50 / 92
第四章 カルルク帝国
第50話 ベテラン冒険者①
しおりを挟む
今日は冒険者の仕事がある。
首都とはいえ、城壁の外には魔物はいるのだ。
急募、Aランク大型魔獣の討伐。
――斥候からの報告に、ここから北の平原に大型の魔物、ブラッドラプトルが出現した。
ブラッドラプトルは小さい個体でも2メートル以上はある大型の魔物だ。
報告からは平均よりもさらに大型である事が判明している。
ブラッドラプトルは鋭い牙と爪で獲物を切り裂く、素早い動きと獰猛さが特徴だ。
幸いにも今は冬を前に交易が少ないため被害は軽微だが、奴を逃がしてしまうとやっかいだ――
なるほど、危険だが報酬もいい。
セバスティアーナさんも了承してくれた。
俺達が依頼を受けようとすると、後ろにいた冒険者のおっさんが声を掛けてきた。
「おいおい。ここはガキが来る場所じゃねえぜ。それにその依頼は俺達が受けようと思ってたんだぜ?」
このおっさん、声がでかい。それに体格も大きい。
レザーアーマーから覗く太い腕はベテラン冒険者の風格だ。
「あら、受けようと思っていたなら。待ってないでさっさと受ければよかったのでは?」
「あん? なんだ? メイド。お前のご主人様が危ない橋を渡らないように、親切に教えてやったというのによ」
なるほど、こういうやり取りは初めてで新鮮だ。
やっぱ冒険者といえば、こういうごろつきのおっさんに絡まれるのは定番だよな、子供の頃の憧れの冒険者像そのままだ。
「なにニヤニヤしてんのよ。あんた悪口言われてんのよ?」
「いや、今まで冒険者ギルドであった人は親切な人ばかりだったから。新鮮だなと思って」
「そういえばそうね、こういうガラの悪いロートルに会ったのは初めてかしら。たしかに新鮮ね」
俺達が楽しそうに話をしているのにイラっと来たのか、おっさんの機嫌はさらに悪くなった。
「なんだと! メイドを連れた世間知らずの坊っちゃん嬢ちゃんが冒険者なんて10年早いんだよ。
俺達はな、大陸を何度も渡り歩いたベテラン冒険者チーム『オーガラバーズ』だぞ、この依頼は俺達にこそ相応しいってもんだ!」
「ご自分でベテランだというなんて。随分とまあ大きくでたものです。そんな強気な態度だと、逆に弱く見えますよ?」
「なんだと? さっきからメイド、お前はいちいち口が悪いぞ」
「さて、めんどくさくなってきましたね。どうしたものですか……」
「だから俺達に譲ればいいってんだよ。大体おまえら冒険者になって間もないだろう。
ブラッドラプトルは凶悪なやつだ。俺達だって魔法使いの支援が必須なんだ。だから魔法使いが見つかるまで待ってたんだ」
なるほどね。依頼を受けていないのはメンバーが足りてなかったのか。
魔法使いね……。
「あ! なら問題ないじゃないですか。俺達は魔法使いですよ。まあ俺は役に立ちませんけど、シャルロットはマスター級ですのでおじさんたち一緒に参加してくれませんか?」
俺は、これ以上揉め事になるのは嫌なので、俺達のギルドカードを見せて魔法使いであることを教えた。
「なに? ラングレン兄妹? ……確かにお嬢ちゃんは相当な魔法使いのようだ。それにしてもラングレンってまあ懐かしい名前だ。ドイルとカレンを思い出しちまった」
「え? おじさんたち両親を知ってるんですか?」
…………。
「なんだ、最初から言ってくれってんだよ。そうかおめえさんがカレンの息子か。よく見たらカレンに似ていい男じゃないか。がっはっは」
こうして、臨時パーティーが組まれることになった。
受付のお姉さんもこの魔物の討伐には複数人での参加が推奨されているため丁度よかったとのことだった。
冒険者チーム『オーガラバーズ』のリーダー、ギルバートさんはどうやら母さんと冒険者パーティーを組んでたこともあるようだ。
オーガラバーズのメンバーは全員戦士で、魔法使いはいなかった。
肉弾戦への強いこだわりで固定メンバーは全員戦士なのだ。
もちろん、それではバランスが悪いので、依頼によっては臨時で魔法使いや盗賊を雇うこともあるらしい。
メンバーはリーダーのギルバートさん、両手持ちの大盾を使って防御を担当する。また盾で敵を殴るのにも使えるらしい。
そして、もう二人、大剣使いオズワルドさん。大戦斧のヘクターさん。みんな筋骨隆々でたくましいおじさんたちだ。
首都とはいえ、城壁の外には魔物はいるのだ。
急募、Aランク大型魔獣の討伐。
――斥候からの報告に、ここから北の平原に大型の魔物、ブラッドラプトルが出現した。
ブラッドラプトルは小さい個体でも2メートル以上はある大型の魔物だ。
報告からは平均よりもさらに大型である事が判明している。
ブラッドラプトルは鋭い牙と爪で獲物を切り裂く、素早い動きと獰猛さが特徴だ。
幸いにも今は冬を前に交易が少ないため被害は軽微だが、奴を逃がしてしまうとやっかいだ――
なるほど、危険だが報酬もいい。
セバスティアーナさんも了承してくれた。
俺達が依頼を受けようとすると、後ろにいた冒険者のおっさんが声を掛けてきた。
「おいおい。ここはガキが来る場所じゃねえぜ。それにその依頼は俺達が受けようと思ってたんだぜ?」
このおっさん、声がでかい。それに体格も大きい。
レザーアーマーから覗く太い腕はベテラン冒険者の風格だ。
「あら、受けようと思っていたなら。待ってないでさっさと受ければよかったのでは?」
「あん? なんだ? メイド。お前のご主人様が危ない橋を渡らないように、親切に教えてやったというのによ」
なるほど、こういうやり取りは初めてで新鮮だ。
やっぱ冒険者といえば、こういうごろつきのおっさんに絡まれるのは定番だよな、子供の頃の憧れの冒険者像そのままだ。
「なにニヤニヤしてんのよ。あんた悪口言われてんのよ?」
「いや、今まで冒険者ギルドであった人は親切な人ばかりだったから。新鮮だなと思って」
「そういえばそうね、こういうガラの悪いロートルに会ったのは初めてかしら。たしかに新鮮ね」
俺達が楽しそうに話をしているのにイラっと来たのか、おっさんの機嫌はさらに悪くなった。
「なんだと! メイドを連れた世間知らずの坊っちゃん嬢ちゃんが冒険者なんて10年早いんだよ。
俺達はな、大陸を何度も渡り歩いたベテラン冒険者チーム『オーガラバーズ』だぞ、この依頼は俺達にこそ相応しいってもんだ!」
「ご自分でベテランだというなんて。随分とまあ大きくでたものです。そんな強気な態度だと、逆に弱く見えますよ?」
「なんだと? さっきからメイド、お前はいちいち口が悪いぞ」
「さて、めんどくさくなってきましたね。どうしたものですか……」
「だから俺達に譲ればいいってんだよ。大体おまえら冒険者になって間もないだろう。
ブラッドラプトルは凶悪なやつだ。俺達だって魔法使いの支援が必須なんだ。だから魔法使いが見つかるまで待ってたんだ」
なるほどね。依頼を受けていないのはメンバーが足りてなかったのか。
魔法使いね……。
「あ! なら問題ないじゃないですか。俺達は魔法使いですよ。まあ俺は役に立ちませんけど、シャルロットはマスター級ですのでおじさんたち一緒に参加してくれませんか?」
俺は、これ以上揉め事になるのは嫌なので、俺達のギルドカードを見せて魔法使いであることを教えた。
「なに? ラングレン兄妹? ……確かにお嬢ちゃんは相当な魔法使いのようだ。それにしてもラングレンってまあ懐かしい名前だ。ドイルとカレンを思い出しちまった」
「え? おじさんたち両親を知ってるんですか?」
…………。
「なんだ、最初から言ってくれってんだよ。そうかおめえさんがカレンの息子か。よく見たらカレンに似ていい男じゃないか。がっはっは」
こうして、臨時パーティーが組まれることになった。
受付のお姉さんもこの魔物の討伐には複数人での参加が推奨されているため丁度よかったとのことだった。
冒険者チーム『オーガラバーズ』のリーダー、ギルバートさんはどうやら母さんと冒険者パーティーを組んでたこともあるようだ。
オーガラバーズのメンバーは全員戦士で、魔法使いはいなかった。
肉弾戦への強いこだわりで固定メンバーは全員戦士なのだ。
もちろん、それではバランスが悪いので、依頼によっては臨時で魔法使いや盗賊を雇うこともあるらしい。
メンバーはリーダーのギルバートさん、両手持ちの大盾を使って防御を担当する。また盾で敵を殴るのにも使えるらしい。
そして、もう二人、大剣使いオズワルドさん。大戦斧のヘクターさん。みんな筋骨隆々でたくましいおじさんたちだ。
2
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる