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第一章 プロローグ
第10話 機械魔剣ベヒモス②
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『ぱんぱかぱーん! おめでとう! 君は我が剣の所有者に相応しい腕力を持っているようだ。腕力は正義だね』
「剣がしゃべった! これが機械魔剣『ベヒモス』だというのか!」
『あほ! 剣がしゃべるわけないじゃろがい! ……こほん、吾輩はルカ・レスレクシオンであーる』
「え? ルカ・レスレクシオン? 伝説の天才魔法使いの? マジかよ」
『マジであーる。 あっ! ……ちなみにこれは録音データであるので、会話は成立しないのだ。初心者の為のチュートリアルと思うがよい。吾輩はやさしいのであーる』
ありがたい。ルカ・レスレクシオンが本当なら、何とかなるかもしれない。
『さて、チュートリアルを始めよう。君は今、目の前に強敵がいる、そして側には瀕死の仲間がいるね。
さっそく魔剣開放をしてみたまえ。習うより慣れろってやつだね。口で言ってもいいし、魔力を込めて念じれば魔剣は解放される』
「魔剣開放!」
そう言うと。
魔剣の刀身が二つに割れ左右に展開し、その中央から刀身の半分くらいの長さの細長い棒の様な物が露出した。
形は金属製のマジックロッドとよく似ている。
そして、それを中心に刀身を覆うようにリング状の光る魔法陣が、刀身の根元から切っ先にかけて空中に何重にも展開されている。
『魔剣開放の効果によって君の魔法は大幅に強化される。
例えそれが初級魔法であっても威力は、魔剣にチャージされている魔力を使用し、極大魔法以上に増幅されるだろう。
ちなみに現在は魔力満タンだ。さて、なにか撃ってみるがよかろう』
「初級魔法でも、極大魔法並みの威力が出せる。それは回復魔法もですか?」
『もちろんだとも、君はなかなか優しい。いい男じゃな。普通の男の子なら最初に攻撃魔法をぶっ放すところじゃが。気に入ったぞい』
俺は急いでシャルロットのいる場所に戻ってきた。
彼女はまだ生きている。でも顔色は良くない。
でも間に合った。
「ヒール!」
剣先をシャルロットに向けて初級回復魔法のヒールを放つ。
そう、放つという表現があっている。
剣先に展開された魔法陣が大きくなりそこから真っ白い光が放射されたのだ。
熱はなく。純粋な癒しの光だった。
光が収まると。
切断されてた、両足は綺麗に元通りになっていた。
「すごい、これは宮廷魔術師が使うグレーターヒールのレベルじゃない!」
『さよう、吾輩は天才であるからのう、あの勉強できる馬鹿の見本と呼ばれる宮廷魔法使いと一緒にされては困るわい! わっはっは』
俺はシャルロットの脈を測る。
よかった、安定している。意識はまだ戻っていないが。静かな寝息を感じることができる。
しかし、これは本当に録音データか? 会話が成立しているというか、現在の状況を理解しているように思える。
いや、今はそれどころじゃない、それにドラゴンは王城を焼き尽くしたのか、今度は周囲の大きな建物から順番にドラゴンブレスを放っていた。
それからドラゴンは指で何かを摘まみ上げ口に運んでいる。
その何かを数回咀嚼するとすぐに吐き出した。そして明らかに不機嫌になる。
しばらくすると再び近くの建物にドラゴンブレスを放った。
「ルカ様、まだ魔力は残っているのですか?」
『ふむ、残っておる。敵の強さによるが、あと一撃なら全力で撃っても問題ないじゃろう』
俺はドラゴンに魔剣の先を向けて、魔法を放つ。
俺が使える攻撃魔法、初級魔法のファイアアローしか使えないんだけどな。
再び中心のロッドから複数のリング状の光の魔法陣が浮かび上がる。
その直後に、ドラゴンに向かって、青白い光の線が放たれた。
その光りはドラゴンの防御結界を貫通し、片方の翼を切り裂く。
――っ!
ファイアアローの威力じゃない! それこそドラゴンブレスと同等かそれ以上はある。
片方の翼を失ったドラゴンは俺を睨んだ。
『グゥ……人間、よくも我が翼を。許せんぞ!』
突然の激痛によって怒り狂ったドラゴンは真っすぐこちらめがけて突進してくる。
魔法を放ち終わると魔剣のブレードは閉じ再び大剣の状態に戻る。
『魔力が切れたようだね、さて次の段階に移るとしよう。
その状態は通称パッシブモードと呼ばれる状態だ。
ブレードが閉じると剣として使えるようになる。
もちろん、ただの剣ではない。それにも一工夫しているのだ。
その状態は術者の魔力を回復させつつ接近戦に対応するモードなのだ。
二枚のブレードが閉じるとブレードに刻まれた魔法陣が完成するようになっている。
一つは魔封じ、もう一つは魔力ドレインの術式を刻んでいる。
敵の魔法を防ぎつつ切った対象から魔力をごっそりといただくって戦法なのだよ。
ちなみその特性から、相手の魔法結界を無力化することもできる。強力な結界であればあるほど吸収する魔力は大きい。防御無視からのドレイン、我ながら天才だと思ったよ』
なるほど、つまりは普通の剣として使えるということか。
それにしても重い、けど振れないこともない。
俺は魔剣を上段に構える。
――いける! さあ、かかって来い!
ドラゴンは油断していた、魔法使いは極大魔法をつかった後は魔力を失い行動不能になるのを知っていたからだ。
これまで何人も殺してきた。今回もそうだろうと油断して接近戦に持ち込んだが、間違いだった。
気づいたらドラゴンの視線は空中を舞い、首のない自身の胴体を見ながらこと切れた。
「やったのか……」
『そのようじゃ。さてと、ここにドラゴンの死体があるが、目立ちたくなければすぐに退散した方がいいと思うぞい』
そうだ、何が起こったか分からないけど、ここにいるのは得策じゃない。
シャルロットも心配だし。
とりあえず家に戻ろう。
「剣がしゃべった! これが機械魔剣『ベヒモス』だというのか!」
『あほ! 剣がしゃべるわけないじゃろがい! ……こほん、吾輩はルカ・レスレクシオンであーる』
「え? ルカ・レスレクシオン? 伝説の天才魔法使いの? マジかよ」
『マジであーる。 あっ! ……ちなみにこれは録音データであるので、会話は成立しないのだ。初心者の為のチュートリアルと思うがよい。吾輩はやさしいのであーる』
ありがたい。ルカ・レスレクシオンが本当なら、何とかなるかもしれない。
『さて、チュートリアルを始めよう。君は今、目の前に強敵がいる、そして側には瀕死の仲間がいるね。
さっそく魔剣開放をしてみたまえ。習うより慣れろってやつだね。口で言ってもいいし、魔力を込めて念じれば魔剣は解放される』
「魔剣開放!」
そう言うと。
魔剣の刀身が二つに割れ左右に展開し、その中央から刀身の半分くらいの長さの細長い棒の様な物が露出した。
形は金属製のマジックロッドとよく似ている。
そして、それを中心に刀身を覆うようにリング状の光る魔法陣が、刀身の根元から切っ先にかけて空中に何重にも展開されている。
『魔剣開放の効果によって君の魔法は大幅に強化される。
例えそれが初級魔法であっても威力は、魔剣にチャージされている魔力を使用し、極大魔法以上に増幅されるだろう。
ちなみに現在は魔力満タンだ。さて、なにか撃ってみるがよかろう』
「初級魔法でも、極大魔法並みの威力が出せる。それは回復魔法もですか?」
『もちろんだとも、君はなかなか優しい。いい男じゃな。普通の男の子なら最初に攻撃魔法をぶっ放すところじゃが。気に入ったぞい』
俺は急いでシャルロットのいる場所に戻ってきた。
彼女はまだ生きている。でも顔色は良くない。
でも間に合った。
「ヒール!」
剣先をシャルロットに向けて初級回復魔法のヒールを放つ。
そう、放つという表現があっている。
剣先に展開された魔法陣が大きくなりそこから真っ白い光が放射されたのだ。
熱はなく。純粋な癒しの光だった。
光が収まると。
切断されてた、両足は綺麗に元通りになっていた。
「すごい、これは宮廷魔術師が使うグレーターヒールのレベルじゃない!」
『さよう、吾輩は天才であるからのう、あの勉強できる馬鹿の見本と呼ばれる宮廷魔法使いと一緒にされては困るわい! わっはっは』
俺はシャルロットの脈を測る。
よかった、安定している。意識はまだ戻っていないが。静かな寝息を感じることができる。
しかし、これは本当に録音データか? 会話が成立しているというか、現在の状況を理解しているように思える。
いや、今はそれどころじゃない、それにドラゴンは王城を焼き尽くしたのか、今度は周囲の大きな建物から順番にドラゴンブレスを放っていた。
それからドラゴンは指で何かを摘まみ上げ口に運んでいる。
その何かを数回咀嚼するとすぐに吐き出した。そして明らかに不機嫌になる。
しばらくすると再び近くの建物にドラゴンブレスを放った。
「ルカ様、まだ魔力は残っているのですか?」
『ふむ、残っておる。敵の強さによるが、あと一撃なら全力で撃っても問題ないじゃろう』
俺はドラゴンに魔剣の先を向けて、魔法を放つ。
俺が使える攻撃魔法、初級魔法のファイアアローしか使えないんだけどな。
再び中心のロッドから複数のリング状の光の魔法陣が浮かび上がる。
その直後に、ドラゴンに向かって、青白い光の線が放たれた。
その光りはドラゴンの防御結界を貫通し、片方の翼を切り裂く。
――っ!
ファイアアローの威力じゃない! それこそドラゴンブレスと同等かそれ以上はある。
片方の翼を失ったドラゴンは俺を睨んだ。
『グゥ……人間、よくも我が翼を。許せんぞ!』
突然の激痛によって怒り狂ったドラゴンは真っすぐこちらめがけて突進してくる。
魔法を放ち終わると魔剣のブレードは閉じ再び大剣の状態に戻る。
『魔力が切れたようだね、さて次の段階に移るとしよう。
その状態は通称パッシブモードと呼ばれる状態だ。
ブレードが閉じると剣として使えるようになる。
もちろん、ただの剣ではない。それにも一工夫しているのだ。
その状態は術者の魔力を回復させつつ接近戦に対応するモードなのだ。
二枚のブレードが閉じるとブレードに刻まれた魔法陣が完成するようになっている。
一つは魔封じ、もう一つは魔力ドレインの術式を刻んでいる。
敵の魔法を防ぎつつ切った対象から魔力をごっそりといただくって戦法なのだよ。
ちなみその特性から、相手の魔法結界を無力化することもできる。強力な結界であればあるほど吸収する魔力は大きい。防御無視からのドレイン、我ながら天才だと思ったよ』
なるほど、つまりは普通の剣として使えるということか。
それにしても重い、けど振れないこともない。
俺は魔剣を上段に構える。
――いける! さあ、かかって来い!
ドラゴンは油断していた、魔法使いは極大魔法をつかった後は魔力を失い行動不能になるのを知っていたからだ。
これまで何人も殺してきた。今回もそうだろうと油断して接近戦に持ち込んだが、間違いだった。
気づいたらドラゴンの視線は空中を舞い、首のない自身の胴体を見ながらこと切れた。
「やったのか……」
『そのようじゃ。さてと、ここにドラゴンの死体があるが、目立ちたくなければすぐに退散した方がいいと思うぞい』
そうだ、何が起こったか分からないけど、ここにいるのは得策じゃない。
シャルロットも心配だし。
とりあえず家に戻ろう。
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