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第四章 カルルク帝国
第48話 首都ベラサグン②
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翌朝。
俺達は宮殿の一室に来ていた。
謁見室と聞いていたが、そこはテーブルとソファが並べられており、ただの待合室のように思えた。
もちろん置いてある家具は高級品であることは間違いないが思ってたのと違っていた。
普通、皇帝への謁見は赤いじゅうたんが敷かれて、その先の玉座に皇帝が座っているものだと思っていた。
しかし、俺達は既にソファに座っており紅茶を御馳走になっていた。
「陛下がお見えになります」
ストーカーさん。いや、ノイマンさんが俺達の部屋に入ってきた。
この人はなんと宰相の地位にある人だった。
そんな人に昨日は半日付き合ってもらったのだ。
よかったのだろうか。まあ本人は満足していたようなので、俺としては何も言うことはないが。
そして、後から一人の女性が入ってきた。そういえばカルルク帝国の皇帝は女性だった。
彼女は派手な装飾のない、しかし高品質で上品な服を身にまとっていた。
「ようこそカルルク帝国へ、私がカルルク帝国皇帝、オリビア・カルルクと申します。それとセバスちゃんは半年ぶりでしょうか?」
「お久しぶりです、オリビア様。彼らがエフタル王国から来た、カイル・ラングレンとシャルロット・レーヴァテインです」
俺達は立ち上がり貴族風の挨拶をすると、再び陛下に促されて席に座る。
「さて、昨日はノイマンがご迷惑をおかけしたようですね、まったく困った物です」
「陛下、お言葉ですが、小職はお客人の安全の為にですな」
「おや、我が国がまるで安全でないような言い方。それに危ないのは貴方ですよ? いい加減ストーカー行為はおよしなさいと前にも言いましたよ」
「私も申しました。それは誤解ですと。私は一途にですな……」
「こほん、オリビア様。ストーカーの話はどうでもよいです。私も気にしておりませんし、視界に入っておりませんので、もし入った場合は斬り捨てるだけですから」
うわ、バッサリだ。でも、セバスティアーナさんの気持ちも分かる。
たしかにノイマンという宰相はキモイ。これだけ言われてるのに本人は涼しい顔をして聞き流しているのだ。
「あら、申し訳ないわね、そう言ってもらえると助かるわ。ではさっそく本題に移るとしましょうか。
まず、カイルさん、シャルロットさん。よくご無事でしたね。さぞつらい経験をされたと思います。
でもカルルク帝国を訪ねてくれて感謝申し上げます。ルカもそう思っているでしょう」
俺達は、オリビア陛下に全てを話した。
呪いのドラゴンロードが、極秘のはずの王都大結界の弱点をピンポイントについて街に侵入してしまったこと。
そして偶然ルカ・レスレクシオンの魔剣を見つけて、それでドラゴンを殺したこと。
憶測だが、その背後にはクリスティーナと呼ばれている現エフタル共和国の最高議長が関係しているだろうということ。
そして彼女は王国の貴族を狙って容赦なく皆殺しにしているということ。
しかし俺達は、なぜかクリスティーナの部下と思われる人間には見逃されて、グプタまで安全に旅が出来たことなど。
「――なるほど。状況は理解しました。ノイマン、このことはまだ他言無用ですよ? そのうえで、エフタルの状況を探ってください。そろそろ外交官を派遣してもよいかもしれません」
「御意。ところで陛下、実は私の知り合いを通じてエフタルの状況を探らせておりましたが、エフタルはすでに王族は全て殺されているようです。禅譲したというのは嘘で実質は簒奪のようですな」
「まあ、そうなるでしょうね。なんらかの方法でドラゴンロードを手懐けたのですから。最初からそのつもりだったのでしょう」
「あの、陛下、ご質問よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。なんでも聞いてください」
「俺達は、呪いのドラゴンロードは伝説でしか知らないのです。それにドラゴンとはそもそも何なのか気になることがありまして」
「ああ、グプタのドラゴンロードにも会ったのでしたね。いいでしょう。疑問にお答えするとしましょうか」
俺はオリビア陛下から呪いのドラゴンロードについて話を聞いた。
もちろんカルルク帝国での情報であって、これが全てではないが。
この大陸にはドラゴンロードは数体いるという。
各個体はそれぞれに縄張りを持っており、それぞれが不可侵の盟約があるらしい。
呪いのドラゴンロード・ルシウスはエフタルを縄張りにしていること。
行動の目的は不明だが、大体はその名の通り、呪いを広める為に活動しているということ。
呪いについてはエフタルの伝説と大体同じだ。
ただし定期的に生贄を授けることで王族とドラゴンの間では和平の様な者を結んでいたというのは初耳だった。
ちなみに、オリビア陛下は学生時代はエフタルの魔法学院に留学していたらしく、その時にエフタル王族から聞き出したそうなので間違いないようだ。
そんな秘密を他国の皇族に話してしまうのは呆れたが、それよりも驚いたのは、なんとオリビア陛下はルカ・レスレクシオンと学友だというのだ。
なるほど、どおりでセバスティアーナさんと親しいわけだ。
こうして、オリビア陛下との謁見は終わった。
俺達の次の目的は、いよいよ北方の迷宮都市タラスだ。
だが、これから本格的な冬が到来するため、しばらくはここ首都で春までおあづけだ。
丁度いい、ここでしっかりと冒険者として仕事をして春までに資金を溜めることにする。
もちろん剣の修行も見てもらう。シャルロットの役に立てるようにもっと強くならないとな。
俺達は宮殿の一室に来ていた。
謁見室と聞いていたが、そこはテーブルとソファが並べられており、ただの待合室のように思えた。
もちろん置いてある家具は高級品であることは間違いないが思ってたのと違っていた。
普通、皇帝への謁見は赤いじゅうたんが敷かれて、その先の玉座に皇帝が座っているものだと思っていた。
しかし、俺達は既にソファに座っており紅茶を御馳走になっていた。
「陛下がお見えになります」
ストーカーさん。いや、ノイマンさんが俺達の部屋に入ってきた。
この人はなんと宰相の地位にある人だった。
そんな人に昨日は半日付き合ってもらったのだ。
よかったのだろうか。まあ本人は満足していたようなので、俺としては何も言うことはないが。
そして、後から一人の女性が入ってきた。そういえばカルルク帝国の皇帝は女性だった。
彼女は派手な装飾のない、しかし高品質で上品な服を身にまとっていた。
「ようこそカルルク帝国へ、私がカルルク帝国皇帝、オリビア・カルルクと申します。それとセバスちゃんは半年ぶりでしょうか?」
「お久しぶりです、オリビア様。彼らがエフタル王国から来た、カイル・ラングレンとシャルロット・レーヴァテインです」
俺達は立ち上がり貴族風の挨拶をすると、再び陛下に促されて席に座る。
「さて、昨日はノイマンがご迷惑をおかけしたようですね、まったく困った物です」
「陛下、お言葉ですが、小職はお客人の安全の為にですな」
「おや、我が国がまるで安全でないような言い方。それに危ないのは貴方ですよ? いい加減ストーカー行為はおよしなさいと前にも言いましたよ」
「私も申しました。それは誤解ですと。私は一途にですな……」
「こほん、オリビア様。ストーカーの話はどうでもよいです。私も気にしておりませんし、視界に入っておりませんので、もし入った場合は斬り捨てるだけですから」
うわ、バッサリだ。でも、セバスティアーナさんの気持ちも分かる。
たしかにノイマンという宰相はキモイ。これだけ言われてるのに本人は涼しい顔をして聞き流しているのだ。
「あら、申し訳ないわね、そう言ってもらえると助かるわ。ではさっそく本題に移るとしましょうか。
まず、カイルさん、シャルロットさん。よくご無事でしたね。さぞつらい経験をされたと思います。
でもカルルク帝国を訪ねてくれて感謝申し上げます。ルカもそう思っているでしょう」
俺達は、オリビア陛下に全てを話した。
呪いのドラゴンロードが、極秘のはずの王都大結界の弱点をピンポイントについて街に侵入してしまったこと。
そして偶然ルカ・レスレクシオンの魔剣を見つけて、それでドラゴンを殺したこと。
憶測だが、その背後にはクリスティーナと呼ばれている現エフタル共和国の最高議長が関係しているだろうということ。
そして彼女は王国の貴族を狙って容赦なく皆殺しにしているということ。
しかし俺達は、なぜかクリスティーナの部下と思われる人間には見逃されて、グプタまで安全に旅が出来たことなど。
「――なるほど。状況は理解しました。ノイマン、このことはまだ他言無用ですよ? そのうえで、エフタルの状況を探ってください。そろそろ外交官を派遣してもよいかもしれません」
「御意。ところで陛下、実は私の知り合いを通じてエフタルの状況を探らせておりましたが、エフタルはすでに王族は全て殺されているようです。禅譲したというのは嘘で実質は簒奪のようですな」
「まあ、そうなるでしょうね。なんらかの方法でドラゴンロードを手懐けたのですから。最初からそのつもりだったのでしょう」
「あの、陛下、ご質問よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろん。なんでも聞いてください」
「俺達は、呪いのドラゴンロードは伝説でしか知らないのです。それにドラゴンとはそもそも何なのか気になることがありまして」
「ああ、グプタのドラゴンロードにも会ったのでしたね。いいでしょう。疑問にお答えするとしましょうか」
俺はオリビア陛下から呪いのドラゴンロードについて話を聞いた。
もちろんカルルク帝国での情報であって、これが全てではないが。
この大陸にはドラゴンロードは数体いるという。
各個体はそれぞれに縄張りを持っており、それぞれが不可侵の盟約があるらしい。
呪いのドラゴンロード・ルシウスはエフタルを縄張りにしていること。
行動の目的は不明だが、大体はその名の通り、呪いを広める為に活動しているということ。
呪いについてはエフタルの伝説と大体同じだ。
ただし定期的に生贄を授けることで王族とドラゴンの間では和平の様な者を結んでいたというのは初耳だった。
ちなみに、オリビア陛下は学生時代はエフタルの魔法学院に留学していたらしく、その時にエフタル王族から聞き出したそうなので間違いないようだ。
そんな秘密を他国の皇族に話してしまうのは呆れたが、それよりも驚いたのは、なんとオリビア陛下はルカ・レスレクシオンと学友だというのだ。
なるほど、どおりでセバスティアーナさんと親しいわけだ。
こうして、オリビア陛下との謁見は終わった。
俺達の次の目的は、いよいよ北方の迷宮都市タラスだ。
だが、これから本格的な冬が到来するため、しばらくはここ首都で春までおあづけだ。
丁度いい、ここでしっかりと冒険者として仕事をして春までに資金を溜めることにする。
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