悪い気はせんがな。だが少しオーバーだし、神がいい奴とは限らんからのう。
ま、それを言えば吾輩もいいやつではないか。うん吾輩はそなたの神じゃな。はっはっは」
セバスティアーナはぼんやりとした意識の中で周りを見回す。
そこには色んな実験道具や、複雑な式が書きなぐってある紙。そして血液と思われる赤い液体の入った瓶が天井からぶら下がっていた。
そして、その瓶は彼女の手首に管で繋がっていたのだ。セバスティアーナは理解した。私は助けられたのだと。
「………はい。ルカ様は私の神です。私の命を救ってくれました……。 私は……ルカ様を殺そうとしたのに……それが私の使命であり……」
「もうよい。まだ回復しておらん。しばらく寝ておれ」
…………。
セバスティアーナは眠っていた。
時折起きては軽い食事をとる。そして再び眠りについた。
一週間ほど経ち、毒は体から抜け自分の足で立てるまでになった。
「さすがはニンジャーということかのう、回復が早い。というか正直、立てるようになるとは思わなんだ」
「……ルカ様。私はどうすればいいでしょうか? 私は任務を失敗しました。そして掟に従い自死を選びました。ですがそれも失敗、私には生きる価値が無いのです」
「ふむ、生きる価値がないか……。価値がないのだな? 本当に無いのだな? それこそお主の人生はこの先もまったく価値はないと? 銅貨一枚の価値もないと?」
もの凄い剣幕でいうルカにセバスティアーナはたじろぐ。
しかし、セバスティアーナには他に返す言葉がない。
「はい、もう、故郷には戻れませんし。私など銅貨一枚の価値もありません……」
しばらくの沈黙の後、ルカは答えた。
「よし、ならば買った。お主の人生を吾輩が買ったぞ! まさかニンジャーに二言はなかろう?」
「いいえ、ニンジャーは嘘をつくのが仕事です……ですが、私はもうニンジャーでもありませんし。そうですね、ルカ様に買われます。でも、私はルカ様を殺そうとしましたよ?」
「それは任務であったのだろ? 前の主の命令であろうて。で、今の主はだれじゃ?」
「……。ルカ様です。私は、私の主は、ルカ様ただ一人です」
「うむ、よく言った。では、前の主に引継ぎも兼ねて挨拶にいこうじゃないか」
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