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第三章 港町
第39話 セバスティアーナ①
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セバスティアーナさんはルカ・レスレクシオンの命令で、わざわざ迷宮都市タラスから俺達を迎えに来てくれたようだ。
カルルク帝国は初めてだし、エフタルとは全然環境が違う。
困難な旅が予想されたから感謝しかない。
しかし、この岩石砂漠を一人で縦断するとは、彼女の実力は相当なものだろう。
メイドといっていたが、絶対に嘘だ。
それにメイド服を着てはいるが、そのほかの装備がすでにおかしい。
腰に短めの剣を二本。背中には身長ほどもある細身の湾曲した剣を背負っている。
それにシャルロットが言うにはメイド服にも違和感があるらしい、特にスカートに違和感を感じるのだと。
おそらく隠し武器を仕込んでいるとのことだ。
それに装備だけの話でもない、彼女の歩き方にも違和感がある。
そう、いっさいの隙がないのだ。
俺が一瞬で背後を取られたように気配が全く感じられなかった。
「では、さっそくルカ様の元に案内しましょう」
「ちょっとまって。俺達はグプタに恩返ししないと。それに冒険者としての仕事を途中で投げ出すのはだめだ」
「はあ、そうですか。ま、確かにその通りですね。では本日より私も冒険者パーティー、ラングレン兄妹に入るとしましょう」
というわけで。俺達には新たな仲間が増えた。
城壁の防衛任務は相変わらず暇だった。
道中セバスティアーナさんが一通り処理してくれていたらしく、魔物はまったく来なかった。
だが最終日に大きなサソリの魔物、デスイータが城壁の前に鎮座していた。
獲物の死骸の臭いを嗅ぎつけてここで待ち伏せしているのだろう。
よし、最終日だし、さっさと片づけて城壁の作業の邪魔にならないように速やかに撤去するとしよう。
いつもなら、あの程度の魔物なら、我先に攻撃魔法を放つシャルロットが何もしない。
それどころか俺を見つめている。すこし涙目になっている。
ああ、そうだった、虫が苦手だったっけ。
「おいおい。ただのサソリだろ? デカいからって見た目はエビとそんなに変らないじゃないか」
「馬鹿! エビは海にいるからエビなのよ。陸にいたら虫よ。気持ち悪いわ。それに毒があるんでしょ? あの気持ち悪い色。猛毒よ、きもい、きもい」
……わからない、エビがよくてサソリが駄目な感覚。
「ふう、ラングレン様。エビとサソリは違います。鈍感なのですか? まあ、それはそれとして丁度いい機会です。
私も魔剣を使ってる所を見てみたい。万が一の時はサポートするので、お一人であれと戦ってみてくれますか?」
セバスティアーナさんは俺の力量を見たいといっているようだ。そういうことなら話は別だ。
俺は魔剣を取り出す。
そして、目の前の巨大なサソリ、デスイーターに近づく。
奴は毒針で獲物に毒を注入して放置し、翌日に捕食するという習性がある。
ゆえに爪は退化して小さい。だが尻尾は太く発達しており毒針は槍のように鋭かった。
体格差は約二倍、一人で対処する魔物ではない。だが俺も男だ、やってやる。
デスイーターの武器は一つだけ、あの尻尾の毒針だけだ。
俺は正々堂々と奴の正面に立つ。
「こい!」
俺が叫ぶとデスイーターは尻尾の毒針を俺めがけて突き刺してきた。
「ヘイスト!」
俺は身体強化の魔法を掛ける。奴の針は俺の心臓めがけて一直線に迫ってくる。
魔剣でその針を弾く。
今だ!
魔剣を大きく振りかぶり尻尾を一刀両断した。
尻尾を斬られたデスイーターは仰向けになって転がる。
俺は再び魔剣を振りかぶり奴の胴体を真っ二つにした。
「やったわね!」
デスイーターが死んだのを確認すると、シャルロットが元気に俺にハイタッチをしてきた。
「おお、やったな!」
俺はそれに答える。
「ああ、ついにやってしまいましたね」
セバスティアーナさんの声、うん? おれは何かやったのか?
彼女の視線は俺の手元を見ていた。
魔剣から煙がでていたのだ。
ついに魔剣が壊れてしまった。
正確には機械部品の一部の破損ということだった。
こうなると魔剣開放は出来ない。放っておくと剣としても使い物にならなくなるらしい。
カルルク帝国は初めてだし、エフタルとは全然環境が違う。
困難な旅が予想されたから感謝しかない。
しかし、この岩石砂漠を一人で縦断するとは、彼女の実力は相当なものだろう。
メイドといっていたが、絶対に嘘だ。
それにメイド服を着てはいるが、そのほかの装備がすでにおかしい。
腰に短めの剣を二本。背中には身長ほどもある細身の湾曲した剣を背負っている。
それにシャルロットが言うにはメイド服にも違和感があるらしい、特にスカートに違和感を感じるのだと。
おそらく隠し武器を仕込んでいるとのことだ。
それに装備だけの話でもない、彼女の歩き方にも違和感がある。
そう、いっさいの隙がないのだ。
俺が一瞬で背後を取られたように気配が全く感じられなかった。
「では、さっそくルカ様の元に案内しましょう」
「ちょっとまって。俺達はグプタに恩返ししないと。それに冒険者としての仕事を途中で投げ出すのはだめだ」
「はあ、そうですか。ま、確かにその通りですね。では本日より私も冒険者パーティー、ラングレン兄妹に入るとしましょう」
というわけで。俺達には新たな仲間が増えた。
城壁の防衛任務は相変わらず暇だった。
道中セバスティアーナさんが一通り処理してくれていたらしく、魔物はまったく来なかった。
だが最終日に大きなサソリの魔物、デスイータが城壁の前に鎮座していた。
獲物の死骸の臭いを嗅ぎつけてここで待ち伏せしているのだろう。
よし、最終日だし、さっさと片づけて城壁の作業の邪魔にならないように速やかに撤去するとしよう。
いつもなら、あの程度の魔物なら、我先に攻撃魔法を放つシャルロットが何もしない。
それどころか俺を見つめている。すこし涙目になっている。
ああ、そうだった、虫が苦手だったっけ。
「おいおい。ただのサソリだろ? デカいからって見た目はエビとそんなに変らないじゃないか」
「馬鹿! エビは海にいるからエビなのよ。陸にいたら虫よ。気持ち悪いわ。それに毒があるんでしょ? あの気持ち悪い色。猛毒よ、きもい、きもい」
……わからない、エビがよくてサソリが駄目な感覚。
「ふう、ラングレン様。エビとサソリは違います。鈍感なのですか? まあ、それはそれとして丁度いい機会です。
私も魔剣を使ってる所を見てみたい。万が一の時はサポートするので、お一人であれと戦ってみてくれますか?」
セバスティアーナさんは俺の力量を見たいといっているようだ。そういうことなら話は別だ。
俺は魔剣を取り出す。
そして、目の前の巨大なサソリ、デスイーターに近づく。
奴は毒針で獲物に毒を注入して放置し、翌日に捕食するという習性がある。
ゆえに爪は退化して小さい。だが尻尾は太く発達しており毒針は槍のように鋭かった。
体格差は約二倍、一人で対処する魔物ではない。だが俺も男だ、やってやる。
デスイーターの武器は一つだけ、あの尻尾の毒針だけだ。
俺は正々堂々と奴の正面に立つ。
「こい!」
俺が叫ぶとデスイーターは尻尾の毒針を俺めがけて突き刺してきた。
「ヘイスト!」
俺は身体強化の魔法を掛ける。奴の針は俺の心臓めがけて一直線に迫ってくる。
魔剣でその針を弾く。
今だ!
魔剣を大きく振りかぶり尻尾を一刀両断した。
尻尾を斬られたデスイーターは仰向けになって転がる。
俺は再び魔剣を振りかぶり奴の胴体を真っ二つにした。
「やったわね!」
デスイーターが死んだのを確認すると、シャルロットが元気に俺にハイタッチをしてきた。
「おお、やったな!」
俺はそれに答える。
「ああ、ついにやってしまいましたね」
セバスティアーナさんの声、うん? おれは何かやったのか?
彼女の視線は俺の手元を見ていた。
魔剣から煙がでていたのだ。
ついに魔剣が壊れてしまった。
正確には機械部品の一部の破損ということだった。
こうなると魔剣開放は出来ない。放っておくと剣としても使い物にならなくなるらしい。
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